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二人で大吉
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お母さんとの電話が終わってから少しして、周防くんが腕の力を緩めて俺の顔を覗き込んできた。いつもと変わらない優しい笑顔に気持ちが落ち着いた事を知り、俺は眉尻を下げて周防くんに抱き着く。
「ごめんなさい」
「ん? 何が?」
「俺が黙り込んだら、周防くんは絶対話を聞こうとしてくれるって分かってたのに……いつも通りの顔が出来なかった」
「湊が抱えたままでいる方が嫌だからいいよ。むしろ俺は、こういう機会が出来て良かったって思ってる」
結果だけ見ればそうだけど、当人である周防くんからすれば触れられたくない話だっただろうし、俺も周防くんが聞いてくれるからって甘えすぎた。だからここは、ごめんなさいだけで済ませたらダメだと思う。
こういう時こそ、周防くんには厳しくあって欲しい。
「……怒って」
「何で」
「周防くんの優しい気持ち、利用したようなものだから。余計なお世話だったって怒って」
今回ばかりは本当に殴られたって仕方ないような事を俺はした。
実際に殴られるなんて思ってないけど、それくらいの覚悟で見上げたらふっと笑った周防くんがいて困惑する。
怒ってって言ってるのに。
「無理。俺は何をされても、湊には怒れない」
「……周防くんは、俺に甘すぎる」
「言ったろ? 湊を甘やかすのが俺の生き甲斐だって」
「じゃあ、せめて何か罰…あ、お仕置きとか」
「それこそ無理だろ。……あ、いや、あれならワンチャンあり…?」
「?」
俺の言葉を否定したすぐあとに何かを呟いた周防くんは、「うーん」と言いながらユラユラと左右に首を傾ける。
「何でもいい?」
「えっと、痛過ぎる事と物凄く怖い事以外なら…」
「なら大丈夫か」
「……お仕置き決まった?」
「決まったけど…そんな不安そうな顔しなくても」
周防くんを信じてない訳じゃないけど、どうしても〝お仕置き〟って言葉が不穏で無意識に眉を顰めていたらしくクスリと笑った周防くんに頬を摘まれる。痛くない程度の力でフニフニされて、ふと今膨らませたらどうなるのか気になった俺は試しに口の中に空気を溜めてみた。
摘んでた指は離れたけど、今度は膨らんだ頬を挟まれて一瞬で口から空気が抜ける。風船になった気分だ。
「はは、可愛い」
「嘘。絶対今ブサイクだった」
「ホントだって。すげぇ可愛いからキスしていい?」
「んー……いーよ?」
額が合わさって頬を挟んだままの周防くんの親指が唇をなぞりながら聞いてくる。少し考える素振りをしたあと笑いながら返したら周防くんも笑ってくれて、ゆっくりと唇が触れ合った。
くっついて、離れて、それだけなのにだんだんと息が上がってきて縋るように周防くんの服をぎゅっと握る。でもすぐにその手を取られて指が絡んで、俺の唇全部が周防くんの口で覆われて吸われた。
「んん…っ」
「…これ以上は止まんなくなるからおしまい」
「…ん」
「そういや、年越したらすぐ初詣行くんだよな?」
「うん、そう言ってた」
大晦日には家族で年越し蕎麦を食べてから新年をお祝いして、みんな揃って近くの神社に行ってお参りしておみくじするのが毎年の恒例になってる。でも今年からは周防くんも一緒だし、周防くんと暮らすまではこうして集まるのも楽しいかも。
繋いだままだった手を膝に乗せ、俺とは指の太さも全体の大きさも違う周防くんの手をじっと見てたら頭の上で小さく笑われた。
「湊の手、小さいな」
「周防くんが大きいんだよ。これでも俺、薫よりはちょっと大きいんだから」
「まぁアイツも一応女ではあるからな」
薫が聞いたら「一応って何よ!」って怒りそうだけど、薫の性格をよく知ってる俺からしてみれば案外間違ってないんじゃって思うんだよね。薫は内面的に見れば女の子らしいとは言えないから。
