40 / 126
素直で無邪気な小悪魔
しおりを挟む
改めてゆっくりと告げられた言葉はどうやら聞き間違いでも幻聴でもなく、レイフォードは難しい顔をして眉間を摘んだ。
「…ちなみに聞くが、意味が分かって言っているのか?」
「ううん」
「………」
やっぱりというか何と言うか、ルカがその単語の意味を知っているはずがないのだ。予想通りと深く息を吐いたら、抱いていた枕が渡され細い腕が首へと回ってきた。目を瞬いていると綺麗な顔が寄せられ唇が重なる。
「…!」
まさかルカから口付けられるとは思ってもいなかったレイフォードは驚きのあまり固まるが、ハッとしてルカの頬を挟むと無理やり引き剥がした。
「…ルカ、分からないならこういう事をしてはいけない」
「何で?」
「夜這いは、あまり褒められたものではないからな」
「そう、なのか? でも俺…レイと口をくっつけるのは好きなんだけど」
言うなれば性的意味を持って寝ている相手のベッドへと入るようなものなのだが、今の何も知らないルカには到底似つかわしくない。だからこそ止めようと思ったのに、そんな事を言われると理性的なレイフォードであってもクラリときてしまう。
だがここで欲に負けてしまっては無垢なルカを傷付けるだけだ。
「私も好きだ。だが、これ以上は私の身が持たなくなる」
「持たなくなったらどうなるんだ?」
「ルカにひどい事をしてしまうかもしれない」
そんな事は絶対にするつもりはないが、いざそうなった時に箍が外れてしまう可能性は充分にある。
首に回されたままの手を解き指の背に口付けると、眉尻を下げ目を伏せたルカがポツリと零した。
「でも俺、レイになら何されても嫌じゃないよ?」
「またそういう事を…」
「…えっと…もしかして、困らせてる?」
正直に言えば困ってはいる。
だが、ルカの落ち込んだ顔を見るとこのまま据え膳を頂くのもありではないかと思ってしまうくらいには胸にくるものがあった。
苦笑混じりに首を振ったレイフォードは、枕をベッドに置くとルカを膝に座らせ髪を撫でる。
「いや、困っていない。でも私も男だから、愛しく思っている相手にそんな事を言われたら我慢出来なくなるんだよ」
「何で我慢するんだ?」
「私が我慢しなければ、ルカは丸一日ベッドで過ごす羽目になる」
「え、丸一日?」
何をどうしたらそんな事態になるのかと驚いた顔をするルカがまったく意味を分かっていない事は承知している。
恐らくは今、丸一日ベッドになる状況を必死に考えているだろうルカの額にキスをしたレイフォードは、眉を顰めて首を傾げるルカを見下ろして微笑んだ。
「それにしても、夜這いなんて言葉誰に教えて貰ったんだ?」
「え、セノール」
「……司書官か」
余計な事をと毒づいたが、基本的に図書館にいるセノールがこちらの事情を知っているはずはないから、もしかしたらルカに聞かれて案を出したのかもしれない。
二人が友人として仲良くしている事はリックスからの報告で知っていたから不思議には思わないが、もう少し違う事を教えてあげて欲しかった。
(だが、他人がルカに色事を教えるのは気に食わないな)
受け入れる本人が分かるようになるまではと思っていたが、勉強意欲の高いルカが誰かに聞かないという保証はなかった。その事をうっかり忘れていたレイフォードは自分を棚に上げ嫉妬心を燃やす。
「なぁ、レイ。俺、辛いのとか苦しいのはやなんだけど…」
「ルカ」
「うん?」
「それなら気持ちいい事だけしようか」
「気持ちいい事?」
「口を開けて、舌を出してくれるか?」
「え? うん…」
それならいっそ自分が手解きすればいいのではと思い頬を撫でながら言えば、ルカはキョトンとしつつも素直に言われた事をする。小さな舌がチロリと出され、それだけで下肢が疼くのを感じながらルカを上向かせると薄く開かれた唇に食らいついた。
「ん!?」
