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強気なネコは甘く囚われる【完】
甘いお菓子よりもイタズラを【ハロウィンSS】
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今日は街の色がオレンジや黒に染まるハロウィンの日。
バイトを終え一足先に帰って来た俺は、手洗い嗽をしている間に届いたメッセージを見て目を瞬いた。
差出人は廉の妹である香織ちゃんで、顔を合わせた時からこうしてちょくちょくやり取りはしてたんだけど⋯。
『真尋くん! 私と一緒にゴスロリゾンビになろ!』
まず、ゴスロリゾンビってなんだ?
香織ちゃん、凄く可愛い女の子なんだけどたまーに突拍子もない内容の連絡をしてくるんだよな。
今回もそれで、恐らくはハロウィン関連だろうなってのは分かるものの⋯ゴスロリなゾンビが想像出来ない。しかもゴスロリって、女の子がする格好じゃねぇの?
どう返事しようか悩んでたらまたメッセージがくる。
『お願い! 一緒にやろうって言ってた友達が風邪ひいちゃって、同じくらいの体格と背丈の子ってもう真尋くんしかいないの! 衣装もオーダーで作っちゃったから⋯』
あー、そういう事か。確かに既製品ならともかく、オーダーしたやつなら合わせて着たいよなぁ。ハロウィンだし。
⋯いや待て、背丈はともかく体格って何? 俺が男らしい体格してないのは重々承知してるけど、女の子とはちゃんと違いがあるんだが?
まぁどうせ言ったところで『大丈夫』としか返ってこないんだろうけど、こう、男としてのプライドが⋯⋯まぁホワイトデーで世話になったし、そのお礼って事で引き受けてもいいかもしんねぇな。
廉の大事な妹さんだし。
『分かった、いいよ。今からそっち行けばいい?』
『ありがとう! 迎えを行かせるから、ちょっとだけ待ってて!』
『や、迎えなくて大丈夫だよ』
『ダメ! 途中で何かあったら、兄さんに怒られるじゃ済まない!』
バスと電車で行けるしと思って断ったら、そんな返事と共に〝ダメ、絶対〟というスタンプが送られてきた。まだ昼過ぎだし、比較的人通りはあるから本当に大丈夫なんだけど⋯うん、万が一があったら大変な事は俺にも分かる。
廉はほんっっっっとーに心配性だからな。
香織ちゃんの言葉に甘える事にした俺は、この事を廉に連絡するべくメッセージを打ち込み、『詳細は香織ちゃんまで』と締め括って送っておいた。
数分後、迎えに来てくれた運転手さんにお礼を言って久し振りに香月家の門を潜ったんだけど、お母さんへの挨拶もそこそこに香織ちゃんに連れて行かれた俺は現在プロにメイクを施されている。
「真尋くんは美人さんだから、絶対ゾンビメイク映えると思う」
「うん、ゾンビメイクはいいんだけどさ⋯香織ちゃん、これスカート短過ぎねぇ?」
なるべく動かないようにしつつ、視線だけで足元を見ながら問い掛ける。
膝上丈で、ガーターベルトしてて、厚底のストラップパンプスを履いてて、肌が見えてる部分は少なめとはいえただでさえスースーするから落ち着かない。俺は男だし、下着が見えたところで恥ずかしくも何ともないけど、同じ丈の香織ちゃんはそうもいかないだろう。
いくらフリルが何層にもなってるっつっても、捲れたら意味ないしな。
まったく同じデザインとはいえ俺が真っ黒なのに対して、オレンジの差し色が入ったゴスロリ衣装を着た香織ちゃんが満面の笑みで首を傾げた。
「可愛いからいいの。それより、お兄ちゃんから返事きた?」
「さっききた。直接こっち来るって」
「じゃあ一緒に、〝トリックオアトリート〟って言おうね」
