デュラハンちゃんの旅日記

弓立歩

文字の大きさ
上 下
4 / 32
第1部 1章 始まりの大地

修行と出会い

しおりを挟む
「はっ!やっ!せいっ!マジックドレイン!ふぅ…少し休もう」

 あれからどれぐらいの時間が経ったのだろう。少なくとも数年は経ったはずだ。私は今日も洞窟の奥で剣を振るっている。途中からは魔法も覚えて使えるようになった。あれから分かったことといえば、私のいるところは空洞になっているらしく、壁は塞がって魔物すら来ないということだ。言ってみれば疑似的な安全空間という訳だ。そんな中、今日も特にやることがない私は新たなことにチャレンジしてみる。

「デュラハンは一応騎士だし他にもやってみようかな?えいや!」

 その辺の岩を削り出し、槍に見立てると練習を始める。

「おおっ!?槍も中々使えるんじゃない?ひょっとして、騎士が使えそうなものだったら全部いけるのかも?」

 そう思った私はそれ以来、剣の外にも槍・体術・短剣の練習をした。素材は石だけどね。ただ、頭を片手で持つのがデフォルトなせいか、盾や弓を扱うことはできなかった。弓の方は弦に出来そうなものもなかったし、両手が使えないから構えられないと気付いた。まあ、盾に関しては左腕に括り付けるタイプならいけそうだけどね。

「結局使えるのは片手で使える武器だけか~。まあ、絞ってやればいい訳だし構わないよね。でも、体術はともかく槍はな~」

 片手でも体術は使えるのだけど、槍は重たい。いや、魔族だから簡単に振れるけど相手も魔族だったりするとどうしても力負けするだろうな。それに片手でぶんぶん振り回すと勢いを止めるのが難しいから扱い辛いんだよね。

「サブウェポンというか、何かに騎乗することになった時に見栄えがいいからそれぐらいにはできるようにすればいっか!」

 メインは全力で使える剣と体術に絞って、さらに訓練を繰り返す。そして、ちょっと疲れてきたら魔法の訓練に移る。

「魔法も闇や影に水と氷の他にもちょっとだけ光が使えるんだよね~。魔族が光なんてちょっとびっくりしたけど、聖属性以外は魔族でも使えるみたい」

 女神様知識によると、聖属性と光属性は別物で魔族でも使えるのが光らしい。反対に闇属性は魔族にしか使えないとのことだ。ちょっと不思議。

「ということは光属性にも相反する属性があるのかな?」

 データベース化した記憶にアクセスする。

「ん~、これかな?光の反対は…空間!?くそ~、そっちの方が良かったかも!」

 でも、よくよく考えれば空間なんて便利そうな魔法、転生ポイントを多く使いそうだ。取得できていたところで、使いこなせないかもしれない。

「魔力も力とか速さほどはないしね。ただ、バランス型って気はするな」

 おそらくステータスで一番高いのが体力で次は力。それに続いて速さで、最後が魔力っぽい。まあ、ステータスがどう分かれてるのかもわからないけどね。

「それはともかく、今日も頑張るぞ~!」

 ボガン

 そう力強く宣言したところに大きな音が鳴り響いた。

「な、なにっ!?」

 どうやら何者かが壁を壊して入ってきたらしい。私は警戒して岩陰に隠れた。

「人間だといいな~。やっぱり、初めての異世界での邂逅かいこうだし」

 ほぼ真っ暗闇の空間で修業に明け暮れていた訓練中に、爆音が近くで鳴り響いた。今日はいよいよこの世界に来て初めての生物に出会えるようだ。胸を高鳴らせ、私はどんな生き物がやってくるかじっと待つ。

「なんか緊張してきたな~。挨拶ってどうやってたっけ?こんにちは?それとも、もうここは私の家みたいなものだし、ようこそ!とかの方がいいのかな?」

 そんなことをのん気に考えていると、再び爆発音が鳴って壁の一部分が崩れた。


「ふぅ~!結局ここはどこなんだ?迷って色々歩いたが。一応開けたところには出られたか…」

 おおっ!なんか騎士風の男の人が現れた!第一村人…いや、第一騎士発見!ここはそーっと近づいて…。ん?でも何か忘れているような?

 ジャリ

「あっ」

 普段は静かに歩ける私だけど、緊張してつい足音を立ててしまった。

「誰だ!」

「あっ、驚かないでください。私は…」

 そういえば、転生してからずっと一人だったから名前がない。前世の名前は人間の時に使いたいし、何がいいかな?

「リ、リスティル!私の名前はリスティルです!!」

 高速で考えた結果、私は浮かんだ名前の中からこれだ!とピックアップした名前を口にする。

「そうか、こんなところに人がいると思わなかったからびっくりしたぞ」

「そ、そうですよね~。私も実はここで人に会うのって初めてで…」

 まあ、正確に言うとこの世界で生物に会うこと自体が初めてなのだが。

「しかし、こんな真っ暗闇では何も見えんな。火の魔法か何か使えないか?」

「あっ、それならちょっと苦手ですけど、光の魔法を使って照らしますね。ライト!」

 私は訓練していた時の格好のまま、ライトの魔法で辺りを照らした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

処理中です...