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古い倉庫
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先輩は吸血鬼なのかもしれない。
そんな事を考え始めてから俺はずっとグルグルしてる。
吸血鬼なんて眉唾だし、この現代社会にいる訳がない、いてたまるかって。
そう思ってたのに、先輩が吸血鬼なら……俺は受け入れるしかない。
正直怖さはまだある。あの空き教室で血を吸われたっぽい人たちは倒れてたし、先輩の顔も怖かった。
いつも俺に向けてくれる優しい顔じゃなくて、ひんやりして怒ったような顔。
俺があんな顔されたら怖くて泣くかもしれない。ってか、先輩に冷たくされただけで泣く自信ある。
優しい先輩しか知らないんだから、仕方ないじゃん。
「先輩、質問があります」
「はい、どうぞ?」
いつものようにお菓子を貰いに行ったあと、用事があるからと途中まで一緒に歩いていた先輩に挙手してそう言うと首を傾げられた。
「先輩が言う匂いって、その日によって変わったりする?」
「変わる、と言うか……基本的には甘くていい匂いなんだけど、場合によっては濃くなったり薄くなったりはするかな」
「どういう時?」
「深月くんが興奮したり、怒ったりした時はちょっと違う匂いが混じって濃くなったりするかな」
「違う匂い?」
「どう言えばいいか分からないけど、いい匂いの中に苦い物が混じるって言うのかな。でもホント、微々たるものだよ」
「そうなんだ」
自分じゃ分からないだけに、どう答えたらいいかも分かんない。
じゃあ何で聞いたんだって言われたら気になったからなんだけど。
「でもそれって、香水みたいにキツイとか匂い過ぎて気持ち悪いとかなんないのか?」
「気持ち悪いはないけど…そうだね、万が一にも密閉された空間で深月くんの匂いが充満してたら……ヤバいかな」
「それって、俺が閉じ込められたらって事? そうしたらどうなるんだ?」
「おかしくなる」
「へ?」
「……深月くんを襲っちゃうかもね」
「…………」
「冗談だよ。何でも素直に信じちゃダメだよ?」
そんな事言われても……。
先輩が吸血鬼なんじゃないかって考えがまたぶり返して来た。でも受け入れるのと、自分が襲われるかもしれないって言うのは話が別だ。
だって、噛まれるとか痛そうだし。
まぁとりあえず、閉じ込められなければいいだけの話だよな。
脳内会議を終えた俺が一人で頷いてる事に気付いた先輩は、俺の頭をポンポンと軽く叩いて笑った。
「閉じ込められるなんて、早々ある訳じゃないし大丈夫だよ」
「だよな、ある訳ないよな!」
「そうそう」
そうだそうだ。人が閉じ込められるとか、誰かがわざとでもしない限りないない。
「それじゃあ、俺はこっちに用があるから」
「あ、うん。じゃあまた明日な」
「また明日」
階段の前で手を振って先輩と別れた俺は、お菓子の袋を見てルンルンで階段を上がり始めた。
お菓子って何でこうテンション上げてくれるんだろうな。お菓子考えた人は神だよ、ホント。
「……うわ、なんか天気悪ー」
雨が降るかもなーって呟きながら階段を上がる俺は、この数日後に自分の身にとんでもない事が起きる事をまだ知らなかったのだ。
……なんちゃって。
雨は嫌いじゃないんだけど、雨の日は雲が厚すぎて全体的に暗くなるから好きじゃない。
オマケにチップス系のお菓子もしっけるし。開けたら最後だな、コレ。
「あ、元橋、ちょうどいいところに。手、空いてるか?」
「羽柴先生? うん、空いてる」
「良かった。悪いんだけど、ちょっと手伝ってくれるか?」
「? 俺が出来る事ならいいよ」
手伝いでまた重たいもの何往復とかだったらすぐ逃げるけど、どうやら羽柴先生は別のところの用事をするらしい。
こっちと言われてついて行くと、校舎の端にある古い倉庫まで連れて行かれた。
入口は分厚い板で出来た扉で閉じられてて、教室の扉とは違って窓がついてない。
先生は鍵を開けて重そうなドアを開けると俺にマスクを渡して来た。
「ここの資材を整理して、新しい物を入れるってなってな。埃が立つからこれをしなさい」
「全部運び出すの?」
「とりあえず、大きな物からやっていこう」
「分かったー」
貰ったマスクは大きかったから、耳にかける紐のところを結んで調整した。
今は使っていない跳び箱とか、ボールカゴとか結構大きなものあって、先生と一緒にえっちらおっちら運び出す。
絶対制服真っ黒になるやつだ、これ。また翔吾が母さん化する。
「元橋、このダンボールに細々したものを詰めておいてくれるか。先生、用務員室行ってもっとダンボール貰ってくるから」
「あーい」
それくらいなら俺にも出来る。
言われた通り、ちっちゃいものをダンボールに詰めていってたんだけど、あっという間にいっぱいになった。
これ、外に出した方がいいよな。…………ダメだ、動かん。
えー? ちっちゃいのしか入ってないのになんで?
俺は不思議に思いながら押したり引っ張ったりしてみたけど、やっぱり動かなくてムッとする。
「もういいや、先生にやらせる」
それからまた大きい物を引っ張りだそうとした瞬間、いきなり大きな音を立てて扉が閉まった。
「!? 」
びっくりした……何で扉閉まったんだ?
俺は疑問に思いながらももう一度開ける為にドアノブを回した。でも空回るだけて開いてる感覚がない。
窓はないけど、幸いな事にまだ蛍光灯がついてるから俺の心は比較的落ち着いてる。でも、これってもしかして俺、閉じ込められた?
いやいや、そんなまさかー…………え、先輩との会話フラグだった?
とりあえず先生が戻って来てくれればどうにかなるだろうし、する事のない俺は大きいものを入口の近くに持って行く事に決めた。効率アップだ。
「重いもんはパスで。こういうのはもうちょっと力がある奴に頼まないとダメだよ、先生」
一人しかいないし出られないしで脳内の先生と会話する俺、ちょー寂しい奴。先生あとどれくらいで戻ってくるんだろ。
「ん?」
ちょっと疲れたからしゃがんで休憩してると、頭の上からパシッて音が聞こえて顔を上げた。
なんか、蛍光灯のとこから変な音聞こえる。
立ち上がり、少しだけ離れて見ていると、さらにパシッ、パシッて数回聞こえて、大きくパンッて音がした瞬間蛍光灯が割れた。
「……え」
途端に倉庫内が真っ暗になる。
サーっと血の気が引くのが分かった。
俺は、暗い場所がダメなんだ。
そんな事を考え始めてから俺はずっとグルグルしてる。
吸血鬼なんて眉唾だし、この現代社会にいる訳がない、いてたまるかって。
そう思ってたのに、先輩が吸血鬼なら……俺は受け入れるしかない。
正直怖さはまだある。あの空き教室で血を吸われたっぽい人たちは倒れてたし、先輩の顔も怖かった。
いつも俺に向けてくれる優しい顔じゃなくて、ひんやりして怒ったような顔。
俺があんな顔されたら怖くて泣くかもしれない。ってか、先輩に冷たくされただけで泣く自信ある。
優しい先輩しか知らないんだから、仕方ないじゃん。
「先輩、質問があります」
「はい、どうぞ?」
いつものようにお菓子を貰いに行ったあと、用事があるからと途中まで一緒に歩いていた先輩に挙手してそう言うと首を傾げられた。
「先輩が言う匂いって、その日によって変わったりする?」
「変わる、と言うか……基本的には甘くていい匂いなんだけど、場合によっては濃くなったり薄くなったりはするかな」
「どういう時?」
「深月くんが興奮したり、怒ったりした時はちょっと違う匂いが混じって濃くなったりするかな」
「違う匂い?」
「どう言えばいいか分からないけど、いい匂いの中に苦い物が混じるって言うのかな。でもホント、微々たるものだよ」
「そうなんだ」
自分じゃ分からないだけに、どう答えたらいいかも分かんない。
じゃあ何で聞いたんだって言われたら気になったからなんだけど。
「でもそれって、香水みたいにキツイとか匂い過ぎて気持ち悪いとかなんないのか?」
「気持ち悪いはないけど…そうだね、万が一にも密閉された空間で深月くんの匂いが充満してたら……ヤバいかな」
「それって、俺が閉じ込められたらって事? そうしたらどうなるんだ?」
「おかしくなる」
「へ?」
「……深月くんを襲っちゃうかもね」
「…………」
「冗談だよ。何でも素直に信じちゃダメだよ?」
そんな事言われても……。
先輩が吸血鬼なんじゃないかって考えがまたぶり返して来た。でも受け入れるのと、自分が襲われるかもしれないって言うのは話が別だ。
だって、噛まれるとか痛そうだし。
まぁとりあえず、閉じ込められなければいいだけの話だよな。
脳内会議を終えた俺が一人で頷いてる事に気付いた先輩は、俺の頭をポンポンと軽く叩いて笑った。
「閉じ込められるなんて、早々ある訳じゃないし大丈夫だよ」
「だよな、ある訳ないよな!」
「そうそう」
そうだそうだ。人が閉じ込められるとか、誰かがわざとでもしない限りないない。
「それじゃあ、俺はこっちに用があるから」
「あ、うん。じゃあまた明日な」
「また明日」
階段の前で手を振って先輩と別れた俺は、お菓子の袋を見てルンルンで階段を上がり始めた。
お菓子って何でこうテンション上げてくれるんだろうな。お菓子考えた人は神だよ、ホント。
「……うわ、なんか天気悪ー」
雨が降るかもなーって呟きながら階段を上がる俺は、この数日後に自分の身にとんでもない事が起きる事をまだ知らなかったのだ。
……なんちゃって。
雨は嫌いじゃないんだけど、雨の日は雲が厚すぎて全体的に暗くなるから好きじゃない。
オマケにチップス系のお菓子もしっけるし。開けたら最後だな、コレ。
「あ、元橋、ちょうどいいところに。手、空いてるか?」
「羽柴先生? うん、空いてる」
「良かった。悪いんだけど、ちょっと手伝ってくれるか?」
「? 俺が出来る事ならいいよ」
手伝いでまた重たいもの何往復とかだったらすぐ逃げるけど、どうやら羽柴先生は別のところの用事をするらしい。
こっちと言われてついて行くと、校舎の端にある古い倉庫まで連れて行かれた。
入口は分厚い板で出来た扉で閉じられてて、教室の扉とは違って窓がついてない。
先生は鍵を開けて重そうなドアを開けると俺にマスクを渡して来た。
「ここの資材を整理して、新しい物を入れるってなってな。埃が立つからこれをしなさい」
「全部運び出すの?」
「とりあえず、大きな物からやっていこう」
「分かったー」
貰ったマスクは大きかったから、耳にかける紐のところを結んで調整した。
今は使っていない跳び箱とか、ボールカゴとか結構大きなものあって、先生と一緒にえっちらおっちら運び出す。
絶対制服真っ黒になるやつだ、これ。また翔吾が母さん化する。
「元橋、このダンボールに細々したものを詰めておいてくれるか。先生、用務員室行ってもっとダンボール貰ってくるから」
「あーい」
それくらいなら俺にも出来る。
言われた通り、ちっちゃいものをダンボールに詰めていってたんだけど、あっという間にいっぱいになった。
これ、外に出した方がいいよな。…………ダメだ、動かん。
えー? ちっちゃいのしか入ってないのになんで?
俺は不思議に思いながら押したり引っ張ったりしてみたけど、やっぱり動かなくてムッとする。
「もういいや、先生にやらせる」
それからまた大きい物を引っ張りだそうとした瞬間、いきなり大きな音を立てて扉が閉まった。
「!? 」
びっくりした……何で扉閉まったんだ?
俺は疑問に思いながらももう一度開ける為にドアノブを回した。でも空回るだけて開いてる感覚がない。
窓はないけど、幸いな事にまだ蛍光灯がついてるから俺の心は比較的落ち着いてる。でも、これってもしかして俺、閉じ込められた?
いやいや、そんなまさかー…………え、先輩との会話フラグだった?
とりあえず先生が戻って来てくれればどうにかなるだろうし、する事のない俺は大きいものを入口の近くに持って行く事に決めた。効率アップだ。
「重いもんはパスで。こういうのはもうちょっと力がある奴に頼まないとダメだよ、先生」
一人しかいないし出られないしで脳内の先生と会話する俺、ちょー寂しい奴。先生あとどれくらいで戻ってくるんだろ。
「ん?」
ちょっと疲れたからしゃがんで休憩してると、頭の上からパシッて音が聞こえて顔を上げた。
なんか、蛍光灯のとこから変な音聞こえる。
立ち上がり、少しだけ離れて見ていると、さらにパシッ、パシッて数回聞こえて、大きくパンッて音がした瞬間蛍光灯が割れた。
「……え」
途端に倉庫内が真っ暗になる。
サーっと血の気が引くのが分かった。
俺は、暗い場所がダメなんだ。
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