でも俺はそんな薫にいっぱい助けられてるから薫は今のままでいいと思ってる。恥ずかしいから本人には言わないけど、俺はそんな薫が大好きなんだ。
周防くんの次に、だけど。
「ねぇねぇ、周防くん」
「ん?」
「大好き」
「いきなりどうした?」
「何か無性に言いたくなって」
俺の一番は周防くんで、家族に向ける好きと全然違うっていうのはもう分かってる。こうして口に出して伝えたいのは周防だけだし。
でも何回言っても足りない。
もっと、好きとか大好きよりたくさん伝わる言い方ってないのかな。
「大好きより上ってあるの?」
「あるよ。俺は湊の事そう想ってるから」
「俺にも教えて」
さすが物知りの周防くん。興味津々で見上げてお願いしたら、ふっと笑った周防くんは俺の耳に口を寄せ低めの声で教えてくれた。
「〝愛してる〟」
「…愛?」
「好きより愛の方がデカく感じね? まぁそれでも俺的には湊に伝えるには足りないって思ってるけど、これ以上の言葉はないからもうあとは行動だな」
周防くん、俺と同じように思ってくれてるんだ。
嬉しさでじんわりと胸が温かくなるのを感じた俺は、周防くんの首に腕を回して顔を近付けると至近距離で笑いかけた。
「周防くん、愛してる」
日付が変わる一時間前。年越し蕎麦を食べるから降りておいでとお母さんに呼ばれて、俺と周防くんはリビングへと向かう。
俺が愛してるって言ったあと周防くん驚いた顔をしてた。それから慌てたように俺を膝から下ろして、ふいっと背けた顔を片手で隠してブツブツ何かを呟いてて……聞こえなかったけど、ピアスいっぱいの耳が赤くなってたから照れてるんだって気付いたら、つい可愛いって思っちゃった。
こんな周防くんが見られるのも、俺だけの特権だよね。
「そうそう。いきなりで悪いんだけど、明日の昼から明後日の夕方までお父さんと拓郎おじさんのところに行ってくるから、二人ともお留守番お願いね」
「え、私も行きたい。なっちゃんと遊ぶ」
「でもそうなると、湊一人になるでしょう?」
出来たてのお蕎麦と天ぷらをテーブルに運んでいるとお母さんが不意にそんな事を言ってきた。拓郎おじさんはお父さんの弟で、なっちゃんは拓郎おじさんの娘で俺と薫の一個下の女の子。
薫と凄く仲が良くて、俺の事も気に掛けてくれる優しい子なんだ。
拓郎おじさんのところに行くなら薫も行きたがるよね。俺は拓郎おじさんの息子のあっくんがちょっと苦手だから出来れば行きたくないけど。
それに俺は一人でも大丈夫なのに。
「神薙くんがいるじゃない」
「え?」
俺は短い時間なら一人で留守番した事あるけど、丸一日とかは薫が心配するからさせて貰った事ないんだよね。
だから一人でもいいよって言ってもダメって言われるの分かってるから黙ってたら、薫はなんて事ないように周防くんの名前を口に出した。
周防くん、キョトンってしてる。
「神薙くんにだって都合があるでしょう?」
「どうせ湊といる為に空けてるわよ。ね、神薙くん」
「…いや、まあ、その通りだけども…」
「ほら」
「〝ほら〟じゃないの。ごめんなさいね、神薙くん」
俺は成り行きを見守りつつ周防くんの器に大きな海老天二つと掻き揚げを並べて周防くんの前に置き、自分のは海老天一つだけにして隣に座る。
薫、よっぽど行きたいみたいで周防くんをじーっと見てるけど、さすがに周防くんにだって断る権利はあるよ。
「あ、いえ。俺でいいなら湊と留守番しますよ」
「本当に? 用事とかはないの?」
「はい。薫の言う通り湊の為に空けてますし、俺としても湊といられるのは嬉しいので」
周防くん、友達多いのにいつも俺の為に時間作ってくれて、嬉しいけどホントにいいのかなって心配になる。周防くんだから仲が悪くなるような事にはならないと思うけど、遊ぶ時は俺だって快くいいよって言えると思うんだけどな………た、たぶん。
「やった! さっすが神薙くんね」
「ちゃんとお礼を言いなさい」
「ありがとう!」
「貸しイチな」
「湊の可愛い写真でどうよ」
「分かってんじゃねぇか」
「………」
