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第1部 3章 新たな住まい
お食事処マーテル
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「それじゃあ、この荷物はここへ頼むぞ」
「はい」
「はぁ、また着込まないと…」
ガシャンガシャン
マーテルに着くと、馬車で荷物を預かってくれている御者さんに新居の鍵を渡して玄関の中に運んでおいてもらう。その後は食事も取ってもらうことで、午後からも帯同してもらうのだ。せっかく身軽に成れたと思ったのに…。
「じゃあ、私たちはこっちね。入るわよ」
「はいっ!」
とはいえ、異世界ご飯を待ちきれない私は、元気よくアルテラさんの言葉に返事をして店内に入っていく。中は木造で床は磨かれてはいるものの、シミなども見られ年季の入った建物だということが分かる。
「これは期待できるかも!」
町中華の名店のかほりがする。
「どこを見て言ってるんだ?全く、ミツキの考えていることは分からんな」
「そうよね。普通はレストランに行きたがるものだけど」
「ミツキ様にはいい経験になるかと」
なんだか皆からは温かい目で見られているような気がするけど、それは置いといて私たちは案内されたテーブルに着いた。
「ご注文はなんにします?」
「えっと…」
「ミツキは肉と魚どっちだ?」
「昨日は肉でしたから魚ですかね?」
肉の食べ比べもしてみたかったけど、ここは趣の違う料理を食べてみることにした。
「魚がおひとつですね。他の方は?」
「俺とこいつは肉で。ライラは?」
「私は魚でお願いします」
「ちょっと!私の意見は聞かないの?」
「だが、どうせ肉なんだろう?」
「それはそうだけど…」
う~ん、こういうところは騎士と一般人だからなのかな?クウィードさんとアルテラさんは肉が好きなようだ。それに、お互いよく知っているからか好みも把握してるみたいだな。ライラさんは…私に合わせてくれたのかな?
「どうかされましたか?」
「いえ、料理が来るのが楽しみですね!」
「ええ」
運ばれてくる間は皆で武器屋や魔道具屋など、店にどのぐらいの頻度で通うか話をしていた。でも、2人とも騎士なのであんまり街の店に来ることはないみたいだ。騎士団への納入は店から騎士団の訓練所に運ばれてくるので、受け取りも店ではないらしい。
「それに、騎士が身に付けられるものも制限があるからな」
「制限?」
「ほら、私たちって基本は魔物と戦うんだけど、場合によっては野盗とも戦うの。だから、そういう時に自由な装備だと見分けがつかなくて困るでしょ?そういうのもあって、装備自体に制限があるのよ」
「なるほど~!そういうことなんですね」
確かに似た姿をされてると、一瞬考えちゃうよね。
「ああ。だから、剣と鎧は少なくとも共通だな。盾は付ける付けないはあるが、これも支給品か自前の場合は、支給品に似せたデザインでないといけないんだ」
「本当に騎士って大変なんですね!」
「こちら注文の品で~す!」
「ありがとうございます」
話をしているといつの間にか料理が出来たみたいで運ばれて来た。
「は~い、まずはお魚が一つとお肉が一つです」
「ではこちらに」
「はい。こちらのお嬢さんとお姉さんですね。残りもすぐにお待ちします」
料理を置いてお姉さんが離れると、私は戻って来るまで待っていた。
「どうした、食べないのか?」
「みんな揃ってからにした方がいいかなって」
「気にすることはございません。それにほら…」
「あっ」
ライラさんがアルテラさんの方を示すと、すでに食べ始めていた。
「全くお前は。ミツキが遠慮しているというのに、もう食べ始めているなんてな」
「しょ、しょうがないでしょ。いつもは来た順じゃない!」
「は~い、お待ちの方。お持ちしましたよ~」
その時、タイミングよくお姉さんが残り2人分の料理を運んできてくれた。
「おっ!俺の分も来たようだな。それじゃあ、食べるか」
「はいっ!」
「ちょっと、まだ話が…」
「ほら、アルテラさんも食べましょう。食事が冷めちゃいますよ?」
「うっ、そうね」
何とか落ち着いたところで、目の前の料理に集中する。運ばれて来たのはお魚とパンに少量のサラダの乗ったワンプレート。そして、隣にはスープだ。お魚にはスパイスらしきものがかかっていることからムニエルのようだ。サラダは普通のカットサラダみたい。特につけるものもなさそうだし、そのままかな?
「まじまじと見てどうした?」
「いや~、街での初めての食事ですからどんなものかと思って」
「そんな大したものじゃないわよ」
「では、いただきます」
私はゴクリと喉を鳴らし、いざお魚へとナイフを向けた。そうか、当然だけど箸はないんだね。
「はい」
「はぁ、また着込まないと…」
ガシャンガシャン
マーテルに着くと、馬車で荷物を預かってくれている御者さんに新居の鍵を渡して玄関の中に運んでおいてもらう。その後は食事も取ってもらうことで、午後からも帯同してもらうのだ。せっかく身軽に成れたと思ったのに…。
「じゃあ、私たちはこっちね。入るわよ」
「はいっ!」
とはいえ、異世界ご飯を待ちきれない私は、元気よくアルテラさんの言葉に返事をして店内に入っていく。中は木造で床は磨かれてはいるものの、シミなども見られ年季の入った建物だということが分かる。
「これは期待できるかも!」
町中華の名店のかほりがする。
「どこを見て言ってるんだ?全く、ミツキの考えていることは分からんな」
「そうよね。普通はレストランに行きたがるものだけど」
「ミツキ様にはいい経験になるかと」
なんだか皆からは温かい目で見られているような気がするけど、それは置いといて私たちは案内されたテーブルに着いた。
「ご注文はなんにします?」
「えっと…」
「ミツキは肉と魚どっちだ?」
「昨日は肉でしたから魚ですかね?」
肉の食べ比べもしてみたかったけど、ここは趣の違う料理を食べてみることにした。
「魚がおひとつですね。他の方は?」
「俺とこいつは肉で。ライラは?」
「私は魚でお願いします」
「ちょっと!私の意見は聞かないの?」
「だが、どうせ肉なんだろう?」
「それはそうだけど…」
う~ん、こういうところは騎士と一般人だからなのかな?クウィードさんとアルテラさんは肉が好きなようだ。それに、お互いよく知っているからか好みも把握してるみたいだな。ライラさんは…私に合わせてくれたのかな?
「どうかされましたか?」
「いえ、料理が来るのが楽しみですね!」
「ええ」
運ばれてくる間は皆で武器屋や魔道具屋など、店にどのぐらいの頻度で通うか話をしていた。でも、2人とも騎士なのであんまり街の店に来ることはないみたいだ。騎士団への納入は店から騎士団の訓練所に運ばれてくるので、受け取りも店ではないらしい。
「それに、騎士が身に付けられるものも制限があるからな」
「制限?」
「ほら、私たちって基本は魔物と戦うんだけど、場合によっては野盗とも戦うの。だから、そういう時に自由な装備だと見分けがつかなくて困るでしょ?そういうのもあって、装備自体に制限があるのよ」
「なるほど~!そういうことなんですね」
確かに似た姿をされてると、一瞬考えちゃうよね。
「ああ。だから、剣と鎧は少なくとも共通だな。盾は付ける付けないはあるが、これも支給品か自前の場合は、支給品に似せたデザインでないといけないんだ」
「本当に騎士って大変なんですね!」
「こちら注文の品で~す!」
「ありがとうございます」
話をしているといつの間にか料理が出来たみたいで運ばれて来た。
「は~い、まずはお魚が一つとお肉が一つです」
「ではこちらに」
「はい。こちらのお嬢さんとお姉さんですね。残りもすぐにお待ちします」
料理を置いてお姉さんが離れると、私は戻って来るまで待っていた。
「どうした、食べないのか?」
「みんな揃ってからにした方がいいかなって」
「気にすることはございません。それにほら…」
「あっ」
ライラさんがアルテラさんの方を示すと、すでに食べ始めていた。
「全くお前は。ミツキが遠慮しているというのに、もう食べ始めているなんてな」
「しょ、しょうがないでしょ。いつもは来た順じゃない!」
「は~い、お待ちの方。お持ちしましたよ~」
その時、タイミングよくお姉さんが残り2人分の料理を運んできてくれた。
「おっ!俺の分も来たようだな。それじゃあ、食べるか」
「はいっ!」
「ちょっと、まだ話が…」
「ほら、アルテラさんも食べましょう。食事が冷めちゃいますよ?」
「うっ、そうね」
何とか落ち着いたところで、目の前の料理に集中する。運ばれて来たのはお魚とパンに少量のサラダの乗ったワンプレート。そして、隣にはスープだ。お魚にはスパイスらしきものがかかっていることからムニエルのようだ。サラダは普通のカットサラダみたい。特につけるものもなさそうだし、そのままかな?
「まじまじと見てどうした?」
「いや~、街での初めての食事ですからどんなものかと思って」
「そんな大したものじゃないわよ」
「では、いただきます」
私はゴクリと喉を鳴らし、いざお魚へとナイフを向けた。そうか、当然だけど箸はないんだね。
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