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番外編
大人の仲間入り(真那視点)
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今日はヒナの記念すべき二十歳の誕生日だ。
少し前からお酒に興味を示してて、飲むなら俺といる時って約束してたから初めて飲酒をする日でもある。
恋人になってから初めての誕生日がああなってしまい、反省を込めて次からは必ずオフにして貰えるよう水島さんと傑さんに掛け合ったおかげで、朝からイチャイチャ出来るしデートも出来るようになった。
ちなみに今はプレゼント選びも兼ねて大きなショッピングモールに来ているんだけど、少し前にヒナとのウェディング特集の写真が載った雑誌が出たからか人の視線を前以上に感じるようになった気がする。
誰も彼もがヒナを見ている気がして、俺は早くヒナを腕の中に閉じ込めたかった。俺だけのヒナなのに、勝手に見ないで欲しい。
「真那? どこ見てるんだ?」
屋上駐車場を含めて六階建てのモール内を、最上階から順番に見ていたヒナが繋いだ手を引いて俺の顔を覗き込んできた。
二十歳になっても相変わらず可愛いヒナへと視線を向け微笑む。
「あっちは何があるのかなって思って」
「良さげなのあったか?」
「んー、ヒナの好みではないかな」
「そっか」
ヒナはものに拘りはないけどちゃんと好き嫌いがある。雑貨でも服でも家具家電でも、可愛かったり綺麗なものは好きでも派手なものは避けがちだ。俺も派手なのは好きじゃないし、それを選ばないでくれるのは凄く有り難い。
一緒に住んでいる家は元々事務所が内装を整えていたから、ヒナの好きにしていいよって言ったら少しずつ改良を始めたらしく、ベッドカバーやカーテン、カーペットやクッションカバーなどが落ち着いた色合いのものに変わりつつあった。
一生懸命あーでもないこーでもないと悩んでるヒナは可愛くて、参考画像が表示されたタブレットを見る後ろ姿を見るのが最近の楽しみだ。
「気になるものあった?」
「んー、まだかな。でも早く決めないと人が集まりそうだし」
「そういうのは気にしなくていいんだよ。どれだけ時間掛かってもいいから、ヒナが本当に欲しいものを選んで」
「ありがと」
何年経ってもヒナは騒ぎになる事を気にするけど、そういうのは一部のファンだけで節度ある人はちゃんと距離を大事にしてくれるからそこまで心配しなくてもいいのにって思う。
特にヒナのファンなんて遠くから見てる人が多いのに。
「せめて欲しいものの系統だけでも決めておきたい……あ」
「?」
「靴。スニーカー欲しいかも」
「なら、ちょうどあそこに靴屋さんあるから行こうか」
「うん」
難しい顔で下を向いたヒナが、ハッとして向けて来た笑顔にドキッとしながらも先にある靴屋を指差すとこれまた可愛い顔で頷く。何足でも買ってあげたい気持ちになるけど、ヒナは一足しか選ばないんだろうなぁ。
スニーカーは一足で、追加で服とかアクセサリーとか?
