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第1部 3章 新たな住まい
朝ごはん
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「おはようございます、ミツキ様」
「あっ、おはようライラ。結局寝ちゃったみたい」
「そうですね。戻ってきた時にはおやすみになられていました」
「でも、今度は夢を見なかったなぁ。なんでだろ?」
「夢は人が操れるものではありませんから、次の機会を待ちましょう。思い出したらぜひお聞かせくださいませ」
「はい。あっ、今は何時ぐらいですか?」
あと2時間で夜明けって聞いていたから、それなりに時間が経ったかな?
「8時でございます。そろそろ朝食をと思いまして」
「そうなんですね。大体この時間ですか?」
「いいえ、遅くとも7時には皆様起きられて食事を取られますね。ただ、ミツキ様はこちらでお仕事をされている訳ではございませんので、お気になさらないでください」
「そ、そうですか…。ちなみに時計ってどこにあるんですか?」
「貴族の邸でしたら邸内に、街中でしたら中央に一つは置いてあります。ここと違って大きい都市でしたら、町の数か所に配置されているはずです」
なるほど、時計自体は高そうだけど、何とか時間は分かるのか。
「ふ~ん。だけど、それって毎回確認しに行かないといけませんよね?」
「はい。ですから、日中は鐘を鳴らすことが多いですね。朝早くは鳴りませんが、8時から16時までは2時間ごとに鳴ります」
「それなら、簡単に分かりますね。あっ!でも、寝坊しちゃうと何時間もずれちゃう可能性があるのか…」
それだったら気を付けないとな。そう思っていた私に続けてライラさんが説明してくれる。
「それでしたら、8時は1回鐘が鳴ります。以降は10時に2回、12時には3回と鳴る回数で把握できますよ」
「なんだ、それなら安心ですね!」
もし寝坊してもそれなら大丈夫だな。いや、寝坊しないと思うけども。
「はい。ですが、私がいる間は起こして差し上げますので、そのような心配は不要ですよ」
「逆にそれだと心配ですね。ライラがいなくなると、毎日寝坊しそうです」
「ふふっ、非番の日であれば起こしに来て差し上げますよ」
「あれっ?ライラは通いなの?」
てっきりみんなこの邸に住んでいるんだと思っていたけど違うんだ。
「はい。本来はアルテラも通いですよ。ただ、今はミツキ様の護衛ですからお邸に滞在しているだけです」
「そうなんだ。てっきり、騎士の家系だって聞いていたからみんな住んでいるのかと思ってた」
「そうなりますと、このお邸の規模では賄い切れませんね」
「言われてみればそうだね。宿舎とかがあるのかな?」
「はい。見習いや1代限りの者は宿舎に住むことが多いですね。彼女の家は4代続いていますから持ち家がありますが」
「へ~、思ったより色々なパターンがあるんですね。騎士って一概に言えないんですね」
騎士は騎士でひとまとめかなと思っていたけど、生活ひとつとっても違うんだ。
「はい。1代限りの騎士と続いている家では信頼度も違いますし」
「ライラって騎士の事にも詳しいんだね。メイドさんはみんなそうなの?」
「いえ、昨晩お話しした通り、私も騎士家の出ですから」
「あっ、そっか。じゃあ、クウィードさんたちと同い年だったりするの?」
「私は21歳ですから、あの子たちより2歳年上ですね」
「なら、2人のいいお姉さんだね」
「…そうだったら良いのですが」
ん?今ちょっと間があったな。自分だけ剣じゃなくて暗殺術を使うから気にしてるのかな?