何だっけ、時代劇の……悪代官と越後屋? みたいなやり取りに思わず苦笑してしまう。どうしてそこで俺の写真なのかは分からないし、二人が楽しそうで少しモヤッとはしたけど我慢我慢。
「じゃあ食べましょうか」
お母さんにそう促されて、みんなで手を合わせて年越し蕎麦を食べたあと、薫が毎年見ている音楽番組のカウントダウンライブに合わせて年を越してから近場の神社へと初詣に出掛けた。
そんなに大きくない神社だけど、ご近所さんがそれなりに来ていていつも挨拶から始まる。でも今年は周防くんがいるからみんな驚いてて…特に年が近い女の子の視線が凄かった。薫が質問責めにあってたなぁ。
神様には、〝俺の大切な人たちが今年も元気に過ごせますように〟と、〝周防くんとずっと一緒にいられますように〟の二つをお願いした。どっちも大切な事だから欲張っちゃった。
「湊、何だった?」
お参りのあと列から抜けておみくじを引いたんだけど、結果を見た俺はガックリと肩を落とす。これって、どっちかというと悪い方だよね。
「…末吉」
「あー…でも、吉は吉だし」
「あんまりいい事書いてない」
恋愛のところ、〝波乱が待ち受けているかも〟って書いてあって普通に怖い。悲しくて苦しいのはもうこりごりなんだけど。
周防くんは俺のおみくじを覗き込むと、それをヒョイっと取り上げて自分のを渡して来た。わ、凄い。大吉だ。
「湊にやるよ。これで悪い事は相殺されるし、いい事は倍になるだろ」
「え、でも…」
「湊がいれば俺はずっと大吉だから」
「周防くん……」
そう言って俺の頭を抱き寄せてくれる周防くんの胸元に顔を押し付け嬉しい気持ちを噛み締める。俺も、周防くんがいてくれるならこの先ずっと大吉だって気がしてきた。
周防くんは、俺の幸せそのものだから。
「あんたたち、ここどこだか分かってる?」
「…あ」
しばらくして、呆れた顔をした薫が腕を組んで聞いてきた。言われるまで自分がどこにいるのか忘れてた俺は、ご近所さんに注目されてるって気付いて慌てて周防くんの胸元を押す。
でも周防くんは離してくれなくて、薫にべって舌を出すとコートの前を広げて俺を隠すように包みくるりと背中を向けた。何か、小さい子供みたい。
あったかいのと周防くんの匂いに包まれた俺は、ご近所さんの生暖かい目に見守られながら三人を待ってる間に寝てしまったらしく、途中からの記憶がなかった。
「ごめんなさい」
「ん? 何が?」
「俺が黙り込んだら、周防くんは絶対話を聞こうとしてくれるって分かってたのに……いつも通りの顔が出来なかった」
「湊が抱えたままでいる方が嫌だからいいよ。むしろ俺は、こういう機会が出来て良かったって思ってる」
結果だけ見ればそうだけど、当人である周防くんからすれば触れられたくない話だっただろうし、俺も周防くんが聞いてくれるからって甘えすぎた。だからここは、ごめんなさいだけで済ませたらダメだと思う。
こういう時こそ、周防くんには厳しくあって欲しい。
「……怒って」
「何で」
「周防くんの優しい気持ち、利用したようなものだから。余計なお世話だったって怒って」
今回ばかりは本当に殴られたって仕方ないような事を俺はした。
実際に殴られるなんて思ってないけど、それくらいの覚悟で見上げたらふっと笑った周防くんがいて困惑する。
怒ってって言ってるのに。
「無理。俺は何をされても、湊には怒れない」
「……周防くんは、俺に甘すぎる」
「言ったろ? 湊を甘やかすのが俺の生き甲斐だって」
「じゃあ、せめて何か罰…あ、お仕置きとか」
「それこそ無理だろ。……あ、いや、あれならワンチャンあり…?」
「?」
俺の言葉を否定したすぐあとに何かを呟いた周防くんは、「うーん」と言いながらユラユラと左右に首を傾ける。
「何でもいい?」
「えっと、痛過ぎる事と物凄く怖い事以外なら…」
「なら大丈夫か」
「……お仕置き決まった?」
「決まったけど…そんな不安そうな顔しなくても」
周防くんを信じてない訳じゃないけど、どうしても〝お仕置き〟って言葉が不穏で無意識に眉を顰めていたらしくクスリと笑った周防くんに頬を摘まれる。痛くない程度の力でフニフニされて、ふと今膨らませたらどうなるのか気になった俺は試しに口の中に空気を溜めてみた。
