42 / 56
本編
42
しおりを挟む
騎士団戦が始まったと思われる歓声を聞く。やはりそこは武を志すもの、一目見ようと控室からも見物する。しかし、戦いはあっけなく終わってしまった。猛将ガイザル殿の威風に開幕から動揺していた警備隊員はその剛腕からの一撃を防ぎきれず、吹き飛ばされ戦意を失ってしまったのだ。あまりの実力差にあいつも数日は苦しむだろう。
「あれが、猛将の剣か…」
「どうしたガーランド?ビビったのか?」
「いえ、ガイザル殿の本気の一撃はどれぐらい重いのかなと」
純粋な興味だった。ギルバート殿は類まれな技量を誇るものの、あれほどの一撃は放てないだろう。一撃の重さといえば彼こそが王国ではNo1だろう。
「相変わらずおかしな奴だな。俺なら絶対受けたくないね」
そう話をしている間にも2回戦の為、警備隊員が試合場へと向かう。入れ替わりに1回戦の敗者がここへと来る。
「どうだった?」
「だめだ、あれは重すぎる。力じゃ全くかなわん」
そういう彼も、体格には自信があり、隊でも力がある方だ。ならば、受け止めるにせよ今から何か考えておかないとな。再び歓声が上がる。どうやら2回戦が始まったようだ。第2騎士団副隊長も隊長のガイザル殿と同じく剛剣を使う。しかし、体格的には一回り以上小さくどちらかというと騎士団長殿に似ている。とはいえさすがに相手の警備隊員では実力不足のようだ。剣をかわしそのまま剣を弾かれる。そして、がっくりと警備隊員がうなだれる。
「そこまで!」
審判員が勝負の終わりを宣言して、2回戦は終了した。
「いよいよだな、ガーランド」
「そうですね」
「頑張ってくださいよ先輩!」
「女にいいとこ見せろよ」
「できる限りのことはする」
そう言って俺は試合場へと足を向けた。そして、両者の姿が見えると歓声が沸く。みんながどれだけこの騎士団戦に期待しているかが分かる。その分は楽しませないとな。そう思って相手を見る。
「よろしくな。ガーランドだったか?」
「はい、胸を借りるつもりで戦います」
第4騎士団団長ゼノ。補給メインの第4騎士団に置いて、最も腕が立つといわれる方だ。剣だけでなく補給作戦などの立案も得意で、将来はどこかの領に婿入りするのではないかともうわさされている。
「両者礼…始め!」
審判の合図とともに試合が開始される。俺はもちろん剣を使う。相手のゼノ隊長はどうやら剣と短剣らしい。2刀流という程でもない短剣をどのように使うかを気にかけないとな。
「行くぞっ!」
ゼノが一気に間を詰めてくる。それを簡単に剣でかわす。あまりの大ぶりだったが左半身の動きが妙だったのですぐに剣を引き、短剣に備える。
「…ほう、初出場といっていたがなかなか頭が回るようだな」
「お褒めに頂き光栄です」
「隊長ーさっさと倒してください!」
「ゼノ様ー」
普段からパレードでも顔を見せるゼノの人気はかなりあるようだ。
「人気者ですね」
「騎士には不要だ。いくぞ!」
再度、ゼノが切り込んでくる。先ほどよりはるかに鋭い。しかし、防げる範囲だと慌てず対処する。短剣があるうちはあえて手を出さず隙を見る。そうして優位を示せばいい。
「はっ!」
「せぇい!」
何度も剣が交差するがお互い決定打にはなりえない。第4騎士団の団員たちも俺の腕がそこそこ立つようだと分かったのだろう。真剣な表情で見るものも出だした。
「なかなかどうして、やるものだな」
「それはお互い様です」
「ほざくなよ!」
一瞬今までより鋭い切降ろしが俺を襲う。ここだっ!剣を動かす。反撃に出るのではなく、迎撃するために―。
降ろされた剣を最小限の動きでかわすと、次に来るであろう短剣での一撃に備える。予想通り、片手で剣を持ったゼノは左手で短剣を突き出してくる。そこに合わせるように剣の腹を向ける。
ギィン
金属同士が鈍くぶつかる音を立てた。
「いけたと思ったんだがな…」
「こっちもあれで短剣を落とすと思ったんですが」
「気に入らんな」
それ以降も決め手に欠いた戦いとなる。まあ、ここまですれば面目もたったかな。そう思っているとふいに声がした。
「旦那様、頑張って、勝ってください!!」
一瞬目を向けると、そこにはかわいい婚約者、ティアナの顔があった。
「あれが、猛将の剣か…」
「どうしたガーランド?ビビったのか?」
「いえ、ガイザル殿の本気の一撃はどれぐらい重いのかなと」
純粋な興味だった。ギルバート殿は類まれな技量を誇るものの、あれほどの一撃は放てないだろう。一撃の重さといえば彼こそが王国ではNo1だろう。
「相変わらずおかしな奴だな。俺なら絶対受けたくないね」
そう話をしている間にも2回戦の為、警備隊員が試合場へと向かう。入れ替わりに1回戦の敗者がここへと来る。
「どうだった?」
「だめだ、あれは重すぎる。力じゃ全くかなわん」
そういう彼も、体格には自信があり、隊でも力がある方だ。ならば、受け止めるにせよ今から何か考えておかないとな。再び歓声が上がる。どうやら2回戦が始まったようだ。第2騎士団副隊長も隊長のガイザル殿と同じく剛剣を使う。しかし、体格的には一回り以上小さくどちらかというと騎士団長殿に似ている。とはいえさすがに相手の警備隊員では実力不足のようだ。剣をかわしそのまま剣を弾かれる。そして、がっくりと警備隊員がうなだれる。
「そこまで!」
審判員が勝負の終わりを宣言して、2回戦は終了した。
「いよいよだな、ガーランド」
「そうですね」
「頑張ってくださいよ先輩!」
「女にいいとこ見せろよ」
「できる限りのことはする」
そう言って俺は試合場へと足を向けた。そして、両者の姿が見えると歓声が沸く。みんながどれだけこの騎士団戦に期待しているかが分かる。その分は楽しませないとな。そう思って相手を見る。
「よろしくな。ガーランドだったか?」
「はい、胸を借りるつもりで戦います」
第4騎士団団長ゼノ。補給メインの第4騎士団に置いて、最も腕が立つといわれる方だ。剣だけでなく補給作戦などの立案も得意で、将来はどこかの領に婿入りするのではないかともうわさされている。
「両者礼…始め!」
審判の合図とともに試合が開始される。俺はもちろん剣を使う。相手のゼノ隊長はどうやら剣と短剣らしい。2刀流という程でもない短剣をどのように使うかを気にかけないとな。
「行くぞっ!」
ゼノが一気に間を詰めてくる。それを簡単に剣でかわす。あまりの大ぶりだったが左半身の動きが妙だったのですぐに剣を引き、短剣に備える。
「…ほう、初出場といっていたがなかなか頭が回るようだな」
「お褒めに頂き光栄です」
「隊長ーさっさと倒してください!」
「ゼノ様ー」
普段からパレードでも顔を見せるゼノの人気はかなりあるようだ。
「人気者ですね」
「騎士には不要だ。いくぞ!」
再度、ゼノが切り込んでくる。先ほどよりはるかに鋭い。しかし、防げる範囲だと慌てず対処する。短剣があるうちはあえて手を出さず隙を見る。そうして優位を示せばいい。
「はっ!」
「せぇい!」
何度も剣が交差するがお互い決定打にはなりえない。第4騎士団の団員たちも俺の腕がそこそこ立つようだと分かったのだろう。真剣な表情で見るものも出だした。
「なかなかどうして、やるものだな」
「それはお互い様です」
「ほざくなよ!」
一瞬今までより鋭い切降ろしが俺を襲う。ここだっ!剣を動かす。反撃に出るのではなく、迎撃するために―。
降ろされた剣を最小限の動きでかわすと、次に来るであろう短剣での一撃に備える。予想通り、片手で剣を持ったゼノは左手で短剣を突き出してくる。そこに合わせるように剣の腹を向ける。
ギィン
金属同士が鈍くぶつかる音を立てた。
「いけたと思ったんだがな…」
「こっちもあれで短剣を落とすと思ったんですが」
「気に入らんな」
それ以降も決め手に欠いた戦いとなる。まあ、ここまですれば面目もたったかな。そう思っているとふいに声がした。
「旦那様、頑張って、勝ってください!!」
一瞬目を向けると、そこにはかわいい婚約者、ティアナの顔があった。
0
お気に入りに追加
146
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる