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2人の王子 情と欲
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急きょ二人を連れ込んだはいいものの、準備も出来ておらず何とか確保した部屋なので、内装はいかんともしがたかった。
「まあ、このタイミングで確保できただけでも良しとしよう」
流石にここに侍女を連れてくるわけにもいかず、とりあえず自分で紅茶を入れる。
「あ、あの…」
「ああ、カノン嬢はさぞびっくりしたことだろう。私も、何とか弟の晴れ舞台に駆け付けたいと日程を調整してきてみればあの騒ぎだからな」
「いえ、その…婚約については私もエディン様と仲良くされているようでしたので驚きはしなかったのですが、本当に私を婚約者にするつもりですか?」
「もちろんだよ。あそこまで公の場で宣言してしまっては、よしんば君が婚約相手を見つけられたとしても後々まで噂が付いて来てしまう。それを考えれば相手方からも無茶な要求をされかねない。弟君もさぞ苦労するだろう」
「そ、それは困ります!」
事前の情報通りだな。貴族としての常識はかけているが、身内に対しては強い意志を示す。もっとも、流石にこの調子では正妃は務まらないだろう。身分といい本当に私は恵まれている。
「だろう?それならば多少の紆余曲折は経たとしても、私の婚約者でいる方があなたにとても良いことだ」
「ですが、エレンディア様は?」
「彼女も貴族の令嬢だ。それにカノン嬢と同じ女性ならばこそ、この度の弟の仕出かしたことの重大さに理解を示してくれるだろう」
ちらりとエレンディアの方を見ながら話す。彼女としても突然のことで言いたいことはあるだろうが、流石に私に抗議する訳にも行くまい。
「え、ええ、確かにあのままでは普通の貴族令嬢であれば、そのまま相手も見つからずということになりかねませんでした。それにクレヒルト殿下もですが、レスター殿下も先程発言された以上はカノン様が新たに婚約者を見つけることは不可能かと」
「そうなんでしょうか?」
「はい。2度の王族との婚約。それも、2度目は王族から貴族たちの前で宣言されたものを反故にするということは、よほど本人に問題があると思われてしまうでしょう。それ以前に、王族が手に入れられなかった相手と思われてしまっては、恐れ多くて手が出せませんわ」
「私、そういうことには疎くて…。丁寧にありがとうございます」
「い、いえ…」
社交の場にもカノン嬢はめったに姿を現さないから、エレンディアとの相性はどうかと思ったがそこまで悪くはないらしい。控えめながらも貴族としての教養がしっかりしているエレンディアさえいれば、政務はなんとかなるだろうし、問題はなさそうだな。
「カノン嬢の御父上には許可もいただいたし、後は大公殿だけだな。どう思うエレンディア?」
「多分反対はしないと思います。これが侯爵家のものであったり、普通の令嬢であれば反対したでしょうが、カノン嬢です。彼女の功績をもってしても、第2夫人という立場になるということはある意味、我が家にとっては名誉ですから」
「なるほどな。では、もし反対しそうならそのように言ってくれ。手回しをしたいところだが、他にも気になることがあって手が回らん」
「分かりました。そのように致します」
「お2人ともすごいです!まだ、後を継がれていないのにそんなに考えられているなんて」
「そう言われると悪い気はせんな」
「ええ」
パーティーが行われているであろう時間を雑談という自己紹介で過ごした私たちは一旦解散する。
「今日は楽しかったです。こんなこと言うと変ですけど、初めてパーティーが楽しく感じられました」
「それはよかった。今後はこちらから出席の文を出すことになると思うので、頼むぞ」
「は、はい」
「私も次また会う時を楽しみにしていますわ」
カノン嬢が出て行ったところで扉が閉まる。
「どうした?」
「それで、タイミングよく現れたということは、今回の件をご存じだったのでしょう?」
「…まあな。だが、流石に詳細まではつかんではいない」
「そうでしたか。しかし、顔がにやけていますわよ?」
「ん?今日はよく言われるな」
「あらまあ、皆さん殿下をよく見られているのですね」
「まあ、そういうことだ。これからも良しく頼む」
「分かりました。それでは…」
エレンディアも出て行き部屋に一人残る。
「そんなに笑っているのだろうか?」
改めて鏡を見る。特に笑っている様子はないように思うのだが…。
「よろしいでしょうか?」
「シリウスか、何だ?」
「はっ!先ほど数日中の動向をまとめてまいりました」
「頼む」
「まずアルター侯爵ですが、やはりエディン嬢には関連しておりますが、子爵の方とは全く繋がりがない模様です」
「そうか、まあ彼は王族派であるし順当だな」
