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第1部 3章 新たな住まい
食事と食器と
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皆の食事も運ばれて来たので、私もメインの魚に手を付ける。
「はむっ。…美味しい。ん?」
「どうかしたか?」
「い、いえ」
勘違いのはずだ。そう、異世界ご飯がこんなもののはずじゃない!私はもう一度ムニエルに手を付ける。
はむっ
「うっ、わずかだけど感じるこの臭み…これって淡水魚ですか?」
「何を言ってるんだ?近くに海がないだろう」
「ひょっとして、ミツキちゃんの村の近くって海があったの?」
「そ、そうですね。たまに食べれてました」
しら~っと視線を泳がせながら答える。
「それはいいわね!ほら、淡水魚ってちょっと臭いがする時があるのよね。大丈夫だった?」
「うっ…」
「その様子だとダメだったみたいね」
「だ、駄目じゃないんです。きっと、私がこういうのに慣れてなくて」
「もう一度注文いたしましょうか?」
私の事を思ってライラさんがそう言ってくれるけど、注文した責任は取らないといけない。
「いけません!食べ物は粗末にしてはダメです。それに、美味しいですよ」
後味が残らなければ。その言葉を胸に秘め、ムニエルを食べつつスープを飲んで口の中をさっぱりさせていった私だったが、あることに気が付いた。
「パン残ってるじゃん…」
思わず変な言葉になってしまったが、今問題なのはこのプレートに丸々残ったパンだ。
「つけるものとかないよね?」
昨日の豪華な食事にジャムはあるにはあったけど、ちょこんと添えられていただけだった。砂糖が高いのかハウス栽培みたいに通年で果物を育てられないのか分からないけれど、町の食堂ではそのまま食べるか、スープなどに付けて食べる以外はなさそうだ。
「手が止まってるぞ?もう満腹なのか」
「あっ、いえ…」
「ひょっとして、昨日の食事のようにジャムがあると思われていたのでは?」
「はい、そうなんです」
本当はちょっと違うけど、あながち間違いでもないので同意する。
「こちらお使いになりますか?」
そう言って自分のスープを差し出してくれるライラさん。ひょっとして私の食べるところを見て取っておいてくれたのだろうか?
「大丈夫です。なんとか食べられますから!」
そう言ってパンを口にするものの…。
「うっ、硬いし味もあんまり」
昨日の食事の席でも硬いと思ったけど、あれでも上質な小麦を使っていたのか柔らかかったんだな。今食べているのはナイフで切って小さくしないと食べるの自体大変だ。
「やはり使われますか?」
「…お願いします」
この硬さではナイフで切るのも疲れそうなので、ライラさんにスープをもらって浸しながら切る。
「ん~、何とか切れそうです。ありがとうございます、ライラさん」
「いいえ。そのままお召し上がりになってもいいですよ」
「そんなわけにはいきません!ちゃんと残しておきますから」
「はははっ、そうしているとまるで姉妹だな」
「姉妹?ライラさんがお姉ちゃんですか?」
「そんな、ミツキ様に失礼ですよ」
うう~ん、ライラさんがお姉ちゃんかぁ。前は一人っ子だったし、そういうのもいいかも?そんなことを考えながらなんとか完食した私たちは店を出て、食器など日用品が売っている店に向かった。
「そういえば、馬車はまだ来てませんけど大丈夫ですか?」
「ああ、行き先は言ってあるからな。気にせず買い物をしていいぞ」
「そういうことなら!」
私たちは雑貨屋のフォークトという店に入っていく。ここは食器はもちろん、服なんかも売っていて、多くの人が来るそうだ。
「わっ!?早速、いっぱい目に入ります。食器の棚はどこかな~」
「ミツキ様。あちらです」
ライラさんもここには来るのか、迷うことなく食器を置いている棚に案内してもらった。
「ほとんど、木製ですね」
「ああ、それも建築資材なんかのは資材がもとだ。後は薪にした残りとかな」
「豪華なものとか細工入りのものはないんですね…」
「すぐに欠けるからね。邸で出て来た陶器の器なんて、高いから手前には置いてないわよ」
確かに棚を見ていっても全部木製で、陶器の器は見当たらない。
「ミツキ様、こちらに陶器の器がございます」
「本当ですか!」
ライラさんが陶器の器の所に案内してくれたので、ちらっと見てみたのだが…。
「わぉ、お高い」
茶碗サイズのものでもおひとつ金貨2枚だ。庶民の給料が月に金貨12枚ぐらいだから、かなりの値段だな。
「へぇ~、これってメイラートの新作じゃない?ミツキ、これにしなさいよ」
「メイラート?」
「この大陸でも有名な陶器を専門に扱う工房の名前だ。貴族だけでなく、裕福な商人にも人気で持っておいて損はないぞ?」
「えっ!?いやいや、そんなの私には分不相応ですって!」
アルテラさんに勧められ、クウィードさんには教授されるものの、そこまで陶器にこだわりがあるわけでもないしなぁ。
「ミツキ様。3セットほど買いましょう。ミツキ様はガイエル様の客人。どのような方が訪問されても良いように持っておくべきです」
「あっ、来客用ですか。それならあってもいいなぁ」
デザインは確かにきれいだし、町でできた友人とかガイエルの知り合いが来た時には重宝するかも。そう思ったところまでは良かったものの、カップが一つ金貨2枚。当然それを置くお皿にポットなど、まとめるとここでもかなりの支出になってしまった。
