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鷹臣さんからお揃いの物と言われて凄く凄く悩んだ僕は、最終的には指輪とネックレスの二択にまで絞れたんだけどそこからなかなか決められずにいて、叶くんと茉莉ちゃんに相談したら絶対に指輪って言われたから指輪に決めた。
僕も指輪の方がいいかもって思ってたから背中を押された感じだ。
鷹臣さんと同じ物って嬉しいな。
「指輪の受け取り、今日だっけ?」
「うん」
「やっぱり恋人がいるなら、ペアリングには憧れるよね」
「二人もお揃いの指輪着けてるもんね」
「三年目ならいいかなーって」
「良く言うよ。一年過ぎてからずっと欲しいっつってたくせに」
「それはそれ、これはこれ」
二人は中学の時から付き合ってるそうだから、その時からの友達から夫婦って言われてるのを何度も見てる。
大きな喧嘩もした事ないみたいで、本当に仲が良いんだよね。
ついにこにこして見てたら、それに気付いた叶くんが照れ臭そうに僕の頭をチョップしてきた。
「その顔やめろ」
「ごめんね」
全然痛くないし、ムッとした顔が面白くてクスクス笑いながら謝ったら今度は乱暴に撫でられて髪がぐちゃぐちゃになる。すかさず茉莉ちゃんが手櫛で直してくれて、その連携力に二人なら餅つきの息もピッタリかもしれないって思った。
「あ、ありがとう。茉莉ちゃん」
「遥斗くん、猫っ毛だからすぐもつれるね」
「強い風が吹いた日とか凄い事になる」
「細いから無理に梳いたら切れちゃうしねぇ」
冬は静電気で広がるし、乾かさなかったら爆発しちゃうしで本当に大変だ。今は鷹臣さんが丁寧に乾かしてくれるから朝起きてもちょっとした寝癖で収まってるけど、うっかり寝ちゃった次の日は悲惨だったなぁ。
茉莉ちゃんのおかげで綺麗になった髪の毛の先を弄ってたら、叶くんが頬杖をついてスマホを開いた。
「そうだ。茉莉、今年は何が欲しい?」
「誕プレ? えー、どうしようかな」
「そっか、茉莉ちゃんもうすぐ誕生日だ」
「うん。遥斗くんは、またドリンク奢ってね」
「今年も? ちゃんと選んで欲しいのに」
「お祝いしてくれる気持ちだけで嬉しいんだから」
茉莉ちゃんの誕生日は去年知って、何がいいって聞いたらコーヒーショップに連れて行かれて何か難しい名前のドリンクを選ばれたんだよね。他にない? って聞いてもこれが嬉しいって言うばっかりで、今年こそはプレゼントらしいプレゼントをあげようと思ってたのに。
ちなみに僕はこれまで女の子にプレゼントをあげた事がないから、何を選べばいいか分からない。
⋯⋯あれ、そういえば。
「鷹臣さんももうすぐ誕生日だ」
「あ、そうなんだ! 何あげるの?」
「な、何あげたらいいかな?」
大人な鷹臣さんに安易な物はプレゼント出来ないし、果たして僕のセンスで選んでいいのかどうか。その日暮らしをしていた僕にはそんな素敵な感性は備わってないような気がするし。
「仕事で使う物とかは? 基本スーツみたいだし、ネクタイとかタイピンとか」
「ネクタイ⋯無地ならまだ」
「遥斗からなら何でも喜んでくれそうだけどな」
「頭にリボン巻いて、〝僕がプレゼント〟って言う?」
「? 僕がプレゼント? 歌も苦手だし手品も出来ないよ?」
むしろ僕をプレゼントにしたところで鷹臣さんは困るだけなんじゃないかな。それに何の使い道もないし⋯あ、でも、力仕事は無理でもお茶入れたりは出来るかも。
つまりは労働力って事かと一人納得してたら、茉莉ちゃんが僕の頭を撫でながらしんみりと頷いた。
「遥斗くんはそのままでいてね」
「う、うん?」
「お前が変な事教えなきゃ大丈夫だよ」
結局何が言いたかったんだろうと首を傾げると、机に置いていたスマホが震えて鷹臣さんからのメッセージが入った。