「ヒナ、そろそろピアス新しいのにしない?」
「え? でもこれお揃いなのに」
「うん。だからお揃いのピアスを新しくしないかなって」
「結構気に入ってるからなぁ」
ヒナの耳には、今は俺とお揃いのそれぞれの誕生石がついたリングピアスが着いている。これは、ヒナがピアスをしてみたいって言ってたから去年の誕生日にプレゼントしたもので、ピアスホールもその時に開けたものだ。
一年経つし、そろそろ変えてもいいんじゃないかなと思うけど。
「んー、やっぱこのままでいいや。せっかく真那がプレゼントしてくれたファーストピアスだし」
「そっか」
それほど大事にしてくれてるんだ。
人差し指でピアスに触れてにこっと笑うヒナの気持ちが嬉しくて俺も笑い返すとヒナはぎゅっと俺の腕に抱き着いてきた。
「ちなみに今日のオレ、全身真那から貰ったものでコーディネートされてるんだけど気付いてたか?」
「もちろん。可愛いなって思ってた」
「オレ、このゆるっとしたパンツ好き」
「ヒナはサイズピッタリより、緩めに着れる服の方が似合うから」
「オーバーサイズ楽だよなー」
パーカーとかロングTシャツとか、生地が余ってる感じが可愛いし、何より彼シャツ感があって堪らない。たまに俺の服も着せるけど、何であんなに可愛いんだろう。
「あ、これ可愛い。……でも値段は可愛くないな」
「ヒナ、値段気にするの禁止」
「いやいや、靴なんてピンからキリまであるんだぞ。ほら、これなんか、三万もする」
「誕生日だよ。本当に欲しいもの、だからね?」
「……分かった」
目に付いたスニーカーを手にしたヒナが値札を確認してそっと戻す。
俺も見たけど一万円くらいで、ヒナの生まれた日をお祝いするにはむしろ安すぎるくらいだと思った。
妥協してまあまあ気に入ったものを選びそうだとヒナの頭を撫でてそう言えば、眉尻を下げながらも小さく頷く。ヒナの好みは知ってるから俺が選んでもいいけど、やっぱり本人にこれがいいって言って貰いたい。
俺は店内をウロウロするヒナのあとをついて行きながら、やっぱり値札を見る姿に苦笑するのだった。
俺が再三言ったおかげか、ちゃんとヒナが気に入ったスニーカーを購入し、帰りにケーキ屋さんでバースデーケーキを受け取って、スーパーで数種類のお酒を買ってから帰宅した俺たちはまずお風呂に入る事にした。
一緒に入る? って聞いたんだけど、変な事するからってすげなく断られてしまい寂しく一人お風呂だ。
最近はベッド以外ではなるべく我慢してるのにな。
お風呂から上がり、髪を乾かした俺と入れ違いで浴室に向かったヒナを見送ってからデリバリーアプリを開くと、ヒナが好きな料理をいくつか注文し時計を見上げる。
夕飯には少し早いけど、お酒を飲むならゆっくりの方がいいし問題はない。
明日のスケジュールを確認していると、ホカホカになったヒナが髪を拭きながらキッチンに向かい、コップを手にしてウォーターサーバーから水を注ぐ。それを一気に飲み干したんだけど、喉仏が上下する様が妙に色っぽくて俺の喉までゴクリと鳴った。
(このままベッドに連れて行きたいなぁ…)
ヒナをその気にさせる事は簡単だけど、せっかくの誕生日だしケーキもあるし、何よりお酒を飲むのを楽しみにしているヒナにそんな事出来ない。
じっと見てると気付いたヒナがふわりと笑ってくれる。可愛い。
「明日何時から?」
「11時から雑誌撮影。ヒナも午後からだよね?」
「うん」
「朝ゆっくり出来るね」
お酒飲むからお互い朝に余裕があるのは有り難い。ソファまで来たヒナを膝に乗せまだ濡れている髪に口付ける。洗面所から持ってきていたドライヤーで髪を乾かし始めるとヒナは気持ち良さそうに目を細めた。
少ししてデリバリーも届き、ケーキに立てたローソクに火を灯してヒナの為だけのバースデーソングを歌い、火を吹き消すヒナを写真に収める。これがもう当たり前になってて、きっとどれだけ年を取っても二人でこうしてるんだろうなって思えるくらい身体に染み付いてた。
「最初は度数の低いものからね」
「はい」
「水も飲むんだよ?」
「分かった」
ヒナの前に俺にとってはほぼジュースと変わらない酎ハイと空のグラスと水を置く。プルタブを起こしてグラスに注ぎ、ヒナに渡すとどうしてか匂いを嗅いでから口を付けた。
少しだけ飲んで首を傾げ、今度は多めに飲んでみる。小動物みたいで凄く可愛いし、両手でグラス包むように持ってるのも可愛い。
「美味しい。お酒の味は良く分かんないけど、今のとこジュースみたいだ」
「美味しいからってあんまり飲みすぎないようにね。それから、ご飯もちゃんと食べて」
「食べる食べる。そこのパスタとポテトちょうだい」
「お寿司は?」
「食べる!」
ちなみにこのお寿司、誕生日のヒナの為に志摩さんが買って来てくれた高級寿司店の一番高い折箱だ。俺も一度連れて行って貰った事あるけど、本当に美味しくて驚いた。さすが志摩さん、確かな舌を持ってる。
