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「次っ!なんだ次は商人か、女の御者とは珍しいな」
「旦那様のお嬢様をお連れしているので…」
「そうか。通行料は銀貨1枚だ」
「ご確認を」
「うむ、通ってよし!」
門番の方の元気な声とともに街に入る許可が下りた。ここまで短いようで長かった。
「それではお嬢様たちは少々お待ちを。私が領主の邸の場所を調べてきますので」
言うや否やアーニャは素早く馬車を停車所に留めて、駆けていった。ここでいくらかお金を払うと馬車を留め置けるのだという。
「アーニャが帰ってくるまで暇ですね」
「まあ、土地勘もありませんし、はぐれては困りますからおとなしく待ちましょう」
「あ~あ、これが宿でも決まってれば、ここの食材でも見てくるんだがなぁ」
「ライグなら今でも飛び出しそうね」
「本当は昨日も色々見たかったんですよ。交易都市っていうのは隣同士のものが多くなりますが、それ以上にはるか向こうの国の食材とかもあったりして行きたかったんですよね」
「確かにあなたは邸に来てからろくに仕入れに行ってないものね」
「商人から話を聞いたり持ってきてもらったりではな。高くなるし、鮮度も落ちる」
「そんなに変わるの?」
「鮮度に関して言えば商人たちは売りながら来ますからね。ただでさえ隣の領で売りながら来るものだから変わりますよ。それに向こうは王都向けの商品もですけど、その奥の公爵領への品も多く持ってきますからね。あそこは変わったものや多少値の張るものでもよく売れますから」
「公爵様もお金遣いが荒いと評判でしたからね」
「そうなんだ。みんな詳しいね」
「これぐらい、庶民でも知っていますよ。やはりこれからはもっと勉強しませんと」
「べつにいいよ~。この街でひっそり暮らせば」
ああでもないこうでもないとこれからのことを話しているとアーニャが戻ってきた。
「アーニャどうでしたか?」
「はい、街の西側の奥にあるようです。かつて戦争時にはそこから王国内に援軍を要請した名残ですね」
相変わらずの謎追加説明までついてアーニャが教えてくれる。
「じゃあ、領主様のところに向かいましょう」
「はっ!」
アーニャが料金を支払って、再び馬車を引いていく。目指すは街の西側だ。
「立派な建物が増えてきましたね。それも、兵舎のようなものもちらほら」
「そうみたいね。街の外見同様ごつい方なのかな?」
「急がなくとも会えますよ。それよりあまり顔を出さないでください。こんなところで揉め事になりたくはないですから」
「は~い」
しばらく行くと、豪華な建物も増えてきた。いわゆる貴族街のようなものだろう。すると急に馬車が止まる。
「まて!この先は領主様の邸に通じる道だ。通行証を」
「これでしょうか?」
「これは街に入るためのものだ。ここには別の許可証がいる」
アーニャが私に目配せする。
「すみません。こちらの領主に会えるようにお手紙を頂いているのですが…」
馬車から顔を少し出してアーニャに渡してもらう。
「こ、この紋章は!失礼いたしました。お通り下さい」
「兵士さんやけに物分かり良かったわね」
「きっと、あの方と領主様は仲がよろしいのでしょう」
「そうだな。でなければ最悪中を検められたりするからな」
「みんな大変ですね」
「お嬢様もそうですよ。他人事みたいに…」
「私は手紙なんて書かなかったから知らなくて」
「…お嬢様おいたわしや」
そこまで言われるとほんとに私がかわいそうな子になってくるからやめて欲しい。
「お嬢様、着きました」
アーニャに告げられて目の前の建物を見る。…大きい。我が家とはスケールが違う。豪華な作りではなく威厳のあるたたずまいだ。外からでも戦うことが考えられている作りなのが分かる。
「どなたでしょうか?今日はお約束されている貴族の方はいらっしゃらないはずですが?」
「申し訳ございません。先ぶれを出す時間がなかったもので。こちらの手紙を見せれば領主様にお会いできると国境警備隊の隊長殿に聞いたもので…」
「確認させていただいてよろしいですか?」
「どうぞ」
アーニャは門にいた兵士に手紙を渡す。兵士は手紙の封蝋を見ると驚いた顔をした。
「こ、これは失礼しました。すぐに家令を呼んでまいります」
「何やらえらくいい待遇みたいね」
「やはりそれなりの身分の方だったという事でしょう」
門番の方はすぐに邸に入ると、しばらくして執事の男性とともに戻ってきた。
「遠いところようこそお越しくださいました。私がこの邸の執事のアルフレッドでございます。申し訳ございませんが旦那様は現在外出中でして、戻られるまでごゆっくりお過ごしください」
