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本編
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「なあ、今日お前を送っていたやつって誰なんだ?」
唐突に席に来て言われた。顔を上げてみるとそこにはグライム様の顔があった。
「あらグライム様、もう少し淑女に対して礼を尽くしてくださいませんこと。また、お父様に怒られますわよ」
グライム様は私と同じ剣術の授業でトップを争っている。争っているといえば聞こえがいいのだが、最近では負けが続いているので、ちょっと意地悪に言ってみた。
「…わ、悪かったよ。それで、今日ティアナを送っていた騎士は護衛なのか?」
「半分はあたりです。私、婚約いたしましたので何かあってはいけないと言われ、送っていただけることになりました」
「こ、婚約者!お前が?」
「し、失礼ですね!私にだってできることはあります」
全く持って失礼な。今度騎士団長様に言づけてもらえるようガーランド様に頼もうかしら。
「あ、ああ悪い。そんなそぶりも何もなかったから…。しかし、お前に護衛はいらないんじゃないのか?そいつは王宮騎士なのか?」
「私もそういったのですが、心配だからと一緒に行ってくださいますの」
そうそう、私でもちゃんと気を使ってくださる優しい方ですよ。
「それに王宮警備隊所属ですが、私よりははるかにお強いですよ」
「王宮警備隊?父に連れて行ってもらい手合わせした者もいるが、強いというほどだったかな…」
「騎士団長の息子ですし加減されたのでは?少なくともガーランド様は強いです」
「ガーランド?ああ、カイラスと仲のいいというあいつか。話したことはあるが強そうには見えなかったぞ」
「無駄な戦いを好まないだけですよ」
面倒くさがりということを好意的に解釈すれば間違ってはいないだろうと、グライム様に返す。まあ、騎士団長もがっしりとしておられるし、彼の中では筋骨隆々であることが強さの条件なのかもしれない。
「む、そういえば加減したといったな。私は学生だが、そうそう遅れは取らない!」
「それは私に言われても…今度、お兄様にでも稽古をつけていただいては?」
彼の兄はすでに騎士団に入隊している。とはいえ将来的には伯爵を継ぐことになるので、剣だけを磨くわけにもいかず、腕の方はそこそこのようだ。もちろん王宮騎士団としてはだが。
「そうだな、久しぶりにお願いするか」
そういうと満足したのかグライム様はさっさと席に戻ってしまった。本当に勝手な人だ。
「災難だったわねティアナ」
「サーラも見てたなら助けてよ」
「グライム様の性格からして、口をはさんでも長引くだけよ。正直に、直接が大事ね」
「困ったことだわ。あれで結構人気者なところがね」
「そうね」
サーラはお前が言うなと思いながらも、裏表のない評判の良い剣術少年を眺めた。
授業も午前が終わり、いよいよ待望のお昼ごはんということなのだが、本日はなぜか学食に来ている。いや、別にいつもはお弁当を持ってて、ロイさんに持って行ってますと言ったら、今日も作ってもらっていたんだけど。
「さあさあ、ティアナ様こちらにどうぞ」
「あ、はあ」
侯爵令嬢の方に座ってと言われれば私なんかが逆らえる訳もなく、中央に近いテーブルに座って皆さんの食事が並ぶ。
「それでお話とは?」
「もちろん送っていただいておられた殿方のことですわ。ああ、お食事は都度なさって結構ですので」
「ガーランド様ですか?王宮警備隊の方ですが?」
「そのガーランド様を私たちはよく存じ上げないのですが、先ほどグライム様との会話で婚約者と…」
「はい、父の方で何とか私に縁談をとお受けくださった方です」
「やはりそうでしたの。ですがよろしいのですか?ティアナ様は子爵令嬢。それも長女でしょう。王宮警備隊といえば騎士爵といえど、以前とは暮らしぶりも変わりますのよ?」