ちなみに志摩さんからはノイキャン付きの高性能ワイヤレスイヤホンもプレゼントとして貰ってて、風音からはブランド物のキャップ、水島さんからはシンプルだけどお洒落な腕時計を渡されてた。
傑さんはヒナの名前が縫われた、ヒナの半分はある大きなクマのぬいぐるみをプレゼントしてて、本人はこの年でって顔を引き攣らせてたけどそれを抱いてソファに座ってるヒナがあまりにも可愛かったから、今回ばかりは傑さんに優勝のスタンプを送っておいた。
折箱ごとヒナの前に置くと、さっそく油の乗った大トロを食べたヒナはその美味しさにパッと表情を輝かせる。
「美味しい!」
「良かったね。好きなだけ食べていいよ」
「真那も食べろって。ほら、あーん」
「あーん」
ご機嫌なヒナが手ずからお寿司を食べさせてくれる。美味しいものを食べてるヒナはずっとにこにこで、夢中になると周りの話さえ聞こえなくなるけど、それが可愛いからみんなヒナに美味しいものを食べさせたくなるんだよね。
お寿司もオードブルも食べつつお酒も口にして、幸せそうなヒナに俺まで幸せになる。
「ヒナ、二十歳の誕生日、おめでとう」
「ありがとう」
この先もずっと、ヒナの誕生日を一番に祝えるのは俺でありたい。
空になったグラスに酎ハイを注ぎながら、俺は心の中でそう願った。
初めてのお酒だし、酔い潰れない程度でやめさせておこうと思ったのに、ヒナは見事に二本目の酎ハイを半分飲んだところで酔ってしまったらしい。
思ったよりも弱くて驚いたし、酔ったヒナがどうなるかも予想出来てなかったから現状には若干戸惑っていた。
「まなくん、ぎゅー」
「うん、ぎゅーだね」
「まなくん好き。大好き」
「俺もヒナが大好きだよ」
舌足らずで甘えた声が懐かしい呼び方で俺の名前を口にし、何とも可愛らしい事を言ってくる。
どうやら、ヒナは酔うと幼児退行してしまうらしい。俺の膝に向かい合わせに座ってひたすらに甘えてくれるヒナに理性が決壊しそうだ。
「ヒナ、ケーキは? もうお腹いっぱい?」
「ケーキはね、食べる。お腹はー…分かんない」
「分かんないか。じゃあケーキ切ってくるから、一旦降りようか」
「やだ」
「ケーキ食べないの?」
「食べる」
「なら切らないと」
「やだ」
どうしよう、凄く可愛い。こんなにやだやだ言うヒナは小さい時以来で、懐かしさと一緒に感動を覚えてる。
「まなくん」
「ん?」
「ずっと一緒にいようね」
「うん、ずっとずっと一緒だよ」
「へへ」
あー、可愛い。可愛すぎて顔がずっと緩んでる。
でも酔ってるヒナに手を出すのもどうかと思うし、ケーキを食べたいって言ってるから今は耐えないと。
なんかもう拷問を受けてるみたいだ。
「まなくん、ケーキ」
「切らずにこのまま食べようか」
どうせヒナと俺しか食べないんだしと、新しいフォークを取り端の方を掬ってヒナの口元へと運ぶ。
「イチゴも」
「待ってね」
ヒナの口端についた生クリームを親指で拭い、今度はイチゴにフォークを刺す。いつもこんな風に甘えてくれればいいのに。
飾ってあるイチゴ、大きめだけど一口でいけるかな。
「……んー」
ヒナの小さい口ではやっぱりキツかったようで、果汁が溢れて顎を伝い服にシミを作った。酔ってるからか口元が緩いせいもあって食べるのが下手になってる。
「ヒナ、着替えようか」
「ん……」
「ヒナ? …!」
舌先で舐め取ろうとするヒナにドキッとしながらも努めて冷静にそう問い掛けたんだけど、ヒナは生返事で首を傾げると俺を見上げておもむろに口付けてきた。
すぐに離れたけど、赤い顔で目を潤ませたヒナが間近にいて下肢が反応し始める。
「ひ、ヒナ…?」
「真那…」
いつもの呼び方に戻ったヒナが再び唇を触れ合わせて舌を差し込んでくる。イチゴの味が広がって、小さな舌が拙く俺の口内で動くからあっという間に理性が吹き飛んだ。
ヒナの後頭部を押さえ味わうように舌を絡める。散々吸って舐め回し、ヒナの身体が震え始めたから離すと息も絶え絶えながらも蕩けた顔をしていて笑みが零れた。
「ベッド行こうか」
「ん…」
僅かに頷くヒナの頬に口付け抱き上げた俺は、残りの酎ハイも手に取り寝室に向かう。勿体ないけど、テーブルを片付けるだけの余裕は俺にはなかった。
ベッドに下ろし、ヒナの服を脱がせると自分で酎ハイを煽り口移しで飲ませる。もう少しだけ酔ってる姿が見たい。
「…もっと…」
「うん。欲しいだけあげる」
俺の唇を舐めながらそうねだるヒナにゾクゾクする。
少しずつ飲ませながら身体を開いていき、中に挿入る頃にはヒナの酔いは完全に回ってて、いつも以上に感度が高くてヤバかった。
「まなくん…まなくん…っ」
酔ってるから手加減しようと思ったのに、最中にずっとそう呼ぶものだからそれさえも出来なくて。
結果抱き潰してしまったのは俺だけのせいではないと思いたい。
FIN.