「さあ、それより朝食にいたしましょう」
「おっと、そうだった。朝も食堂に?」
「どうなさいますか?既に当主様方は済ませておられますが…」
「じゃあ、自室でもいい?」
「かしこまりました。直ぐにお持ちします」
昨日みたいに豪華な食堂での食事も特別な感じがあっていいけど、さすがに一人だけであんなところを使うのは辛すぎる。そして言葉通り、ライラさんは直ぐに朝食を持って来てくれた。
「早っ!」
「用意は済ませておりましたので」
この邸の料理人が凄いのか、ライラさんが凄いのか分からないけど、とても早く持って来てくれた。ひょっとして実は科学も結構進んでいるのかもしれない。街に出たらそういうのも一緒に見てみないとな。
「頂きま~す!」
それはそれとして、私はありがたく朝食をいただく。今日のメニューは野菜にパンとスープだ。言葉にすると少ないけれど、野菜は種類も多いし、上にはチップのようなものもある。スープもわずかに肉が入っているとかではなくて、野菜も肉もバランスよく配されていた。
「ん~、昨日も思ったけど、野菜もスープも美味しい!パンもスープに浸けるなんて新鮮だし」
「おや?ミツキ様の所ではどうやってパンを食べられているのですか?」
「えっ!?それは、普通にそのまま食べるかな?別にこうやって浸さなくても食べられる硬さだし」
「そういうパンがあるのですね。私はまだ見たことがありません」
「あるところにはあるんじゃないんですか?冒険者ギルドがあるぐらいだから商人ギルドとかもあるんですよね?」
「はい、ございます」
「じゃあ、一度そこで調べてもらったらどうですか?きっと、新しい発見がありますよ!」
私としても今食べているパンがオーソドックスならば、やわらかいパンが街に流通することは大歓迎だ。こっちの方が満腹にはなるけど、やわらかいパンがやっぱり慣れてるしね。それにしても商人ギルドか。すぐには行かないだろうけど、例の金貨の件もあるし、お世話になるのかな?
「ふぅ、ごちそうさまでした」
食事も終わり、少しのんびりしているとドアがノックされた。
「はい」
「俺だ。入るぞ」
「どうぞ」
ドアを開けて入ってきたのはクウィードさんとアルテラさんだった。
「ひょっとして今から街行きですか?」
「ああ、もう準備はいいか?」
「ちょっとだけ待ってくださいね。ライラも一緒に行くことになったので」
「ああ、聞いている。それじゃあ、先に外で待っているから用意が出来たら来てくれ」
「分かりました」
クウィードさんたちが出ていった後、ライラさんと2人で用意ができたことを確認して、私たちは外へと繰り出した。
「あっ、おはようライラ。結局寝ちゃったみたい」
「そうですね。戻ってきた時にはおやすみになられていました」
「でも、今度は夢を見なかったなぁ。なんでだろ?」
「夢は人が操れるものではありませんから、次の機会を待ちましょう。思い出したらぜひお聞かせくださいませ」
「はい。あっ、今は何時ぐらいですか?」
あと2時間で夜明けって聞いていたから、それなりに時間が経ったかな?
「8時でございます。そろそろ朝食をと思いまして」
「そうなんですね。大体この時間ですか?」
「いいえ、遅くとも7時には皆様起きられて食事を取られますね。ただ、ミツキ様はこちらでお仕事をされている訳ではございませんので、お気になさらないでください」
「そ、そうですか…。ちなみに時計ってどこにあるんですか?」
「貴族の邸でしたら邸内に、街中でしたら中央に一つは置いてあります。ここと違って大きい都市でしたら、町の数か所に配置されているはずです」
なるほど、時計自体は高そうだけど、何とか時間は分かるのか。
「ふ~ん。だけど、それって毎回確認しに行かないといけませんよね?」
「はい。ですから、日中は鐘を鳴らすことが多いですね。朝早くは鳴りませんが、8時から16時までは2時間ごとに鳴ります」
「それなら、簡単に分かりますね。あっ!でも、寝坊しちゃうと何時間もずれちゃう可能性があるのか…」
それだったら気を付けないとな。そう思っていた私に続けてライラさんが説明してくれる。
「それでしたら、8時は1回鐘が鳴ります。以降は10時に2回、12時には3回と鳴る回数で把握できますよ」
「なんだ、それなら安心ですね!」