「ご丁寧にありがとうございます。ただ、申し訳ありません。こちらも急いでおりまして…いつお戻りに?」
「御心配には及びません。夕方には帰宅されるかと思いますので、夕飯の時にでもお話の機会を設けます。ささっ、馬車をこちらへ。荷物の方はいかがいたしましょう?運んでも差し支えありませんかな?」
「…構いませんので、まとめて泊めていただく部屋へ運んでください」
「畏まりました。そこの荷物をお部屋へ」
執事さんがそういうと奥に控えていたメイドと他の執事がすぐさま運んでいく。こういうところの手際を見てもここの領主は素晴らしいのだと思う。
「それではお部屋に案内いたします。各々方に一部屋でよろしいでしょうか?」
「…いいえ。後ろの二人は夫婦ですので同室で。私とお嬢様も1部屋で構いません。私はベッドもなくても結構です」
「お客様をもてなすのにそういう訳にはまいりません。そうですな、隣に部屋を取りますので名目上はあなた様のお部屋という事でお願いします」
「分かりました。では、こちらの荷物以外は夫妻のところへお願いいたします」
「畏まりました。それではどうぞお邸の方へ…」
案内されたお邸の中は広くて清潔だった。階段を上って少し奥の部屋に通される。
「一番奥がお嬢様の、その手前がそちらの女性の方、最後に夫妻のお部屋でございます。何かありましたらお申しつけください」
そこで私はまだ名乗っていないことに気づいた。
「あ、失礼しました。私は…」
「構いません。手紙にも詮索不要とありましたので」
「あ、それと一つだけお願いが…」
「何でございましょう?」
「っその、長旅で汗をかいてしまってお風呂とか入ったりできますか?」
「お嬢様!」
「それは、大変申し訳ございませんでした。ご令嬢であればさぞ不快でしょう。すぐに用意させますのでお部屋でお待ちください」
アルフレッドさんが準備をしてくれる間にお風呂の準備をするため、各々部屋に入っていく。私はアーニャと一緒だ。
「お嬢様、こちらがまだ安全と決まったわけではありません。注意してください」
「でも、アーニャも気になるでしょう?」
「このぐらいの気温であればメイドは汗をかきませんので」
「すご~い。メイドってそんな能力あるんだ」
「それよりも準備をしましょう。特に持って行くものもありませんし、下着ぐらいですね」
「下着かぁ~。確かにサイズとか判らないもんね」
「分かったら。すぐに用意してください。ちらっと庭とかも見たいので」
「お庭に興味あるの、アーニャ?」
「ええまあ、ここからどう見えるとかですが」
とりあえず用意をした私たちのもとに、準備ができたとすぐに知らせが来た。
「それではご案内いたします」
廊下に出るとライグ夫妻も準備ができている様だ。入口のところでライグとは別れ、私たち3人とも同じお風呂へ。
「おっき~!」
「お嬢様!はしたないです!」
「でもでも、リーナ。こんなに広いお風呂、家にはなかったもの」
「こちらはいつも領主様がお客様に用意しているお風呂になります」
「ここの領主様って人をもてなすのが好きなのね。ありがとう」
「いえ…それでは私たちはこれで」
「では遠慮なく」
そういうとメイドさんたちは出ていく。残された私達もとい私ははしゃいでお風呂に入った。
「広~い!」
「お嬢様、くれぐれも泳ぎなどなされないよう」
「大丈夫。そんなの1年前の話だよ」
「1年前からさほど成長しておられないから言っているのです」
「それにしてもここはすごいですね。客用という事は常日頃使う訳でもないのに手入れがきちんとされている」
「アーニャったらそんなこと気にしてないで早く入ろうよ~」
「はっ」
アーニャたちに洗われて私は一足お先に湯舟へ。普段なら別々に入るんだけど、事情が事情だけにあまり相手の言うことにケチ付けても仕方ないしね。
「それでは失礼します。本当はお嬢様と一緒など許されないことですが…」
「そうですね」
「私は気にしないよ。それに今は一応商人風なんだし、そこまで気にしなくっても」
「そうですね」
お風呂を満喫した私たちはゆっくり上がり、着替える。この後はまだ夕食も控えているので、一応私はドレス。リーナとアーニャも使用人用の服に着替えている。
「ライグはいないみたいね」
「流石にもう上がっているでしょうから部屋だと思います」
「散歩…という訳にもいかないでしょうから、私たちも時間まで部屋にいましょう」
部屋にこもること小一時間。うっすらと夕暮れ時が近づいてきたころ、邸の気配が変わった。
「どうやら、主人が帰ってきたようですよ」
「そうなのアーニャ?」
「ええ、今日中にお話しできそうです」
それから程なくして邸の主人が帰ってきたというので、夕食までもうしばらくお待ちくださいと連絡があった。
「旦那様のお嬢様をお連れしているので…」
「そうか。通行料は銀貨1枚だ」
「ご確認を」
「うむ、通ってよし!」
門番の方の元気な声とともに街に入る許可が下りた。ここまで短いようで長かった。
「それではお嬢様たちは少々お待ちを。私が領主の邸の場所を調べてきますので」
言うや否やアーニャは素早く馬車を停車所に留めて、駆けていった。ここでいくらかお金を払うと馬車を留め置けるのだという。
「アーニャが帰ってくるまで暇ですね」
「まあ、土地勘もありませんし、はぐれては困りますからおとなしく待ちましょう」
「あ~あ、これが宿でも決まってれば、ここの食材でも見てくるんだがなぁ」
「ライグなら今でも飛び出しそうね」
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「確かにあなたは邸に来てからろくに仕入れに行ってないものね」
「商人から話を聞いたり持ってきてもらったりではな。高くなるし、鮮度も落ちる」
「そんなに変わるの?」
「鮮度に関して言えば商人たちは売りながら来ますからね。ただでさえ隣の領で売りながら来るものだから変わりますよ。それに向こうは王都向けの商品もですけど、その奥の公爵領への品も多く持ってきますからね。あそこは変わったものや多少値の張るものでもよく売れますから」
「公爵様もお金遣いが荒いと評判でしたからね」
「そうなんだ。みんな詳しいね」
「これぐらい、庶民でも知っていますよ。やはりこれからはもっと勉強しませんと」
「べつにいいよ~。この街でひっそり暮らせば」
ああでもないこうでもないとこれからのことを話しているとアーニャが戻ってきた。
「アーニャどうでしたか?」
「はい、街の西側の奥にあるようです。かつて戦争時にはそこから王国内に援軍を要請した名残ですね」
相変わらずの謎追加説明までついてアーニャが教えてくれる。
「じゃあ、領主様のところに向かいましょう」
「はっ!」
アーニャが料金を支払って、再び馬車を引いていく。目指すは街の西側だ。
「立派な建物が増えてきましたね。それも、兵舎のようなものもちらほら」
「そうみたいね。街の外見同様ごつい方なのかな?」
「急がなくとも会えますよ。それよりあまり顔を出さないでください。こんなところで揉め事になりたくはないですから」
「は~い」
しばらく行くと、豪華な建物も増えてきた。いわゆる貴族街のようなものだろう。すると急に馬車が止まる。
「まて!この先は領主様の邸に通じる道だ。通行証を」
「これでしょうか?」
「これは街に入るためのものだ。ここには別の許可証がいる」
アーニャが私に目配せする。
「すみません。こちらの領主に会えるようにお手紙を頂いているのですが…」
馬車から顔を少し出してアーニャに渡してもらう。
「こ、この紋章は!失礼いたしました。お通り下さい」
「兵士さんやけに物分かり良かったわね」
「きっと、あの方と領主様は仲がよろしいのでしょう」
「そうだな。でなければ最悪中を検められたりするからな」
「みんな大変ですね」
「お嬢様もそうですよ。他人事みたいに…」
「私は手紙なんて書かなかったから知らなくて」
「…お嬢様おいたわしや」
そこまで言われるとほんとに私がかわいそうな子になってくるからやめて欲しい。
「お嬢様、着きました」
アーニャに告げられて目の前の建物を見る。…大きい。我が家とはスケールが違う。豪華な作りではなく威厳のあるたたずまいだ。外からでも戦うことが考えられている作りなのが分かる。
「どなたでしょうか?今日はお約束されている貴族の方はいらっしゃらないはずですが?」
「申し訳ございません。先ぶれを出す時間がなかったもので。こちらの手紙を見せれば領主様にお会いできると国境警備隊の隊長殿に聞いたもので…」
「確認させていただいてよろしいですか?」
「どうぞ」
アーニャは門にいた兵士に手紙を渡す。兵士は手紙の封蝋を見ると驚いた顔をした。
「こ、これは失礼しました。すぐに家令を呼んでまいります」
「何やらえらくいい待遇みたいね」
「やはりそれなりの身分の方だったという事でしょう」
門番の方はすぐに邸に入ると、しばらくして執事の男性とともに戻ってきた。
「遠いところようこそお越しくださいました。私がこの邸の執事のアルフレッドでございます。申し訳ございませんが旦那様は現在外出中でして、戻られるまでごゆっくりお過ごしください」
「ご丁寧にありがとうございます。ただ、申し訳ありません。こちらも急いでおりまして…いつお戻りに?」
「御心配には及びません。夕方には帰宅されるかと思いますので、夕飯の時にでもお話の機会を設けます。ささっ、馬車をこちらへ。荷物の方はいかがいたしましょう?運んでも差し支えありませんかな?」
「…構いませんので、まとめて泊めていただく部屋へ運んでください」
「畏まりました。そこの荷物をお部屋へ」
執事さんがそういうと奥に控えていたメイドと他の執事がすぐさま運んでいく。こういうところの手際を見てもここの領主は素晴らしいのだと思う。
「それではお部屋に案内いたします。各々方に一部屋でよろしいでしょうか?」
「…いいえ。後ろの二人は夫婦ですので同室で。私とお嬢様も1部屋で構いません。私はベッドもなくても結構です」
「お客様をもてなすのにそういう訳にはまいりません。そうですな、隣に部屋を取りますので名目上はあなた様のお部屋という事でお願いします」
「分かりました。では、こちらの荷物以外は夫妻のところへお願いいたします」
「畏まりました。それではどうぞお邸の方へ…」
案内されたお邸の中は広くて清潔だった。階段を上って少し奥の部屋に通される。
「一番奥がお嬢様の、その手前がそちらの女性の方、最後に夫妻のお部屋でございます。何かありましたらお申しつけください」
そこで私はまだ名乗っていないことに気づいた。
「あ、失礼しました。私は…」
「構いません。手紙にも詮索不要とありましたので」
「あ、それと一つだけお願いが…」
「何でございましょう?」
「っその、長旅で汗をかいてしまってお風呂とか入ったりできますか?」
「お嬢様!」
「それは、大変申し訳ございませんでした。ご令嬢であればさぞ不快でしょう。すぐに用意させますのでお部屋でお待ちください」
アルフレッドさんが準備をしてくれる間にお風呂の準備をするため、各々部屋に入っていく。私はアーニャと一緒だ。
「お嬢様、こちらがまだ安全と決まったわけではありません。注意してください」
「でも、アーニャも気になるでしょう?」
「このぐらいの気温であればメイドは汗をかきませんので」
「すご~い。メイドってそんな能力あるんだ」
「それよりも準備をしましょう。特に持って行くものもありませんし、下着ぐらいですね」
「下着かぁ~。確かにサイズとか判らないもんね」
「分かったら。すぐに用意してください。ちらっと庭とかも見たいので」
「お庭に興味あるの、アーニャ?」
「ええまあ、ここからどう見えるとかですが」
とりあえず用意をした私たちのもとに、準備ができたとすぐに知らせが来た。
「それではご案内いたします」
廊下に出るとライグ夫妻も準備ができている様だ。入口のところでライグとは別れ、私たち3人とも同じお風呂へ。
「おっき~!」
「お嬢様!はしたないです!」
「でもでも、リーナ。こんなに広いお風呂、家にはなかったもの」
「こちらはいつも領主様がお客様に用意しているお風呂になります」
「ここの領主様って人をもてなすのが好きなのね。ありがとう」
「いえ…それでは私たちはこれで」
「では遠慮なく」
そういうとメイドさんたちは出ていく。残された私達もとい私ははしゃいでお風呂に入った。
「広~い!」
「お嬢様、くれぐれも泳ぎなどなされないよう」
「大丈夫。そんなの1年前の話だよ」
「1年前からさほど成長しておられないから言っているのです」
「それにしてもここはすごいですね。客用という事は常日頃使う訳でもないのに手入れがきちんとされている」
「アーニャったらそんなこと気にしてないで早く入ろうよ~」
「はっ」
アーニャたちに洗われて私は一足お先に湯舟へ。普段なら別々に入るんだけど、事情が事情だけにあまり相手の言うことにケチ付けても仕方ないしね。
「それでは失礼します。本当はお嬢様と一緒など許されないことですが…」
「そうですね」
「私は気にしないよ。それに今は一応商人風なんだし、そこまで気にしなくっても」
「そうですね」
お風呂を満喫した私たちはゆっくり上がり、着替える。この後はまだ夕食も控えているので、一応私はドレス。リーナとアーニャも使用人用の服に着替えている。
「ライグはいないみたいね」
「流石にもう上がっているでしょうから部屋だと思います」
「散歩…という訳にもいかないでしょうから、私たちも時間まで部屋にいましょう」
部屋にこもること小一時間。うっすらと夕暮れ時が近づいてきたころ、邸の気配が変わった。
「どうやら、主人が帰ってきたようですよ」
「そうなのアーニャ?」
「ええ、今日中にお話しできそうです」
それから程なくして邸の主人が帰ってきたというので、夕食までもうしばらくお待ちくださいと連絡があった。
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