少し前からお酒に興味を示してて、飲むなら俺といる時って約束してたから初めて飲酒をする日でもある。
恋人になってから初めての誕生日がああなってしまい、反省を込めて次からは必ずオフにして貰えるよう水島さんと傑さんに掛け合ったおかげで、朝からイチャイチャ出来るしデートも出来るようになった。
ちなみに今はプレゼント選びも兼ねて大きなショッピングモールに来ているんだけど、少し前にヒナとのウェディング特集の写真が載った雑誌が出たからか人の視線を前以上に感じるようになった気がする。
誰も彼もがヒナを見ている気がして、俺は早くヒナを腕の中に閉じ込めたかった。俺だけのヒナなのに、勝手に見ないで欲しい。
「真那? どこ見てるんだ?」
屋上駐車場を含めて六階建てのモール内を、最上階から順番に見ていたヒナが繋いだ手を引いて俺の顔を覗き込んできた。
二十歳になっても相変わらず可愛いヒナへと視線を向け微笑む。
「あっちは何があるのかなって思って」
「良さげなのあったか?」
「んー、ヒナの好みではないかな」
「そっか」
ヒナはものに拘りはないけどちゃんと好き嫌いがある。雑貨でも服でも家具家電でも、可愛かったり綺麗なものは好きでも派手なものは避けがちだ。俺も派手なのは好きじゃないし、それを選ばないでくれるのは凄く有り難い。
一緒に住んでいる家は元々事務所が内装を整えていたから、ヒナの好きにしていいよって言ったら少しずつ改良を始めたらしく、ベッドカバーやカーテン、カーペットやクッションカバーなどが落ち着いた色合いのものに変わりつつあった。
一生懸命あーでもないこーでもないと悩んでるヒナは可愛くて、参考画像が表示されたタブレットを見る後ろ姿を見るのが最近の楽しみだ。
「気になるものあった?」
「んー、まだかな。でも早く決めないと人が集まりそうだし」
「そういうのは気にしなくていいんだよ。どれだけ時間掛かってもいいから、ヒナが本当に欲しいものを選んで」
「ありがと」
何年経ってもヒナは騒ぎになる事を気にするけど、そういうのは一部のファンだけで節度ある人はちゃんと距離を大事にしてくれるからそこまで心配しなくてもいいのにって思う。
特にヒナのファンなんて遠くから見てる人が多いのに。
「せめて欲しいものの系統だけでも決めておきたい……あ」
「?」
「靴。スニーカー欲しいかも」
「なら、ちょうどあそこに靴屋さんあるから行こうか」
「うん」
難しい顔で下を向いたヒナが、ハッとして向けて来た笑顔にドキッとしながらも先にある靴屋を指差すとこれまた可愛い顔で頷く。何足でも買ってあげたい気持ちになるけど、ヒナは一足しか選ばないんだろうなぁ。
スニーカーは一足で、追加で服とかアクセサリーとか?