『少し用事があるから、迎えに行くまでお店で待ってて』
珍しいと思いつつも『分かりました』と返事をしてスマホを戻した僕は、今日受け取れる指輪が楽しみで仕方なくて、茉莉ちゃんの誕生日プレゼントの話をしている二人に視線を戻してふっと表情を緩めた。
長年付き合ってると、プレゼント選びも大変なんだなぁ。
バイトを終え、言われた通り鷹臣さんを待ってた僕は少しだけ不安になってた。
連絡があったからいつもより遅いのは理解してたけど、それが三十分を過ぎても一時間近く経っても音沙汰さえなくて、カウンターに座ってずっとスマホと睨めっこしてる。
「遥斗さん、店閉めて大丈夫ですか?」
「あ、うん。ごめんね。大丈夫だよ」
「連絡してみました?」
「メッセージは送ったんだけど、既読にならないんだ」
こんな事付き合ってからは初めてで、どんな時だって連絡をくれてた鷹臣さんの優しさを改めて思い知る。
ただ忙しいならそれでいい。何事もないなら、無事ならそれでいい。
ぎゅっとスマホを握ったら不意に着信画面に代わりビクッとする。でも発信者は鷹臣さんじゃなくて、どうしてか町田さんの名前が出てた。
目を瞬きつつも応答すると、焦ったような町田さんの声が「遥斗さん」と呼ぶ。
『こんばんは。ご連絡が遅くなってしまい、申し訳ございません』
「え? あの⋯どういう意味ですか?」
町田さんと電話をする約束はしてなかったから、困惑しつつも返す僕の横にお店を閉め終わった岡野くんが立つ。
静かな店内にいるからか電話口の向こうが聞こえてくるんだけど、誰かを呼び出す声がところどころでしてる。⋯⋯町田さん、病院にいる?
『遥斗さん、落ち着いて聞いて下さい』
「は、はい」
聞こえてくる環境音に何だか嫌な予感がする。
ぎゅっと服を握り町田さんの言葉を待っていると、信じられない事を言われた。
『社長が病院に運ばれました。お迎えに上がりますので、今いらっしゃる場所を教えて頂いても宜しいでしょうか』
僕も指輪の方がいいかもって思ってたから背中を押された感じだ。
鷹臣さんと同じ物って嬉しいな。
「指輪の受け取り、今日だっけ?」
「うん」
「やっぱり恋人がいるなら、ペアリングには憧れるよね」
「二人もお揃いの指輪着けてるもんね」
「三年目ならいいかなーって」
「良く言うよ。一年過ぎてからずっと欲しいっつってたくせに」
「それはそれ、これはこれ」
二人は中学の時から付き合ってるそうだから、その時からの友達から夫婦って言われてるのを何度も見てる。
大きな喧嘩もした事ないみたいで、本当に仲が良いんだよね。
ついにこにこして見てたら、それに気付いた叶くんが照れ臭そうに僕の頭をチョップしてきた。
「その顔やめろ」
「ごめんね」
全然痛くないし、ムッとした顔が面白くてクスクス笑いながら謝ったら今度は乱暴に撫でられて髪がぐちゃぐちゃになる。すかさず茉莉ちゃんが手櫛で直してくれて、その連携力に二人なら餅つきの息もピッタリかもしれないって思った。
「あ、ありがとう。茉莉ちゃん」
「遥斗くん、猫っ毛だからすぐもつれるね」
「強い風が吹いた日とか凄い事になる」
「細いから無理に梳いたら切れちゃうしねぇ」
冬は静電気で広がるし、乾かさなかったら爆発しちゃうしで本当に大変だ。今は鷹臣さんが丁寧に乾かしてくれるから朝起きてもちょっとした寝癖で収まってるけど、うっかり寝ちゃった次の日は悲惨だったなぁ。
茉莉ちゃんのおかげで綺麗になった髪の毛の先を弄ってたら、叶くんが頬杖をついてスマホを開いた。
「そうだ。茉莉、今年は何が欲しい?」
「誕プレ? えー、どうしようかな」
「そっか、茉莉ちゃんもうすぐ誕生日だ」
「うん。遥斗くんは、またドリンク奢ってね」
「今年も? ちゃんと選んで欲しいのに」
「お祝いしてくれる気持ちだけで嬉しいんだから」
茉莉ちゃんの誕生日は去年知って、何がいいって聞いたらコーヒーショップに連れて行かれて何か難しい名前のドリンクを選ばれたんだよね。他にない? って聞いてもこれが嬉しいって言うばっかりで、今年こそはプレゼントらしいプレゼントをあげようと思ってたのに。
ちなみに僕はこれまで女の子にプレゼントをあげた事がないから、何を選べばいいか分からない。
⋯⋯あれ、そういえば。
「鷹臣さんももうすぐ誕生日だ」
「あ、そうなんだ! 何あげるの?」
「な、何あげたらいいかな?」
大人な鷹臣さんに安易な物はプレゼント出来ないし、果たして僕のセンスで選んでいいのかどうか。その日暮らしをしていた僕にはそんな素敵な感性は備わってないような気がするし。
「仕事で使う物とかは? 基本スーツみたいだし、ネクタイとかタイピンとか」
「ネクタイ⋯無地ならまだ」
「遥斗からなら何でも喜んでくれそうだけどな」
「頭にリボン巻いて、〝僕がプレゼント〟って言う?」
「? 僕がプレゼント? 歌も苦手だし手品も出来ないよ?」
むしろ僕をプレゼントにしたところで鷹臣さんは困るだけなんじゃないかな。それに何の使い道もないし⋯あ、でも、力仕事は無理でもお茶入れたりは出来るかも。
つまりは労働力って事かと一人納得してたら、茉莉ちゃんが僕の頭を撫でながらしんみりと頷いた。
「遥斗くんはそのままでいてね」
「う、うん?」
「お前が変な事教えなきゃ大丈夫だよ」
結局何が言いたかったんだろうと首を傾げると、机に置いていたスマホが震えて鷹臣さんからのメッセージが入った。
『少し用事があるから、迎えに行くまでお店で待ってて』
珍しいと思いつつも『分かりました』と返事をしてスマホを戻した僕は、今日受け取れる指輪が楽しみで仕方なくて、茉莉ちゃんの誕生日プレゼントの話をしている二人に視線を戻してふっと表情を緩めた。
長年付き合ってると、プレゼント選びも大変なんだなぁ。
バイトを終え、言われた通り鷹臣さんを待ってた僕は少しだけ不安になってた。
連絡があったからいつもより遅いのは理解してたけど、それが三十分を過ぎても一時間近く経っても音沙汰さえなくて、カウンターに座ってずっとスマホと睨めっこしてる。
「遥斗さん、店閉めて大丈夫ですか?」
「あ、うん。ごめんね。大丈夫だよ」
「連絡してみました?」
「メッセージは送ったんだけど、既読にならないんだ」
こんな事付き合ってからは初めてで、どんな時だって連絡をくれてた鷹臣さんの優しさを改めて思い知る。
ただ忙しいならそれでいい。何事もないなら、無事ならそれでいい。
ぎゅっとスマホを握ったら不意に着信画面に代わりビクッとする。でも発信者は鷹臣さんじゃなくて、どうしてか町田さんの名前が出てた。
目を瞬きつつも応答すると、焦ったような町田さんの声が「遥斗さん」と呼ぶ。
『こんばんは。ご連絡が遅くなってしまい、申し訳ございません』
「え? あの⋯どういう意味ですか?」
町田さんと電話をする約束はしてなかったから、困惑しつつも返す僕の横にお店を閉め終わった岡野くんが立つ。
静かな店内にいるからか電話口の向こうが聞こえてくるんだけど、誰かを呼び出す声がところどころでしてる。⋯⋯町田さん、病院にいる?
『遥斗さん、落ち着いて聞いて下さい』
「は、はい」
聞こえてくる環境音に何だか嫌な予感がする。
ぎゅっと服を握り町田さんの言葉を待っていると、信じられない事を言われた。
『社長が病院に運ばれました。お迎えに上がりますので、今いらっしゃる場所を教えて頂いても宜しいでしょうか』
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