摘んでた指は離れたけど、今度は膨らんだ頬を挟まれて一瞬で口から空気が抜ける。風船になった気分だ。
「はは、可愛い」
「嘘。絶対今ブサイクだった」
「ホントだって。すげぇ可愛いからキスしていい?」
「んー……いーよ?」
額が合わさって頬を挟んだままの周防くんの親指が唇をなぞりながら聞いてくる。少し考える素振りをしたあと笑いながら返したら周防くんも笑ってくれて、ゆっくりと唇が触れ合った。
くっついて、離れて、それだけなのにだんだんと息が上がってきて縋るように周防くんの服をぎゅっと握る。でもすぐにその手を取られて指が絡んで、俺の唇全部が周防くんの口で覆われて吸われた。
「んん…っ」
「…これ以上は止まんなくなるからおしまい」
「…ん」
「そういや、年越したらすぐ初詣行くんだよな?」
「うん、そう言ってた」
大晦日には家族で年越し蕎麦を食べてから新年をお祝いして、みんな揃って近くの神社に行ってお参りしておみくじするのが毎年の恒例になってる。でも今年からは周防くんも一緒だし、周防くんと暮らすまではこうして集まるのも楽しいかも。
繋いだままだった手を膝に乗せ、俺とは指の太さも全体の大きさも違う周防くんの手をじっと見てたら頭の上で小さく笑われた。
「湊の手、小さいな」
「周防くんが大きいんだよ。これでも俺、薫よりはちょっと大きいんだから」
「まぁアイツも一応女ではあるからな」
薫が聞いたら「一応って何よ!」って怒りそうだけど、薫の性格をよく知ってる俺からしてみれば案外間違ってないんじゃって思うんだよね。薫は内面的に見れば女の子らしいとは言えないから。
でも俺はそんな薫にいっぱい助けられてるから薫は今のままでいいと思ってる。恥ずかしいから本人には言わないけど、俺はそんな薫が大好きなんだ。
周防くんの次に、だけど。
「ねぇねぇ、周防くん」
「ん?」
「大好き」
「いきなりどうした?」
「何か無性に言いたくなって」
俺の一番は周防くんで、家族に向ける好きと全然違うっていうのはもう分かってる。こうして口に出して伝えたいのは周防だけだし。
でも何回言っても足りない。
もっと、好きとか大好きよりたくさん伝わる言い方ってないのかな。
「大好きより上ってあるの?」
「あるよ。俺は湊の事そう想ってるから」
「俺にも教えて」
さすが物知りの周防くん。興味津々で見上げてお願いしたら、ふっと笑った周防くんは俺の耳に口を寄せ低めの声で教えてくれた。
「〝愛してる〟」
「…愛?」
「好きより愛の方がデカく感じね? まぁそれでも俺的には湊に伝えるには足りないって思ってるけど、これ以上の言葉はないからもうあとは行動だな」
周防くん、俺と同じように思ってくれてるんだ。
嬉しさでじんわりと胸が温かくなるのを感じた俺は、周防くんの首に腕を回して顔を近付けると至近距離で笑いかけた。
「周防くん、愛してる」
日付が変わる一時間前。年越し蕎麦を食べるから降りておいでとお母さんに呼ばれて、俺と周防くんはリビングへと向かう。
俺が愛してるって言ったあと周防くん驚いた顔をしてた。それから慌てたように俺を膝から下ろして、ふいっと背けた顔を片手で隠してブツブツ何かを呟いてて……聞こえなかったけど、ピアスいっぱいの耳が赤くなってたから照れてるんだって気付いたら、つい可愛いって思っちゃった。
こんな周防くんが見られるのも、俺だけの特権だよね。
「そうそう。いきなりで悪いんだけど、明日の昼から明後日の夕方までお父さんと拓郎おじさんのところに行ってくるから、二人ともお留守番お願いね」
「え、私も行きたい。なっちゃんと遊ぶ」
「でもそうなると、湊一人になるでしょう?」
出来たてのお蕎麦と天ぷらをテーブルに運んでいるとお母さんが不意にそんな事を言ってきた。拓郎おじさんはお父さんの弟で、なっちゃんは拓郎おじさんの娘で俺と薫の一個下の女の子。
薫と凄く仲が良くて、俺の事も気に掛けてくれる優しい子なんだ。