引っ込む前にと自分の舌で絡め取ればルカがビクリと肩を跳ね上げる。
擦り合わせ、軽く吸い、口内を舐め回していたらルカの身体から力が抜けてきた。
「ん…ふ…」
優しく刺激していると甘えた声が鼻から抜け始め、弱々しく服を掴むルカの手を握りリップ音を立てて唇を離せばくたりと寄り掛かってくる。その顔は真っ赤だが蕩けていて、唾液で濡れた唇を親指で拭ってやると若干潤んだ目がこちらを向いてきた。
「…いまの…」
「口付けにも種類があるんだよ」
「そ、なんだ……口の中…じんじんする…」
涙目で自分の唇に触れるルカは見た目は幼いのに煽情的で、これ以上手を出すつもりはないレイフォードは目を閉じて見ないようにする。それなのにルカは妙に色気を孕んだ息を吐くと、ポツリととんでもない言葉を零した。
「でも…ほんとに気持ち良かった…」
「………」
せっかく人が耐えているのにどうしてそう煽るような事を言うのか。
気を抜くとルカの尻の下にあるものが反応しそうで、心の中でアッシェンベルグの歴史をひたすら年代順に唱えていたレイフォードの頬に暖かな何かが触れた。
目を開けるとルカの手が撫でていて、見下ろせば大人びた笑みを浮かべるルカがいて思わずドキッとする。
「やっぱり俺、レイと口くっつけるの好きだ」
無邪気な言葉に、思い切り下心ありでやった行為に罪悪感が芽生える。もしかして、一つずつ教えるたびにこんな可愛らしい事を言われるのだろうか。
「またしような」
「……そうだな」
(勘弁してくれ…)
どんどんなけなしの理性が剥がされていくようで思わず心の中でボヤいてしまった。
これまで誰かに欲情した事など一度もないのに、ルカだけは今すぐ組み敷いて自分のものにしたくなる。それ故にいつか本当に暴走しそうで自分が恐ろしくなったレイフォードは、とりあえずまた変な知識を植え付けられても困る為セノールには忠告する事にした。
これ以上煽られたら、今度こそ絶対に耐えられない。
「…ちなみに聞くが、意味が分かって言っているのか?」
「ううん」
「………」
やっぱりというか何と言うか、ルカがその単語の意味を知っているはずがないのだ。予想通りと深く息を吐いたら、抱いていた枕が渡され細い腕が首へと回ってきた。目を瞬いていると綺麗な顔が寄せられ唇が重なる。
「…!」
まさかルカから口付けられるとは思ってもいなかったレイフォードは驚きのあまり固まるが、ハッとしてルカの頬を挟むと無理やり引き剥がした。
「…ルカ、分からないならこういう事をしてはいけない」
「何で?」
「夜這いは、あまり褒められたものではないからな」
「そう、なのか? でも俺…レイと口をくっつけるのは好きなんだけど」
言うなれば性的意味を持って寝ている相手のベッドへと入るようなものなのだが、今の何も知らないルカには到底似つかわしくない。だからこそ止めようと思ったのに、そんな事を言われると理性的なレイフォードであってもクラリときてしまう。
だがここで欲に負けてしまっては無垢なルカを傷付けるだけだ。
「私も好きだ。だが、これ以上は私の身が持たなくなる」
「持たなくなったらどうなるんだ?」
「ルカにひどい事をしてしまうかもしれない」
そんな事は絶対にするつもりはないが、いざそうなった時に箍が外れてしまう可能性は充分にある。
首に回されたままの手を解き指の背に口付けると、眉尻を下げ目を伏せたルカがポツリと零した。
「でも俺、レイになら何されても嫌じゃないよ?」
「またそういう事を…」
「…えっと…もしかして、困らせてる?」
正直に言えば困ってはいる。
だが、ルカの落ち込んだ顔を見るとこのまま据え膳を頂くのもありではないかと思ってしまうくらいには胸にくるものがあった。
苦笑混じりに首を振ったレイフォードは、枕をベッドに置くとルカを膝に座らせ髪を撫でる。
「いや、困っていない。でも私も男だから、愛しく思っている相手にそんな事を言われたら我慢出来なくなるんだよ」