「持ってねぇと思うんだけど⋯イタズラすんの?」
「お兄ちゃんが一番効くのは真尋くんを独り占めされる事だから、その時は私が真尋くんにずっとくっついてる」
「うわぁ⋯」
そうなった時の廉の表情がありありと頭に浮かんで苦笑する。
これ、自意識過剰でもなければ自惚れでもなくて、本当に俺が絡むと廉ってダメになるんだよ。
「ウィッグ被せますね」
「あ、はい」
そうこうしているうちにメイクが終わったらしく、黒髪のゆるふわツインテールが頭に被せられる。
というか、ここまで本格的にするなんて思わなかった。鏡に映る自分の顔色は悪くて目は落窪んでて、ところどころ皮膚が捲れたようになってる。
見てるだけで痛々しくなるくらいリアルで、プロって凄いなって思った。
「はい、完成しましたよ」
「ありがとうございます」
「わぁ、思った通り! 真尋くん、すっごく綺麗!」
「複雑だ⋯」
学校でもしたし、ホワイトデーでも女装はしたからもう開き直りのレベルではあるんだけど、自分の骨格がごつごつしてないから〝女〟になるんだよ。今回はプロの手によるものだし仕方ない部分はあるけど、手放しでは喜べない。
だって整った顔をしてる廉が女装しても、ちゃんと男だって分かるしな。
椅子から立ち上がり、スカートの皺を伸ばした俺の腕に香織ちゃんの腕が絡まってきた。
「ユキさん、写真撮って」
「はい」
ユキさんと呼ばれたメイクさんは、香織ちゃんからスマホを受け取ると位置を調整したあと「いきますよー」と言ってシャッターを切る。それを二回繰り返し、香織ちゃんにも確認して貰ってから返却し、広げていたメイク道具を片付け始めた。
それを見るともなしに見ていたら棚に置いていたスマホが震え、確認すると廉からでもうすぐ着くという連絡で思わず息を吐く。
今更この家で緊張なんてしないけど、やっぱり廉が傍にいないと落ち着かない。
「廉、もう着くって」
「ほんと? じゃあ玄関行こ」
スタンプで返し俺よりも小さな手に引かれて広い玄関に立ち廉を待つ。
俺の腕に寄りかかる香織ちゃんは廉の妹だけあって整った顔をしてるから、楽しそうににこにこしてるだけでも可愛らしい。
誰々くんに告白されたって廉に報告してるのも良く聞くし、かなりモテるんだろうな。血は争えねぇってやつだ。
というか、新品とはいえ家の中で靴を履いてる状態って落ち着かなくて、いっそ脱いでしまおうかと下を向いたら鍵の開く音がして扉が引かれた。
スーツ姿の廉が入ってきて俺と香織ちゃんがいるのを見て目を見瞠る。
「⋯⋯は?」
「いくよ、真尋くん!」
「あ、う、うん」
「せーの」
「「トリックオアトリート!」」
苦笑混じりの俺と満面の笑顔の香織ちゃんを見下ろして数秒、溜め息を零した廉は香織ちゃんに持っていた紙袋を渡すと、俺の腕に回されていた細腕を剥がすなり俺を抱き上げた。
「へ⋯」
「香織の分しかねぇから、真尋は俺に悪戯しなきゃだな」
「え」
「うわ、ティアーモのチョコだ。ありがとう、お兄ちゃん」
「ああ。真尋は貰ってくな?」
「どうぞー」
何とも軽い調子で話を終えた廉は、戸惑う俺を抱っこしたまま自分の部屋に向かいベッドに腰を下ろす。必然的に膝の上に座る事になったけど、あろう事か廉は流れるようにスカートを捲ってきた。
「おい」
「何だ、下着は普通なのか」
「当たり前だろ」
もしかしなくても下着まで女物だと思ってたんならこいつの思考終わってる。
手を払ってスカートを戻したら今度は中に入れてきて足の付け根を撫でられた。
「ちょ⋯っ」
「ガーターベルトとかエロすぎだろ」
「あ、なんで外すんだよ」
「真尋、悪戯は?」
