デュラハンちゃんの旅日記

弓立歩

文字の大きさ
上 下
22 / 32
第1部 3章 新たな住まい

朝ごはん

しおりを挟む
「おはようございます、ミツキ様」

「あっ、おはようライラ。結局寝ちゃったみたい」

「そうですね。戻ってきた時にはおやすみになられていました」

「でも、今度は夢を見なかったなぁ。なんでだろ?」

「夢は人が操れるものではありませんから、次の機会を待ちましょう。思い出したらぜひお聞かせくださいませ」

「はい。あっ、今は何時ぐらいですか?」

 あと2時間で夜明けって聞いていたから、それなりに時間が経ったかな?

「8時でございます。そろそろ朝食をと思いまして」

「そうなんですね。大体この時間ですか?」

「いいえ、遅くとも7時には皆様起きられて食事を取られますね。ただ、ミツキ様はこちらでお仕事をされている訳ではございませんので、お気になさらないでください」

「そ、そうですか…。ちなみに時計ってどこにあるんですか?」

「貴族の邸でしたら邸内に、街中でしたら中央に一つは置いてあります。ここと違って大きい都市でしたら、町の数か所に配置されているはずです」

 なるほど、時計自体は高そうだけど、何とか時間は分かるのか。

「ふ~ん。だけど、それって毎回確認しに行かないといけませんよね?」

「はい。ですから、日中は鐘を鳴らすことが多いですね。朝早くは鳴りませんが、8時から16時までは2時間ごとに鳴ります」

「それなら、簡単に分かりますね。あっ!でも、寝坊しちゃうと何時間もずれちゃう可能性があるのか…」

 それだったら気を付けないとな。そう思っていた私に続けてライラさんが説明してくれる。

「それでしたら、8時は1回鐘が鳴ります。以降は10時に2回、12時には3回と鳴る回数で把握できますよ」

「なんだ、それなら安心ですね!」

 もし寝坊してもそれなら大丈夫だな。いや、寝坊しないと思うけども。

「はい。ですが、私がいる間は起こして差し上げますので、そのような心配は不要ですよ」

「逆にそれだと心配ですね。ライラがいなくなると、毎日寝坊しそうです」

「ふふっ、非番の日であれば起こしに来て差し上げますよ」

「あれっ?ライラは通いなの?」

 てっきりみんなこの邸に住んでいるんだと思っていたけど違うんだ。

「はい。本来はアルテラも通いですよ。ただ、今はミツキ様の護衛ですからお邸に滞在しているだけです」

「そうなんだ。てっきり、騎士の家系だって聞いていたからみんな住んでいるのかと思ってた」

「そうなりますと、このお邸の規模では賄い切れませんね」

「言われてみればそうだね。宿舎とかがあるのかな?」

「はい。見習いや1代限りの者は宿舎に住むことが多いですね。彼女の家は4代続いていますから持ち家がありますが」

「へ~、思ったより色々なパターンがあるんですね。騎士って一概に言えないんですね」

 騎士は騎士でひとまとめかなと思っていたけど、生活ひとつとっても違うんだ。

「はい。1代限りの騎士と続いている家では信頼度も違いますし」

「ライラって騎士の事にも詳しいんだね。メイドさんはみんなそうなの?」

「いえ、昨晩お話しした通り、私も騎士家の出ですから」

「あっ、そっか。じゃあ、クウィードさんたちと同い年だったりするの?」

「私は21歳ですから、あの子たちより2歳年上ですね」

「なら、2人のいいお姉さんだね」

「…そうだったら良いのですが」

 ん?今ちょっと間があったな。自分だけ剣じゃなくて暗殺術を使うから気にしてるのかな?

「さあ、それより朝食にいたしましょう」

「おっと、そうだった。朝も食堂に?」

「どうなさいますか?既に当主様方は済ませておられますが…」

「じゃあ、自室でもいい?」

「かしこまりました。直ぐにお持ちします」

 昨日みたいに豪華な食堂での食事も特別な感じがあっていいけど、さすがに一人だけであんなところを使うのは辛すぎる。そして言葉通り、ライラさんは直ぐに朝食を持って来てくれた。

「早っ!」

「用意は済ませておりましたので」

 この邸の料理人が凄いのか、ライラさんが凄いのか分からないけど、とても早く持って来てくれた。ひょっとして実は科学も結構進んでいるのかもしれない。街に出たらそういうのも一緒に見てみないとな。

「頂きま~す!」

 それはそれとして、私はありがたく朝食をいただく。今日のメニューは野菜にパンとスープだ。言葉にすると少ないけれど、野菜は種類も多いし、上にはチップのようなものもある。スープもわずかに肉が入っているとかではなくて、野菜も肉もバランスよく配されていた。

「ん~、昨日も思ったけど、野菜もスープも美味しい!パンもスープに浸けるなんて新鮮だし」

「おや?ミツキ様の所ではどうやってパンを食べられているのですか?」

「えっ!?それは、普通にそのまま食べるかな?別にこうやって浸さなくても食べられる硬さだし」

「そういうパンがあるのですね。私はまだ見たことがありません」

「あるところにはあるんじゃないんですか?冒険者ギルドがあるぐらいだから商人ギルドとかもあるんですよね?」

「はい、ございます」

「じゃあ、一度そこで調べてもらったらどうですか?きっと、新しい発見がありますよ!」

 私としても今食べているパンがオーソドックスならば、やわらかいパンが街に流通することは大歓迎だ。こっちの方が満腹にはなるけど、やわらかいパンがやっぱり慣れてるしね。それにしても商人ギルドか。すぐには行かないだろうけど、例の金貨の件もあるし、お世話になるのかな?

「ふぅ、ごちそうさまでした」


食事も終わり、少しのんびりしているとドアがノックされた。

「はい」

「俺だ。入るぞ」

「どうぞ」

ドアを開けて入ってきたのはクウィードさんとアルテラさんだった。

「ひょっとして今から街行きですか?」

「ああ、もう準備はいいか?」

「ちょっとだけ待ってくださいね。ライラも一緒に行くことになったので」

「ああ、聞いている。それじゃあ、先に外で待っているから用意が出来たら来てくれ」

「分かりました」

クウィードさんたちが出ていった後、ライラさんと2人で用意ができたことを確認して、私たちは外へと繰り出した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。 最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。 でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。 記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ! 貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。 でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!! このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない! 何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない! だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。 それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!! それでも、今日も関係修復頑張ります!! 5/9から小説になろうでも掲載中

処理中です...