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番外編
七瀬にとって初めての〈おまけ〉※
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七瀬はついに、初めてのお給料日を迎えた。
その日はシフトには入っていなかったが、店長から「お給料受け取りに来てね」と言われていた為学校帰りに寄った七瀬は、受け取ったその足で雑貨屋に入った。店内をウロウロし、あれでもないこれでもないと頭を悩ませる。
初めてのバイトで初めてのお給料、七瀬は最初から使い道を決めていた。
一流の物に囲まれて生活していた凌河には物足りないかもしれないが、それでも七瀬は自分が働いて稼いだお金でどうしても凌河にプレゼントを贈りたかった。
しかも来年には凌河の二十歳の誕生日も来る。予行としてはもってこいだった。
七瀬は長い時間をかけてマット素材のネイビーのキーケースに決め、メッセージと共にプレゼント用に包装をして貰いウキウキしながら帰路につく。
凌河はつい最近父親から、遅ればせながらに入社祝いとして車をプレゼントされていた。このキーケースにはスマートキーを収納出来る部分がある為、ちょうどいいと思ったのも選んだ理由だ。
ちなみに七瀬はその時に知ったのだが、彼は大型二輪だけでなく普通車の運転免許証も持っていた。
(身近に免許証持ってる人いなかったから、不思議な感じだったなぁ)
ちなみに見せて貰ったが、凌河は運転免許証の写真でさえ素敵だった。
マンションにつき、入浴も済ませた七瀬は夕飯の準備を始める。プレゼントで悩んだとはいえバイト終わりの時間よりも早く帰れたし、今日は時間のかかる煮込み料理でもしようかなとエプロンを身に付け取り掛かるのだった。
残業もなく、大凡いつも通りの時間に帰宅した凌河が入浴し、夕飯も食べて片付け終わった現在、ソファの上で後ろから逞しい腕に抱き締められている七瀬はいつ渡そうかと考えていた。
渡すなら早めの方がいいのに、いざそうするとなると緊張してしまう。
きっと七瀬のソワソワなんて凌河はお見通しだろうが、本人が言うまでは何も言わないでいてくれるようだ。
七瀬は今日何度目か分からない気合いを入れ直し凌河を振り返り見上げた。
「あの、凌河さん」
「うん?」
「俺、今日お給料日だったんです」
「うん、知ってるよ。七瀬頑張ってたもんね。何か良い物買った?」
「買いました。それで、あの…」
何故か敬語の七瀬には突っ込まず、凌河は言葉の続きを待つ。だが七瀬は何も言わずに立ち上がり、キッチンの戸棚から隠しておいた長方形のプレゼントボックスを取り出すと、凌河の足元に正座をして両手でそれを差し出した。
「…え?」
「これ、俺からのプレゼントです。いつも凌河さんからたくさん色んなもの貰ってるから…ほんの気持ちですけど…」
照れ臭くて目を見れなくて、俯いたまま差し出していた手から重みがなくなる。「開けていい?」の言葉には無言で何度も頷いた。
リボンが解かれる音、箱の蓋が開き、緩衝材の細い紙束のカサカサという音。全てが七瀬を緊張させた。
「キーケース?」
「あ、凌河さん、お家の鍵とか車の鍵とか会社の鍵とか、俺がゲーセンで取った犬のキーホルダーで纏めてるでしょ? さすがにあれじゃもういっぱいいっぱいだし…」
「初めて七瀬が取った景品だったからどうにかして使いたくて。でもそっか、気にしてくれてたんだ…」
「スーツ姿の素敵な男性が、鍵を出す時にあれでジャラジャラしてたら不格好だなって思って」
「はは、確かに。…うん、すごく嬉しい。ありがとう七瀬、大事に使うね」
「うん」
少しだけ照れた、それでも嬉しそうな笑顔に七瀬まで嬉しくなる。わざと隠すようにしていたメッセージカードを発掘して渡せば、目を瞬いた凌河がそれを目だけで読み始めた。
