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怖がりな少年は時計塔の怪物に溺愛される【完】
甘いクリスマス
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今日はクリスマスだ。そんでもって明日は終業式。
この学校はイベント行事を大切にしてくれる先生ばかりで、昇降口には大きなツリーが一週間くらい前から飾られていた。
実は俺もオーナメントの飾り付けとか手伝ったんだけど、何と、一番上の星も飾らせて貰ったんだ。
脚立は掴むとこなくてちょっと怖かったけど、下で理人先輩が見てくれてたから安心して登れた。
午前だけの授業を終えて、後は大掃除をするだけの昼休み、いつものように先輩とお昼を食べに空き教室に来た俺は、先輩がいつもは見ない袋を持って来ている事に気付いて首を傾げる。
傍に行って当たり前のように膝に乗ると先輩の手が俺の頭を撫でた。
「先輩、これ何?」
「クリスマスケーキだよ」
「え! クリスマスケーキ!?」
まさかの言葉に俺は今日一びっくりした。
この袋の大きさ的にホールっぽいけど、本当に先輩はどうやってこういう物を買ってるんだろう。
「今日の夜ご飯がクリスマス仕様のメニューらしいから、お昼ご飯はいつもと同じだけど」
「全然いいよ。いつもありがと、理人先輩」
「俺の方こそありがとう、深月」
「?」
して貰ってるのは俺なのに何で先輩がお礼を言うんだ?
分からなくて不思議そうな顔をしてると、先輩は「難しく考えなくていいよ」って言って額にキスしてくれた。
先輩がそう言うならいいんだけど、自分が分かってないお礼はちょっとモヤモヤするな。
「あ、そうだ。深月、少しだけ目を閉じてくれる?」
「ん? うん」
お腹空いたなと思ってると先輩にそう言われて俺はすぐに目を瞑る。左腕が掴まれて、手首にヒンヤリした何かが付けられた。
少ししていいよって言われて目を開けると、左手首に細くて小さいチェーンみたいな銀色のブレスレットがあって驚いた。
「へ?」
「クリスマスプレゼント」
「待って、俺何も用意してない!」
寮生活だし、まさか貰えるとも思ってなかったから考えるだけで終わってた。もしかして先輩、外出許可貰って買って来てくれたのかな……どうしよう、何も返せるものがない。
申し訳なさで眉尻を下げるとクスリと笑った先輩の手が頬に触れる。
「気にしないで。俺がしたくてしたんだから」
「でも……」
「んー……どうしても気になる?」
「気になる。だって俺、先輩に貰ってばっかだから」
「そんな事ないんだけどな……」
宥めるように頬を撫でられて俺はますます用意して来なかった自分に落ち込む。だけど先輩は俺の顔を両手で挟むと、俯きがちだった俺を上向かせて微笑んだ。
「深月は怖がりなのに、吸血鬼の俺を受け入れてくれたでしょう? 本来なら存在してはいけない俺にとって、それは何よりも嬉しい事だった。それに、深月っていう一生分の幸せを手に入れられたんだから、俺の方が深月にお返ししなきゃいけないんだよ」
先輩の言葉に俺はポカンとする。
俺、バカだからそんないろいろ考えられる訳じゃない。ただ吸血鬼だけど先輩は凄く優しくて、俺が先輩の事好きになったから一緒にいたいって思っただけだ。
だからやっぱり、貰ってるのは俺の方だと思う。
「俺、先輩が好きだよ。だから受け入れるのも当然だし、先輩の事幸せにするのも当然だろ? 俺だって先輩の傍にいて幸せなんだから、お返しなんていいんだって」
「深月……」
「吸血鬼だって先輩だって存在していいんだよ。……遅くなるかもだけど、ちゃんとこれのお返しするから、待っててくれるか?」
「……もちろん」
上手く伝えられるかは分からないけど、自分なりに先輩だけが貰ってるわけじゃないって言ったら分かってくれたみたいで、今度はいいよって言わなかった。
泣きそうな顔で微笑む先輩の首に腕を回してキスをする。でも口を開けて貰えなかったから、もどかしくて先輩の唇をペロって舐めたらクスリと笑われた。
「ケーキ、食べる時間なくなっちゃうよ?」
「いい。先輩とのチューの方が大事」
「……ほんと、こういうところが深月のすごいところだよね」
「うん?」
「ううん。大好きだよ、深月」
「俺も大好き」
先輩の手に後頭部と背中を押さえられて唇が重なる。口の中をたくさん舐められて、舌を吸われて、俺はすぐに息も絶え絶えになった。
顔を真っ赤にして忙しなく呼吸してると、先輩は俺の後ろで何かをガサガサして取り出し、少しして俺の前に人差し指を出す。そこには白いもったりしたものがたっぷりついてて、その甘い匂いからそれが生クリームだと知った俺は目を瞬いた。
「あーん」
言われて条件反射のように口を開けると生クリームがついた指が中に入ってきた。
舌に生クリームが乗せられて指先で広げられる。
「ん…っ…」
「美味しい?」
「……ぅん」
甘い生クリームと先輩の長い指。不思議な味がしてそれが何か確かめたくて舐めてると頬に先輩の唇が触れた。
「メリークリスマス、俺の深月」
俺、こんな色んな意味で甘いクリスマスを過ごすのは初めてかもしれない。
また指先に生クリームをつけた先輩の指を口に咥えて舐めるって行為に、少しだけ変な気持ちになった俺はもっとって先輩にねだってた。
FIN.