もし寝坊してもそれなら大丈夫だな。いや、寝坊しないと思うけども。
「はい。ですが、私がいる間は起こして差し上げますので、そのような心配は不要ですよ」
「逆にそれだと心配ですね。ライラがいなくなると、毎日寝坊しそうです」
「ふふっ、非番の日であれば起こしに来て差し上げますよ」
「あれっ?ライラは通いなの?」
てっきりみんなこの邸に住んでいるんだと思っていたけど違うんだ。
「はい。本来はアルテラも通いですよ。ただ、今はミツキ様の護衛ですからお邸に滞在しているだけです」
「そうなんだ。てっきり、騎士の家系だって聞いていたからみんな住んでいるのかと思ってた」
「そうなりますと、このお邸の規模では賄い切れませんね」
「言われてみればそうだね。宿舎とかがあるのかな?」
「はい。見習いや1代限りの者は宿舎に住むことが多いですね。彼女の家は4代続いていますから持ち家がありますが」
「へ~、思ったより色々なパターンがあるんですね。騎士って一概に言えないんですね」
騎士は騎士でひとまとめかなと思っていたけど、生活ひとつとっても違うんだ。
「はい。1代限りの騎士と続いている家では信頼度も違いますし」
「ライラって騎士の事にも詳しいんだね。メイドさんはみんなそうなの?」
「いえ、昨晩お話しした通り、私も騎士家の出ですから」
「あっ、そっか。じゃあ、クウィードさんたちと同い年だったりするの?」
「私は21歳ですから、あの子たちより2歳年上ですね」
「なら、2人のいいお姉さんだね」
「…そうだったら良いのですが」
ん?今ちょっと間があったな。自分だけ剣じゃなくて暗殺術を使うから気にしてるのかな?
「さあ、それより朝食にいたしましょう」
「おっと、そうだった。朝も食堂に?」
「どうなさいますか?既に当主様方は済ませておられますが…」
「じゃあ、自室でもいい?」
「かしこまりました。直ぐにお持ちします」
昨日みたいに豪華な食堂での食事も特別な感じがあっていいけど、さすがに一人だけであんなところを使うのは辛すぎる。そして言葉通り、ライラさんは直ぐに朝食を持って来てくれた。
「早っ!」
「用意は済ませておりましたので」
この邸の料理人が凄いのか、ライラさんが凄いのか分からないけど、とても早く持って来てくれた。ひょっとして実は科学も結構進んでいるのかもしれない。街に出たらそういうのも一緒に見てみないとな。
「頂きま~す!」
それはそれとして、私はありがたく朝食をいただく。今日のメニューは野菜にパンとスープだ。言葉にすると少ないけれど、野菜は種類も多いし、上にはチップのようなものもある。スープもわずかに肉が入っているとかではなくて、野菜も肉もバランスよく配されていた。
「ん~、昨日も思ったけど、野菜もスープも美味しい!パンもスープに浸けるなんて新鮮だし」
「おや?ミツキ様の所ではどうやってパンを食べられているのですか?」
「えっ!?それは、普通にそのまま食べるかな?別にこうやって浸さなくても食べられる硬さだし」
「そういうパンがあるのですね。私はまだ見たことがありません」
「あるところにはあるんじゃないんですか?冒険者ギルドがあるぐらいだから商人ギルドとかもあるんですよね?」
「はい、ございます」
「じゃあ、一度そこで調べてもらったらどうですか?きっと、新しい発見がありますよ!」
私としても今食べているパンがオーソドックスならば、やわらかいパンが街に流通することは大歓迎だ。こっちの方が満腹にはなるけど、やわらかいパンがやっぱり慣れてるしね。それにしても商人ギルドか。すぐには行かないだろうけど、例の金貨の件もあるし、お世話になるのかな?
「ふぅ、ごちそうさまでした」
食事も終わり、少しのんびりしているとドアがノックされた。
「はい」
「俺だ。入るぞ」
「どうぞ」
ドアを開けて入ってきたのはクウィードさんとアルテラさんだった。
「ひょっとして今から街行きですか?」
「ああ、もう準備はいいか?」
「ちょっとだけ待ってくださいね。ライラも一緒に行くことになったので」
「ああ、聞いている。それじゃあ、先に外で待っているから用意が出来たら来てくれ」
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