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本編

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早くいかないと、今日は確実にガーランド様が待っておられる…。よりにもよって、この方の授業が最後とは。熱心なのはいいことだけど、もう少し時間にきちっとしてほしい。終わるとすぐさまものを詰め込んで、教室を出る。

「サーラ、また明日!」

「ええ、頑張ってね!」

返事もそこそこに、階段を駆け下り、靴に履き替えて校門前へとダッシュ。ちょっと息が切れるが仕方ない、すぐさまガーランド様が見えたのでそちらへ一直線に向かった。

「す、すみません遅くなりまして…」

事情を説明しようとすると、すでに別の生徒から聞いているとのこと。誰だろうと思っているとよく気にかけてくれている上級生らしかった。結構、咎められたりすることの多かった入学時から気にかけて貰っていて、お世話になっている人たちだ。

「今度お礼しなくちゃですね。普段からお世話になってますし」

「そうだな。俺に話しかけてきたのもどんな男か気になったからかもな」

「じゃあ、きっと大丈夫ですよ。ガーランド様はお優しいですし、あの方たちも分かってくれます」

「だと、いいけどな…」

なんだか複雑な顔をされるガーランド様。なにか、話されたのだろうか?それはそうと、ちょっと聞きたいことがあったので話をそっちに持っていく。

「そういえば騎士団トーナメント戦というのがあると聞いたのですが…」

「ああ、騎士戦か。誰か身内が出る子でもいたのか?」

「いえ、友人にガーランド様が出ないのかといわれまして…」

「どうかな。今年は投票制だから出場者は誰も分らないからな。去年までは隊長選出のみだったが」

「では、出られるかもしれないんですか?」

私は期待を込めた目でガーランド様を見る。

「ま、まあ発表はそろそろのはずだから、入っている…かもな」

「そうですか…ちなみに選ばれると特訓とかでお帰りが遅くなったりしますか?」

出場されるか聞けなかったけれど、こっちは聞いておきたかった。今日のお願いのためにも…。

「いや、例年はそんなこともない。そもそも、王宮警備隊の優秀者や騎士学校の優秀者が王宮騎士団に入るから、基本的にあれは騎士団の宣伝みたいな場だからな」

「そうなんですか、警備隊の方はどのくらい勝ち進まれるのですか?」

「良くても2回戦止まりだな。騎士団は多くが各団の団長が出るから、そもそも相手にならないことの方が多い」

選りすぐりの選りすぐりと戦う訳か。確かに難しそうだ。でもそんな人たちに勝っているガーランド様の姿も見たいと思う。

その後は、取り決め通りにガーランド様の方からお話を頂き、家路につく。なんでも今年からは騎士学校時代の後輩が来て、ちょっと面倒なのだそうだ。後輩がかわいくないんですかといえば『騎士学校時代を知られているからやりにくい』とのことだった。

「でも、他の後輩の方も毎年入ってこられるのでは?」

「他の奴は別にいいんだ。そんなに交流を持っていなかったから。当時からカイラスに勝ったのはまぐれだとか、不意打ちを使ったとかの噂があったからな。あいつは練習風景も見ていて、偶然じゃないと知っている分面倒なんだ」

「かわいい後輩さんですね。家には来られたりしないんですか?」

「そういえばまだ来たことはないな」

「せっかくだからお会いしてみたいです。騎士学校時代のお話も聞きたいですし」

「つまらん話になると思うが…」

「それならそれでいいです。聞けたという事が大事なので」

最も、ガーランド様の話でつまらないと思うことはないので、色々聞かせてもらいたいだけなのです。

「ただいま~」

家に着いて、カレンさんに出迎えてもらう。おっといけないいけない、ここで今日の計画を実行しないと。

「ガーランド様、今日はこの後どうされますか?」

「いつもの帳簿とその前に少し鍛錬をするかな」

「わかりました、頑張ってくださいね」

ふむふむ。鍛錬が30分ぐらいとして帳簿や自室での休憩も入れて1時間余り。生地を作って匂いが漏れないようにしてからは30分だ。私はガーランド様が中庭に向かうのを確認して、スッと厨房に向かう。

「ロイさん、ただいま帰りました」

「おかえりなさいませ、ティアナ様。使われますか?」

「ええ、お願いします。半時間ほどしたら一旦、様子を見にリビングに戻ります」

「わかりました。その間は私が見ておきます」

「よろしくお願いします」

私はパパっと準備をする。この前と同じように作るのだが、少しもらった意見をもとにシナモンはそのまま、ビターは少しだけ砂糖を増やす。焼き加減もちょっとだけ最後を強くして、パリッと感を出す。

「やっぱり、いつもと違う人に食べてもらうと、いろいろ意見がもらえて参考になるわ」

これからも定期的に味見をお願いしようと思うティアナだった。奇しくも、ティアナのお菓子が欲しい彼女たちと利害が一致したのである。

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