「はむっ。…美味しい。ん?」
「どうかしたか?」
「い、いえ」
勘違いのはずだ。そう、異世界ご飯がこんなもののはずじゃない!私はもう一度ムニエルに手を付ける。
はむっ
「うっ、わずかだけど感じるこの臭み…これって淡水魚ですか?」
「何を言ってるんだ?近くに海がないだろう」
「ひょっとして、ミツキちゃんの村の近くって海があったの?」
「そ、そうですね。たまに食べれてました」
しら~っと視線を泳がせながら答える。
「それはいいわね!ほら、淡水魚ってちょっと臭いがする時があるのよね。大丈夫だった?」
「うっ…」
「その様子だとダメだったみたいね」
「だ、駄目じゃないんです。きっと、私がこういうのに慣れてなくて」
「もう一度注文いたしましょうか?」
私の事を思ってライラさんがそう言ってくれるけど、注文した責任は取らないといけない。
「いけません!食べ物は粗末にしてはダメです。それに、美味しいですよ」
後味が残らなければ。その言葉を胸に秘め、ムニエルを食べつつスープを飲んで口の中をさっぱりさせていった私だったが、あることに気が付いた。
「パン残ってるじゃん…」
思わず変な言葉になってしまったが、今問題なのはこのプレートに丸々残ったパンだ。
「つけるものとかないよね?」
昨日の豪華な食事にジャムはあるにはあったけど、ちょこんと添えられていただけだった。砂糖が高いのかハウス栽培みたいに通年で果物を育てられないのか分からないけれど、町の食堂ではそのまま食べるか、スープなどに付けて食べる以外はなさそうだ。
「手が止まってるぞ?もう満腹なのか」
「あっ、いえ…」
「ひょっとして、昨日の食事のようにジャムがあると思われていたのでは?」
「はい、そうなんです」
本当はちょっと違うけど、あながち間違いでもないので同意する。
「こちらお使いになりますか?」
そう言って自分のスープを差し出してくれるライラさん。ひょっとして私の食べるところを見て取っておいてくれたのだろうか?
「大丈夫です。なんとか食べられますから!」
そう言ってパンを口にするものの…。
「うっ、硬いし味もあんまり」
昨日の食事の席でも硬いと思ったけど、あれでも上質な小麦を使っていたのか柔らかかったんだな。今食べているのはナイフで切って小さくしないと食べるの自体大変だ。
「やはり使われますか?」
「…お願いします」
この硬さではナイフで切るのも疲れそうなので、ライラさんにスープをもらって浸しながら切る。
「ん~、何とか切れそうです。ありがとうございます、ライラさん」
「いいえ。そのままお召し上がりになってもいいですよ」
「そんなわけにはいきません!ちゃんと残しておきますから」
「はははっ、そうしているとまるで姉妹だな」
「姉妹?ライラさんがお姉ちゃんですか?」
「そんな、ミツキ様に失礼ですよ」
うう~ん、ライラさんがお姉ちゃんかぁ。前は一人っ子だったし、そういうのもいいかも?そんなことを考えながらなんとか完食した私たちは店を出て、食器など日用品が売っている店に向かった。
「そういえば、馬車はまだ来てませんけど大丈夫ですか?」
「ああ、行き先は言ってあるからな。気にせず買い物をしていいぞ」
「そういうことなら!」
私たちは雑貨屋のフォークトという店に入っていく。ここは食器はもちろん、服なんかも売っていて、多くの人が来るそうだ。
「わっ!?早速、いっぱい目に入ります。食器の棚はどこかな~」
「ミツキ様。あちらです」
ライラさんもここには来るのか、迷うことなく食器を置いている棚に案内してもらった。
「ほとんど、木製ですね」
「ああ、それも建築資材なんかのは資材がもとだ。後は薪にした残りとかな」
「豪華なものとか細工入りのものはないんですね…」
「すぐに欠けるからね。邸で出て来た陶器の器なんて、高いから手前には置いてないわよ」
確かに棚を見ていっても全部木製で、陶器の器は見当たらない。
「ミツキ様、こちらに陶器の器がございます」
「本当ですか!」
ライラさんが陶器の器の所に案内してくれたので、ちらっと見てみたのだが…。
「わぉ、お高い」
茶碗サイズのものでもおひとつ金貨2枚だ。庶民の給料が月に金貨12枚ぐらいだから、かなりの値段だな。
「へぇ~、これってメイラートの新作じゃない?ミツキ、これにしなさいよ」
「メイラート?」
「この大陸でも有名な陶器を専門に扱う工房の名前だ。貴族だけでなく、裕福な商人にも人気で持っておいて損はないぞ?」
「えっ!?いやいや、そんなの私には分不相応ですって!」
アルテラさんに勧められ、クウィードさんには教授されるものの、そこまで陶器にこだわりがあるわけでもないしなぁ。
「ミツキ様。3セットほど買いましょう。ミツキ様はガイエル様の客人。どのような方が訪問されても良いように持っておくべきです」
「あっ、来客用ですか。それならあってもいいなぁ」
デザインは確かにきれいだし、町でできた友人とかガイエルの知り合いが来た時には重宝するかも。そう思ったところまでは良かったものの、カップが一つ金貨2枚。当然それを置くお皿にポットなど、まとめるとここでもかなりの支出になってしまった。
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