焦がれし星と忘れじの月

ミヅハ

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【五十三ノ星】触れ合う※

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 家の中も静まり返った深夜。
 パッと目を覚ました詩月は目の前にある胸板に一瞬戸惑うも、龍惺が帰って来た事を思い出しホッと息を吐いた。
 顔を上げ、穏やかな表情で眠っている龍惺を見ていると無性に触れたくなってくる。
 疲れて帰って来て、少し休んだとはいえこの熟睡っぷりを見る限りはようやく本気で休息出来ている状態だろう。だから触れてうっかり起こしてしまったらと思うのに、どうしても触れたい。

(というか……触って欲しい、かも)

 何だかんだ昼間は龍惺もすぐ寝落ちてしまったし、二週間触れ合えなかった分には全然物足りない。
 だけど起こすのもやっぱり可哀想で、伸ばし掛けた手をぎゅっと握って悩んでいると、乗っているだけだった腕が腰に触れ引き寄せられた。

「!」
「……どした…?」
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
「いや……。…んー……」
「龍惺?」

 頭の下に差し込まれていた腕が肩を抱き寄せ、首筋へ顔を埋めてくる龍惺はどうやら珍しく寝惚けているらしい。
 さっきまで彷徨わせていた手で頭を撫でると更に強く抱き締められた。

「……もっと撫でて…」
「う、うん」
(可愛い……!)

 最近は龍惺も甘えてくれるようになり、いつもはカッコ良さでトキメク胸が今のようにキュンとする事が増えた。しかも今は半分寝ている状態だから言い方もふわふわしていて尚の事可愛い。
 嬉しくてにこにこしながら頭を撫でていると、首筋に触れていた温もりが離れたと思った瞬間おもむろに噛み付かれた。

「…っ……」

 甘噛み程度だから痛くはないが、龍惺に触れて欲しいと思っていただけに身体が敏感に反応してしまう。しかも何度も歯を立てられるから我慢したくても出来なくて体温が上がって来た。
 寝惚けているが故の行動かと思っていたが、噛んでいた場所を強く吸われてハッとする。

「……起きてるでしょ、龍惺」
「バレたか」
「いつから起きてたの?」
「噛んでる時」
「え、最初は寝惚けてたの?」
「ぼんやりしてた」

 ぼんやりしていたのに甘噛みで済ませてくれたのかと感心していると、腰を抱いていた手が服の裾から入り込み素肌を撫でて来た。

「ふふ、くすぐったい」
「……ん? 何か肌めっちゃすべすべしてね?」
「早苗さんがボディスクラブ? っていうのくれたんだ。肌の汚れとか古い角質を取ってくれるんだって」
「へぇ。こりゃいいな、ずっと触ってられる」
「ちょ、脇腹はダメって…! や、あはは…っ」

 感触を確かめるように脇腹を揉まれたり撫でられたりするとくすぐったくて堪らない。身を捩りながら龍惺の手から逃げようと背中を向けると今度は抱き竦められる。
 後頭部から耳元へ移動するキスにドキドキしていると、臀部に龍惺の腰が押し付けられて肩が跳ねた。

「りゅ、龍惺……」
「二週間お預けだったんだから、仕方ねぇだろ」
「それは、分かるけど……」
「……お前だってこれ、欲しいんじゃねぇの?」
「…………」

 それを言われると否定できない。現に噛まれてる時から腹の下が疼き始めていたし、龍惺の硬くなった熱に煽られるように自身が首をもたげ始めた。
 口に出すのが恥ずかしくて赤い顔で振り向くと、ニヤリと笑った龍惺に噛み付くようなキスをされる。肉厚な舌が口内を這い回り逃げ腰だった舌を絡め取られ強く吸われた。

「んっ、ふ……んぅ…ッ」

 鼻で呼吸すればいい事は分かっているのにどうしても上手く出来ない。酸欠ギリギリまで貪られ、音を立てて唇が離れた瞬間大きく息を吸うと軽く噎せてしまった。

「…ぅ、ケホッ、ケホ…!」
「大丈夫か?」
「……っ、ん…」
「いつまで経っても慣れねぇな、お前」
「ご、ごめ……」
「そこが可愛いからいいんだよ、謝んな」

 何もかも龍惺が初めての詩月からしてみれば、最初から慣れている龍惺の手練手管は到底ついていけるレベルではない。
 目を伏せて上がった息を整えているとくしゃりと髪を撫でられ、起き上がった龍惺の手でズボンと下着が脱がされて先走りを零す自身が露わになった。

「……っ…」
「自分で抜いたりした?」
「し、してない…っ…」
「じゃあこっちも自分で弄ってねぇ?」
「ん…っ……ない…」

 長くて骨ばった指が先端から裏筋を辿って奥の窄まりまでいくと、指先が軽く押し込まれ小さく声が漏れる。
 そもそも元々から性欲は薄い方であり、離れていた八年間だって数えるくらいしか自慰行為はした事ない。加えてここは龍惺の実家だ。とてもじゃないがそんな気分にはならなかった。
 だから問い掛けには首を振って答えたのだが、何故か龍惺は満足げに微笑んだ上に、勃ち上がったそれをキュッと握り強弱をつけて扱き始めた。

「いい子」
「あ、待って…っ、久し振りだから…ゃ、んっ」
「自分で抜くのはまぁ許すけど、後ろは俺がするから触んなよ」
「…ッ、何、言って…あ…っ」
「お前を気持ち良くすんのは俺の役目だからな。中に挿れていいのも俺だけ」
「ダメ、すぐイっちゃ……っ」
「とりあえず一回イっとけ」
「や、ぁ、あ…っ、ん、…っんん…!」

 変な独占欲を見せる龍惺に戸惑いつつも、追い立てられるように刺激されればあっという間に限界を迎え詩月は背をしならせて果てる。
 余韻に身体を震わせながら薄目で龍惺を見ると、詩月が出した物を舐めている姿が目に入り慌てて袖を掴んだ。

「も、舐めちゃダメってば…っ」
「やっぱ溜まってた分濃いな」
「そういう事は言わなくていいの…!」

 こういう時の龍惺はどうしてこうも平然とエッチな事を言ってくるのか。いつも思うが、恥ずかしがらない龍惺が不思議で仕方ない。
 手が届けば口でも塞ぎそうな勢いで言葉を被せた詩月にふっと笑った龍惺は、精液に塗れた手を奥に移動させ入口に塗り広げてから指を一本挿入してきた。

「……せめぇな」
「…ん……っ」
「痛くねぇ?」
「だいじょ、ぶ…」

 久し振りといえど二週間だ。八年振りに抱かれたあの日よりは心身共にまだ余裕があった。
 だが指一本とはいえ、龍惺によってだいぶ感度の上げられた身体は腸壁を擦られるだけでも奥が疼き出して早く欲しくなる。

「ん……ん…っ…」
「こら、切れるだろ。噛むな」
「…っ…ふぁ……」

 あられもない言葉を口走ってしまいそうで唇を噛んで堪えていると、龍惺に気付かれて空いている方の手で口を開けられてしまった。
 親指が下の歯をなぞって奥歯にまで押し込まれる。舌先で舐めると目が眇められた。

「詩月って割と舐めるの好きだよな」
「…ぅ、ん……」

 好きと言っても龍惺限定だが、彼は肝心な場所はすぐに終わらせてしまうから詩月としては物足りない。恨みがましく龍惺の下肢へと視線を落とすと彼の口端が上がり、二本目の指が入ってきた。

「んッ……ゃ、ひゃんじゃう……っ」
「別に噛んでもいいって。詩月の歯型とか興奮する」
「……っふ…ぁ、ん……」

 だんだんと龍惺の変態度が増していってると思うのは気のせいだろうか。内頬や上顎を弄りまくった指が抜かれ、濡れた指が今度は胸の尖りをなぞる。ぬるりとした感触に舌で愛撫されている感覚になり全身が戦慄いた。

「あ、やぁ…っ…」
「こんだけ敏感だと、ここだけでイけそうだけどな」
「そんなの出来る訳…っ…んっ、ぁ、あ…っ」
「今度試してみるか?」
「や、だ…っ…あ、ぁ、んん…ッ」

 いつの間にか指が三本になっていて、中を拡張するように指の又を広げたり抜き差しはされるが、わざとなのか前立腺には触れずその近くに触れられるためもどかしくて堪らない。

「りゅう、せい、も…いいから……」
「……そうだな…これくらいなら」
「キス、して欲しい……」

 少しだけ具合を確かめたあと指が抜かれ、ヒクヒクと収縮する後孔へ硬い切っ先が宛てがわれる。腕を伸ばして甘えるようにねだると、ふっと微笑んだ龍惺が覆い被さり口付けてくれた。
 唇を触れ合わせながら猛りがゆっくりと押し込まれていく。
 久し振りに感じる圧迫感が嬉しくて無意識に締め付けてしまい龍惺が息を詰めた。

「…ッ、……っはー……お前はホント、悪戯好きな」
「い、悪戯してるつもりは……ひぁっ、ぁ、んっ…」
「遠慮しなくていいって事だよな」
「ちが…っ…ぁ、あ、ダメ、や、そこやぁ……っ」

 意地悪く笑った龍惺は首を振る詩月の足を抱え上げると残りを一気に突き入れ前立腺を抉るように腰を揺らし始めた。

(ホントに悪戯したつもりないのに……!)

 心の中で訂正してももう遅い。
 完全にスイッチの入った龍惺により為す術なく嬌声を上げさせられた詩月は意識を手放したあと、翌日の昼まで眠り続け、起きてからも痛みと違和感で起き上がれず恥ずかしさといたたまれなさでベッドの上の蓑虫と化すのだった。
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