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第1部 1章 始まりの大地
見習い騎士アルテラ
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村へと歩く間、さすがに不審者扱いは嫌なので兜だけは脱いでおいた。これで少しは警戒心も薄れるだろう。
「うわ~、それにしても綺麗ですね~」
「ねぇ、クウィード。あの子、大丈夫なの?」
「ん?ああ、問題ない。これまで僻地の村に住んでいて、村から出たことがないんだ」
「そうなの?ここからだと、コルネア村かしら?」
「いや、それよりも奥らしい。村にも名前がない位の小規模な集落だ」
「そんなところがあったのね。騎士団でも見回りをしないところがあるなんて…」
「アルテラはまだ見習いだったな。騎士団も頻繁に回らない地域があるし、そういう場所も存在しているんだ。勝手に作られる集落もあるからな」
「そんなところで生活しなくてもいいのに」
「事情があるんだろ。こっちとしてもわざわざ関わり合いになる余裕はないからな」
「やっぱり騎士さんの仕事が忙しいからですか?」
さっきから2人の会話は聞こえていたが、特に気になることがなかったのでスルーしていた。でも、気になる話があったので聞いてみる。
「忙しいというか…ねぇ?」
「人数の関係だ。領主といっても任されているのは町ひとつだ。そこで雇える人数なんて知れている」
アルテラさんが口を濁したのを見て、クウィードさんが答えてくれた。ふぅむ、中々安全な旅は難しいのかな?
「冒険者とかはいないんですか?」
「居るには居るが、冒険者もこっちの受けて欲しいものを受けてくれる訳ではないからな。俺たちが見回りで行くのは大抵、金にならないような地域ばかりだ。実入りも良くないから人数を増やすこともできやしない」
「それでも冒険者たちには感謝しているけれどね」
「どうしてです?」
さっきの話からすると、冒険者は利益追求型で騎士がお金にならない地域の見回りをさせられる原因に聞こえるけど。
「騎士一人補充するのも大変だもの。剣の腕だけじゃなく、身元とか礼儀や町の人との接し方、それに他の貴族が町に来る場合には失礼があってもいけないし」
「じゃあ、なること自体難しそうですね」
「ま、そういうことだ。だが、お前は見込みがあるな」
「えっ!?」
一瞬、アルテラさんが驚いた顔をする。私への評価が垣間見える瞬間だ。
「今話している間だけでもそれなりに礼儀正しいし、揉め事も起こしそうにない。後は冒険者として少し経験を積んで、街の人に馴染めば可能だろう」
「ちょっと、そんなこと勝手に言っていいの?」
「今はどこも人材不足だからな。それはお前も分かってるだろ?」
「それはそうだけど…」
何かアルテラさんには引っかかる要素があるみたいだ。私が思っている以上に、それだけ選抜が難しい職業なのかもしれない。
「さっきも人数の関係って言ってましたけど、人が足りないんですか?」
「足りない訳じゃないんだが、騎士になるにはさっき言ったように条件が多いからな。じゃあ、信用が置ける人間となると、ある程度年を経た引退冒険者って形も多いんだ。30歳過ぎから騎士になられても実際に最前線に出られる年数は5、6年止まりだ。もっと若手も志願して欲しいんだがな…」
う~ん、条件を満たす時には全盛期じゃないのかぁ。それは辛いよね。私なら何年でも全盛期だけど!
「そうなのよ。だから、私たちは騎士団の中でも大事にされているのよ。私も早くその期待に応えたいんだけどね」
「焦るなって。アルテラは俺より剣を握ったのも遅いんだから」
「そうは言うけど、同期なのに私はまだ見習いなのよ?」
「簡単に追いつかれると俺が困る」
「どうしてよ。私の腕が上がる方がいいでしょ?」
「…」
さっきから違和感があるんだけど、この二人仲いいよなぁ。騎士と騎士見習って身分に差はあるのに、こういうものなのかな?
「ん?どうしたんだ」
「お二人って仲が良いなって思いまして」
「そ、そう?」
「まあ、小さい頃からの知り合いだからな。お前より小さい時からの知り合いだ」
「私はそれなりに大きいですよ!」
歳は分からないけど、155cmぐらいってそこまで小さくないよね?でも、こっちじゃ小さい可能性もあるか。
「そういえば、ミツキちゃんは何歳なの?私とこいつは19歳だけど」
「えっ、えっと…よ、よくは覚えていないんです。ほら!村とかだと日付もあいまいで」
ここで村出身という設定を使い押していく。というか、まだ鏡で自分を見てないから見た目年齢すら分からないし。
「そういうものなの?この先の村も細かい日付は分からなくても、収穫の時期とかで大体分かるのに」
「細かいことは気にしないところなんだよな」
「そう!そうなんです!私も年齢ぐらい知っておきたいんですけどね~」
さも興味あるかのように言ってごまかす。まあ、これからの生活を思えば、歳は決めときたいよね。
「ふ~ん、それだけいい加減なら今ここで決めちゃえばいいんじゃない?もし、こいつの言葉を鵜呑みにして冒険者に成るにしても年齢は確認されるわよ?」
「そうなんですね。それじゃあ、じゅうろ…14歳にします」
「まあ、それぐらいよね」
一度16歳ぐらいにしようかなと言おうとしたけれど、2人の目を見て辞めた。明らかにお前そんな年じゃないだろうって目をしていたから。これはちょっと後で姿を確認しておこう。
「うわ~、それにしても綺麗ですね~」
「ねぇ、クウィード。あの子、大丈夫なの?」
「ん?ああ、問題ない。これまで僻地の村に住んでいて、村から出たことがないんだ」
「そうなの?ここからだと、コルネア村かしら?」
「いや、それよりも奥らしい。村にも名前がない位の小規模な集落だ」
「そんなところがあったのね。騎士団でも見回りをしないところがあるなんて…」
「アルテラはまだ見習いだったな。騎士団も頻繁に回らない地域があるし、そういう場所も存在しているんだ。勝手に作られる集落もあるからな」
「そんなところで生活しなくてもいいのに」
「事情があるんだろ。こっちとしてもわざわざ関わり合いになる余裕はないからな」
「やっぱり騎士さんの仕事が忙しいからですか?」
さっきから2人の会話は聞こえていたが、特に気になることがなかったのでスルーしていた。でも、気になる話があったので聞いてみる。
「忙しいというか…ねぇ?」
「人数の関係だ。領主といっても任されているのは町ひとつだ。そこで雇える人数なんて知れている」
アルテラさんが口を濁したのを見て、クウィードさんが答えてくれた。ふぅむ、中々安全な旅は難しいのかな?