拓郎おじさんのところに行くなら薫も行きたがるよね。俺は拓郎おじさんの息子のあっくんがちょっと苦手だから出来れば行きたくないけど。
それに俺は一人でも大丈夫なのに。
「神薙くんがいるじゃない」
「え?」
俺は短い時間なら一人で留守番した事あるけど、丸一日とかは薫が心配するからさせて貰った事ないんだよね。
だから一人でもいいよって言ってもダメって言われるの分かってるから黙ってたら、薫はなんて事ないように周防くんの名前を口に出した。
周防くん、キョトンってしてる。
「神薙くんにだって都合があるでしょう?」
「どうせ湊といる為に空けてるわよ。ね、神薙くん」
「…いや、まあ、その通りだけども…」
「ほら」
「〝ほら〟じゃないの。ごめんなさいね、神薙くん」
俺は成り行きを見守りつつ周防くんの器に大きな海老天二つと掻き揚げを並べて周防くんの前に置き、自分のは海老天一つだけにして隣に座る。
薫、よっぽど行きたいみたいで周防くんをじーっと見てるけど、さすがに周防くんにだって断る権利はあるよ。
「あ、いえ。俺でいいなら湊と留守番しますよ」
「本当に? 用事とかはないの?」
「はい。薫の言う通り湊の為に空けてますし、俺としても湊といられるのは嬉しいので」
周防くん、友達多いのにいつも俺の為に時間作ってくれて、嬉しいけどホントにいいのかなって心配になる。周防くんだから仲が悪くなるような事にはならないと思うけど、遊ぶ時は俺だって快くいいよって言えると思うんだけどな………た、たぶん。
「やった! さっすが神薙くんね」
「ちゃんとお礼を言いなさい」
「ありがとう!」
「貸しイチな」
「湊の可愛い写真でどうよ」
「分かってんじゃねぇか」
「………」
何だっけ、時代劇の……悪代官と越後屋? みたいなやり取りに思わず苦笑してしまう。どうしてそこで俺の写真なのかは分からないし、二人が楽しそうで少しモヤッとはしたけど我慢我慢。
「じゃあ食べましょうか」
お母さんにそう促されて、みんなで手を合わせて年越し蕎麦を食べたあと、薫が毎年見ている音楽番組のカウントダウンライブに合わせて年を越してから近場の神社へと初詣に出掛けた。
そんなに大きくない神社だけど、ご近所さんがそれなりに来ていていつも挨拶から始まる。でも今年は周防くんがいるからみんな驚いてて…特に年が近い女の子の視線が凄かった。薫が質問責めにあってたなぁ。
神様には、〝俺の大切な人たちが今年も元気に過ごせますように〟と、〝周防くんとずっと一緒にいられますように〟の二つをお願いした。どっちも大切な事だから欲張っちゃった。
「湊、何だった?」
お参りのあと列から抜けておみくじを引いたんだけど、結果を見た俺はガックリと肩を落とす。これって、どっちかというと悪い方だよね。
「…末吉」
「あー…でも、吉は吉だし」
「あんまりいい事書いてない」
恋愛のところ、〝波乱が待ち受けているかも〟って書いてあって普通に怖い。悲しくて苦しいのはもうこりごりなんだけど。
周防くんは俺のおみくじを覗き込むと、それをヒョイっと取り上げて自分のを渡して来た。わ、凄い。大吉だ。
「湊にやるよ。これで悪い事は相殺されるし、いい事は倍になるだろ」
「え、でも…」
「湊がいれば俺はずっと大吉だから」
「周防くん……」
そう言って俺の頭を抱き寄せてくれる周防くんの胸元に顔を押し付け嬉しい気持ちを噛み締める。俺も、周防くんがいてくれるならこの先ずっと大吉だって気がしてきた。
周防くんは、俺の幸せそのものだから。
「あんたたち、ここどこだか分かってる?」
「…あ」
しばらくして、呆れた顔をした薫が腕を組んで聞いてきた。言われるまで自分がどこにいるのか忘れてた俺は、ご近所さんに注目されてるって気付いて慌てて周防くんの胸元を押す。
でも周防くんは離してくれなくて、薫にべって舌を出すとコートの前を広げて俺を隠すように包みくるりと背中を向けた。何か、小さい子供みたい。
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