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本編
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「そ、それで、作ったというものはどちらですの?」
「慌てずまずは昼食にいたしましょう。サンドイッチなどいかがでしょう?」
「そうですわね。デザートということでまずは軽く食べましょうか?」
皆さんと一緒に私もサンドイッチを食べる。その間の会話といえば皆さん高位貴族の令嬢らしく、やはり夜会やお茶会の話題が多い。そちらに関してはほとんどわからない私だったが、聞いている分には面白い話もあり楽しかった。
「そういえばティアナ様はほとんど夜会にも出ておられませんでしたが、退屈ではないでしょうか?」
「いえ、確かにお茶会などに出るのは苦手ですが、お話を聞く限りではとても楽しそうです」
「では、今度うちのお茶会にいらしては?」
そういって下さるのはルミナリア伯爵令嬢だ。やや薄めの銀髪を持つきれいな令嬢だ。
「うれしいお申し出ですけど、私はこの先、騎士爵夫人になる予定ですし遠慮します。婚約が発表された以上は来られた方々にも好機の目を向けられると思いますし」
「確かにそうかもしれませんね。残念ですわ」
そんな話をしながらも、楽しく昼食の時間は過ぎていき皆さん食事を終えられた。
「さあ、皆さん食事は終わりましたわね」
「レミリア様、はしたないですわよ」
「ルミナリア様もそわそわしておられますけど?」
普段は仲良くお話をされているお二人だが、今日は何かあったのだろうか。とりあえず鞄を取り出してと。
「それでは僭越ながら、お配りいたします。まずはレミリア様からですね」
丁寧にラッピングした中には3種類のお菓子がそれぞれ詰められている。最初はどれか一つかと思ったのだが、好みとかも聞いていなかったので、ちょっとずつ入れることで大きさを変えず、可愛らしい感じに詰めた。
「これですのね。いつもサーラ様が食べられていたのは…」
「特にいつもではないですけど、あと今回はシナモンが多く手に入りましたので、大目に使っています。…次はルミナリア様ですね」
そうして私はここにおられる4名の方たちに順番にお渡しした。
「私たちにも申し訳ありません。特に言っていなかったのに…」
「いえ、いつもだったら邸のものに配っていたのですが、さすがに昨日の今日で帰るわけにもいかず、貰っていただけると嬉しいです」
「では、いつもこのぐらい作られるのですか?」
「そうですね…。多く作った方が安くなりますし、いっぱい喜んでいただけますし。あとは、申し訳ないんですがどうしても焼き加減にムラができてしまって、レミリア様のものとかは結構選んだんですけど、ちょっと形が崩れたものもあって。お母様など家族にはおいしいものを食べてほしかったので」
「まあ、そうなのですね!とても楽しみになってきましたわ。開けてもよろしくて?」
「はい、皆さん中身のお菓子は同じものですので…」
そういって皆さんが一斉に包みを開ける。
「まあ、きれい!いつも食べているものと違いが分かりませんわ」
「本当ですね!レミリア様のは選ばれたといわれておりましたが、こちらもわからないぐらい美しいですわね」
「それに香りもとっても良くって…そうだわ!紅茶を頼んできますわ」
「よろしくお願いします」
やっぱり、苦労して作ってラッピングしたものがこうやって喜ばれるとうれしい。この笑顔があればまた作る気が起きてくるというか。
それから、私ともう一人の方で紅茶を運んできて、簡単なお茶会の出来上がりだ。
「それではいただきますわね」
まずはこの機会をくださったレミリア様に食べていただく。私としては上出来だと思っているけれど、ちょっと緊張する。今までは家のみんなやカレンさんたち身内が多かったけれど、あまり交流のない方に食べていただくのは初めてなのだ。
「そんなにじっと見られると食べづらいですわ」
珍しく、レミリア様が赤面して言われる。
「す、すみません。こういう場で食べていただくことが今までありませんでしたので…」
「では、頂きますわね」
レミリア様がパクリとまずはパウンドケーキから食べる。食べる所作が美しいのはもちろんのことその後の動作もどこを取っても絵画のようだ。
「どうでしょうか?」
「…自信をお持ちになって結構ですわ。私も色々なところから取り寄せておりますが、これだけおいしいものはめったにお目にかかれませんわ」
「よかったぁ。皆さんもどうぞ」
「では、失礼して…」
ルミナリア様たちも一斉に食べ始める。皆さん昼食は軽めに取られたので、今か今かと待ち望んでおられたようだ。
「おいしい!こちらのクッキーの方も香り高くていくらでも食べられそうです」
「あら、このビタークッキーも負けておりませんわよ。甘めの紅茶に合いますわ」
「ですがやはりパウンドケーキですね。ここまでシナモンの味が出るものはなかなか手に入りませんわね」
「そうですわね。形こそ普通ですが、味に関しては侯爵家でもおいそれと手に入れられぬ味ですわ。ご婚約が決まっていなければ、侍女兼料理人として好待遇で迎え入れたいですわね」