「ヒナ、そろそろピアス新しいのにしない?」
「え? でもこれお揃いなのに」
「うん。だからお揃いのピアスを新しくしないかなって」
「結構気に入ってるからなぁ」
ヒナの耳には、今は俺とお揃いのそれぞれの誕生石がついたリングピアスが着いている。これは、ヒナがピアスをしてみたいって言ってたから去年の誕生日にプレゼントしたもので、ピアスホールもその時に開けたものだ。
一年経つし、そろそろ変えてもいいんじゃないかなと思うけど。
「んー、やっぱこのままでいいや。せっかく真那がプレゼントしてくれたファーストピアスだし」
「そっか」
それほど大事にしてくれてるんだ。
人差し指でピアスに触れてにこっと笑うヒナの気持ちが嬉しくて俺も笑い返すとヒナはぎゅっと俺の腕に抱き着いてきた。
「ちなみに今日のオレ、全身真那から貰ったものでコーディネートされてるんだけど気付いてたか?」
「もちろん。可愛いなって思ってた」
「オレ、このゆるっとしたパンツ好き」
「ヒナはサイズピッタリより、緩めに着れる服の方が似合うから」
「オーバーサイズ楽だよなー」
パーカーとかロングTシャツとか、生地が余ってる感じが可愛いし、何より彼シャツ感があって堪らない。たまに俺の服も着せるけど、何であんなに可愛いんだろう。
「あ、これ可愛い。……でも値段は可愛くないな」
「ヒナ、値段気にするの禁止」
「いやいや、靴なんてピンからキリまであるんだぞ。ほら、これなんか、三万もする」
「誕生日だよ。本当に欲しいもの、だからね?」
「……分かった」
目に付いたスニーカーを手にしたヒナが値札を確認してそっと戻す。
俺も見たけど一万円くらいで、ヒナの生まれた日をお祝いするにはむしろ安すぎるくらいだと思った。
妥協してまあまあ気に入ったものを選びそうだとヒナの頭を撫でてそう言えば、眉尻を下げながらも小さく頷く。ヒナの好みは知ってるから俺が選んでもいいけど、やっぱり本人にこれがいいって言って貰いたい。
俺は店内をウロウロするヒナのあとをついて行きながら、やっぱり値札を見る姿に苦笑するのだった。
俺が再三言ったおかげか、ちゃんとヒナが気に入ったスニーカーを購入し、帰りにケーキ屋さんでバースデーケーキを受け取って、スーパーで数種類のお酒を買ってから帰宅した俺たちはまずお風呂に入る事にした。
一緒に入る? って聞いたんだけど、変な事するからってすげなく断られてしまい寂しく一人お風呂だ。
最近はベッド以外ではなるべく我慢してるのにな。
お風呂から上がり、髪を乾かした俺と入れ違いで浴室に向かったヒナを見送ってからデリバリーアプリを開くと、ヒナが好きな料理をいくつか注文し時計を見上げる。
夕飯には少し早いけど、お酒を飲むならゆっくりの方がいいし問題はない。
明日のスケジュールを確認していると、ホカホカになったヒナが髪を拭きながらキッチンに向かい、コップを手にしてウォーターサーバーから水を注ぐ。それを一気に飲み干したんだけど、喉仏が上下する様が妙に色っぽくて俺の喉までゴクリと鳴った。
(このままベッドに連れて行きたいなぁ…)
ヒナをその気にさせる事は簡単だけど、せっかくの誕生日だしケーキもあるし、何よりお酒を飲むのを楽しみにしているヒナにそんな事出来ない。
じっと見てると気付いたヒナがふわりと笑ってくれる。可愛い。
「明日何時から?」
「11時から雑誌撮影。ヒナも午後からだよね?」
「うん」
「朝ゆっくり出来るね」
お酒飲むからお互い朝に余裕があるのは有り難い。ソファまで来たヒナを膝に乗せまだ濡れている髪に口付ける。洗面所から持ってきていたドライヤーで髪を乾かし始めるとヒナは気持ち良さそうに目を細めた。
少ししてデリバリーも届き、ケーキに立てたローソクに火を灯してヒナの為だけのバースデーソングを歌い、火を吹き消すヒナを写真に収める。これがもう当たり前になってて、きっとどれだけ年を取っても二人でこうしてるんだろうなって思えるくらい身体に染み付いてた。
「最初は度数の低いものからね」
