世界最強の女好き吸血鬼が、学園でハーレムを築きながら世界を救う英雄となるまで

柊咲

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向けられた細剣 3

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「どうしてそう思ったんだ?」
「逆に、それで本気で隠せてると思ったの……?」


 意外、といった表情で見つめられた。


「簡単なことよ。あなたはここのことを何も知らない、知らなさ過ぎているのよ」


 レイナは周囲の地面に視線を向けた。


「国境都市ヴェリュフールに住む人々、それから近隣の中立国の人も、ここには絶対に立ち入らないの。どうしてかわかる?」
「……さあな」
「ここにはね、昔の戦争で亡くなった人たちが何年も放置されているのよ。火葬も埋葬もされずにね。昔の人はたぶん、自分たちの生活で精一杯だったのでしょ、亡骸の対応まで手がまわらなかった。そうして放置された死骸を狙って、狂暴な魔獣が集まるようになった」
「ようするにここは、魔獣の巣窟ということか」
「ええ、そうよ。だからみんな寄り付かない。だけどあなたは私と一緒に付いて来てくれた。どうして?」


 クスッと笑ったレイナに、俺は周囲を見渡しながら答える。


「別にどんな魔獣がいようとも倒せば問題ないだろ」


 周囲に魔獣の気配は感じていた。
 ただそれは、魔界にいた魔物とは比べものにならないぐらい弱く、あの試験に用意された試験用の魔獣と大差なかった。
 だからこそ、俺は警戒心なんて一切もっていなかった。


「あなたなら、一人でもこの周辺の魔獣を倒すことができる……それがそもそも、おかしいのよ」


 レイナは俺の考えを呼んで、否定した。


「中立国の人間に魔力を持った者はいない。いてはいけないし、生まれるはずがないの」
「……どういうことだ?」
「昔に起きた戦争で大量の人が死んだと同時に、多くの捕虜が生まれた。三国それぞれにね。そのことはあなたも知っているわよね?」
「ああ」
「神聖ペシャレール王国からガルダンダ共和国へ。ガルダンダ共和国からベル・レノン帝国へ。それぞれ敵国の捕虜となって、休戦協定後、祖国に帰れずそのまま他国で暮らす人々がいた。だけどそれは、この中立国の人々も同じなの」
「中立国も……?」


 それについては初めて聞いた。
 俺はてっきり戦争や捕虜といったことは三国間だけで行われ、この場所は激戦地というだけのことだと思っていた。
 そして激戦地であるここを開拓して、中立国という立場でここに人々が住みついたのだと、そう思っていた。


「100年前、大勢の人々が捕虜として連れて行かれたそうよ──有能な魔術師から順にね」
「魔術師から?」
「だからこそ、この中立国で暮らす人には、魔導書無しで魔術を使うことができるような才能も魔力も持った人はいないのよ。そういった人はみんな、三国に捕虜として連れて行かれたのだからね」


 そこまで聞いて理解した。
 だからなのか。リトも、レイナも、ここに暮らす住民のほとんどが、魔力を多く持っていると感じたことがなかった。
 俺が人間界に来て声をかけた女のほとんどは、国属クラスの生徒ばかりだった。


「だがレイナの母親も、レイナ自身だって魔力を持っているだろ?」


 俺はレイナの母親からはっきりと魔力を感じた。
 決して多くはないが、それでも国属クラスの奴らと比べても少ないわけではなかった。
 レイナ自身も、少ないが魔力を有しているのがわかる。だから変だと思って聞いた。


「……そう」


 すると、レイナは更に警戒心を強めるように、視線を鋭くさせた。


「……お店で私、一度だけしか魔力を使わなかったのだけど? それにお母さんは魔術を使っていない。あなた……相手を見ただけで人に魔力を宿しているかどうかわかるのね」
「……」
「まあいいわ。あなたの言った通り、お母さんも私も魔力を持っているわ。ただそれは、先祖が捕虜にならずに済んだだけのこと、そういった人も一定数いるわ。だけど魔力は親から子へと全て受け継がれるものじゃない。あなたならわかるでしょうけど、私とお母さん、どっちが魔力量が多いかわかる?」


 そう聞かれ、答えは出ていた。


「お前の母親だな」
「ええ、そう。運が良ければ魔力は親から子へ継承される。だけどされない場合もあるし、運が良くても全ては継承されない。親から子へ、その子からまた子へ。そうして魔力は少しずつ減少していく。私たち中立国の人々はね」
「三国はそうではないと?」
「ええ、何か方法があるのでしょうね。親を超える魔力を持った子が生まれる方法が。……ごめんなさい、話が脱線しちゃったわね」


 そう言って、レイナは俺へと細剣の刃先を胴体から顔に向けるようにゆっくりと上げた。


「あなたが何者なのか、それを知りたいの。騎士クラスということは、あなたも表向きには中立国の生まれということになる。だけど、お店で見せてくれたあなたの魔術……あれは、ここで生まれ育つ者が持つべき力じゃない」
「……なるほど」


 レイナの言いたいことはよくわかった。

 この中立国には魔力を多く持った人間は生まれない。
 その理由としては、かつて起きた戦争で優秀な人材は三国に取られ、残ったのは魔術師としての才能や魔力がないか少ない者だけだから。
 そして魔力も、中立国では親から子へ完璧に継承することはないとされている。

 だからこそ、俺の存在に疑問を抱いているということか。
 三国からのスパイではないか、とかそういう理由なのだろうか。


「それで、その細剣を俺に向ける理由はなんだ?」
「警戒していることを表している……というよりも、あなたと決闘して、私が勝てたら教えてほしい。あなたが何者なのか」
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