「何で我慢するんだ?」
「私が我慢しなければ、ルカは丸一日ベッドで過ごす羽目になる」
「え、丸一日?」
何をどうしたらそんな事態になるのかと驚いた顔をするルカがまったく意味を分かっていない事は承知している。
恐らくは今、丸一日ベッドになる状況を必死に考えているだろうルカの額にキスをしたレイフォードは、眉を顰めて首を傾げるルカを見下ろして微笑んだ。
「それにしても、夜這いなんて言葉誰に教えて貰ったんだ?」
「え、セノール」
「……司書官か」
余計な事をと毒づいたが、基本的に図書館にいるセノールがこちらの事情を知っているはずはないから、もしかしたらルカに聞かれて案を出したのかもしれない。
二人が友人として仲良くしている事はリックスからの報告で知っていたから不思議には思わないが、もう少し違う事を教えてあげて欲しかった。
(だが、他人がルカに色事を教えるのは気に食わないな)
受け入れる本人が分かるようになるまではと思っていたが、勉強意欲の高いルカが誰かに聞かないという保証はなかった。その事をうっかり忘れていたレイフォードは自分を棚に上げ嫉妬心を燃やす。
「なぁ、レイ。俺、辛いのとか苦しいのはやなんだけど…」
「ルカ」
「うん?」
「それなら気持ちいい事だけしようか」
「気持ちいい事?」
「口を開けて、舌を出してくれるか?」
「え? うん…」
それならいっそ自分が手解きすればいいのではと思い頬を撫でながら言えば、ルカはキョトンとしつつも素直に言われた事をする。小さな舌がチロリと出され、それだけで下肢が疼くのを感じながらルカを上向かせると薄く開かれた唇に食らいついた。
「ん!?」
引っ込む前にと自分の舌で絡め取ればルカがビクリと肩を跳ね上げる。
擦り合わせ、軽く吸い、口内を舐め回していたらルカの身体から力が抜けてきた。
「ん…ふ…」
優しく刺激していると甘えた声が鼻から抜け始め、弱々しく服を掴むルカの手を握りリップ音を立てて唇を離せばくたりと寄り掛かってくる。その顔は真っ赤だが蕩けていて、唾液で濡れた唇を親指で拭ってやると若干潤んだ目がこちらを向いてきた。
「…いまの…」
「口付けにも種類があるんだよ」
「そ、なんだ……口の中…じんじんする…」
涙目で自分の唇に触れるルカは見た目は幼いのに煽情的で、これ以上手を出すつもりはないレイフォードは目を閉じて見ないようにする。それなのにルカは妙に色気を孕んだ息を吐くと、ポツリととんでもない言葉を零した。
「でも…ほんとに気持ち良かった…」
「………」
せっかく人が耐えているのにどうしてそう煽るような事を言うのか。
気を抜くとルカの尻の下にあるものが反応しそうで、心の中でアッシェンベルグの歴史をひたすら年代順に唱えていたレイフォードの頬に暖かな何かが触れた。
目を開けるとルカの手が撫でていて、見下ろせば大人びた笑みを浮かべるルカがいて思わずドキッとする。
「やっぱり俺、レイと口くっつけるの好きだ」
無邪気な言葉に、思い切り下心ありでやった行為に罪悪感が芽生える。もしかして、一つずつ教えるたびにこんな可愛らしい事を言われるのだろうか。
「またしような」
「……そうだな」
(勘弁してくれ…)
どんどんなけなしの理性が剥がされていくようで思わず心の中でボヤいてしまった。
これまで誰かに欲情した事など一度もないのに、ルカだけは今すぐ組み敷いて自分のものにしたくなる。それ故にいつか本当に暴走しそうで自分が恐ろしくなったレイフォードは、とりあえずまた変な知識を植え付けられても困る為セノールには忠告する事にした。
これ以上煽られたら、今度こそ絶対に耐えられない。
1,090
お気に入りに追加
1,878
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる