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本編
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料理が完成したところで、こちらの邸にあった包みで一つ一つ丁寧に包んでいく。サーラに渡すのだったらちょっとぐらい大目に見てくれるけど、今回渡すのは侯爵令嬢や伯爵令嬢だ。それなりの見た目にしておかないといけない。後は単純にかわいいというのもあるし、誰の分とか把握しやすいってこともあるんだけど。
「こちらの分は終わりましたわ」
「カレンさんすっごーい!早いですね」
「まあ、これぐらいはメイドのたしなみですので」
やっぱり、一流のメイドともなるとラッピング技術もすごいんだな。さっきから私が1つ完成するたびにテーブルに3つは並んでいる。かといって出来上がりに差があるわけではなく、まるで魔法みたいだ。
「それで、この残っている分はどうされるので?」
カレンさんが期待に満ちた目でこちらを見てくる。分かる、こういう作った後は匂いもあるしほんとに食べたくなるよね。
「カレンさんの思ってる通り、私とカレンさんとロイさんの分ですよ」
「やっぱりそうなんですね。さすがはティアナ様…旦那様の分は?」
気付かれちゃいましたか…。恥ずかしいからあんまり言いたくないんだけどな。
「ガーランド様の分はですね……。」
小さくカレンさんに耳打ちする。
「…まあ、なんて羨ましい!せいぜい悔しがらせてあげましょう!」
「や、やめてください…」
「……冗談ですよ」
ほっ、そんなことしたらガーランド様がかわいそうだもんね。そういえば厨房借りたままだし、すぐに片づけをしてロイさんを呼ばないと。
「ロイさ~ん、終わったのでもうちょっとだけ待ってください。今片付けますから」
「片付けは私が」
「すべて終わって、料理ですから!」
そういってカレンさんと一緒に片づけて夕食となった。今日の夕食はロイさんの言った通り、仕込み済みで火にかけるだけで完成するようになっていた。こういう気づかいしてくれるのが本当にうれしい。この邸にこれてよかったなあと思ったのです。
夕食後、ティアナ様はお部屋に戻られ、旦那様は少々残っている別の書類仕事があるため執務室に籠っております。勿論、そこにはメイドである私と執事のロイも控えております。
「それで今日のお菓子作りはどうだったんだ?」
「とてもよくできておりました。先ほどクッキーを頂きましたが、味も店のものと比較しても劣るどころか、おいしいですよ」
「やはり、カレンもそう思いましたか。ここで暮らし始めて長いですが、あれだけの味のものはウィラー伯爵家から頂いたもの以来ですね」
「ウィラー伯爵様から頂いたのは10年も前の話だろう」
「それぐらいおいしいという事です」
「そ、そうか。因みに2人はいつもらったのだ?」
「私は一緒に作りましたから、その後すぐにですね」
「私共は夕食後の片付けが終わるタイミングで頂きました」
「そうなのだな!まあ、私は今日は執務もあるし声をかけ辛かったのだな」
「旦那様、まさかとは思いますが、行き帰りに甘いものは嫌いだとか何か仰ってませんわよね?」
「いや、そんなこと言った覚えは…どうだったかな?」
ククク、そんなこと言うとは思えないけれど悩むといいわ。旦那様は口下手で私以外の女性とはほとんど話していないとのことだから、そんな趣味・嗜好の話題なんて自分からは出さない。ティアナ様も好みはこそっと私に聞きに来たぐらいですので、話題には上げていないッッ!たとえ、一日だけでも優越感に浸らせてもらいますよ。
「ま、まあ、今度渡しますといっておられましたし、きっと大丈夫ですよ」
ロイさんがすかさずフォローを入れる。だけど、それ以外の情報を聞いている私はそのフォローが明日の夕方まで生きることはないと知っている。
「そうだ、そうだな。ああ、もう終わるから今日は下がって良い」
「はい」
ショボーンとした旦那様の背中をしり目に私たちは部屋を出る。
「こらカレン!」
「なんでしょう?旦那様のためですわ」
「あれがですか?」
「明日になれば分かりますから…」
フフフ、そう明日の夕方までは私の勝利です。明日までかぁ。
「こちらの分は終わりましたわ」
「カレンさんすっごーい!早いですね」
「まあ、これぐらいはメイドのたしなみですので」
やっぱり、一流のメイドともなるとラッピング技術もすごいんだな。さっきから私が1つ完成するたびにテーブルに3つは並んでいる。かといって出来上がりに差があるわけではなく、まるで魔法みたいだ。
「それで、この残っている分はどうされるので?」
カレンさんが期待に満ちた目でこちらを見てくる。分かる、こういう作った後は匂いもあるしほんとに食べたくなるよね。
「カレンさんの思ってる通り、私とカレンさんとロイさんの分ですよ」
「やっぱりそうなんですね。さすがはティアナ様…旦那様の分は?」
気付かれちゃいましたか…。恥ずかしいからあんまり言いたくないんだけどな。
「ガーランド様の分はですね……。」
小さくカレンさんに耳打ちする。
「…まあ、なんて羨ましい!せいぜい悔しがらせてあげましょう!」
「や、やめてください…」
「……冗談ですよ」
ほっ、そんなことしたらガーランド様がかわいそうだもんね。そういえば厨房借りたままだし、すぐに片づけをしてロイさんを呼ばないと。
「ロイさ~ん、終わったのでもうちょっとだけ待ってください。今片付けますから」
「片付けは私が」
「すべて終わって、料理ですから!」
そういってカレンさんと一緒に片づけて夕食となった。今日の夕食はロイさんの言った通り、仕込み済みで火にかけるだけで完成するようになっていた。こういう気づかいしてくれるのが本当にうれしい。この邸にこれてよかったなあと思ったのです。
夕食後、ティアナ様はお部屋に戻られ、旦那様は少々残っている別の書類仕事があるため執務室に籠っております。勿論、そこにはメイドである私と執事のロイも控えております。
「それで今日のお菓子作りはどうだったんだ?」
「とてもよくできておりました。先ほどクッキーを頂きましたが、味も店のものと比較しても劣るどころか、おいしいですよ」
「やはり、カレンもそう思いましたか。ここで暮らし始めて長いですが、あれだけの味のものはウィラー伯爵家から頂いたもの以来ですね」
「ウィラー伯爵様から頂いたのは10年も前の話だろう」
「それぐらいおいしいという事です」
「そ、そうか。因みに2人はいつもらったのだ?」
「私は一緒に作りましたから、その後すぐにですね」
「私共は夕食後の片付けが終わるタイミングで頂きました」
「そうなのだな!まあ、私は今日は執務もあるし声をかけ辛かったのだな」
「旦那様、まさかとは思いますが、行き帰りに甘いものは嫌いだとか何か仰ってませんわよね?」
「いや、そんなこと言った覚えは…どうだったかな?」
ククク、そんなこと言うとは思えないけれど悩むといいわ。旦那様は口下手で私以外の女性とはほとんど話していないとのことだから、そんな趣味・嗜好の話題なんて自分からは出さない。ティアナ様も好みはこそっと私に聞きに来たぐらいですので、話題には上げていないッッ!たとえ、一日だけでも優越感に浸らせてもらいますよ。
「ま、まあ、今度渡しますといっておられましたし、きっと大丈夫ですよ」
ロイさんがすかさずフォローを入れる。だけど、それ以外の情報を聞いている私はそのフォローが明日の夕方まで生きることはないと知っている。
「そうだ、そうだな。ああ、もう終わるから今日は下がって良い」
「はい」
ショボーンとした旦那様の背中をしり目に私たちは部屋を出る。
「こらカレン!」
「なんでしょう?旦那様のためですわ」
「あれがですか?」
「明日になれば分かりますから…」
フフフ、そう明日の夕方までは私の勝利です。明日までかぁ。
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