「はい」
「水も飲むんだよ?」
「分かった」
ヒナの前に俺にとってはほぼジュースと変わらない酎ハイと空のグラスと水を置く。プルタブを起こしてグラスに注ぎ、ヒナに渡すとどうしてか匂いを嗅いでから口を付けた。
少しだけ飲んで首を傾げ、今度は多めに飲んでみる。小動物みたいで凄く可愛いし、両手でグラス包むように持ってるのも可愛い。
「美味しい。お酒の味は良く分かんないけど、今のとこジュースみたいだ」
「美味しいからってあんまり飲みすぎないようにね。それから、ご飯もちゃんと食べて」
「食べる食べる。そこのパスタとポテトちょうだい」
「お寿司は?」
「食べる!」
ちなみにこのお寿司、誕生日のヒナの為に志摩さんが買って来てくれた高級寿司店の一番高い折箱だ。俺も一度連れて行って貰った事あるけど、本当に美味しくて驚いた。さすが志摩さん、確かな舌を持ってる。
ちなみに志摩さんからはノイキャン付きの高性能ワイヤレスイヤホンもプレゼントとして貰ってて、風音からはブランド物のキャップ、水島さんからはシンプルだけどお洒落な腕時計を渡されてた。
傑さんはヒナの名前が縫われた、ヒナの半分はある大きなクマのぬいぐるみをプレゼントしてて、本人はこの年でって顔を引き攣らせてたけどそれを抱いてソファに座ってるヒナがあまりにも可愛かったから、今回ばかりは傑さんに優勝のスタンプを送っておいた。
折箱ごとヒナの前に置くと、さっそく油の乗った大トロを食べたヒナはその美味しさにパッと表情を輝かせる。
「美味しい!」
「良かったね。好きなだけ食べていいよ」
「真那も食べろって。ほら、あーん」
「あーん」
ご機嫌なヒナが手ずからお寿司を食べさせてくれる。美味しいものを食べてるヒナはずっとにこにこで、夢中になると周りの話さえ聞こえなくなるけど、それが可愛いからみんなヒナに美味しいものを食べさせたくなるんだよね。
お寿司もオードブルも食べつつお酒も口にして、幸せそうなヒナに俺まで幸せになる。
「ヒナ、二十歳の誕生日、おめでとう」
「ありがとう」
この先もずっと、ヒナの誕生日を一番に祝えるのは俺でありたい。
空になったグラスに酎ハイを注ぎながら、俺は心の中でそう願った。
初めてのお酒だし、酔い潰れない程度でやめさせておこうと思ったのに、ヒナは見事に二本目の酎ハイを半分飲んだところで酔ってしまったらしい。
思ったよりも弱くて驚いたし、酔ったヒナがどうなるかも予想出来てなかったから現状には若干戸惑っていた。
「まなくん、ぎゅー」
「うん、ぎゅーだね」
「まなくん好き。大好き」
「俺もヒナが大好きだよ」
舌足らずで甘えた声が懐かしい呼び方で俺の名前を口にし、何とも可愛らしい事を言ってくる。
どうやら、ヒナは酔うと幼児退行してしまうらしい。俺の膝に向かい合わせに座ってひたすらに甘えてくれるヒナに理性が決壊しそうだ。
「ヒナ、ケーキは? もうお腹いっぱい?」
「ケーキはね、食べる。お腹はー…分かんない」
「分かんないか。じゃあケーキ切ってくるから、一旦降りようか」
「やだ」
「ケーキ食べないの?」
「食べる」
「なら切らないと」
「やだ」
どうしよう、凄く可愛い。こんなにやだやだ言うヒナは小さい時以来で、懐かしさと一緒に感動を覚えてる。
「まなくん」
「ん?」
「ずっと一緒にいようね」
「うん、ずっとずっと一緒だよ」
「へへ」
あー、可愛い。可愛すぎて顔がずっと緩んでる。
でも酔ってるヒナに手を出すのもどうかと思うし、ケーキを食べたいって言ってるから今は耐えないと。
なんかもう拷問を受けてるみたいだ。
「まなくん、ケーキ」
「切らずにこのまま食べようか」
どうせヒナと俺しか食べないんだしと、新しいフォークを取り端の方を掬ってヒナの口元へと運ぶ。
「イチゴも」
「待ってね」
ヒナの口端についた生クリームを親指で拭い、今度はイチゴにフォークを刺す。いつもこんな風に甘えてくれればいいのに。
飾ってあるイチゴ、大きめだけど一口でいけるかな。
