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第1部 3章 新たな住まい
魔道具屋グルコール
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入店前、店に入る前に私はクウィードさんから注意を受けた。
「ミツキ、中ではあまりしゃべるな。特に性能についてはな」
「どうしてですか?」
「お前の属性は珍しいだろう?」
「まあそうみたいですね」
光はそれなりにレア、聖属性はレア。空間属性は超レアと珍しさには事欠かないみたいだ。
「だから、店の人間に知られるとどこに漏れるか分からん。極力、会話も避けろ。どうしても気になる時は構わんが」
「分かりました!」
と、このように注意されていたのだ。なので、さっきも思わず『私にピッタリですね!』と言おうとしたのをぐっとこらえることができた。
「では、こちらの杖ですね。金貨10枚です」
「そ、それなりにするんですね」
色々言われていたので安いのかと思ったら、中々の値段だ。さっきの魔鉄の剣が金貨20枚だから、金属の使われていないこれって高いのでは?
「輝石自体、特定の鉱山でしか取れませんからね。この国にはほぼなくて、これも輸入なんですよ」
「じゃあ、こっちのやつは?」
「輝石付きの普通のものは金貨14枚からです」
「ひぇぇ…」
3分の1も割引されてこの価格だったなんて!武器を買うのも大変だ。
「別に武器なんてそんなものだ。大体、杖なんてそうそう折れるものでもないし、ましな方だぞ?剣は研いでいくと刀身が削れていくから、そのうち新しいのに変えないといけないからな」
「そう言われるとまだましなんですね」
「他にも何か見られますか?」
「ああ、魔道具なんだが…」
「どのようなものをお探しで?」
「この子は見ての通り、さほど力がなくてな。盾を持てといっても持てないだろうから、小型盾程度で構わないのでシールドが張れるようなものはないか?」
「それでしたらこちらに。手前の安いものは特定の属性魔力が必要で、奥にあるのは汎用品です」
「ふむ。こっちは流石に命に直結するし、傷が残ったら大変だからな。良いものにするか」
「ありがとう、ございます」
話せる内容が決まっているので、片言のような返事になりつつもなんとか答えを返す。
「では、こちらは金貨38枚です」
「高っ!?あっ、いえ。なんでもないです…」
「あはは、いいですよ。こちらは杖と違って誰でも付けられますからね。それこそ、後衛職や弓などを使うレンジャー系の人にも好評ですから」
「まあ、防具はな。正直、安売りされると困る。逆に何かあるのかと勘ぐってしまう」
「あっ、クウィードさんはそういう考えなんですね」
剣は敵を倒すもので鎧は命を預けるものだから、そっちの方を重要視してるのかな?
「そりゃあ、直接命に関わるもの。その辺の露店とかあんまり怪しい店で見ないでね」
「そうします」
確かに目に見えないところに傷があったり、綺麗だけど古くて脆くなってたりなんて私じゃ見ても分からないしなぁ。
「後は、身を守るなら効果は薄いですが、このようなアンクレットやネックレスもお勧めですよ」
「ちなみに効果は?」
「こちらのアンクレットが早駆けの守護を。ネックレスは周辺だけですが防壁の効果があります」
「ふむ、どちらも有用だな。併せて買うか」
「い、いいんですか?結構、予算使っちゃうんじゃ…」
「大丈夫ですよ、ミツキ様」
私を気遣うようにライラさんが声をかけてくれる。
「どうせ、支払いはミツキ様ではありませんから」
違った。全然別方向の大丈夫だった。ライラさんって結構気が強いというか、きっぱりと割り切ってるなぁ。
「では、これも頼む」
「かしこまりました。こちらはサービスでお手入れ道具もセットにしておきますね」
「ありがとうございます」
お礼を言って購入したものを包んでもらう。これで、装備も整った。
「さて、後は食器関連と衣類などの布製品だな。いい時間だし、先に昼にしよう」
「もうそんな時間なんですね」
「今日はどこにするの?流石にマーテルは不味いわよね」
「マーテル?」
「私たちや冒険者も来るような店よ」
「あっ!そこがいいです」
そういう店を待ってたんですよ。昨日みたいなコース料理の店はいずれ…って感じで順番が違ってしまったけど、やっぱり普段の食事を知りたい。
「大丈夫か?本当に庶民的なものしかないが…」
「構いません。むしろ、そういう料理こそ欲しかったんです!」
異世界の日常飯。それこそ私が思い描いていた平穏な世界だ。大きな喜びと期待を胸に私たちはマーテルへと向かった。
「ミツキ、中ではあまりしゃべるな。特に性能についてはな」
「どうしてですか?」
「お前の属性は珍しいだろう?」
「まあそうみたいですね」
光はそれなりにレア、聖属性はレア。空間属性は超レアと珍しさには事欠かないみたいだ。
「だから、店の人間に知られるとどこに漏れるか分からん。極力、会話も避けろ。どうしても気になる時は構わんが」
「分かりました!」
と、このように注意されていたのだ。なので、さっきも思わず『私にピッタリですね!』と言おうとしたのをぐっとこらえることができた。
「では、こちらの杖ですね。金貨10枚です」
「そ、それなりにするんですね」
色々言われていたので安いのかと思ったら、中々の値段だ。さっきの魔鉄の剣が金貨20枚だから、金属の使われていないこれって高いのでは?