靴下を留めていた部分が外されて膝まで下げられてしまい、慌てて廉の手を押さえると顔が近付いて鼻先が触れそうな距離で問い掛けられる。
そういえば俺だけお菓子がなかったんだって思い出したけど、廉の事だからわざとだと思い眉根を寄せたらふっと笑われた。
反対の手の人差し指が頬に軽く触れ、傷メイクの部分をなぞる。
「これ、最初見た時ビビった。マジで怪我したのかって」
「それはごめん」
「無傷ならいい。ほら、悪戯」
「いや、イタズラって何すりゃいいんだよ」
「真尋の好きにしたらいい」
好きにしたらいいとか言いつつスカートの中にある手が怪しく動いてるし、明らかにそっち系のイタズラを期待してんのが分かる。しかし悲しいかな、そうされる事で俺の意識もそっちの方に向いてしまい、仕方なく腕を伸ばした俺は廉の頭を抱え込み唇を重ねた。
何度か啄むと隙間が開いたから、舌を差し込んでいつも廉がしてくれるみたいに動かしてみる。
「ん⋯ふ⋯」
つついたり絡めたり、下手くそながらにやってるのにどうしてか廉は応えてくれない。ムッとして下唇に軽く歯を立てたらピクリと反応した。
「⋯ちゃんとしろ、バカ⋯っ」
「⋯⋯可愛いな、真尋」
「ぅわ⋯⋯んっ」
それにふっと笑った廉は俺の肩を掴んでベッドに押し倒すと、何とも荒々しく唇を塞いできた。舌が絡め取られて吸われ、ゾクゾクとした感覚が背中を駆け上がる。
「⋯っ、廉⋯」
「真尋、Trick or Treat?」
「⋯⋯ないから、イタズラで⋯」
額が合わさり流暢な発音で言われたけどもちろんお菓子なんて持ってる訳なくて、早く触って欲しい俺は廉の足に自分の足を絡めながらそう答える。意地悪な笑みを浮かべた廉が耳の下に吸い付いてきて、そこから点々と痕が残された。
どう考えても見えるところだけど、これがイタズラなら可愛いもんだ。
ゴテゴテした服だったから脱がせる時ちょっと手間取りつつも全裸にされ、ありのままの俺がいいってウィッグも外し化粧も落としたあとはたっぷり時間を掛けて抱かれ、心地良い疲労感のまま眠りについた。
まぁ起きてから、「もっと色んなとこで写真撮りたかったのに!」って香織ちゃんに怒られたんだけど、来年は撮影会よなんて言うから廉まで怒ってちょっとした兄妹喧嘩になってたのはいい思い出だ。
というか、来年はぜひとも廉のコスプレが見たいからお願いしてみようかな。
言い合いをする二人を見ながらそんな事を思った俺は、スマホを取り出すとさっそくコスプレ検索を始めるのだった。
FIN.
バイトを終え一足先に帰って来た俺は、手洗い嗽をしている間に届いたメッセージを見て目を瞬いた。
差出人は廉の妹である香織ちゃんで、顔を合わせた時からこうしてちょくちょくやり取りはしてたんだけど⋯。
『真尋くん! 私と一緒にゴスロリゾンビになろ!』
まず、ゴスロリゾンビってなんだ?
香織ちゃん、凄く可愛い女の子なんだけどたまーに突拍子もない内容の連絡をしてくるんだよな。
今回もそれで、恐らくはハロウィン関連だろうなってのは分かるものの⋯ゴスロリなゾンビが想像出来ない。しかもゴスロリって、女の子がする格好じゃねぇの?
どう返事しようか悩んでたらまたメッセージがくる。
『お願い! 一緒にやろうって言ってた友達が風邪ひいちゃって、同じくらいの体格と背丈の子ってもう真尋くんしかいないの! 衣装もオーダーで作っちゃったから⋯』
あー、そういう事か。確かに既製品ならともかく、オーダーしたやつなら合わせて着たいよなぁ。ハロウィンだし。
⋯いや待て、背丈はともかく体格って何? 俺が男らしい体格してないのは重々承知してるけど、女の子とはちゃんと違いがあるんだが?
