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本編

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「準決勝第2回戦…始め!」

いよいよカイラスとギルバート殿の戦いが始まった。しかし、現時点では俺にはギルバート殿の実力が分からない。これまでの対戦相手には難なく勝ってしまったため、剣筋を読むところまでいかないのだ。

「頑張れよカイラス」

勝てとは言えない。相手はこの国一番の剣士。それも普段から目にすることもある両者だ。消耗具合からいってもカイラスは不利だろう。だが、そんなことであきらめるようなやつではない。きっと、何かするはずだ。


「カイラスよ。こうして戦うのは初めてだな」

「そうですね。しかし、こちらも負けられませんので遠慮はいりませんよ」

「そうだな。特に決勝に上がることも優勝することも未練はないが、ガーランドと戦えぬことはつまらんからな」

「俺が気合が入っていた理由も分かったでしょう?」

「急にやる気が出たと思っていたが、あれを見せられればな。では、行くぞ!」

団長が剣を振りかぶってくる。まずはこの一撃を受けてみないことには対応できない。

「はっ!」

ギィン

金属音がして互いの剣がぶつかり合う。重い…。カール副団長と技術で並びながら、なお重たいとは。

「しかし!」

キィン、キン

たがいに剣をぶつけ合いながら間合いを取っていく。だが、間合い自体は俺の方がやや外にあるようだ。これを生かすしかないが…。

「ほう?そこがお前の間合いか。珍しい位置だがそれならば!」

突進するような勢いで一気に距離を詰められる。再度間を開こうと下がるがそこに薙ぎ払いが入る。

「ちっ」

両手で受けながら衝撃を生かしてさらに距離を開ける。こちらとしても間合いの外だがあれだけ一足で詰められてはこれぐらいの方がいいかもしれない。

「中々の判断だが、現状でそれは大丈夫か?体力も完全ではないというのに」

――痛いところを突かれる。確かに俺はカール副団長との戦いの疲れがまだとれていない。このままでは体力差が出てしまうだろう。しかし、うかつに飛び込んでしまっては相手の間合いに入ってしまう。……。

チャキ

剣を縦に構えて呼吸を整える。突きの構えに切り替え僅かずつだが間合いを詰めていく。戦いを長引かせてはいけない。ガーランドとガイザル殿の戦いも見事ではあったが、長期戦になっていない。このまま時間を使って突破口を切り開き運よく勝ったとしても、決勝では満足に戦えないだろう。

「覚悟を決めたか。では…」

団長の構えも切り替わる。いつも手合わせの時に見せない構えだ。これが剣豪ギルバートの本気か…。

「せぇぇぇぇい!」

「はあっ!」

ガーランドが先ほど放った華麗な突きではなく荒々しく鋭い突きを繰り出す。二の次などない最速最大の威力で。

キィィィィン

カイラスの突きに合わせるように繰り出されたギルバートの攻撃は振り上げ…つまり居合だった。2つの剣が交差した結果は…。

「折れたか…」

「どうする?」

「ふっ、これでもまだといいたいところですが、不意打ちでもなければ体術では一撃も入れられないでしょう」

「…カイラス、武器破損及び戦闘継続意思なしとして勝者ギルバート!」

ワアァァァァァッー

審判の宣言とともに会場が盛り上がる。会場の一部ではカイラスを応援していた令嬢などが肩を落としている。彼女たちには悪いがもともと条件の悪かった勝負だ。しかし、カイラスもびっくりしていたがまさか剣を折られるとは。
このトーナメントはただ武を競うだけでではない。王国の剣士の質の高さを示すためでもあり基本武器は持ち込まれる。カイラスだって愛用している剣だったはずだ。それがここまでの戦いで折れるというのは何とも激しくもあり予想外だっただろう。

「お前はよく頑張ってくれたな」

ポンポンと愛用の剣をたたいて褒めてやる。先ほどの一撃以上に衝撃でいえば俺の剣の方が大きかっただろう。その衝撃に耐えてくれた剣にも感謝しないとな。

「残念だったなカイラス」

「そう思うならすんなりいかせていただきたかったですな」

「お前はまだ何年先も戦えるだろう。ここは先人に譲っておくということだ」

「御武運を」

「ああ」

会場にいる二人のうちカイラスだけが控室へと向かう。決勝までは休憩がない。間にこれまでのダイジェストの説明が入るものの、ここで会場にて椅子が用意されそれを待つ形だ。俺も呼ばれたので会場へと向かう。自分が会場に出るだけで歓声が上がる。それがどうにもしっくりこないと感じつつも会場に出て座った。

「いよいよだな」

「ええ、よろしくお願いします」

「こちらこそだ」

剣士ならば一度は夢見た舞台に俺は上がったのだった。

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