「続いてコンタクトを取っている貴族については、伯爵家に数名いるようです。おそらくその中の誰かではないかと…」
「わかった。引き続き調査を、それとこの件に関しては宰相殿にも伝えてくれ」
「了解しました。後はカノン嬢の研究成果についてですが、一部の職員に不審な点があったので当たっています」
「分かった。今後も考えられることであるし、理由を探り引き込めるようなら引き込め」
「はっ!ではまた…」
「うむ」
進捗は鈍いものの着々と情報は集まっている様だ。とりあえず、ここに居ても仕方ない。一旦自室に戻って情報を再確認するとしよう。
「おおっ!レスター、お前からも何か言ってはくれんか?」
部屋を出たところで面倒な場面に出くわした。まさか、陛下がまだ居るとは…。
「何のことですか陛下?」
「無論、クレヒルトのことだ。エディン嬢の功績が確かだとしても、王族が子爵令嬢を第1夫人に据えるなど考えなおせと!」
何かと思ったら、そんなことか。確かに体面上、子爵家の令嬢と言うのは良くはないが他国でもないわけではない。無論、それに見合った働きをした家が条件ではあるが。
「陛下、お言葉ですが他国でも子爵家と王族の婚姻がないわけではありません。クレヒルトの言葉が真実であれば特に問題はないかと…」
「しかしだな。エレステン伯爵家は曲がりなりにも、いくつもの役職を歴任した名家だ。それに比べてエディン嬢の家はろくに成果も残しておらん。流石にどうかと思うのだ」
「しかし、先ほど宣言も出していることですし、ここにきて相手を変えるなどということになれば、内外から相応の反発があると思われますが?」
「ううむ、確かに」
「特に魔導王国については女王も歴史上多く、かなりの反発が予想されます」
他国とはいえ、母上の母国である魔導王国はこういうことには敏感だ。王女であった母上も実は不当な扱いを受けているのではと書簡を渡されても困る。
「それは困る。…仕方がないか。せめて伯爵には上げるとするか」
「すぐに上げては、国内貴族からの反発が起きるでしょう。宰相殿と時期を調節した方がよいかと思われます」
「宰相か…あやつはけち臭いからのう。いつになることやら…」
爵位をむやみに上げることによる反発や費用を考えれば、当然のことなのだがな。まあ、年度の収支報告を聞き流す陛下には難しい話なのかもしれないが。
「兄上、父上を説得してくださりありがとうございます」
「礼には及ばぬ。それより、今後は自分でも事態が収拾できるように努めるのだぞ?」
「はい!」
直ぐに部屋に戻るつもりが、時間を食ってしまったな。さっさと部屋に戻るとしよう。
「まあ、このタイミングで確保できただけでも良しとしよう」
流石にここに侍女を連れてくるわけにもいかず、とりあえず自分で紅茶を入れる。
「あ、あの…」
「ああ、カノン嬢はさぞびっくりしたことだろう。私も、何とか弟の晴れ舞台に駆け付けたいと日程を調整してきてみればあの騒ぎだからな」
「いえ、その…婚約については私もエディン様と仲良くされているようでしたので驚きはしなかったのですが、本当に私を婚約者にするつもりですか?」
「もちろんだよ。あそこまで公の場で宣言してしまっては、よしんば君が婚約相手を見つけられたとしても後々まで噂が付いて来てしまう。それを考えれば相手方からも無茶な要求をされかねない。弟君もさぞ苦労するだろう」
「そ、それは困ります!」
事前の情報通りだな。貴族としての常識はかけているが、身内に対しては強い意志を示す。もっとも、流石にこの調子では正妃は務まらないだろう。身分といい本当に私は恵まれている。
「だろう?それならば多少の紆余曲折は経たとしても、私の婚約者でいる方があなたにとても良いことだ」
「ですが、エレンディア様は?」
「彼女も貴族の令嬢だ。それにカノン嬢と同じ女性ならばこそ、この度の弟の仕出かしたことの重大さに理解を示してくれるだろう」
ちらりとエレンディアの方を見ながら話す。彼女としても突然のことで言いたいことはあるだろうが、流石に私に抗議する訳にも行くまい。
「え、ええ、確かにあのままでは普通の貴族令嬢であれば、そのまま相手も見つからずということになりかねませんでした。それにクレヒルト殿下もですが、レスター殿下も先程発言された以上はカノン様が新たに婚約者を見つけることは不可能かと」
「そうなんでしょうか?」
「はい。2度の王族との婚約。それも、2度目は王族から貴族たちの前で宣言されたものを反故にするということは、よほど本人に問題があると思われてしまうでしょう。それ以前に、王族が手に入れられなかった相手と思われてしまっては、恐れ多くて手が出せませんわ」
「私、そういうことには疎くて…。丁寧にありがとうございます」
「い、いえ…」