この学校はイベント行事を大切にしてくれる先生ばかりで、昇降口には大きなツリーが一週間くらい前から飾られていた。
実は俺もオーナメントの飾り付けとか手伝ったんだけど、何と、一番上の星も飾らせて貰ったんだ。
脚立は掴むとこなくてちょっと怖かったけど、下で理人先輩が見てくれてたから安心して登れた。
午前だけの授業を終えて、後は大掃除をするだけの昼休み、いつものように先輩とお昼を食べに空き教室に来た俺は、先輩がいつもは見ない袋を持って来ている事に気付いて首を傾げる。
傍に行って当たり前のように膝に乗ると先輩の手が俺の頭を撫でた。
「先輩、これ何?」
「クリスマスケーキだよ」
「え! クリスマスケーキ!?」
まさかの言葉に俺は今日一びっくりした。
この袋の大きさ的にホールっぽいけど、本当に先輩はどうやってこういう物を買ってるんだろう。
「今日の夜ご飯がクリスマス仕様のメニューらしいから、お昼ご飯はいつもと同じだけど」
「全然いいよ。いつもありがと、理人先輩」
「俺の方こそありがとう、深月」
「?」
して貰ってるのは俺なのに何で先輩がお礼を言うんだ?
分からなくて不思議そうな顔をしてると、先輩は「難しく考えなくていいよ」って言って額にキスしてくれた。
先輩がそう言うならいいんだけど、自分が分かってないお礼はちょっとモヤモヤするな。
「あ、そうだ。深月、少しだけ目を閉じてくれる?」
「ん? うん」
お腹空いたなと思ってると先輩にそう言われて俺はすぐに目を瞑る。左腕が掴まれて、手首にヒンヤリした何かが付けられた。
少ししていいよって言われて目を開けると、左手首に細くて小さいチェーンみたいな銀色のブレスレットがあって驚いた。
「へ?」
「クリスマスプレゼント」
「待って、俺何も用意してない!」
寮生活だし、まさか貰えるとも思ってなかったから考えるだけで終わってた。もしかして先輩、外出許可貰って買って来てくれたのかな……どうしよう、何も返せるものがない。
申し訳なさで眉尻を下げるとクスリと笑った先輩の手が頬に触れる。
「気にしないで。俺がしたくてしたんだから」
「でも……」
「んー……どうしても気になる?」
「気になる。だって俺、先輩に貰ってばっかだから」
「そんな事ないんだけどな……」
宥めるように頬を撫でられて俺はますます用意して来なかった自分に落ち込む。だけど先輩は俺の顔を両手で挟むと、俯きがちだった俺を上向かせて微笑んだ。
「深月は怖がりなのに、吸血鬼の俺を受け入れてくれたでしょう? 本来なら存在してはいけない俺にとって、それは何よりも嬉しい事だった。それに、深月っていう一生分の幸せを手に入れられたんだから、俺の方が深月にお返ししなきゃいけないんだよ」
先輩の言葉に俺はポカンとする。
俺、バカだからそんないろいろ考えられる訳じゃない。ただ吸血鬼だけど先輩は凄く優しくて、俺が先輩の事好きになったから一緒にいたいって思っただけだ。
だからやっぱり、貰ってるのは俺の方だと思う。
「俺、先輩が好きだよ。だから受け入れるのも当然だし、先輩の事幸せにするのも当然だろ? 俺だって先輩の傍にいて幸せなんだから、お返しなんていいんだって」
「深月……」
「吸血鬼だって先輩だって存在していいんだよ。……遅くなるかもだけど、ちゃんとこれのお返しするから、待っててくれるか?」
「……もちろん」
上手く伝えられるかは分からないけど、自分なりに先輩だけが貰ってるわけじゃないって言ったら分かってくれたみたいで、今度はいいよって言わなかった。
泣きそうな顔で微笑む先輩の首に腕を回してキスをする。でも口を開けて貰えなかったから、もどかしくて先輩の唇をペロって舐めたらクスリと笑われた。
「ケーキ、食べる時間なくなっちゃうよ?」
「いい。先輩とのチューの方が大事」
「……ほんと、こういうところが深月のすごいところだよね」
「うん?」
「ううん。大好きだよ、深月」
「俺も大好き」
先輩の手に後頭部と背中を押さえられて唇が重なる。口の中をたくさん舐められて、舌を吸われて、俺はすぐに息も絶え絶えになった。
顔を真っ赤にして忙しなく呼吸してると、先輩は俺の後ろで何かをガサガサして取り出し、少しして俺の前に人差し指を出す。そこには白いもったりしたものがたっぷりついてて、その甘い匂いからそれが生クリームだと知った俺は目を瞬いた。
「あーん」
言われて条件反射のように口を開けると生クリームがついた指が中に入ってきた。
舌に生クリームが乗せられて指先で広げられる。
「ん…っ…」
「美味しい?」
「……ぅん」
甘い生クリームと先輩の長い指。不思議な味がしてそれが何か確かめたくて舐めてると頬に先輩の唇が触れた。
「メリークリスマス、俺の深月」
俺、こんな色んな意味で甘いクリスマスを過ごすのは初めてかもしれない。
また指先に生クリームをつけた先輩の指を口に咥えて舐めるって行為に、少しだけ変な気持ちになった俺はもっとって先輩にねだってた。
FIN.
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