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本編
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「「「いってらっしゃいませ!」」」
「うん。行ってきます!たまには帰ってくるけどみんなも元気でね」
両親・兄と妹と子爵家使用人全員に見送られながら、私は用意された馬車に乗り込んでレイノル様の屋敷へと向かう。みんな大げさなんだからと思いながらも、馬車から遠ざかる家を見ると少し涙ぐんでしまう。
「だめだめ、今からこんなんじゃ。騎士爵様にもあきれられてしまうわ」
「リノアもリラもよく頑張ったわね」
「母様…」
「奥様…」
ティアナを見送った使用人たちはみな涙ぐんでいた。問題も多かったが、快活で邸中の人間と交流を持っていた彼女は、家族だけでなく使用人たちからも娘や妹のようにかわいがられていた。中でも3歳年下の妹のリノアはよく後をついてけがの手当てなどをしてなついていた。リラも仕えてから初めての主の喪失に心にぽっかりと穴が開いたような思いだった。
「あのじゃじゃ馬がすんなり受け入れられるわけないさ。すぐに戻ってくるよ」
「お兄様はそう思ってますの?」
「正直、学園にいたころもあいつみたいなのはいなかったからなあ」
「お嬢様が戻られるのは気晴らしだけですわリノア様」
「リラはずいぶんその男を買っているんだな。見たことないんだろう?」
「ええ、ですがあのお嬢様がご興味を持たれるほどの方ですもの。私も精進しませんと」
「あら、リラはどこかに行くつもりなのかしら?」
「奥様のお許しが出ればですが、お嬢様が選んだ方ならきっとこれから昇進なされますわ。そしたら使用人も増やさなくてはいけないと思いますから」
「リラは本当にお嬢様一筋だな」
使用人のみんなにもからかわれるけれど、当たり前だ。あんな太陽のような笑顔は他に見たことはない。お嬢様の笑顔を守るために私はいるのだと常々思っている。
「でも、リラも結婚早くしなさいよ。あなたまだ独身でしょう?」
「もちろんです、リノアお嬢様。私の子にはお嬢様の子供を守るという使命がありますから」
「もうリラはまたそんなことを言って…」
奥様からため息が漏れる。でも、私は思うのだ。きっと私の子供もあの方の子の笑顔を見れば虜になるだろうと。
「うん。行ってきます!たまには帰ってくるけどみんなも元気でね」
両親・兄と妹と子爵家使用人全員に見送られながら、私は用意された馬車に乗り込んでレイノル様の屋敷へと向かう。みんな大げさなんだからと思いながらも、馬車から遠ざかる家を見ると少し涙ぐんでしまう。
「だめだめ、今からこんなんじゃ。騎士爵様にもあきれられてしまうわ」
「リノアもリラもよく頑張ったわね」
「母様…」
「奥様…」
ティアナを見送った使用人たちはみな涙ぐんでいた。問題も多かったが、快活で邸中の人間と交流を持っていた彼女は、家族だけでなく使用人たちからも娘や妹のようにかわいがられていた。中でも3歳年下の妹のリノアはよく後をついてけがの手当てなどをしてなついていた。リラも仕えてから初めての主の喪失に心にぽっかりと穴が開いたような思いだった。
「あのじゃじゃ馬がすんなり受け入れられるわけないさ。すぐに戻ってくるよ」
「お兄様はそう思ってますの?」
「正直、学園にいたころもあいつみたいなのはいなかったからなあ」
「お嬢様が戻られるのは気晴らしだけですわリノア様」
「リラはずいぶんその男を買っているんだな。見たことないんだろう?」
「ええ、ですがあのお嬢様がご興味を持たれるほどの方ですもの。私も精進しませんと」
「あら、リラはどこかに行くつもりなのかしら?」
「奥様のお許しが出ればですが、お嬢様が選んだ方ならきっとこれから昇進なされますわ。そしたら使用人も増やさなくてはいけないと思いますから」
「リラは本当にお嬢様一筋だな」
使用人のみんなにもからかわれるけれど、当たり前だ。あんな太陽のような笑顔は他に見たことはない。お嬢様の笑顔を守るために私はいるのだと常々思っている。
「でも、リラも結婚早くしなさいよ。あなたまだ独身でしょう?」
「もちろんです、リノアお嬢様。私の子にはお嬢様の子供を守るという使命がありますから」
「もうリラはまたそんなことを言って…」
奥様からため息が漏れる。でも、私は思うのだ。きっと私の子供もあの方の子の笑顔を見れば虜になるだろうと。
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