あんまり話したことがなかったけれど、私のことを心配してくださっている様だ。とてもありがたいけれど―――。
「いえ、父の薦めで先日から騎士爵様の屋敷にお邪魔しているのですが、存外私にはあっているようで、楽しく暮らしております」
「す、すでに同居していらっしゃるの?」
「はい、使用人の方も優しく迎えてくださって、今日は一緒にお菓子を作る予定ですの」
「ティアナ様はご自分で普段からお作りに?」
「はい、実家にいるときはよく注意されていましたが、慣れてくると楽しくてやめられないんです」
「通りで実習授業の時、一人だけ手早いと思いましたわ。ガーランド様がうらやましいですわね。ティアナ様の手料理をいただけるとは」
「そんな、最近はそんなに作れておりませんでしたので、実はあまり自信がないのです。レシピは考えてあるのですが…」
「まあまあ、それでしたら私にいただけませんこと。これでも侯爵家令嬢としてそれなりに食べてますのもの。殿方の好きな味も知ってましてよ」
「本当ですか!しかし、侯爵様のご令嬢に私の作ったものなど…」
「気にすることはございません。これも淑女の務め、あなたのこれからのため、力を貸したいのです」
「ありがとうございます!!きっとおいしいものを作ってきます」
そのあとは皆さんとガーランド様のことを話しながら和やかな昼食となった。サーラはさすがに今日は途中から離れて食べていた。
「レミリア様、今日はよかったですね」
「あら、サーラ様。すみません、ご友人をお借りしてしまって」
「いえ、彼女の性格と人気に嫉妬した令嬢が、嫌がらせをしないよう手配いただきありがとうございます」
「私もあなたのお菓子を作る予定があるという情報がなければ、あのように進められなかったでしょう」
「侯爵家であるあなたのおかげで、彼女は健やかに生活が送れているのですから構いません」
「そう思うのでしたら、会員№1の座を譲っていただきたいものですわ」
「この番号は彼女公認ですのでお断りいたします」
「仕方ありません。これからもティアナ様ファンクラブ会長としてお願いしますわ」
「承りました」
唐突に席に来て言われた。顔を上げてみるとそこにはグライム様の顔があった。
「あらグライム様、もう少し淑女に対して礼を尽くしてくださいませんこと。また、お父様に怒られますわよ」
グライム様は私と同じ剣術の授業でトップを争っている。争っているといえば聞こえがいいのだが、最近では負けが続いているので、ちょっと意地悪に言ってみた。
「…わ、悪かったよ。それで、今日ティアナを送っていた騎士は護衛なのか?」
「半分はあたりです。私、婚約いたしましたので何かあってはいけないと言われ、送っていただけることになりました」
「こ、婚約者!お前が?」
「し、失礼ですね!私にだってできることはあります」
全く持って失礼な。今度騎士団長様に言づけてもらえるようガーランド様に頼もうかしら。
「あ、ああ悪い。そんなそぶりも何もなかったから…。しかし、お前に護衛はいらないんじゃないのか?そいつは王宮騎士なのか?」
「私もそういったのですが、心配だからと一緒に行ってくださいますの」
そうそう、私でもちゃんと気を使ってくださる優しい方ですよ。
「それに王宮警備隊所属ですが、私よりははるかにお強いですよ」
「王宮警備隊?父に連れて行ってもらい手合わせした者もいるが、強いというほどだったかな…」
「騎士団長の息子ですし加減されたのでは?少なくともガーランド様は強いです」
「ガーランド?ああ、カイラスと仲のいいというあいつか。話したことはあるが強そうには見えなかったぞ」
「無駄な戦いを好まないだけですよ」
面倒くさがりということを好意的に解釈すれば間違ってはいないだろうと、グライム様に返す。まあ、騎士団長もがっしりとしておられるし、彼の中では筋骨隆々であることが強さの条件なのかもしれない。
「む、そういえば加減したといったな。私は学生だが、そうそう遅れは取らない!」
「それは私に言われても…今度、お兄様にでも稽古をつけていただいては?」
彼の兄はすでに騎士団に入隊している。とはいえ将来的には伯爵を継ぐことになるので、剣だけを磨くわけにもいかず、腕の方はそこそこのようだ。もちろん王宮騎士団としてはだが。
「そうだな、久しぶりにお願いするか」
そういうと満足したのかグライム様はさっさと席に戻ってしまった。本当に勝手な人だ。
「災難だったわねティアナ」
「サーラも見てたなら助けてよ」
「グライム様の性格からして、口をはさんでも長引くだけよ。正直に、直接が大事ね」
「困ったことだわ。あれで結構人気者なところがね」
「そうね」
サーラはお前が言うなと思いながらも、裏表のない評判の良い剣術少年を眺めた。
授業も午前が終わり、いよいよ待望のお昼ごはんということなのだが、本日はなぜか学食に来ている。いや、別にいつもはお弁当を持ってて、ロイさんに持って行ってますと言ったら、今日も作ってもらっていたんだけど。
「さあさあ、ティアナ様こちらにどうぞ」
「あ、はあ」
侯爵令嬢の方に座ってと言われれば私なんかが逆らえる訳もなく、中央に近いテーブルに座って皆さんの食事が並ぶ。
「それでお話とは?」
「もちろん送っていただいておられた殿方のことですわ。ああ、お食事は都度なさって結構ですので」
「ガーランド様ですか?王宮警備隊の方ですが?」
「そのガーランド様を私たちはよく存じ上げないのですが、先ほどグライム様との会話で婚約者と…」
「はい、父の方で何とか私に縁談をとお受けくださった方です」
「やはりそうでしたの。ですがよろしいのですか?ティアナ様は子爵令嬢。それも長女でしょう。王宮警備隊といえば騎士爵といえど、以前とは暮らしぶりも変わりますのよ?」
あんまり話したことがなかったけれど、私のことを心配してくださっている様だ。とてもありがたいけれど―――。
「いえ、父の薦めで先日から騎士爵様の屋敷にお邪魔しているのですが、存外私にはあっているようで、楽しく暮らしております」
「す、すでに同居していらっしゃるの?」
「はい、使用人の方も優しく迎えてくださって、今日は一緒にお菓子を作る予定ですの」
「ティアナ様はご自分で普段からお作りに?」
「はい、実家にいるときはよく注意されていましたが、慣れてくると楽しくてやめられないんです」
「通りで実習授業の時、一人だけ手早いと思いましたわ。ガーランド様がうらやましいですわね。ティアナ様の手料理をいただけるとは」
「そんな、最近はそんなに作れておりませんでしたので、実はあまり自信がないのです。レシピは考えてあるのですが…」
「まあまあ、それでしたら私にいただけませんこと。これでも侯爵家令嬢としてそれなりに食べてますのもの。殿方の好きな味も知ってましてよ」
「本当ですか!しかし、侯爵様のご令嬢に私の作ったものなど…」
「気にすることはございません。これも淑女の務め、あなたのこれからのため、力を貸したいのです」
「ありがとうございます!!きっとおいしいものを作ってきます」
そのあとは皆さんとガーランド様のことを話しながら和やかな昼食となった。サーラはさすがに今日は途中から離れて食べていた。
「レミリア様、今日はよかったですね」
「あら、サーラ様。すみません、ご友人をお借りしてしまって」
「いえ、彼女の性格と人気に嫉妬した令嬢が、嫌がらせをしないよう手配いただきありがとうございます」
「私もあなたのお菓子を作る予定があるという情報がなければ、あのように進められなかったでしょう」
「侯爵家であるあなたのおかげで、彼女は健やかに生活が送れているのですから構いません」
「そう思うのでしたら、会員№1の座を譲っていただきたいものですわ」
「この番号は彼女公認ですのでお断りいたします」
「仕方ありません。これからもティアナ様ファンクラブ会長としてお願いしますわ」
「承りました」
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