上 下
24 / 56
本編

24

しおりを挟む
「それならちょうどよいものがありますわよ。1か月後ぐらいに王宮騎士トーナメント戦が開かれますの。貴族や留学生も観戦できますし、出場資格は王宮騎士・王宮警備隊からそれぞれ8名ずつですわ。そこでご活躍なされれば一気に有名人ですわよ」

レミリア様が語ってくれたのは、毎年行われる王宮騎士ナンバーワンを決める大会だった。ただ、観戦も簡単に行えるものではなく、一般人には抽選。下位の貴族も当主とその夫人には資格が与えられるが、それ以外は基本的に参加できない。私も見てみたいとは思っていたのだが、参加資格がない為、頭から抜け落ちていた。

「でも、私は子爵令嬢ですから観戦資格が…」

「あら、婚約なさっておられるのでしょう?参加者の婚約者でしたら観戦できるどころか特等席で観られますわよ?」

「そうなんですか!選ばれるかなぁ…」

普段から全力を出されていないとのことだったし、同じ警備隊の方にはどう思われているのだろう。いっそのこと言ってみる?いや、ガーランド様はそんなこと望んでないだろうし…。

「確かに選ばれるかはわかりませんけれど、どうせ来年には出るようになると思いますわ」

「どうしてですか?」

「お父様も言っておりましたけれど、男性は女性を前にするとどうしても格好をつけたくなるものらしいですわよ?」

そう言ってウィンクするレミリア様はちょっとかわいらしくて、私の中での彼女のイメージが少し変わった。

「お二人とも、盛り上がっているところ悪いのですが、そろそろお時間ですわよ。レミリア様は残りのお菓子はどうされるのですか?」

見ると私たちが話している間に、ルミナリア様たちはきれいに食べてくれたようだ。レミリア様の分だけが少し残っている。

「そうですわね。紅茶も少し冷めておりますし、折角ですので持って帰って食べますわ。貴重な頂き物ですもの」

「ふふっ、喜んでいただけて何よりです。それなら、また時間があるときにでも作りますね」

「催促したみたいで申し訳ないですけれど、お願いしますわ。家で食べるものとは違ったおいしさですもの」

「はい!」

私はレミリア様の残ったお菓子を再びラッピングし直すと、再び渡す。そして簡単なお茶会は終わりを告げ、午後の授業へと望むのだった。


ガーランドは朝のことを思い出していた。ティアナと一緒に話をしながら学園に向かっていた時のことだ。急に腕に違和感を感じると彼女の腕があった。何事かと言おうとするが、話に夢中らしく気にしていないようだった。しかし、道行くものからは好機の目を向けられる。騎士たるもの控えることはあっても、こういう風に歩くことは少ない。

「~ですよね」

彼女が何か話しているが、内容があまり入ってこない。自分がこんなにも緊張しているというのに、彼女は何ともないのだろうか?そういって彼女を見つめる。

「どうしました?顔に何かついてます?」

「いや、話を切ってしまって済まない」

「いいですよ。それでですね~」

彼女の話は続く。腕を組むことは彼女にとって大したことではないのだろう。彼女は元気もいいしひょっとしたらいつも他の女生徒と似たようなことをしているのかもしれない。そう思って校門まで来た。校門に着いたところで、一部の生徒はぎょっとしたような表情で私たちを見る。送り迎えぐらいだったら、馬車でという形なら見受けられるが、どこにも俺たちのように腕を組んできているものはいない。精々が馬車から降りるときに、従者が手を出す程度だ。

「ガーランド様ではまた帰りに」

「あ、ああ」

いまだ戸惑い気味の俺とは違って、彼女は元気に校舎へと向かう。残った視線が俺の方に突き刺さりいたたまれないので、すぐに王宮へと向かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?

イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」 私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。 最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。 全6話、完結済。 リクエストにお応えした作品です。 単体でも読めると思いますが、 ①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】 母主人公 ※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。 ②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】 娘主人公 を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

王命を忘れた恋

水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

離縁の脅威、恐怖の日々

月食ぱんな
恋愛
貴族同士は結婚して三年。二人の間に子が出来なければ離縁、もしくは夫が愛人を持つ事が許されている。そんな中、公爵家に嫁いで結婚四年目。二十歳になったリディアは子どもが出来す、離縁に怯えていた。夫であるフェリクスは昔と変わらず、リディアに優しく接してくれているように見える。けれど彼のちょっとした言動が、「完璧な妻ではない」と、まるで自分を責めているように思えてしまい、リディアはどんどん病んでいくのであった。題名はホラーですがほのぼのです。 ※物語の設定上、不妊に悩む女性に対し、心無い発言に思われる部分もあるかと思います。フィクションだと割り切ってお読み頂けると幸いです。 ※なろう様、ノベマ!様でも掲載中です。

処理中です...