まぁどうせ言ったところで『大丈夫』としか返ってこないんだろうけど、こう、男としてのプライドが⋯⋯まぁホワイトデーで世話になったし、そのお礼って事で引き受けてもいいかもしんねぇな。
廉の大事な妹さんだし。
『分かった、いいよ。今からそっち行けばいい?』
『ありがとう! 迎えを行かせるから、ちょっとだけ待ってて!』
『や、迎えなくて大丈夫だよ』
『ダメ! 途中で何かあったら、兄さんに怒られるじゃ済まない!』
バスと電車で行けるしと思って断ったら、そんな返事と共に〝ダメ、絶対〟というスタンプが送られてきた。まだ昼過ぎだし、比較的人通りはあるから本当に大丈夫なんだけど⋯うん、万が一があったら大変な事は俺にも分かる。
廉はほんっっっっとーに心配性だからな。
香織ちゃんの言葉に甘える事にした俺は、この事を廉に連絡するべくメッセージを打ち込み、『詳細は香織ちゃんまで』と締め括って送っておいた。
数分後、迎えに来てくれた運転手さんにお礼を言って久し振りに香月家の門を潜ったんだけど、お母さんへの挨拶もそこそこに香織ちゃんに連れて行かれた俺は現在プロにメイクを施されている。
「真尋くんは美人さんだから、絶対ゾンビメイク映えると思う」
「うん、ゾンビメイクはいいんだけどさ⋯香織ちゃん、これスカート短過ぎねぇ?」
なるべく動かないようにしつつ、視線だけで足元を見ながら問い掛ける。
膝上丈で、ガーターベルトしてて、厚底のストラップパンプスを履いてて、肌が見えてる部分は少なめとはいえただでさえスースーするから落ち着かない。俺は男だし、下着が見えたところで恥ずかしくも何ともないけど、同じ丈の香織ちゃんはそうもいかないだろう。
いくらフリルが何層にもなってるっつっても、捲れたら意味ないしな。
まったく同じデザインとはいえ俺が真っ黒なのに対して、オレンジの差し色が入ったゴスロリ衣装を着た香織ちゃんが満面の笑みで首を傾げた。
「可愛いからいいの。それより、お兄ちゃんから返事きた?」
「さっききた。直接こっち来るって」
「じゃあ一緒に、〝トリックオアトリート〟って言おうね」
「持ってねぇと思うんだけど⋯イタズラすんの?」
「お兄ちゃんが一番効くのは真尋くんを独り占めされる事だから、その時は私が真尋くんにずっとくっついてる」
「うわぁ⋯」
そうなった時の廉の表情がありありと頭に浮かんで苦笑する。
これ、自意識過剰でもなければ自惚れでもなくて、本当に俺が絡むと廉ってダメになるんだよ。
「ウィッグ被せますね」
「あ、はい」
そうこうしているうちにメイクが終わったらしく、黒髪のゆるふわツインテールが頭に被せられる。
というか、ここまで本格的にするなんて思わなかった。鏡に映る自分の顔色は悪くて目は落窪んでて、ところどころ皮膚が捲れたようになってる。
見てるだけで痛々しくなるくらいリアルで、プロって凄いなって思った。
「はい、完成しましたよ」
「ありがとうございます」
「わぁ、思った通り! 真尋くん、すっごく綺麗!」
「複雑だ⋯」
学校でもしたし、ホワイトデーでも女装はしたからもう開き直りのレベルではあるんだけど、自分の骨格がごつごつしてないから〝女〟になるんだよ。今回はプロの手によるものだし仕方ない部分はあるけど、手放しでは喜べない。
だって整った顔をしてる廉が女装しても、ちゃんと男だって分かるしな。
椅子から立ち上がり、スカートの皺を伸ばした俺の腕に香織ちゃんの腕が絡まってきた。
「ユキさん、写真撮って」
「はい」
ユキさんと呼ばれたメイクさんは、香織ちゃんからスマホを受け取ると位置を調整したあと「いきますよー」と言ってシャッターを切る。それを二回繰り返し、香織ちゃんにも確認して貰ってから返却し、広げていたメイク道具を片付け始めた。
それを見るともなしに見ていたら棚に置いていたスマホが震え、確認すると廉からでもうすぐ着くという連絡で思わず息を吐く。
今更この家で緊張なんてしないけど、やっぱり廉が傍にいないと落ち着かない。
「廉、もう着くって」
「ほんと? じゃあ玄関行こ」
スタンプで返し俺よりも小さな手に引かれて広い玄関に立ち廉を待つ。
