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番外編
小旅行オマケ(傑視点)
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真那の幼馴染みであり恋人でもある陽向くんはとてもいい子だ。
自分の立場を弁え決して前には出ず、トップアイドルとして活躍する真那に迷惑が掛からないようにといろいろ考えてくれていたらしい。
どちらかと言えば真那の方が彼がいないと駄目みたいで、メンタルに来るとあの水島くんでさえ陽向くんを頼りにしていたくらいだから僕は早く彼に会ってみたかった。
何に置いても無表情で無気力。
無を極めたのかというくらい感情の動かないうちの看板アイドルが唯一色んな表情を見せる幼馴染みくんがどんな子なのか凄く興味があったし、あの真那が可愛いと豪語して止まないのだからよほど顔の整った子なのかなと思っていたら、想像よりもずっと小さくて華奢で可愛らしい子だった事には驚いた。
真那も僕も平均より背が高いから余計にそう思ったのかもしれないけど、それを抜きにしても恐らく陽向くんは平均より低い方だと思う。
礼儀正しくて真面目で、真那とはまるで正反対なくらい表情が良く変わる姿は見ていて楽しい。オマケに陽向くんを構うと真那が見た事ない反応をするからそれも余計に面白くて…ついやり過ぎて最近は真那の視線が厳しいんだよね。
本当に好きで大切で仕方がないんだなと思うと同時に、そんな風にありのままの自分を出せる相手が真那にいる事が嬉しかった。
この子に喜怒哀楽があるのか本当に心配だったからね。
「高橋くん、これ見て」
「はい? ……ずいぶん可愛らしいお写真ですね」
「二人で遊園地にも行ったみたいだよ。無邪気だよね」
社長室のデスクでアルバムに綴じられた写真を眺めていたら、秘書の高橋くんがお茶を持って来てくれたから手招きして指を差す。
これは少し前に真那と陽向くんに揃ってオフをあげ、颯家がお世話になっている旅館を紹介してちょっとした娯楽を経験して貰った時の写真で、陽向くんがわざわざ僕の分も現像してアルバム作成してくれたものだ。
写真に映る二人は凄く自然で、真那の表情も柔らかく楽しそうな雰囲気が良く伝わってくる。陽向くんといる時の真那はいつもこんな感じなんだろう。
本当に、感心するほど真那の興味は陽向くんにしかないんだな。それでも仕事はちゃんとするんだから偉いよ。
「少しは思い出になってたらいいけど」
「真那さんも陽向さんも、社長のお気持ちにはちゃんと気付いてらっしゃいますよ。社長がそれを台無しにするだけで」
「二人とも反応が可愛いから」
「いい加減にしないと嫌われますよ」
そうは言っても、二人が揃ってるとつい揶揄いたくなるのは仕方ないと思う。真那の嫉妬と独占欲剥き出しの顔とか態度とか、そうそう見られるものじゃないし。
「社長は本当にいいご趣味をされてますね」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そう言ってにっこり笑うと高橋くんはやれやれと首を振る。
心配しなくてもちゃんと引き際は弁えてるよ。真那の事だから、臍を曲げたまま仕事はしないって信頼もあるし。
「そろそろツアーも始まるし、【soar】へのご褒美を考えておかないとね」
「ああ、そういえば、真那さんが地方には陽向くんを連れて行きたいって言ってましたよ」
「あはは、真那は我儘だなー」
欲望に忠実と言うべきか、すぐにそんな事を言ってくるんだから。
モチベーションは上がるだろうけど、そもそも陽向くんが首を縦に振るとは思えない。でも、真那がファンサしてる円盤の売上げって凄いんだよねぇ…悩むな。
あ、そうだ。
「なら陽向くんには裏方として働いて貰えばいいんじゃないかな」
「それいいですね。ケータリングとかドリンクとか、あまり無理のない範囲なら真那さんも駄目とは言わないんじゃないですか?」
「真那には秘密にしておこう」
「またそうやって…」
ライブTシャツを来た陽向くんを見て真那はどんな反応をしてくれるんだろう。現場に行けない僕は実際には見れないけど、志摩か風音辺りにお願いして動画でも録っておいて貰おうかな。
「楽しみだなー」
「真那さんも陽向さんも、社長に気に入られたばかりに…お気の毒です」
驚きつつも喜ぶんだろうなと想像してほくそ笑む僕に溜め息をついた高橋くんは、「スケジュール調整して来ます」と言って部屋から出て行った。
高橋くんだって陽向くんの事を可愛がってるくせに。
僕は再びアルバムを開いて二人が仲睦まじく写っている写真を眺めて微笑み、思い出話を聞こうと陽向くんをお茶に誘うべく内線で事務室へと電話をかけるのだった。
自分の立場を弁え決して前には出ず、トップアイドルとして活躍する真那に迷惑が掛からないようにといろいろ考えてくれていたらしい。
どちらかと言えば真那の方が彼がいないと駄目みたいで、メンタルに来るとあの水島くんでさえ陽向くんを頼りにしていたくらいだから僕は早く彼に会ってみたかった。
何に置いても無表情で無気力。
無を極めたのかというくらい感情の動かないうちの看板アイドルが唯一色んな表情を見せる幼馴染みくんがどんな子なのか凄く興味があったし、あの真那が可愛いと豪語して止まないのだからよほど顔の整った子なのかなと思っていたら、想像よりもずっと小さくて華奢で可愛らしい子だった事には驚いた。
真那も僕も平均より背が高いから余計にそう思ったのかもしれないけど、それを抜きにしても恐らく陽向くんは平均より低い方だと思う。
礼儀正しくて真面目で、真那とはまるで正反対なくらい表情が良く変わる姿は見ていて楽しい。オマケに陽向くんを構うと真那が見た事ない反応をするからそれも余計に面白くて…ついやり過ぎて最近は真那の視線が厳しいんだよね。
本当に好きで大切で仕方がないんだなと思うと同時に、そんな風にありのままの自分を出せる相手が真那にいる事が嬉しかった。
この子に喜怒哀楽があるのか本当に心配だったからね。
「高橋くん、これ見て」
「はい? ……ずいぶん可愛らしいお写真ですね」
「二人で遊園地にも行ったみたいだよ。無邪気だよね」
社長室のデスクでアルバムに綴じられた写真を眺めていたら、秘書の高橋くんがお茶を持って来てくれたから手招きして指を差す。
これは少し前に真那と陽向くんに揃ってオフをあげ、颯家がお世話になっている旅館を紹介してちょっとした娯楽を経験して貰った時の写真で、陽向くんがわざわざ僕の分も現像してアルバム作成してくれたものだ。
写真に映る二人は凄く自然で、真那の表情も柔らかく楽しそうな雰囲気が良く伝わってくる。陽向くんといる時の真那はいつもこんな感じなんだろう。
本当に、感心するほど真那の興味は陽向くんにしかないんだな。それでも仕事はちゃんとするんだから偉いよ。
「少しは思い出になってたらいいけど」
「真那さんも陽向さんも、社長のお気持ちにはちゃんと気付いてらっしゃいますよ。社長がそれを台無しにするだけで」
「二人とも反応が可愛いから」
「いい加減にしないと嫌われますよ」
そうは言っても、二人が揃ってるとつい揶揄いたくなるのは仕方ないと思う。真那の嫉妬と独占欲剥き出しの顔とか態度とか、そうそう見られるものじゃないし。
「社長は本当にいいご趣味をされてますね」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そう言ってにっこり笑うと高橋くんはやれやれと首を振る。
心配しなくてもちゃんと引き際は弁えてるよ。真那の事だから、臍を曲げたまま仕事はしないって信頼もあるし。
「そろそろツアーも始まるし、【soar】へのご褒美を考えておかないとね」
「ああ、そういえば、真那さんが地方には陽向くんを連れて行きたいって言ってましたよ」
「あはは、真那は我儘だなー」
欲望に忠実と言うべきか、すぐにそんな事を言ってくるんだから。
モチベーションは上がるだろうけど、そもそも陽向くんが首を縦に振るとは思えない。でも、真那がファンサしてる円盤の売上げって凄いんだよねぇ…悩むな。
あ、そうだ。
「なら陽向くんには裏方として働いて貰えばいいんじゃないかな」
「それいいですね。ケータリングとかドリンクとか、あまり無理のない範囲なら真那さんも駄目とは言わないんじゃないですか?」
「真那には秘密にしておこう」
「またそうやって…」
ライブTシャツを来た陽向くんを見て真那はどんな反応をしてくれるんだろう。現場に行けない僕は実際には見れないけど、志摩か風音辺りにお願いして動画でも録っておいて貰おうかな。
「楽しみだなー」
「真那さんも陽向さんも、社長に気に入られたばかりに…お気の毒です」
驚きつつも喜ぶんだろうなと想像してほくそ笑む僕に溜め息をついた高橋くんは、「スケジュール調整して来ます」と言って部屋から出て行った。
高橋くんだって陽向くんの事を可愛がってるくせに。
僕は再びアルバムを開いて二人が仲睦まじく写っている写真を眺めて微笑み、思い出話を聞こうと陽向くんをお茶に誘うべく内線で事務室へと電話をかけるのだった。
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