上 下
16 / 56
本編

16

しおりを挟む
「ふぅ」

今日も見回りと訓練を終えて着替える。一応騎士団戦を控えているので、隊長も気合が幾分入っていたようだった。そういえば、手合わせの数が多かった気がするが、まあ気のせいだと思いながらさっさと部屋を出ようとする。なにせ、ティアナと待ち合わせしているのだ。校門の前で待たすようなことがないようにしなければ。

「おおい、もう帰るのか?」

「ああ、待ち合わせをしているからな」

「そうか…」

そういえば彼は既婚者だったな。話題が何かないか聞いてみるか。

「そういえば、既婚者だよな。何か話す話題とかないか?」

「どうしたんだよ全く。一応あいつは今は学園通りの奥にあるフルーツパフェだかなんかというのが人気だって言っていたぞ」

「そうか、すまない」

「変わったなお前…。早く行ってやれよ」

「ああ、ありがとう」

俺は詰所を後にして学園へと向かった。

「行ったか?」

「ああ、ほんとに不気味なぐらい変わったな」

「それより今日の訓練気付いたか?」

「とんでもねえなあいつ。今まで訓練は内容が一緒だったからわからなかったが、あいつだけ手合わせを大量にしたのに、ほとんど息も切らさなかった」

「最初と最後で剣先も下がっていなかったな。ありゃ、ひょっとするかもな」

「じゃあ、決まりだな。とりあえず一人目はガーランドということで、もう一人はアルスだ。残りはちゃんと投票だからなー」

「ええっ、俺ですか!」

「情報提供の代わりに貴重な経験をやるっていうことだ。うれしいだろ?」

「…はい」


「待ったか?」

学園に着くとすでにティアナが待っていた。早く着くようにと思ったんだが遅かったようだ。

「ううん、ガーランド様が来る少し前に来たの。まだ、秋の学園が始まってから間がないから、先生も早く終わってくれてるみたい」

「それならよかった」

「じゃあ、さっそく朝の約束お願いします!」

「約束?」

何かしたか?

「お話ししてくれるって言ったじゃないですか~」

ぷく~と頬を膨らませるティアナ。そのことだったのか。

「そのことなら覚えている。だが、朝も言った通り、面白い話でもないがいいか?」

「はい、よろしくお願いします」

それから俺は警備隊の簡単な仕事と訓練の内容などを話した。時たま彼女から質問が来るのでそれに答えながら。

「~じゃあ、剣振っていればいいってことでもないんですね」

「無論だ。基本的には王宮の受付は門番だが、不審なものがいないか見分けることも必要だし、それらの書類や隊長なんかは部下の訓練の報告などもしているな。あれは結構大変だ」

「大変って、ガーランド様も隊長だったことあるんですか?」

「残念ながら手伝わされただけだ。ああこれは言わないでくれ。一応個人の情報だからな」

「わかりました!」

そういって彼女はビシッと敬礼するような動作をする。それがおかしくて思わず笑ってしまった。

「あっ笑わないでください、ひどい!」

「すまん。しかし、こうしていると不思議だな。この前まではこの時間はまだ見回り中で、こうして女性と帰るとは夢にも思わなかった」

「それは私もです…」

そしてその後も2人で話しながら帰ったのだった。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

これが異世界かどうかは俺が決めますよ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

香しきファンタジー、汝の名はなろうなり

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:30

殺された女伯爵が再び全てを取り戻すまでの話。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:229

騎士と王子達は少女を溺愛する

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:1,243

悪役令嬢の双子の兄

BL / 連載中 24h.ポイント:220pt お気に入り:3,739

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,357pt お気に入り:213

逆行した公爵令嬢は逃げ出したい

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:99

異世界でホワイトな飲食店経営を

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:1,137

私の婚約者は洗脳されている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:3

処理中です...