六つの魔弾

弓立歩

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王城にて

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「それでは、カイ様はこことは違う場所から来られたのですか?」

「ああ、多分。俺のいたところはもっと文明が発達していたし、魔道具?なんてものはなかった」

「魔道具がないなんて不便ですわね。夜などはどうしているのですか?真っ暗でしょう」

「え?そりゃあ、電灯とかで普通に明るいけど?」

「デントウ?」

「う~ん、さっき話を聞いた限りじゃ、こっちには魔法があるみたいだし、歴史の進み方が違うのかな?」

「何やら、難しい技術なのですね。そちらのジュウとやらもそうなのですか?」

「ああ、とはいってもこれはおもちゃなんだけどな」

「おもちゃ!?そのように威力のあるものがですか?」

「ああ、誤解させた。本来はって意味。元々は俺みたいな一般人が使うおもちゃなんだ。ただ、さっき撃ったみたいにこっちじゃなぜか威力も桁外れだけどな」

今俺は馬車に乗り込んでシェルフィーナの質問に答えている。シェルフィーナというのはミスティと呼ばれていた女騎士の主…すなわちお姫様の名前だ。

「なるほど。事情は私もよくわかりませんが、こちらに転移される時に何か変化があったと」

「そうみたいだ。今でも信じられないけどな。さっきも、試し撃ちをしたけど俺が一番びっくりしてる」

そう、馬車に乗り込む時にバスタータイガーを倒した一撃がどの程度なのか。そして、まだ使えるのかを確認するために俺は林の近くにあった木に向けて愛銃を放ったのだった。結果は木の中心をえぐり取り、次の木で止まった。貫通力こそある程度ではあるものの、その殺傷力は元となった銃よりはるかに優れていた。

「俺にも一体どうなってるのかわからないんだが、なんとかこれからのことを頼むよ。シェルフィーナ」

「お任せくださいませ!私を救ってくださった恩人ですもの、悪いようには致しませんわ。そちらの銃でしたか?それに関しても、王城のものを使って調査致します」

「頼むよ。あっ、でも、解体とかは…」

「分かっております。本人でも確認が取れていない技術ですから。できるだけ立ち合いもさせていただきます」

ほっ

シェルフィーナが話の分かるお姫様でよかった。そのまま、1時間半ほどで馬車は止まった。


「ん?どうしたんだ」

「もう、王都に着いたみたいですわ」

「案外早いんだな」

「先程のような襲撃があっても困りますし、ミスティも急いだのでしょう」

「そういえば、お姫様だってのにシェルフィーナには護衛が少ないよな。何かあるのか?」

「それも王城に着きましたらお話しさせていただきます。このような場所では言えないことも多くて…」

「分かったよ。どうせ、少し待つだけだしな」

「ありがとうございます」

「姫様、手続きをしてまいります。直ぐに戻りますので」

「ええ、頼むわ」

窓からちらっと見ると王都には立派な城壁があり、門もがっしりしていた。その横にも少し小さい門があり、手続きが済むと俺たちはそっちから入っていった。

「あっちの門とこっちは何か違うのか?」

「こちらは貴族や王族など特定の人間だけが利用できる門ですわ。あちらは一般向けの門です」

「なるほど、空いている訳だ」

そのまましばらく馬車が進むと。再び止まった。

「止まれ!この馬車は損傷がひどいようだが?」

「紋章が見えないのか?直ぐに通せ!」

「お、王家の紋…失礼いたしました!」

「入るぞ」

ミスティがそのまま馬車を操り城の中に入っていく。


「姫様、到着致しました」

「ミスティ、カイ様を」

「はっ!」

俺はミスティに手を引かれて馬車から降りる。その後に続いてシェルフィーナも降りてきた。

「では、報告に行きましょうか」

「ああ」

馬車から降りた俺たちは王城へと進んでいく。シェルフィーナは流石王族という歩き方で優雅に進み、兵士たちも身分を分かっているのだろう。直ぐに左右に引いて道を開ける。

「おや?シェルフィール様、もう戻られたのですか?」

「ええ。その件でお父様…国王陛下に話があります。急いで取次ぎを」

「かしこまりました。…そちらの男性は?」

「その件についても説明します。その前に着替えが必要ですので客間を」

「かしこまりました」

シェルフィーナに話しかけた男が手を挙げると侍女が2人、俺の前にやってきた。

「客間に案内して、着替えを手伝いなさい」

「「はい」」

「では、後ほど…」

「あっ」

声をかけようとするが、そのままシェルフィーナたちは行ってしまった。俺は仕方なく、2人の侍女に案内されて部屋に入る。

「では、着替えの前に入浴を…」

「あ、いや、風呂はさっき…」

「いえ、ところどころに草が付いております」

そういえば、草原にいた時に慌てて一度転んだんだったな。

「分かった。風呂はどこの部屋だ?」

「こちらになります。着替えもすぐに用意いたします。セレン」

「はい」

侍女が1人出ていって、俺は浴室に案内された。

「直ぐに水を張ります。ウォーター」

侍女は手のひらから水を出すと、今度は浴槽の横にある石に手を振れた。

「何してるんだ?」

「こちらの魔石で先程の水をお湯に変えているのです。私は水の魔法しか使えませんから」

「魔法ねぇ…」

「何か?」

「いや、それより風呂着替えは出たところにでも置いてくれ。パッと取り込むから」

「?」

「??」

「お体を洗わせていただきますので、どうぞご準備を」

「はっ?いやいや、体ぐらい自分で洗えるって…」

「そうは参りません。王女殿下のお客様にそのような無作法をしたとあっては、我々が困ります」

「うっ」

この侍女は引き下がる気はないらしい。かといって、俺も裸を見られたいという訳でもないし…。

「どうしました。まだ、ご入浴ではないようですが?」

「ああ、いや。その…俺の住んでいたところはひとりで風呂に入っていたんだ。俺は平民だしな」

「そうでしたか。ですが、お客様は王女殿下の客人です。どうかご辛抱を」

そう言われてはこれ以上抵抗することはできず、俺は2人の美女と共に風呂に入ることになったのだった。


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