―凌河さんがいてくれるから毎日が幸せです。俺も凌河さんにたくさん幸せをあげられるように頑張りますね。七瀬―
「…………」
「凌河さん?」
「…うん……どうしよう、俺泣きそう…」
「え?」
メッセージカードを読んだ瞬間片手で目を覆った凌河に声をかけると震える声でそう言われ七瀬は慌てる。何か変な事を書いていただろうかと心配になっていると、腕を引かれて膝の上に抱き上げられた。
背中に回された腕が強く締まる。
「俺だって、七瀬がいてくれだけで毎日幸せだし楽しいよ」
「凌河さん…」
「ありがとう七瀬。……愛してるよ」
耳元で甘く囁かれる愛の言葉に七瀬は小さく身体を震わせた。視線を上げた先でぶつかった青い瞳が細められ唇を塞がれる。
何度か啄まれ熱くなった息を吐くために薄く開いた場所に舌が捩じ込まれ、 絡め取られた舌が強めに吸われると腰が疼いた。
「んっ」
リップ音と共に離れた唇が今度は首筋を這う。鎖骨まで降りると僅かな痛みに吐息が漏れた。部屋着の下から入って来た大きな手が素肌を撫で、堪らず凌河の首に抱き着いた七瀬の耳元で吐息だけが笑った。
「ベッド行こうか」
凌河を受け入れる瞬間はいつも以上にドキドキして心臓が張り裂けそうになる。ドロドロに溶かされた場所が限界まで拡げられ、凌河以外誰も触れない奥の奥まで突かれると知らずに涙が出てしまうのはどうしてか。
七瀬は後ろから攻め立てられシーツに爪を立てた。
「あ、ん、ゃ、やぁ、あ…っ」
「七瀬、ここ好きだよね」
「そ、んな事…っ…ひぁ、あ、ああ…っ」
「…っ…、ほら…締まった」
ベッドが軋むくらい激しく抽挿され七瀬はあられもない声を上げる。凌河にここと言われて奥を突かれると腹の下がビクッとして締め付けてしまった。
「あっ、ぁんっ、ダメ、またイっちゃ…っ」
「ん、いいよ」
「やぁ、あ、あっ、そこやだっ、あっ、ああっ、あっ……ゃ、んんッ!」
「…っ……」
少しだけ角度を変えて前立腺を抉るように擦り上げられると一気に限界が押し寄せ、七瀬は大きく身体を戦慄かせて吐精した。締め付けに凌河も遅れて果てるとすぐに引き抜いて七瀬を仰向けにする。
「七瀬」
「…ぅん…?」
「ゴムなしでもいい?」
七瀬の負担を減らす為、極力ゴムは使用するようにしている凌河だが、たまには着けないで挿れたい時がある。そんな時はこうして七瀬にお伺いするのだが、断られた事が一度もないあたり七瀬も相当凌河には甘いと思う。辛いのは七瀬のはずなのに。
「…ん、いいよ…」
そう言って艶やかに微笑むものだから調子に乗ってしまうのだ。
凌河は上体を屈めて七瀬に口付けると、そのまま猛りきった熱を後孔へ宛てがい腰を押し進めた。
「ん、んん…っ」
ゴムがないだけで感覚が鋭くなり、絡み付くように蠢く腸壁に理性が持っていかれそうになる。それを根性で耐えて抜き差しを始めれば途端に七瀬が甘い声を上げるのが堪らない。
七瀬もありとなしで感覚が変わるのだろうか。
「あ、ぁ…んっ、ゆっくり、や…っ」
「すごい絡み付いてくる…」
「やぁ……っ…やだぁ…」
「七瀬、可愛い」
緩慢な動きで腰を前後させると七瀬はもどかしいとばかりに腰を揺らす。無意識下でやっているのだが、その様と涙を流す姿に凌河は舌舐りした。
全身から色香を漂わせる七瀬は本当に可愛くて綺麗だ。
「も、いじわる、しないで…っ…ちゃんと…、おねがぃ……凌河さ…っ」
「…七瀬、いつも言ってるよね。それは俺を煽るだけだって」
「あ、ん、煽ってな…っ…やぁ……もっと奥…っ」
「……悪い子だ」
甘えた声でおねだりする七瀬は凌河を煽る天才だ。汗で濡れた前髪を掻き上げてから七瀬の右足を凌河の肩に乗せ、左足の太腿を手で押さえるとグッと腰を前に出す。より深い場所まで届くように、無理矢理にでも押し込むと七瀬がいやいやと頭を振った。