「……んー」
ヒナの小さい口ではやっぱりキツかったようで、果汁が溢れて顎を伝い服にシミを作った。酔ってるからか口元が緩いせいもあって食べるのが下手になってる。
「ヒナ、着替えようか」
「ん……」
「ヒナ? …!」
舌先で舐め取ろうとするヒナにドキッとしながらも努めて冷静にそう問い掛けたんだけど、ヒナは生返事で首を傾げると俺を見上げておもむろに口付けてきた。
すぐに離れたけど、赤い顔で目を潤ませたヒナが間近にいて下肢が反応し始める。
「ひ、ヒナ…?」
「真那…」
いつもの呼び方に戻ったヒナが再び唇を触れ合わせて舌を差し込んでくる。イチゴの味が広がって、小さな舌が拙く俺の口内で動くからあっという間に理性が吹き飛んだ。
ヒナの後頭部を押さえ味わうように舌を絡める。散々吸って舐め回し、ヒナの身体が震え始めたから離すと息も絶え絶えながらも蕩けた顔をしていて笑みが零れた。
「ベッド行こうか」
「ん…」
僅かに頷くヒナの頬に口付け抱き上げた俺は、残りの酎ハイも手に取り寝室に向かう。勿体ないけど、テーブルを片付けるだけの余裕は俺にはなかった。
ベッドに下ろし、ヒナの服を脱がせると自分で酎ハイを煽り口移しで飲ませる。もう少しだけ酔ってる姿が見たい。
「…もっと…」
「うん。欲しいだけあげる」
俺の唇を舐めながらそうねだるヒナにゾクゾクする。
少しずつ飲ませながら身体を開いていき、中に挿入る頃にはヒナの酔いは完全に回ってて、いつも以上に感度が高くてヤバかった。
「まなくん…まなくん…っ」
酔ってるから手加減しようと思ったのに、最中にずっとそう呼ぶものだからそれさえも出来なくて。
結果抱き潰してしまったのは俺だけのせいではないと思いたい。
FIN.
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コメントありがとうございます🙇♀️🙇♀️
真那はそれこそ赤ん坊の陽向に一目惚れしたのかってくらいずーっと一途に陽向だけを想い続けてて、よそ見どころか他人は寄るな触るなで陽向以外が傍にいるのは許せないんですよね🤭
反対に陽向の傍にも自分だけを置いて欲しいけど、陽向に優しい人達の事は陽向の為にも黙認しています☺️
陽向の為なら我慢も出来る健気な男ですよ、真那は😁
あまりにもみんなが陽向に優しいので、これ陽向総受けだったか? と途中で思ってしまいました😆
陽向の言葉だけはちゃんと聞く真那なので、それに助けられている人達は陽向には優しくなるんですよね😊
優しい世界大好きです✨
私もそんなカップリングが大好物なので、うちの攻めは総じて独占欲強めの溺愛マンになってます😏
そんな中でも真那の執着は半端ない(笑)
うわー、嬉しいです! ありがとうございます!
他作品も気に入って頂けると幸いです🌼
番外編含めキュンキュンしながら読んでましたよ~もう死にそう…キュン死
コメントありがとうございます🙇♀️
キュンキュンする話が好きなので、少しでもそう感じて頂けるなら本望です😊✨
きゅ、キュン死…! なんて勿体ないお言葉!
ありがとうございます~😭
これからも皆様にキュンキュンして頂けるよう頑張ります!
番外編もお互い愛情・独占欲一杯で微笑ましい🥰
新作も溺愛で面白く更新を楽しみにしつつ、ミヅハさんの既存作品も徐々に読ませて貰っていてどの作品も好きすぎます!本当に読ませていただけることに感謝しかないです😆
コメントありがとうございます🙇♀️
真那は基本的に陽向以外に感情が動かないのでなかなかに動かしにくいキャラでしたが、おかげで一番の独占欲と執着心を持つ男になったので今では大満足です🤭
私自身、攻めが受けを溺愛するお話が大好物なので、全ての作品が溺愛ありきで作っております⭐
受けを甘やかしまくって欲しい😊🌼
過去の作品まで読んで下さった上に好きと言って頂けてもう飛び上がるくらい嬉しいです😭
本当に、こちらこそ読んで頂けて感謝の気持ちしかありません☺️✨
ありがとうございます🙇♀️✨