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狼は兎と番いたい※

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 目の前で小さな身体が小刻みに震えている。
 上総の全身を余す事なく口付け、蕩けさせ、なるべく痛みも苦しみも感じないように時間をかけて指の数を増やしたおかげか、三本目でも甘い声が上がるようになった。

「痛くねぇ?」
「ん、ん、…ったく、ない…っ」
「気持ち悪いとかは?」
「ない……ない、から…っ」

 この部屋にローション何てものはないから唾液やらワセリンやら使えそうな物で代用してみたけど、案外いけるもんなんだな。
 っつーかこの眺めやべぇ……。
 宥めるように上総の細い太腿を撫でていた手が本人に握られる。

「も、いい…から…ンッ、朔夜の…」
「もうちょい拡げた方が……」
「どんだけ、時間かける気だ…っ…いいから…!」

 肘をついて上体を起こした上総が俺の手首を掴んで中から指を抜く。その状態で真っ赤な顔をして俺を見るもんだから、張り詰めていた自身が更に質量を増して痛いくらいだ。
 とりあえず気を落ち着かせねぇと…。

「朔夜……?」
「……待って」

 俺が何も言わないからか不安げな声で名前を呼ぶ上総にそう短く返す。
 俺は鞄から出した新品のゴムの箱を開けると、一つ取り出して歯で開け猛りきった自身へと被せた。
 何であるかと言えば、買ったまま入れっぱなしにしていたからだ。いつかは使うと思ってたし。
 ……これだから太一にムッツリだって言われんのか。
 肘をついたままの上総に口付け後ろに倒すと奥まった場所にある小さな窄みに先をあてがう。

「上総」
「ん…?」
「俺、初めてだから」
「え?」
「痛かったり、苦しかったりしたら言って」
「はじ……ぇ、あ…っ」

 ぐっと腰を進めると戸惑っていた上総の眉が寄せられた。
 仕方ねぇだろ。抱きたいと思う奴なんていなかったし、誰彼構わず手ぇ出すような節操なしでもねぇんだ、俺は。

「…っ…やっぱ、キツいな…」
「んん……ッ」
「大丈夫か…?」
「だい、じょ、ぶ…」

 こうやって組み敷くと上総の小ささが良く分かる。
 身長差も子供と大人くらいはあるし、体格差も傍から見ても一目瞭然だし。それに童顔なのも合わさってイケナイコトしてるみてぇになるな。

「さくや、朔夜…っ…」
「ん、しんどいよな…ごめんな」
「朔夜も、同じだろ…っ……痛くない、から、もっと…」
「……駄目」

 思いっきり突っ込みたいのを我慢してんだ、頼むから煽らねぇで欲しい。
 ……だけど、確かに時間をかけすぎるのも良くない。現に少しだけ上総の身体が強張ってきたし。
 俺は上体を前に倒して短く呼吸する上総の唇を塞いだ。

「ンッ」

 動いたせいで少し当たる場所が変わったからか上総が小さく声を上げる。息を吸うために開いた口の中に舌を差し込み上顎を舐めるとビクッとして僅かに力が抜けた。
 キスに集中出来るよう角度を変えて深める。

「ん、ふぁ……んっ、んん…っ」

 華奢な腕が縋り付くように首に回され小さな舌が応えてくる。強張りも解けた頃に腰の動きを再開すると、最初よりはスムーズに入るようになった。それでも時間をかけてようやく奥まで収めた俺は、息を吐いて震える上総の頬を撫でる。
 さすがに今日は根元まで収め切るのは無理だ。

「入っ…た……?」
「ん、苦しくねぇか?」
「変な感じはしてるけど…平気……ぁ、ん…っ」

 少しだけ腰を揺らして反応を見ると切ない顔をするからまぁ大丈夫なんだろう。
 触れ合う肌の熱さと、上総への負担を考えて手をついて起き上がろうとすると、小さな手が肩の後ろに回され押さえられた。

