デュラハンちゃんの旅日記

弓立歩

文字の大きさ
上 下
7 / 32
第1部 1章 始まりの大地

新たなる騎士

しおりを挟む
「だ、誰かいるのか?」

「あれ?人間のお客さんだ」

 だけど、ガイエルとは声質が違う。一体誰が来たんだろう?

「あの~、どなたですか?」

「女の声?ひょっとしてあんたがリスティルか?」

「そうですけど…よく名前が分かりましたね」

 私の名前なんてガイエル以外知らないはずなのに。ひょっとしてこの人はエスパー?

「俺は爺さん…ガイエル様の知り合いだ」

「ガイエルの?ひょっとして何か持って来てくれたの?」

 エスパーではなかったか。でも、ガイエルの知り合いだなんて彼に何かあったんだろうか?

「いや、俺は使いで来たんだ。昔、あんたと町に行く約束をしたんだってな」

「う、うん。そうだけど…」

 何だか、この騎士の話が良く解らない。まるですごく昔の話のような表現だ。

「一応事情は聴いているが、あんた本当にデュラハンなのか?俺には人間にしか見えないが…」

 今日やってきた騎士はガイエルから話を聞いているのか、暗闇対策にランプを手にしている。なので、私がデュラハンだと一目瞭然のはずだけど…。

「あっ、今日は人間の姿だった。ちょっと待ってね。その前にライト!」

 この真っ暗闇の空間で手持ちのランプでは足を取られると思い、光で辺りを照らす。

「うわっ!?血、血まみれ!」

「あっ、これはさっきまでワニさんを解体していたから…」

剣は全く使えなかったけど、ナイフぐらいなら人間の姿でも使えるのでそのままだったからなぁ。あっちじゃ適当に切っても血は飛ばないし、オートで浄化がかかるから鎧も汚れないんだよね。

「これはケイブクロコダイル!?よく無事だったな」

「そんなに強い魔物かな?別に人間形態でも簡単に倒せるけど」

 大体、光の入らないこの空間ではちょっと照らすだけで魔物はひるむし、光の重圧魔法のライトクラッシュで一確なんだけどなぁ。

「Cランクの魔物の中でも物理寄りでかなり強いんだがな。まあいい。それで、ガイエル様に代わって俺が街に連れていくことになったんだが、大丈夫か?」

「本当!?やった~!!ようやく行けるんだ。ずっと前から準備してて良かった~」

 私は小躍りするようにぴょんぴょん跳びはねる。まあ実際は、鎧は重いし人間だと力はないしで、ガシャンガシャンだったけど。

「そんなに前から準備してたのか?」

「具体的に言うと、ガイエルが来なくなって直ぐぐらい?」

 なんてったって、引きこもりの私には時間だけはいっぱいあるからね!寿命も気にしなくていいし。

「そ、そうか。まあ、準備ができているなら行くか?」

「うん!あっ、それで私がデュラハンだってことは秘密なんだよね?」

 一応だけど確認する。まさか、魔族と人間が共同生活してたりしないよね?ガイエルの言葉からもそういう感じだったし。

「当然だ。お前も昔、ガイエル様が世話になった人の孫ということになっている」

「そっか~、孫?」

 せいぜい、娘ぐらいだと思うんだけど…。

「詳しい話は後だ。あまり時間がなくてな」

「そうなんだ。分かった」

 どうやら、ここに来たのも事情があるみたいだし、私は最後にぐるりと空洞の中を見渡す。

「う~ん。ここにはこれまでお世話になったなぁ。ありがとう」

 私は最後に一礼して、騎士の方に向き直った。

「もういいか?」

「うん。ところであなたの名前は?」

「おっと、まだ言ってなかったな。俺の名前はクウィ―ドだ」

「そっか、よろしくね。クウィード!」

「ああ」


 クウィードの案内で空洞を出た私は、未知なる場所へと進んでいく。でも、進んでいくたびにこの先どんな光景が広がっているのかとドキドキとワクワクが止まらない。

「こんなことならもっと早くに出ておくべきだったかな?」

「何か言ったか?」

「ううん。何でもないよ。それより、メルキスの町へ行こう!」

「町の名前までよく覚えていたな」

「ずっと楽しみにしてたからね!」

 いよいよ、憧れの異世界の町に行ける楽しみで私はウキウキだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

処理中です...