俺の腕に寄りかかる香織ちゃんは廉の妹だけあって整った顔をしてるから、楽しそうににこにこしてるだけでも可愛らしい。
誰々くんに告白されたって廉に報告してるのも良く聞くし、かなりモテるんだろうな。血は争えねぇってやつだ。
というか、新品とはいえ家の中で靴を履いてる状態って落ち着かなくて、いっそ脱いでしまおうかと下を向いたら鍵の開く音がして扉が引かれた。
スーツ姿の廉が入ってきて俺と香織ちゃんがいるのを見て目を見瞠る。
「⋯⋯は?」
「いくよ、真尋くん!」
「あ、う、うん」
「せーの」
「「トリックオアトリート!」」
苦笑混じりの俺と満面の笑顔の香織ちゃんを見下ろして数秒、溜め息を零した廉は香織ちゃんに持っていた紙袋を渡すと、俺の腕に回されていた細腕を剥がすなり俺を抱き上げた。
「へ⋯」
「香織の分しかねぇから、真尋は俺に悪戯しなきゃだな」
「え」
「うわ、ティアーモのチョコだ。ありがとう、お兄ちゃん」
「ああ。真尋は貰ってくな?」
「どうぞー」
何とも軽い調子で話を終えた廉は、戸惑う俺を抱っこしたまま自分の部屋に向かいベッドに腰を下ろす。必然的に膝の上に座る事になったけど、あろう事か廉は流れるようにスカートを捲ってきた。
「おい」
「何だ、下着は普通なのか」
「当たり前だろ」
もしかしなくても下着まで女物だと思ってたんならこいつの思考終わってる。
手を払ってスカートを戻したら今度は中に入れてきて足の付け根を撫でられた。
「ちょ⋯っ」
「ガーターベルトとかエロすぎだろ」
「あ、なんで外すんだよ」
「真尋、悪戯は?」
靴下を留めていた部分が外されて膝まで下げられてしまい、慌てて廉の手を押さえると顔が近付いて鼻先が触れそうな距離で問い掛けられる。
そういえば俺だけお菓子がなかったんだって思い出したけど、廉の事だからわざとだと思い眉根を寄せたらふっと笑われた。
反対の手の人差し指が頬に軽く触れ、傷メイクの部分をなぞる。
「これ、最初見た時ビビった。マジで怪我したのかって」
「それはごめん」
「無傷ならいい。ほら、悪戯」
「いや、イタズラって何すりゃいいんだよ」
「真尋の好きにしたらいい」
好きにしたらいいとか言いつつスカートの中にある手が怪しく動いてるし、明らかにそっち系のイタズラを期待してんのが分かる。しかし悲しいかな、そうされる事で俺の意識もそっちの方に向いてしまい、仕方なく腕を伸ばした俺は廉の頭を抱え込み唇を重ねた。
何度か啄むと隙間が開いたから、舌を差し込んでいつも廉がしてくれるみたいに動かしてみる。
「ん⋯ふ⋯」
つついたり絡めたり、下手くそながらにやってるのにどうしてか廉は応えてくれない。ムッとして下唇に軽く歯を立てたらピクリと反応した。
「⋯ちゃんとしろ、バカ⋯っ」
「⋯⋯可愛いな、真尋」
「ぅわ⋯⋯んっ」
それにふっと笑った廉は俺の肩を掴んでベッドに押し倒すと、何とも荒々しく唇を塞いできた。舌が絡め取られて吸われ、ゾクゾクとした感覚が背中を駆け上がる。
「⋯っ、廉⋯」
「真尋、Trick or Treat?」
「⋯⋯ないから、イタズラで⋯」
額が合わさり流暢な発音で言われたけどもちろんお菓子なんて持ってる訳なくて、早く触って欲しい俺は廉の足に自分の足を絡めながらそう答える。意地悪な笑みを浮かべた廉が耳の下に吸い付いてきて、そこから点々と痕が残された。
どう考えても見えるところだけど、これがイタズラなら可愛いもんだ。
ゴテゴテした服だったから脱がせる時ちょっと手間取りつつも全裸にされ、ありのままの俺がいいってウィッグも外し化粧も落としたあとはたっぷり時間を掛けて抱かれ、心地良い疲労感のまま眠りについた。
まぁ起きてから、「もっと色んなとこで写真撮りたかったのに!」って香織ちゃんに怒られたんだけど、来年は撮影会よなんて言うから廉まで怒ってちょっとした兄妹喧嘩になってたのはいい思い出だ。
というか、来年はぜひとも廉のコスプレが見たいからお願いしてみようかな。
言い合いをする二人を見ながらそんな事を思った俺は、スマホを取り出すとさっそくコスプレ検索を始めるのだった。
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