「だ、めぇ…っ、ひぁ、あっ、ああ…!」
「…ッ、キツ……っ」
「いや…ぁ、待っ、てっ、あ、んんっ 」
七瀬の細い腕が止まってと言わんばかりに突き出されるが、凌河はお構いなしに奥を穿つ。顔を見れば本気で嫌かどうかは分かるから、今の七瀬は強過ぎる快感に悶えているだけで嫌がってはいない。
「ぁあっ、あっ、や、ンッ、だめ、だめ…! またきちゃぅ…っ」
華奢な身体が小刻みに震えている。凌河は精液と先走りの混じったものを零す七瀬の陰茎を握り律動に合わせて扱き始めた。
「あっ、や、一緒はだめ…! すぐイっちゃうから…っ…やぁ、あっあっ…もっ…──っああぁ…! 」
「…く…っ」
「…ぁ、ぅ…、……ん…っ」
先程よりも強い締め付けに凌河は小さく呻き声を漏らして七瀬の中へと果てる。呼吸を落ち着かせるため暫くそのままでいたが、七瀬が動かなくなった事に気付いて顔を上げた。
「七瀬…?」
「……ん…」
どうやら気を失ってしまったようだが、七瀬の身体はまだビクビクと震えている。凌河は七瀬の中から抜けると大きく溜め息をついた。
無意識に煽られたとはいえ、今回は少し意地悪しすぎたかもしれない。
「起きたら謝らないと…」
とりあえずは後処理だと裸のまま七瀬を抱き上げた凌河は急いで浴室に行って自分が出したものを掻き出し互いの身を清め、シーツも新しい物に変えて完璧に寝る準備を済ませた。
隣に七瀬を寝かせ、自分は七瀬から貰ったキーケースに鍵を付け替えて行く。大事なキーホルダーは、キーケースが入っていた箱にでもしまっておけばなくさないだろう。
七瀬は、初めてのバイトで稼いだ初めての給料を凌河の為に使ってくれた。こんなにも嬉しいプレゼントは生まれて初めてだ。
「一生大事にするからね」
穏やかな寝息を立てる七瀬の額に口付けた凌河は、キーケースを優しくサイドテーブルに起き寝転がる。
凌河は七瀬を腕に抱き寄せ、使っている物は同じはずなのに少し違う香りを胸いっぱいに吸って目を閉じた。
どうかこれからも、七瀬が幸せでありますようにと願って。
FIN
その日はシフトには入っていなかったが、店長から「お給料受け取りに来てね」と言われていた為学校帰りに寄った七瀬は、受け取ったその足で雑貨屋に入った。店内をウロウロし、あれでもないこれでもないと頭を悩ませる。
初めてのバイトで初めてのお給料、七瀬は最初から使い道を決めていた。
一流の物に囲まれて生活していた凌河には物足りないかもしれないが、それでも七瀬は自分が働いて稼いだお金でどうしても凌河にプレゼントを贈りたかった。
しかも来年には凌河の二十歳の誕生日も来る。予行としてはもってこいだった。
七瀬は長い時間をかけてマット素材のネイビーのキーケースに決め、メッセージと共にプレゼント用に包装をして貰いウキウキしながら帰路につく。
凌河はつい最近父親から、遅ればせながらに入社祝いとして車をプレゼントされていた。このキーケースにはスマートキーを収納出来る部分がある為、ちょうどいいと思ったのも選んだ理由だ。
ちなみに七瀬はその時に知ったのだが、彼は大型二輪だけでなく普通車の運転免許証も持っていた。
(身近に免許証持ってる人いなかったから、不思議な感じだったなぁ)
ちなみに見せて貰ったが、凌河は運転免許証の写真でさえ素敵だった。
マンションにつき、入浴も済ませた七瀬は夕飯の準備を始める。プレゼントで悩んだとはいえバイト終わりの時間よりも早く帰れたし、今日は時間のかかる煮込み料理でもしようかなとエプロンを身に付け取り掛かるのだった。
残業もなく、大凡いつも通りの時間に帰宅した凌河が入浴し、夕飯も食べて片付け終わった現在、ソファの上で後ろから逞しい腕に抱き締められている七瀬はいつ渡そうかと考えていた。
渡すなら早めの方がいいのに、いざそうするとなると緊張してしまう。
きっと七瀬のソワソワなんて凌河はお見通しだろうが、本人が言うまでは何も言わないでいてくれるようだ。
七瀬は今日何度目か分からない気合いを入れ直し凌河を振り返り見上げた。
「あの、凌河さん」
「うん?」
「俺、今日お給料日だったんです」
「うん、知ってるよ。七瀬頑張ってたもんね。何か良い物買った?」
「買いました。それで、あの…」
何故か敬語の七瀬には突っ込まず、凌河は言葉の続きを待つ。だが七瀬は何も言わずに立ち上がり、キッチンの戸棚から隠しておいた長方形のプレゼントボックスを取り出すと、凌河の足元に正座をして両手でそれを差し出した。
「…え?」
「これ、俺からのプレゼントです。いつも凌河さんからたくさん色んなもの貰ってるから…ほんの気持ちですけど…」
照れ臭くて目を見れなくて、俯いたまま差し出していた手から重みがなくなる。「開けていい?」の言葉には無言で何度も頷いた。
リボンが解かれる音、箱の蓋が開き、緩衝材の細い紙束のカサカサという音。全てが七瀬を緊張させた。
「キーケース?」
「あ、凌河さん、お家の鍵とか車の鍵とか会社の鍵とか、俺がゲーセンで取った犬のキーホルダーで纏めてるでしょ? さすがにあれじゃもういっぱいいっぱいだし…」
「初めて七瀬が取った景品だったからどうにかして使いたくて。でもそっか、気にしてくれてたんだ…」
「スーツ姿の素敵な男性が、鍵を出す時にあれでジャラジャラしてたら不格好だなって思って」
「はは、確かに。…うん、すごく嬉しい。ありがとう七瀬、大事に使うね」
「うん」
少しだけ照れた、それでも嬉しそうな笑顔に七瀬まで嬉しくなる。わざと隠すようにしていたメッセージカードを発掘して渡せば、目を瞬いた凌河がそれを目だけで読み始めた。
―凌河さんがいてくれるから毎日が幸せです。俺も凌河さんにたくさん幸せをあげられるように頑張りますね。七瀬―
「…………」
「凌河さん?」
「…うん……どうしよう、俺泣きそう…」
「え?」
メッセージカードを読んだ瞬間片手で目を覆った凌河に声をかけると震える声でそう言われ七瀬は慌てる。何か変な事を書いていただろうかと心配になっていると、腕を引かれて膝の上に抱き上げられた。
背中に回された腕が強く締まる。
「俺だって、七瀬がいてくれだけで毎日幸せだし楽しいよ」
「凌河さん…」
「ありがとう七瀬。……愛してるよ」
耳元で甘く囁かれる愛の言葉に七瀬は小さく身体を震わせた。視線を上げた先でぶつかった青い瞳が細められ唇を塞がれる。
何度か啄まれ熱くなった息を吐くために薄く開いた場所に舌が捩じ込まれ、 絡め取られた舌が強めに吸われると腰が疼いた。
「んっ」
リップ音と共に離れた唇が今度は首筋を這う。鎖骨まで降りると僅かな痛みに吐息が漏れた。部屋着の下から入って来た大きな手が素肌を撫で、堪らず凌河の首に抱き着いた七瀬の耳元で吐息だけが笑った。
「ベッド行こうか」
凌河を受け入れる瞬間はいつも以上にドキドキして心臓が張り裂けそうになる。ドロドロに溶かされた場所が限界まで拡げられ、凌河以外誰も触れない奥の奥まで突かれると知らずに涙が出てしまうのはどうしてか。
七瀬は後ろから攻め立てられシーツに爪を立てた。
「あ、ん、ゃ、やぁ、あ…っ」
「七瀬、ここ好きだよね」
「そ、んな事…っ…ひぁ、あ、ああ…っ」
「…っ…、ほら…締まった」
ベッドが軋むくらい激しく抽挿され七瀬はあられもない声を上げる。凌河にここと言われて奥を突かれると腹の下がビクッとして締め付けてしまった。
「あっ、ぁんっ、ダメ、またイっちゃ…っ」
「ん、いいよ」
「やぁ、あ、あっ、そこやだっ、あっ、ああっ、あっ……ゃ、んんッ!」
「…っ……」
少しだけ角度を変えて前立腺を抉るように擦り上げられると一気に限界が押し寄せ、七瀬は大きく身体を戦慄かせて吐精した。締め付けに凌河も遅れて果てるとすぐに引き抜いて七瀬を仰向けにする。
「七瀬」
「…ぅん…?」
「ゴムなしでもいい?」
七瀬の負担を減らす為、極力ゴムは使用するようにしている凌河だが、たまには着けないで挿れたい時がある。そんな時はこうして七瀬にお伺いするのだが、断られた事が一度もないあたり七瀬も相当凌河には甘いと思う。辛いのは七瀬のはずなのに。
「…ん、いいよ…」
そう言って艶やかに微笑むものだから調子に乗ってしまうのだ。
凌河は上体を屈めて七瀬に口付けると、そのまま猛りきった熱を後孔へ宛てがい腰を押し進めた。
「ん、んん…っ」
ゴムがないだけで感覚が鋭くなり、絡み付くように蠢く腸壁に理性が持っていかれそうになる。それを根性で耐えて抜き差しを始めれば途端に七瀬が甘い声を上げるのが堪らない。
七瀬もありとなしで感覚が変わるのだろうか。
「あ、ぁ…んっ、ゆっくり、や…っ」
「すごい絡み付いてくる…」
「やぁ……っ…やだぁ…」
「七瀬、可愛い」
緩慢な動きで腰を前後させると七瀬はもどかしいとばかりに腰を揺らす。無意識下でやっているのだが、その様と涙を流す姿に凌河は舌舐りした。
全身から色香を漂わせる七瀬は本当に可愛くて綺麗だ。
「も、いじわる、しないで…っ…ちゃんと…、おねがぃ……凌河さ…っ」
「…七瀬、いつも言ってるよね。それは俺を煽るだけだって」
「あ、ん、煽ってな…っ…やぁ……もっと奥…っ」
「……悪い子だ」
甘えた声でおねだりする七瀬は凌河を煽る天才だ。汗で濡れた前髪を掻き上げてから七瀬の右足を凌河の肩に乗せ、左足の太腿を手で押さえるとグッと腰を前に出す。より深い場所まで届くように、無理矢理にでも押し込むと七瀬がいやいやと頭を振った。
「だ、めぇ…っ、ひぁ、あっ、ああ…!」
「…ッ、キツ……っ」
「いや…ぁ、待っ、てっ、あ、んんっ 」
七瀬の細い腕が止まってと言わんばかりに突き出されるが、凌河はお構いなしに奥を穿つ。顔を見れば本気で嫌かどうかは分かるから、今の七瀬は強過ぎる快感に悶えているだけで嫌がってはいない。
「ぁあっ、あっ、や、ンッ、だめ、だめ…! またきちゃぅ…っ」
華奢な身体が小刻みに震えている。凌河は精液と先走りの混じったものを零す七瀬の陰茎を握り律動に合わせて扱き始めた。
「あっ、や、一緒はだめ…! すぐイっちゃうから…っ…やぁ、あっあっ…もっ…──っああぁ…! 」
「…く…っ」
「…ぁ、ぅ…、……ん…っ」
先程よりも強い締め付けに凌河は小さく呻き声を漏らして七瀬の中へと果てる。呼吸を落ち着かせるため暫くそのままでいたが、七瀬が動かなくなった事に気付いて顔を上げた。
「七瀬…?」
「……ん…」
どうやら気を失ってしまったようだが、七瀬の身体はまだビクビクと震えている。凌河は七瀬の中から抜けると大きく溜め息をついた。
無意識に煽られたとはいえ、今回は少し意地悪しすぎたかもしれない。
「起きたら謝らないと…」
とりあえずは後処理だと裸のまま七瀬を抱き上げた凌河は急いで浴室に行って自分が出したものを掻き出し互いの身を清め、シーツも新しい物に変えて完璧に寝る準備を済ませた。
隣に七瀬を寝かせ、自分は七瀬から貰ったキーケースに鍵を付け替えて行く。大事なキーホルダーは、キーケースが入っていた箱にでもしまっておけばなくさないだろう。
七瀬は、初めてのバイトで稼いだ初めての給料を凌河の為に使ってくれた。こんなにも嬉しいプレゼントは生まれて初めてだ。
「一生大事にするからね」
穏やかな寝息を立てる七瀬の額に口付けた凌河は、キーケースを優しくサイドテーブルに起き寝転がる。
凌河は七瀬を腕に抱き寄せ、使っている物は同じはずなのに少し違う香りを胸いっぱいに吸って目を閉じた。
どうかこれからも、七瀬が幸せでありますようにと願って。
FIN
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