社交の場にもカノン嬢はめったに姿を現さないから、エレンディアとの相性はどうかと思ったがそこまで悪くはないらしい。控えめながらも貴族としての教養がしっかりしているエレンディアさえいれば、政務はなんとかなるだろうし、問題はなさそうだな。
「カノン嬢の御父上には許可もいただいたし、後は大公殿だけだな。どう思うエレンディア?」
「多分反対はしないと思います。これが侯爵家のものであったり、普通の令嬢であれば反対したでしょうが、カノン嬢です。彼女の功績をもってしても、第2夫人という立場になるということはある意味、我が家にとっては名誉ですから」
「なるほどな。では、もし反対しそうならそのように言ってくれ。手回しをしたいところだが、他にも気になることがあって手が回らん」
「分かりました。そのように致します」
「お2人ともすごいです!まだ、後を継がれていないのにそんなに考えられているなんて」
「そう言われると悪い気はせんな」
「ええ」
パーティーが行われているであろう時間を雑談という自己紹介で過ごした私たちは一旦解散する。
「今日は楽しかったです。こんなこと言うと変ですけど、初めてパーティーが楽しく感じられました」
「それはよかった。今後はこちらから出席の文を出すことになると思うので、頼むぞ」
「は、はい」
「私も次また会う時を楽しみにしていますわ」
カノン嬢が出て行ったところで扉が閉まる。
「どうした?」
「それで、タイミングよく現れたということは、今回の件をご存じだったのでしょう?」
「…まあな。だが、流石に詳細まではつかんではいない」
「そうでしたか。しかし、顔がにやけていますわよ?」
「ん?今日はよく言われるな」
「あらまあ、皆さん殿下をよく見られているのですね」
「まあ、そういうことだ。これからも良しく頼む」
「分かりました。それでは…」
エレンディアも出て行き部屋に一人残る。
「そんなに笑っているのだろうか?」
改めて鏡を見る。特に笑っている様子はないように思うのだが…。
「よろしいでしょうか?」
「シリウスか、何だ?」
「はっ!先ほど数日中の動向をまとめてまいりました」
「頼む」
「まずアルター侯爵ですが、やはりエディン嬢には関連しておりますが、子爵の方とは全く繋がりがない模様です」
「そうか、まあ彼は王族派であるし順当だな」
「続いてコンタクトを取っている貴族については、伯爵家に数名いるようです。おそらくその中の誰かではないかと…」
「わかった。引き続き調査を、それとこの件に関しては宰相殿にも伝えてくれ」
「了解しました。後はカノン嬢の研究成果についてですが、一部の職員に不審な点があったので当たっています」
「分かった。今後も考えられることであるし、理由を探り引き込めるようなら引き込め」
「はっ!ではまた…」
「うむ」
進捗は鈍いものの着々と情報は集まっている様だ。とりあえず、ここに居ても仕方ない。一旦自室に戻って情報を再確認するとしよう。
「おおっ!レスター、お前からも何か言ってはくれんか?」
部屋を出たところで面倒な場面に出くわした。まさか、陛下がまだ居るとは…。
「何のことですか陛下?」
「無論、クレヒルトのことだ。エディン嬢の功績が確かだとしても、王族が子爵令嬢を第1夫人に据えるなど考えなおせと!」
何かと思ったら、そんなことか。確かに体面上、子爵家の令嬢と言うのは良くはないが他国でもないわけではない。無論、それに見合った働きをした家が条件ではあるが。
「陛下、お言葉ですが他国でも子爵家と王族の婚姻がないわけではありません。クレヒルトの言葉が真実であれば特に問題はないかと…」
「しかしだな。エレステン伯爵家は曲がりなりにも、いくつもの役職を歴任した名家だ。それに比べてエディン嬢の家はろくに成果も残しておらん。流石にどうかと思うのだ」
「しかし、先ほど宣言も出していることですし、ここにきて相手を変えるなどということになれば、内外から相応の反発があると思われますが?」
「ううむ、確かに」
「特に魔導王国については女王も歴史上多く、かなりの反発が予想されます」
他国とはいえ、母上の母国である魔導王国はこういうことには敏感だ。王女であった母上も実は不当な扱いを受けているのではと書簡を渡されても困る。
「それは困る。…仕方がないか。せめて伯爵には上げるとするか」
「すぐに上げては、国内貴族からの反発が起きるでしょう。宰相殿と時期を調節した方がよいかと思われます」
「宰相か…あやつはけち臭いからのう。いつになることやら…」
爵位をむやみに上げることによる反発や費用を考えれば、当然のことなのだがな。まあ、年度の収支報告を聞き流す陛下には難しい話なのかもしれないが。
「兄上、父上を説得してくださりありがとうございます」
「礼には及ばぬ。それより、今後は自分でも事態が収拾できるように努めるのだぞ?」
「はい!」
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