「輝石自体、特定の鉱山でしか取れませんからね。この国にはほぼなくて、これも輸入なんですよ」
「じゃあ、こっちのやつは?」
「輝石付きの普通のものは金貨14枚からです」
「ひぇぇ…」
3分の1も割引されてこの価格だったなんて!武器を買うのも大変だ。
「別に武器なんてそんなものだ。大体、杖なんてそうそう折れるものでもないし、ましな方だぞ?剣は研いでいくと刀身が削れていくから、そのうち新しいのに変えないといけないからな」
「そう言われるとまだましなんですね」
「他にも何か見られますか?」
「ああ、魔道具なんだが…」
「どのようなものをお探しで?」
「この子は見ての通り、さほど力がなくてな。盾を持てといっても持てないだろうから、小型盾程度で構わないのでシールドが張れるようなものはないか?」
「それでしたらこちらに。手前の安いものは特定の属性魔力が必要で、奥にあるのは汎用品です」
「ふむ。こっちは流石に命に直結するし、傷が残ったら大変だからな。良いものにするか」
「ありがとう、ございます」
話せる内容が決まっているので、片言のような返事になりつつもなんとか答えを返す。
「では、こちらは金貨38枚です」
「高っ!?あっ、いえ。なんでもないです…」
「あはは、いいですよ。こちらは杖と違って誰でも付けられますからね。それこそ、後衛職や弓などを使うレンジャー系の人にも好評ですから」
「まあ、防具はな。正直、安売りされると困る。逆に何かあるのかと勘ぐってしまう」
「あっ、クウィードさんはそういう考えなんですね」
剣は敵を倒すもので鎧は命を預けるものだから、そっちの方を重要視してるのかな?
「そりゃあ、直接命に関わるもの。その辺の露店とかあんまり怪しい店で見ないでね」
「そうします」
確かに目に見えないところに傷があったり、綺麗だけど古くて脆くなってたりなんて私じゃ見ても分からないしなぁ。
「後は、身を守るなら効果は薄いですが、このようなアンクレットやネックレスもお勧めですよ」
「ちなみに効果は?」
「こちらのアンクレットが早駆けの守護を。ネックレスは周辺だけですが防壁の効果があります」
「ふむ、どちらも有用だな。併せて買うか」
「い、いいんですか?結構、予算使っちゃうんじゃ…」
「大丈夫ですよ、ミツキ様」
私を気遣うようにライラさんが声をかけてくれる。
「どうせ、支払いはミツキ様ではありませんから」
違った。全然別方向の大丈夫だった。ライラさんって結構気が強いというか、きっぱりと割り切ってるなぁ。
「では、これも頼む」
「かしこまりました。こちらはサービスでお手入れ道具もセットにしておきますね」
「ありがとうございます」
お礼を言って購入したものを包んでもらう。これで、装備も整った。
「さて、後は食器関連と衣類などの布製品だな。いい時間だし、先に昼にしよう」
「もうそんな時間なんですね」
「今日はどこにするの?流石にマーテルは不味いわよね」
「マーテル?」
「私たちや冒険者も来るような店よ」
「あっ!そこがいいです」
そういう店を待ってたんですよ。昨日みたいなコース料理の店はいずれ…って感じで順番が違ってしまったけど、やっぱり普段の食事を知りたい。
「大丈夫か?本当に庶民的なものしかないが…」
「構いません。むしろ、そういう料理こそ欲しかったんです!」
異世界の日常飯。それこそ私が思い描いていた平穏な世界だ。大きな喜びと期待を胸に私たちはマーテルへと向かった。
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