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一緒がいい※

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 ずっと悠介が好きだった俺は、悠介が本当に薫を好きで失恋したとしても変わらず好きでいたと思う。他の人は怖くて近付けもしなかっただろうし、きっと何も知らないまま大人になってたんだろうな。

 好きな人に好きって言って貰える嬉しさとか、恋人と過ごす時間がこんなにも幸せな事とか、したい事、言いたい事を言ってもいいって事とか……全部知らずに、周防くんが言ったみたいに箱入りのままだったんじゃないかなって。
 でも周防くんと出会って、周防くんを好きになって、俺はどんどん自分に自信が持てるようになった。まだ途中で言うのをやめちゃう癖は治ってないけど、周防くんは俺が言えるまで微笑んで待っててくれるから、少しずつ前に進めてると思う。
 周防くんは本当に甘やかし上手で優しくて、でも優しいだけじゃなくてダメな時はちゃんと言ってくれるから学べるし、俺が頑張れそうな時は見守ってくれるから勇気が持てるようにもなった。
 自覚した時よりもずっとずっと、周防くんの事好きになってる。

 だから周防くんが、〝恋人だから出来る事をしたい〟って言ってくれて嬉しかった。
 それがどんなに恥ずかしい事でも、それを周防くんが望んでくれるならしたかったから……でも、でもまさかを使う事なんて思いもしなくて、俺は全身が熱くて堪らない。

「…湊、痛くないか?」

 お尻の穴に周防くんの指が入ってる。
 男同士はここを使うんだって教えて貰ったけど、そもそも本当に指で拡げただけで入るのかも不安だし、正直に言えば怖い。
 一番最初にこれを経験した人、凄い度胸だ。
 でも周防くんにも気持ち良くなって貰いたいって気持ちは嘘じゃないから、怖いって気持ちに絶対負けたくない。

「…っ…ん、痛く、ない…」
「良かった。じゃあ指、増やすな」
「ふ…んん…っ」

 一度抜かれた指が二本になってまた入ってくる。
 ヌルヌルしたやつをたくさん使ってくれてるから痛くはないけど、どうしても異物感と圧迫される苦しさはあって俺は枕にしがみついた。

「確か腹側にあるって…」

 何かを呟きながら周防くんの指が探るように動く。自分さえも触らない場所に人の指が入ってるのも変な感じだけど、自分の意思とは関係なく動かれるのも奇妙な感覚だ。
 でも抜き差しされているうちにマシになってきた気がする。
 力を入れると周防くんの指が痛いかもって、息を吐いて身体が強張らないようにって気を張ってたけど、同じような場所を擦っていた指がある部分を押した瞬間ビリッと電流みたいなものが背中を駆け上がった。

「ひぅ…っ」
「…ここか」
「…ッ…や、そこやだ、周防く…っ」
「やだ? やめる?」
「……っ…」

 そういう聞き方はズルいと思う。
 周防くんは最初から俺の気持ち優先で、少しでも否定的な言葉を言うとこうしてすぐに止まってくれる。大事にされてるって分かるからそれはそれで凄く嬉しいんだけど、いつもそうだから、たまには周防くんにも我を通して欲しい。
 ……我儘かな。

「……やめ、ない…」
「中気持ち悪いなら、無理しない方がいい」
「やめない…っ…」
「湊……」

 だって今だって俺ばっかりして貰ってて周防くんを気持ち良く出来てない。さっきチラッと見えたけど、周防くんの凄く大きくなってた。あれ、絶対辛いはず。

「…一緒に…気持ち良くなりたい……」
「…っ……じゃあ、やだって言われてもやめないからな」
「うん…」

 むしろやめないで欲しい。
 小さく頷いた俺の頭を撫でてくれた周防くんは、もう一度ヌルヌルした液体をお尻に向けて出し指の動きを再開した。





「ひぁ、あ…んん…──ッ」

 あれからどれくらい時間が経ったのかな。
 周防くんの指がもう何本か分からないくらい前も後ろもぐちゃぐちゃで、何も考えられなくなってる。
 自分が何回出したのかも分からない。

「湊、大丈夫か?」
「…ん…っ」
「結構時間掛けたし、だいぶ解れたから大丈夫だとは思うけど…痛かったら言ってな」
「…ぁ…」
「本当は後ろからのがいいんだけど、顔見たいから…」

 指が抜かれて、何かが敗れた音がしたあと少しして熱いものが宛てがわれる。ぐって先が入ってきた時、指とは全然違う大きさに堪らず息が詰まった。

「んん…っ」
「…っ、やっぱキツいな……湊、ちゃんと息しろ」
「…ぁ、は…ぅ…」
「目ぇ開けて、俺見て」

 優しい声に知らずにぎゅっと閉じていた目を開ける。視界が涙でぼやけてるけど、周防くんの心配そうな顔が見えて胸がきゅうってなった。
 狭い中を拡げながら進むたび内蔵が押し上げられるみたいな感覚になって小さく声が漏れる。
 頬を撫でられたからその手に擦り寄ると周防くんが柔らかく微笑んだ。

「いい子」
「…周防くん…」

 限界まで拡げられた場所は少し痛いしお腹は苦しいのに、ちょっとだけでも俺の中に周防くんがいてくれる事が嬉しい。
 腕が重たくて動かすのもしんどいけど、どうしても触れたくて気合いで持ち上げ周防くんの頬に手を当てると、大きな手が重なって手の平に口付けられた。

「周防くん……好き…大好き…」
「俺も好きだよ、湊」
「ンッ…」
「…もうちょっとだから…」

 キスされた手が握られベッドに押さえ付けられる。指じゃ届かなかった深い場所まで入って来て無意識に繋いだ手に力が入った。
 しばらくして動きを止めた周防くんが長く息を吐く。

「…入った…」
「ん…っ…」
「馴染むまで待つから」

 浅く短く呼吸をする俺を気遣ってか、周防くんがそう言って俺の額にキスをしてくれたけど、口にして欲しくて首を振ったらフッと笑ってチュッてしてくれる。舌を出して周防くんの唇を舐めてたらそのままカプって噛まれた。
 引っ張り出されて強めに吸われるとお臍の下がウズウズしてくる。
 しばらく夢中になってキスしてたら周防くんが少し腰を引いてまた押し付けてきた。

「ふぁ…っ」
「ごめん…そろそろ限界」
「んっ、ゃ……」

 周防くんの掠れた声が小さくそう零してゆっくり動き出す。狭い中を前後に擦られる感覚は初めてなのに、奥に当たるたびゾクゾクと痺れが走った。
 何これ、頭が変になりそう。

「あ、ぁ…ん…すお、く…っ」
「…っ、痛くないか…?」
「ンッ、ん、な…ぃ…ない…あ…っ」

 お腹が少し苦しいくらいで痛みはもうなくて、何度も頷いて答えるけど周防くんが動くから変な声が混じる。
 勝手に出るから恥ずかしいのにどうしたらいいか分からない。思わず手の甲で口元を押さえたら外されて手を握られた。両手とも周防くんと繋がれてもう顔を隠す事さえも出来なくなる。

「駄目だろ…声、聞きたいっつったじゃん」
「や…だって……んっ、隣の人…」
「ここ角部屋だし、隣誰も住んでないから」
「あ、あ…だめ、待って…っ」

 ゆっくりだった動きがだんだんと速くなっていって、さっき指で触られた敏感なところも擦られると頭の中が真っ白になって何も考えられなくなる。

「湊…」
「やぁ…あ、そこや…っ…ん…ッ」
「ん、ここ気持ちいいな」

 目の奥がチカチカして、泣きたくないのに涙がボロボロ出て俺の感情は今ぐちゃぐちゃになってるのに、中にいる周防くんの熱さだけはしっかり感じられて何をしていなくても意識してしまう。
 そっか、このゾワゾワは気持ちいいって感覚なんだ。
 揺さぶられて声を上げていると、片手が離され中心が握られた。腰の動きに合わせるように上下され身体が震える。

「や、それ、一緒…やだ…っ」
「後ろだけじゃイけないだろ?」
「あ、ぁ、だめ、ゃ…も、出ちゃ…」
「我慢しなくていいから…俺もイきそ…」

 空いた手が心許なくて何かに縋りたいと薄目を開けると眉根を寄せた周防くんの顔が目に入る。でも俺の足の間で動く姿とか上下する手は俺には刺激が強過ぎてぶわっと何かが押し寄せてきた。

「やぁ…あ、ぁ、ん…周防く…っ…ダメ……ひぁ、あっ、ん、んん──…ッ」
「…っ…」
「……は、ぁ……」

 一気に波が来て訳が分からないまま限界を迎えて出すと息を詰めた周防くんが動きを止めた。中でドクドクしてるのが分かってそれにさえ反応してしまう。
 少しして周防くんが出ていき俺はぐったりとベッドに沈み込んだ。

「湊」
「…も…うごけない…」
「そのまま寝てもいいよ」
「でも……」
「疲れたろ?    いい子だから。おやすみ、湊」
「……ん…」

 頭を撫でられる感触が心地良くて、俺の身体ベタベタなのにとか、このまま寝たら大変な事になりそうとか、いろいろ思ってた事がぼんやりと薄れていく。
 勝手に閉じていく目蓋に逆らう事なんて出来ずに、俺はそのまま意識を手放した。
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