「やだ、離れないで…っ」
「でもこのままじゃしんどくねぇ?」
「朔夜が離れる方が嫌だ……抱き締めてて欲しい…っ」
「上総…」

 やべぇ、可愛すぎて血管切れそう。
 俺はもう一度上総に覆い被さると、今度はしっかりと小さな身体を抱き締めた。

「動くな」
「ん…」

 軽く唇を触れ合わせゆっくりと律動を開始する。
 上総の中すげぇ熱い。腸壁が絡まり付いて気ぃ抜いたら持ってかれそうだ。

「は、ぁ…っ…ん、ん」
「……っ…」

 乱暴にはしたくねぇのに、奥の奥まで突き上げたくなってくる。
 必死にしがみつく上総の肩に吸い付いて痕を残し軽く歯を立てると、俺の中で何かがザワついた気がした。

 上総の首に、もっと強く噛み付きたい。

「ッひぁ、んっ……まっ、ゃ、あ、あ…っ」
「上総…っ」
「あぁっ、ぁ、ダメ、はや、ぃ……!」
「悪い…もう限界……」

 ギッとベッドが軋んだのが分かったけど止められなかった。
 左腕の肘をつき至近距離で上総の顔を見つめるとえも言われぬ感覚に見舞われる。
 真っ赤な顔で涙を流しながら喘ぐ上総は幼いのに目眩がするほど煽情的で、俺の中の欲が際限なく膨らみそうになり奥歯を噛み締めた。

「朔夜…さくや…っ…あ、あ、やぁ…っ…も、おねが…っ」
「分かってる………上総」
「ぁ、んん…っ、な、に……?」
「…噛んでいい?」

 俺のテクニック不足もそうだが、上総が中だけでイケないと知っている俺はヒクヒクと震えるソレを握り動きに合わせて上下させ始める。
 どうしても噛み付きたくて首筋に唇を這わせながら問うと上総は俺が噛みやすいようにと反らしてくれた。
 匂い立つような色香にクラっとする。

「ん、ぅん…、ぁ、んっ、アッ、そこ、ダメっ、すぐイッ…っ」
「上総………っ!」
「あっ、あっ、も…っ……ッひぅ…っ、や、あぁっ!」
「……ッ…」

 抽挿を速め前立腺を擦るように突き上げながら犬歯が食い込む程噛み付くと上総の身体が大きく跳ねた。達すると同時に締め付けられ俺もゴムの中に吐き出す。
 息が整うのを待って身体を起こすと眠そうに瞬きをする上総が目に入った。
 寮の門限まではあと一時間半。軽く汗を流してタクシーを拾えばギリギリ間に合うだろう。

「………」

 俺が噛んだとこ、内出血してる。やり過ぎた。皮膚は貫通しなかったみてぇだけど、しばらくは痛いだろうな。

「上総、大丈夫か?」
「……う、ごけ…ない……」
「だろうな。シャワー浴びて帰ろう」
「ん……」

 半分微睡んでいる上総を抱き上げ、クローゼットから何枚か服を取って浴室に向かいシャワーを浴びる。時間もないしとりあえず汗が流せればいいだろう。
 身体を拭いて先に上総に俺の服を着せてから自分も身に付ける。濡れた服と買った服は上総の分だけ纏めてショッパーに入れ、俺のは洗濯カゴに突っ込んでからスマホでタクシーを手配した。
 数分後に到着したタクシーに上総と荷物を抱えて乗り込んだ俺は安堵の息を吐く。マジで親が帰って来なくて良かったと。





 寮に着く頃には上総も動けるようにはなっていて、歩き方は少しぎこちなかったがどうにか自分の足で部屋まで戻れた。
 ベッドに座り一息つく。

「ぅ……まだ何か挟まってる感覚がある……」
「大丈夫か?」
「大丈夫は大丈夫だけど……むしろこっちの方が問題。強く噛み過ぎだぞ」
「……ごめん」

 さすがの上総も怒ってるな。
 元々、柔らかな物には噛み付きたくなる癖はあったが、あそこまで強い衝動に駆られる事はなかった。
 今回ばかりはやってしまったと額を押さえていると、ベッドの軋む音と微かな衣擦れが聞こえ頭にポンっと何かが乗せられる。そのまま撫でられたため上総の手だと分かったが、怒ってたんじゃねぇのか?

「噛み付くのも愛情表現ではあるし、次から気を付けてくれるんならもういいよ」
「……上総はホント、甘ぇな」

 そうやって何でも簡単に許すから調子に乗るのに。
 目の前に立つ上総の腰を抱き肩に頭を預ければ抱えるようにして更に撫でられる。
 この人、意外と俺の頭触ったり撫でたりするの好きだよな。

「またデートしような、朔夜」
「ん」

 今度は予報が完全に晴れの日に行きてぇな。
 そんな事を考えていると、不意に上総が顔を覗き込んで来た。視線を上げて眉尻を上げるとにこっと笑顔を見せてくれる。
 ……だから、何でイチイチ可愛いんだ、この人。
 俺は再びもたげそうになる欲望をどうにか抑え込みながら、頭に頬を寄せてくる愛くるしい恋人に大人しく頭を撫でられ続けていた。
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