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執務室にてユリアと話し王のみが使用出来る転移装置で彼女の一族が暮らす場所へと送ったあと、ルカはどうしてかレイフォードの部屋へと連れて来られていた。
ベッドに座らされ、床に片膝をついて腰を下ろしたレイフォードに目を瞬いていたら太腿が撫でられる。
「ルカ、アザを見せてくれないか?」
「別にいいけど」
隠してた訳でもないしと最近になってまたヒラヒラになったズボンの裾を躊躇いなく付け根辺りまで捲り上げたルカは、アザがある方の足をベッドに乗せるようにして広げレイフォードへと見せる。
まさかこれが本物だったとは、さすがのルカも驚きだ。
「蓮の花ってこんなに形してるんだな。俺、見た事ないから知らなかった」
「だから何も言わなかったのか……私も実物を見るのは初めてだが、白い肌に映えて綺麗だな」
「…んっ…擽ったいって…」
長い指が躊躇いがちにアザを撫でるものだからムズムズして手で隠すと、大きく息を吸って吐いたレイフォードが反対の足に腕と額を乗せて項垂れる。おずおずと髪に触れてみたらその手を掴まれ真剣な顔をしたレイフォードと目が合った。
「ルカ、これは私以外には見せないようにしてくれ」
「何で? ソフィアとか見たがりそうだけど…」
「そうだな、ソフィアならまだいい。だがそれ以外は駄目だ」
「? 良く分かんないけど、分かった」
レイフォードだけというのが多いなと思いながらも頷き、アザへと視線を落としたルカは指でそれをなぞりホッとしたように微笑む。
いろいろあって頭の中は整理しきれていないが、これからもレイフォードといられるという事実だけはしっかりと刻み込まれ嬉しい気持ちでいっぱいだった。
祖母にも教えてあげなければ。
「……ルカ」
今まで何とも思わなかったアザが愛しくなりずっと触れていたら硬い声に呼ばれ、何気なく顔を上げると何故か片手で顔を覆ったレイフォードがいて眉を顰める。
「目のやり場に困るから…裾を戻してくれるか」
「見せろって言ったり戻せって言ったり、我儘だなー」
「私の理性を飛ばしたいなら喜んで受け入れるんだがな」
「何を?」
言われた通り裾を直し高過ぎて床に届かない足をブラブラさせていたルカは、たまに意味の分からない事を言ってくるレイフォードだけは今だに理解出来ずにいた。
怪訝な顔で首を傾げると、苦笑したレイフォードが立ち上がり隣に座って肩に腕を回してくる。そのまま抱き寄せられ額に唇が触れた時、ルカはある事を思い出した。
「なぁ、レイ」
「ん?」
「抱くって何?」
「……え?」
「ほら、王女様に言ってたじゃん。〝俺以外を抱く気はない〟って。どういう意味?」
「いや、あれは…」
目は隠されていたけど、一番近くにいたから声はちゃんと聞こえていて間違いなくそう言っていた。
それを聞いたルナリエは一人で立てないくらい泣いていたから、彼女にとっては凄くショックな言葉だとは思うのだが、当事者であるルカには意味がサッパリ分からない。
分からない事は聞くに限ると口にしてみただけなのに、どうしてかレイフォードは難しい顔をして黙り込んでしまった。
「あれ、聞いちゃいけない事だった…?」
「そういう訳では……」
いつもならすぐに教えてくれるのに言い淀むものだから、困らせたかと思い申し訳なくて「ごめんな」と言えば、首を振ったレイフォードがふっと笑って抱き締めてくれる。
「もう少し、ルカが分かるようになってから教える」
「俺、わりと勉強してきたぞ?」
「その勉強では知り得ない事だ」
「え」
それなりに難しい事も学んできたのに、そのものが違うと言われルカは困惑する。
勉強にも単純な読み書きから計算や歴史などのいろいろなジャンルがある事は知っていたし、計算は置いておいて数字もこの国の歴史もルカは勉強してきた。
でもそれは全部違うらしい。
「まだまだ勉強不足って事か」
「厳密には違うんだが…まぁそういう事にしておくか」
「一からやり直さないと」
「焦らなくていい。ルカのペースで構わないから」
「…レイは大人だな」
「伊達に何百年と生きていないからな」
たまに怒っている時もあるけど、基本的には穏やかで落ち着いていて優しいレイフォードはいつだってルカと歩みを合わせてくれる。
恋人なのに、年齢だけじゃなく精神的にも差があるせいか、自分がどうにも子供に思えて仕方なかった。
あの本には、恋人は対等だと書いてあったのに。
「俺も早く大人になりたい」
そうすればレイフォードと同じ目線で物事を見られるかもしれない。知らない事もなくなって、誰かに聞く事もなくなる。
隣にある温もりに寄り掛かりそう呟くと、レイフォードの手が顎を撫で上向かされた。
「言っておくが、私はルカを子供だとは思っていないからな」
「え?」
「でなければこんな事、しようとも思わない」
紫の瞳が細められ端正な顔が近付き唇が重なる。
肩を抱く手にも力が込められて、いつもより強く押し当てられてる気がして心臓がドキドキしてきた。
(い、息が…)
慣れないルカはこういう事をしている時だけ、緊張のせいか普段は出来ている鼻呼吸が下手になる。小刻みに息を吸いながらレイフォードの服を掴んで耐えていると、不意に唇が舐められゾクリと背中が震えた。
「ん…っ」
「…こういう事は、大人だからこそ出来るだろう?」
頬に添えられていた手の親指が唇をなぞり低めの声に囁かれたけど、向けられた笑みが何だか艶っぽく見えてルカは驚いて目を見瞠った。
思わず目を逸らしてしまったが、今度は頬にキスされ眉尻を下げる。
「俺には分かんないよ…」
「なら、一つ勉強になったな」
「何か意地悪くないか?」
「私にもいろいろ事情があるんだよ」
そう言って手を離したレイフォードはベッドから立ち上がると、意地悪されて拗ねた顔をするルカに微笑んで手を差し出してきた。
「もうすぐ昼食の時間だ。食堂に行こうか」
間を置いて頷いたルカはその手を取って立ち上がると、仕返しとばかりに勢いよく首元に飛び付いたのだがそのまま抱き上げられて食堂へと連れて行かれた。
こういうところもルカとレイフォードの違うところなのかもしれない。
ベッドに座らされ、床に片膝をついて腰を下ろしたレイフォードに目を瞬いていたら太腿が撫でられる。
「ルカ、アザを見せてくれないか?」
「別にいいけど」
隠してた訳でもないしと最近になってまたヒラヒラになったズボンの裾を躊躇いなく付け根辺りまで捲り上げたルカは、アザがある方の足をベッドに乗せるようにして広げレイフォードへと見せる。
まさかこれが本物だったとは、さすがのルカも驚きだ。
「蓮の花ってこんなに形してるんだな。俺、見た事ないから知らなかった」
「だから何も言わなかったのか……私も実物を見るのは初めてだが、白い肌に映えて綺麗だな」
「…んっ…擽ったいって…」
長い指が躊躇いがちにアザを撫でるものだからムズムズして手で隠すと、大きく息を吸って吐いたレイフォードが反対の足に腕と額を乗せて項垂れる。おずおずと髪に触れてみたらその手を掴まれ真剣な顔をしたレイフォードと目が合った。
「ルカ、これは私以外には見せないようにしてくれ」
「何で? ソフィアとか見たがりそうだけど…」
「そうだな、ソフィアならまだいい。だがそれ以外は駄目だ」
「? 良く分かんないけど、分かった」
レイフォードだけというのが多いなと思いながらも頷き、アザへと視線を落としたルカは指でそれをなぞりホッとしたように微笑む。
いろいろあって頭の中は整理しきれていないが、これからもレイフォードといられるという事実だけはしっかりと刻み込まれ嬉しい気持ちでいっぱいだった。
祖母にも教えてあげなければ。
「……ルカ」
今まで何とも思わなかったアザが愛しくなりずっと触れていたら硬い声に呼ばれ、何気なく顔を上げると何故か片手で顔を覆ったレイフォードがいて眉を顰める。
「目のやり場に困るから…裾を戻してくれるか」
「見せろって言ったり戻せって言ったり、我儘だなー」
「私の理性を飛ばしたいなら喜んで受け入れるんだがな」
「何を?」
言われた通り裾を直し高過ぎて床に届かない足をブラブラさせていたルカは、たまに意味の分からない事を言ってくるレイフォードだけは今だに理解出来ずにいた。
怪訝な顔で首を傾げると、苦笑したレイフォードが立ち上がり隣に座って肩に腕を回してくる。そのまま抱き寄せられ額に唇が触れた時、ルカはある事を思い出した。
「なぁ、レイ」
「ん?」
「抱くって何?」
「……え?」
「ほら、王女様に言ってたじゃん。〝俺以外を抱く気はない〟って。どういう意味?」
「いや、あれは…」
目は隠されていたけど、一番近くにいたから声はちゃんと聞こえていて間違いなくそう言っていた。
それを聞いたルナリエは一人で立てないくらい泣いていたから、彼女にとっては凄くショックな言葉だとは思うのだが、当事者であるルカには意味がサッパリ分からない。
分からない事は聞くに限ると口にしてみただけなのに、どうしてかレイフォードは難しい顔をして黙り込んでしまった。
「あれ、聞いちゃいけない事だった…?」
「そういう訳では……」
いつもならすぐに教えてくれるのに言い淀むものだから、困らせたかと思い申し訳なくて「ごめんな」と言えば、首を振ったレイフォードがふっと笑って抱き締めてくれる。
「もう少し、ルカが分かるようになってから教える」
「俺、わりと勉強してきたぞ?」
「その勉強では知り得ない事だ」
「え」
それなりに難しい事も学んできたのに、そのものが違うと言われルカは困惑する。
勉強にも単純な読み書きから計算や歴史などのいろいろなジャンルがある事は知っていたし、計算は置いておいて数字もこの国の歴史もルカは勉強してきた。
でもそれは全部違うらしい。
「まだまだ勉強不足って事か」
「厳密には違うんだが…まぁそういう事にしておくか」
「一からやり直さないと」
「焦らなくていい。ルカのペースで構わないから」
「…レイは大人だな」
「伊達に何百年と生きていないからな」
たまに怒っている時もあるけど、基本的には穏やかで落ち着いていて優しいレイフォードはいつだってルカと歩みを合わせてくれる。
恋人なのに、年齢だけじゃなく精神的にも差があるせいか、自分がどうにも子供に思えて仕方なかった。
あの本には、恋人は対等だと書いてあったのに。
「俺も早く大人になりたい」
そうすればレイフォードと同じ目線で物事を見られるかもしれない。知らない事もなくなって、誰かに聞く事もなくなる。
隣にある温もりに寄り掛かりそう呟くと、レイフォードの手が顎を撫で上向かされた。
「言っておくが、私はルカを子供だとは思っていないからな」
「え?」
「でなければこんな事、しようとも思わない」
紫の瞳が細められ端正な顔が近付き唇が重なる。
肩を抱く手にも力が込められて、いつもより強く押し当てられてる気がして心臓がドキドキしてきた。
(い、息が…)
慣れないルカはこういう事をしている時だけ、緊張のせいか普段は出来ている鼻呼吸が下手になる。小刻みに息を吸いながらレイフォードの服を掴んで耐えていると、不意に唇が舐められゾクリと背中が震えた。
「ん…っ」
「…こういう事は、大人だからこそ出来るだろう?」
頬に添えられていた手の親指が唇をなぞり低めの声に囁かれたけど、向けられた笑みが何だか艶っぽく見えてルカは驚いて目を見瞠った。
思わず目を逸らしてしまったが、今度は頬にキスされ眉尻を下げる。
「俺には分かんないよ…」
「なら、一つ勉強になったな」
「何か意地悪くないか?」
「私にもいろいろ事情があるんだよ」
そう言って手を離したレイフォードはベッドから立ち上がると、意地悪されて拗ねた顔をするルカに微笑んで手を差し出してきた。
「もうすぐ昼食の時間だ。食堂に行こうか」
間を置いて頷いたルカはその手を取って立ち上がると、仕返しとばかりに勢いよく首元に飛び付いたのだがそのまま抱き上げられて食堂へと連れて行かれた。
こういうところもルカとレイフォードの違うところなのかもしれない。
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