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視察と街散策
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翌日、朝食後にすぐに視察に行くというレイフォードを見送るべくソフィアと共にエントランスに向かったら「一緒に行くか?」と言われルカは間髪入れずに頷いた。
急いで準備を済ませ、フード付きのローブを羽織って戻って来ると髪を撫でられフードが被せられる。
見送ってくれるソフィアや屋敷の使用人たちに手を振り街まで出て来てから三十分経つ頃には、ルカは違和感を覚えていた。
(……精霊が少ない?)
城にいる時は傍にいた存在がこの街に来てからほとんど感じなくて首を傾げる。別にルカが嫌われていない事は時々寄ってくる精霊の様子から感じ取れるが、数が圧倒的に少なかった。
きょろきょろと上を見ながら視線を彷徨わせていると、レイフォードに肩を抱き寄せられる。
「どうした?」
「精霊が全然いないなって…」
「ああ。それが視察の目的だからな」
「街によって差があるとかじゃなくて、やっぱり少ないんだ?」
「どうしてか減ったらしい」
レイフォードの言い方だとあまりない事態のようで、何かあるのかともう一度空を見上げて精霊の表情を見るけど特に怖がったりもしていないようで更に不思議に思う。
悪い事が起きている訳ではないのだろうか。
「おいで。せっかくだ、ルカは街を楽しむといい」
「でも…」
「もし手を借りたくなったら言うから」
「…それなら…」
精霊が見えるようになった今、理由も分からず減ったと聞いて楽しむなど出来る気がしない。
だが心配で眉尻を下げるルカの目の下を撫で微笑んだレイフォードにそう言われると頷くしかなくて、遠慮がちに近くを飛ぶ精霊を気にしながらもルカは歩き出した。
この街には城にはない物がたくさんあって、そんな気分になれないと思っていたルカも精霊たちと一緒にいるうちに少しずつ表情も明るくなり今は足湯とやらを満喫している。
脛から足先までが浸かっているのだが、いつもなら足を出す事を渋るレイフォードがあっさりと許可をしてくれたのは意外だった。もしかしたら他に客がいないからかもしれないが、基本的に誰がいようと気にもならないルカはちょうどいい温度にご満悦だ。
―ルカ、きもちいい?―
―ぬるくない?―
「大丈夫。ちょうどいいし気持ちいいよ」
あちらの精霊より比較的穏やかな声で話し掛けてくれる精霊に笑顔で答え軽く足を動かす。揺れる水面を眺めていると自分を呼ぶ声がして、顔を上げたらレイフォードがこちらへ戻ってくるのが見えた。
ルカがこうして何かをしている間、レイフォードはいろいろ調べているようで一緒にはいるけど同じ経験が出来なくて少し寂しい。
ちなみに精霊に減った理由を聞いてみたのだが、キョトンとしてお互いに顔を見合わせたあと声を揃えて「わからなーい」と言われた為それ以上の収穫はなかった。
でも大丈夫だよとも言われたから、やはり精霊的にはそこまで深刻な状態ではないのかもしれない。
傍まで来たレイフォードが膝をつき髪を撫でてくれる。
「まだ浸かってるか?」
「ううん、もう出る」
「ならば足を拭くからこっちに」
「自分で出来るのに」
「私がしたいだけだ」
足を上げタオルを手にしたレイフォードの方へと向けると優しく拭かれてムズムズする。いつも自分に触れてくれる大きな手を見ていたら、気付いたレイフォードが膝からアザのあるところまで撫で上げできた。
ビクリと身を震わせると今度は膝に口付けられる。
「…っ…」
「そんなに見つめられると悪戯したくなる」
「いたずらって…」
「いつ誰が来るかも分からないような場所だが、ルカに触れたくなるという事だ」
「そ、それはダメだ」
万が一見られたら恥ずかしいしその人にだって迷惑だと慌てて首を振ると、ズボンの裾を下ろして靴を履かせてくれたあとクスリと笑ったレイフォードに抱き上げられる。
フードも被せられ顔を上げたらレイフォードの端正な顔が間近にあり、驚いてる間に唇が重なった。
「これくらいは許されるだろ?」
「…もう一回はダメだと思う?」
「ルカは欲張りだな」
さすがに触れ合いは出来なくてもキスくらいはいいだろうと首に腕を回しながらそう聞くと、目を細めたレイフォードに甘い声で言われ今度はしっかりと塞がれる。
唇を吸われながら離れると親指で拭われコツンと額が合わさった。
「そろそろ昼食にしようか」
「食べたい物言ってもいい?」
「もちろん」
「川の近くにあったパイのお店」
「川の近くか…行ってみよう」
抱っこされたまま足湯から出る際、受付の人が頭を下げて何か看板を動かしていたものの読む前に外に出た為その内容は分からなかった。
途中で下ろして貰って歩いていたのだが、擦れ違う街の人たちがどうしてか生温かい目で見てくる。理由は言わずもがな精霊で、ルカのあとをついて回る様子が和むとちょっとした話題だ。
しかも風で時折フードが捲れルカの綺麗な顔がチラ見えする為、麗しの竜王陛下と並んで歩く姿にうっとりする者までいた。
記憶を頼りに川沿いを歩き店の前まで来たルカは、台の上に並んだ数種類のパイを見て目を輝かせる。
「どれがいい?」
「えっと…苺」
「苺とオレンジを一つずつ」
「はい」
店主に注文し受け取ったレイフォードの後ろに、今までどこにいたのかというくらい気配のなかったバルドーが現れルカはぎょっとする。苺とオレンジのパイの端を割り食べたバルドーは少しして頷いた。
久し振りに見たが、そういえばいつも毒味をされていた事を思い出しルカは少し欠けた苺パイを受け取ると興味津々で被りつく。
ほんのり甘みのついたサクサクな生地に甘酸っぱい苺がマッチしてとても美味しい。あっと言う間に平らげ口周りについた食べかすを指先で払っていると、半分に割られたパイがルカの前に差し出された。
「?」
「口を開けて」
「あー」
言われて素直に口を開けると端の方が中に入ってきて反射的に齧り取る。苺とは違うオレンジの酸味もサッパリと美味しくて、ルカは思わず頬を押さえた。
「んー」
「美味いか、良かったな」
すっかり美味しい時のルカの反応をマスターしたレイフォードは、優しく微笑むとそのままパイを食べさせてくれる。
バルドーに飲み物を頼み、パイを気に入ったらしいルカの為に全種類を更に持ち帰りで注文したレイフォードは、ご機嫌で口を動かすルカにふっと笑みを零した。
急いで準備を済ませ、フード付きのローブを羽織って戻って来ると髪を撫でられフードが被せられる。
見送ってくれるソフィアや屋敷の使用人たちに手を振り街まで出て来てから三十分経つ頃には、ルカは違和感を覚えていた。
(……精霊が少ない?)
城にいる時は傍にいた存在がこの街に来てからほとんど感じなくて首を傾げる。別にルカが嫌われていない事は時々寄ってくる精霊の様子から感じ取れるが、数が圧倒的に少なかった。
きょろきょろと上を見ながら視線を彷徨わせていると、レイフォードに肩を抱き寄せられる。
「どうした?」
「精霊が全然いないなって…」
「ああ。それが視察の目的だからな」
「街によって差があるとかじゃなくて、やっぱり少ないんだ?」
「どうしてか減ったらしい」
レイフォードの言い方だとあまりない事態のようで、何かあるのかともう一度空を見上げて精霊の表情を見るけど特に怖がったりもしていないようで更に不思議に思う。
悪い事が起きている訳ではないのだろうか。
「おいで。せっかくだ、ルカは街を楽しむといい」
「でも…」
「もし手を借りたくなったら言うから」
「…それなら…」
精霊が見えるようになった今、理由も分からず減ったと聞いて楽しむなど出来る気がしない。
だが心配で眉尻を下げるルカの目の下を撫で微笑んだレイフォードにそう言われると頷くしかなくて、遠慮がちに近くを飛ぶ精霊を気にしながらもルカは歩き出した。
この街には城にはない物がたくさんあって、そんな気分になれないと思っていたルカも精霊たちと一緒にいるうちに少しずつ表情も明るくなり今は足湯とやらを満喫している。
脛から足先までが浸かっているのだが、いつもなら足を出す事を渋るレイフォードがあっさりと許可をしてくれたのは意外だった。もしかしたら他に客がいないからかもしれないが、基本的に誰がいようと気にもならないルカはちょうどいい温度にご満悦だ。
―ルカ、きもちいい?―
―ぬるくない?―
「大丈夫。ちょうどいいし気持ちいいよ」
あちらの精霊より比較的穏やかな声で話し掛けてくれる精霊に笑顔で答え軽く足を動かす。揺れる水面を眺めていると自分を呼ぶ声がして、顔を上げたらレイフォードがこちらへ戻ってくるのが見えた。
ルカがこうして何かをしている間、レイフォードはいろいろ調べているようで一緒にはいるけど同じ経験が出来なくて少し寂しい。
ちなみに精霊に減った理由を聞いてみたのだが、キョトンとしてお互いに顔を見合わせたあと声を揃えて「わからなーい」と言われた為それ以上の収穫はなかった。
でも大丈夫だよとも言われたから、やはり精霊的にはそこまで深刻な状態ではないのかもしれない。
傍まで来たレイフォードが膝をつき髪を撫でてくれる。
「まだ浸かってるか?」
「ううん、もう出る」
「ならば足を拭くからこっちに」
「自分で出来るのに」
「私がしたいだけだ」
足を上げタオルを手にしたレイフォードの方へと向けると優しく拭かれてムズムズする。いつも自分に触れてくれる大きな手を見ていたら、気付いたレイフォードが膝からアザのあるところまで撫で上げできた。
ビクリと身を震わせると今度は膝に口付けられる。
「…っ…」
「そんなに見つめられると悪戯したくなる」
「いたずらって…」
「いつ誰が来るかも分からないような場所だが、ルカに触れたくなるという事だ」
「そ、それはダメだ」
万が一見られたら恥ずかしいしその人にだって迷惑だと慌てて首を振ると、ズボンの裾を下ろして靴を履かせてくれたあとクスリと笑ったレイフォードに抱き上げられる。
フードも被せられ顔を上げたらレイフォードの端正な顔が間近にあり、驚いてる間に唇が重なった。
「これくらいは許されるだろ?」
「…もう一回はダメだと思う?」
「ルカは欲張りだな」
さすがに触れ合いは出来なくてもキスくらいはいいだろうと首に腕を回しながらそう聞くと、目を細めたレイフォードに甘い声で言われ今度はしっかりと塞がれる。
唇を吸われながら離れると親指で拭われコツンと額が合わさった。
「そろそろ昼食にしようか」
「食べたい物言ってもいい?」
「もちろん」
「川の近くにあったパイのお店」
「川の近くか…行ってみよう」
抱っこされたまま足湯から出る際、受付の人が頭を下げて何か看板を動かしていたものの読む前に外に出た為その内容は分からなかった。
途中で下ろして貰って歩いていたのだが、擦れ違う街の人たちがどうしてか生温かい目で見てくる。理由は言わずもがな精霊で、ルカのあとをついて回る様子が和むとちょっとした話題だ。
しかも風で時折フードが捲れルカの綺麗な顔がチラ見えする為、麗しの竜王陛下と並んで歩く姿にうっとりする者までいた。
記憶を頼りに川沿いを歩き店の前まで来たルカは、台の上に並んだ数種類のパイを見て目を輝かせる。
「どれがいい?」
「えっと…苺」
「苺とオレンジを一つずつ」
「はい」
店主に注文し受け取ったレイフォードの後ろに、今までどこにいたのかというくらい気配のなかったバルドーが現れルカはぎょっとする。苺とオレンジのパイの端を割り食べたバルドーは少しして頷いた。
久し振りに見たが、そういえばいつも毒味をされていた事を思い出しルカは少し欠けた苺パイを受け取ると興味津々で被りつく。
ほんのり甘みのついたサクサクな生地に甘酸っぱい苺がマッチしてとても美味しい。あっと言う間に平らげ口周りについた食べかすを指先で払っていると、半分に割られたパイがルカの前に差し出された。
「?」
「口を開けて」
「あー」
言われて素直に口を開けると端の方が中に入ってきて反射的に齧り取る。苺とは違うオレンジの酸味もサッパリと美味しくて、ルカは思わず頬を押さえた。
「んー」
「美味いか、良かったな」
すっかり美味しい時のルカの反応をマスターしたレイフォードは、優しく微笑むとそのままパイを食べさせてくれる。
バルドーに飲み物を頼み、パイを気に入ったらしいルカの為に全種類を更に持ち帰りで注文したレイフォードは、ご機嫌で口を動かすルカにふっと笑みを零した。
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