「冒険者とかはいないんですか?」
「居るには居るが、冒険者もこっちの受けて欲しいものを受けてくれる訳ではないからな。俺たちが見回りで行くのは大抵、金にならないような地域ばかりだ。実入りも良くないから人数を増やすこともできやしない」
「それでも冒険者たちには感謝しているけれどね」
「どうしてです?」
さっきの話からすると、冒険者は利益追求型で騎士がお金にならない地域の見回りをさせられる原因に聞こえるけど。
「騎士一人補充するのも大変だもの。剣の腕だけじゃなく、身元とか礼儀や町の人との接し方、それに他の貴族が町に来る場合には失礼があってもいけないし」
「じゃあ、なること自体難しそうですね」
「ま、そういうことだ。だが、お前は見込みがあるな」
「えっ!?」
一瞬、アルテラさんが驚いた顔をする。私への評価が垣間見える瞬間だ。
「今話している間だけでもそれなりに礼儀正しいし、揉め事も起こしそうにない。後は冒険者として少し経験を積んで、街の人に馴染めば可能だろう」
「ちょっと、そんなこと勝手に言っていいの?」
「今はどこも人材不足だからな。それはお前も分かってるだろ?」
「それはそうだけど…」
何かアルテラさんには引っかかる要素があるみたいだ。私が思っている以上に、それだけ選抜が難しい職業なのかもしれない。
「さっきも人数の関係って言ってましたけど、人が足りないんですか?」
「足りない訳じゃないんだが、騎士になるにはさっき言ったように条件が多いからな。じゃあ、信用が置ける人間となると、ある程度年を経た引退冒険者って形も多いんだ。30歳過ぎから騎士になられても実際に最前線に出られる年数は5、6年止まりだ。もっと若手も志願して欲しいんだがな…」
う~ん、条件を満たす時には全盛期じゃないのかぁ。それは辛いよね。私なら何年でも全盛期だけど!
「そうなのよ。だから、私たちは騎士団の中でも大事にされているのよ。私も早くその期待に応えたいんだけどね」
「焦るなって。アルテラは俺より剣を握ったのも遅いんだから」
「そうは言うけど、同期なのに私はまだ見習いなのよ?」
「簡単に追いつかれると俺が困る」
「どうしてよ。私の腕が上がる方がいいでしょ?」
「…」
さっきから違和感があるんだけど、この二人仲いいよなぁ。騎士と騎士見習って身分に差はあるのに、こういうものなのかな?
「ん?どうしたんだ」
「お二人って仲が良いなって思いまして」
「そ、そう?」
「まあ、小さい頃からの知り合いだからな。お前より小さい時からの知り合いだ」
「私はそれなりに大きいですよ!」
歳は分からないけど、155cmぐらいってそこまで小さくないよね?でも、こっちじゃ小さい可能性もあるか。
「そういえば、ミツキちゃんは何歳なの?私とこいつは19歳だけど」
「えっ、えっと…よ、よくは覚えていないんです。ほら!村とかだと日付もあいまいで」
ここで村出身という設定を使い押していく。というか、まだ鏡で自分を見てないから見た目年齢すら分からないし。
「そういうものなの?この先の村も細かい日付は分からなくても、収穫の時期とかで大体分かるのに」
「細かいことは気にしないところなんだよな」
「そう!そうなんです!私も年齢ぐらい知っておきたいんですけどね~」
さも興味あるかのように言ってごまかす。まあ、これからの生活を思えば、歳は決めときたいよね。
「ふ~ん、それだけいい加減なら今ここで決めちゃえばいいんじゃない?もし、こいつの言葉を鵜呑みにして冒険者に成るにしても年齢は確認されるわよ?」
「そうなんですね。それじゃあ、じゅうろ…14歳にします」
「まあ、それぐらいよね」
一度16歳ぐらいにしようかなと言おうとしたけれど、2人の目を見て辞めた。明らかにお前そんな年じゃないだろうって目をしていたから。これはちょっと後で姿を確認しておこう。
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