皆さんに口々に褒めていただいてありがたいそこで私は当初の目的通り、話を切り出した。
「慌てずまずは昼食にいたしましょう。サンドイッチなどいかがでしょう?」
「そうですわね。デザートということでまずは軽く食べましょうか?」
皆さんと一緒に私もサンドイッチを食べる。その間の会話といえば皆さん高位貴族の令嬢らしく、やはり夜会やお茶会の話題が多い。そちらに関してはほとんどわからない私だったが、聞いている分には面白い話もあり楽しかった。
「そういえばティアナ様はほとんど夜会にも出ておられませんでしたが、退屈ではないでしょうか?」
「いえ、確かにお茶会などに出るのは苦手ですが、お話を聞く限りではとても楽しそうです」
「では、今度うちのお茶会にいらしては?」
そういって下さるのはルミナリア伯爵令嬢だ。やや薄めの銀髪を持つきれいな令嬢だ。
「うれしいお申し出ですけど、私はこの先、騎士爵夫人になる予定ですし遠慮します。婚約が発表された以上は来られた方々にも好機の目を向けられると思いますし」
「確かにそうかもしれませんね。残念ですわ」
そんな話をしながらも、楽しく昼食の時間は過ぎていき皆さん食事を終えられた。
「さあ、皆さん食事は終わりましたわね」
「レミリア様、はしたないですわよ」
「ルミナリア様もそわそわしておられますけど?」
普段は仲良くお話をされているお二人だが、今日は何かあったのだろうか。とりあえず鞄を取り出してと。
「それでは僭越ながら、お配りいたします。まずはレミリア様からですね」
丁寧にラッピングした中には3種類のお菓子がそれぞれ詰められている。最初はどれか一つかと思ったのだが、好みとかも聞いていなかったので、ちょっとずつ入れることで大きさを変えず、可愛らしい感じに詰めた。
「これですのね。いつもサーラ様が食べられていたのは…」
「特にいつもではないですけど、あと今回はシナモンが多く手に入りましたので、大目に使っています。…次はルミナリア様ですね」
そうして私はここにおられる4名の方たちに順番にお渡しした。
「私たちにも申し訳ありません。特に言っていなかったのに…」
「いえ、いつもだったら邸のものに配っていたのですが、さすがに昨日の今日で帰るわけにもいかず、貰っていただけると嬉しいです」
「では、いつもこのぐらい作られるのですか?」
「そうですね…。多く作った方が安くなりますし、いっぱい喜んでいただけますし。あとは、申し訳ないんですがどうしても焼き加減にムラができてしまって、レミリア様のものとかは結構選んだんですけど、ちょっと形が崩れたものもあって。お母様など家族にはおいしいものを食べてほしかったので」
「まあ、そうなのですね!とても楽しみになってきましたわ。開けてもよろしくて?」
「はい、皆さん中身のお菓子は同じものですので…」
そういって皆さんが一斉に包みを開ける。
「まあ、きれい!いつも食べているものと違いが分かりませんわ」
「本当ですね!レミリア様のは選ばれたといわれておりましたが、こちらもわからないぐらい美しいですわね」
「それに香りもとっても良くって…そうだわ!紅茶を頼んできますわ」
「よろしくお願いします」
やっぱり、苦労して作ってラッピングしたものがこうやって喜ばれるとうれしい。この笑顔があればまた作る気が起きてくるというか。
それから、私ともう一人の方で紅茶を運んできて、簡単なお茶会の出来上がりだ。
「それではいただきますわね」
まずはこの機会をくださったレミリア様に食べていただく。私としては上出来だと思っているけれど、ちょっと緊張する。今までは家のみんなやカレンさんたち身内が多かったけれど、あまり交流のない方に食べていただくのは初めてなのだ。
「そんなにじっと見られると食べづらいですわ」
珍しく、レミリア様が赤面して言われる。
「す、すみません。こういう場で食べていただくことが今までありませんでしたので…」
「では、頂きますわね」
レミリア様がパクリとまずはパウンドケーキから食べる。食べる所作が美しいのはもちろんのことその後の動作もどこを取っても絵画のようだ。
「どうでしょうか?」
「…自信をお持ちになって結構ですわ。私も色々なところから取り寄せておりますが、これだけおいしいものはめったにお目にかかれませんわ」
「よかったぁ。皆さんもどうぞ」
「では、失礼して…」
ルミナリア様たちも一斉に食べ始める。皆さん昼食は軽めに取られたので、今か今かと待ち望んでおられたようだ。
「おいしい!こちらのクッキーの方も香り高くていくらでも食べられそうです」
「あら、このビタークッキーも負けておりませんわよ。甘めの紅茶に合いますわ」
「ですがやはりパウンドケーキですね。ここまでシナモンの味が出るものはなかなか手に入りませんわね」
「そうですわね。形こそ普通ですが、味に関しては侯爵家でもおいそれと手に入れられぬ味ですわ。ご婚約が決まっていなければ、侍女兼料理人として好待遇で迎え入れたいですわね」
皆さんに口々に褒めていただいてありがたいそこで私は当初の目的通り、話を切り出した。
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