強気なネコは甘く囚われる

ミヅハ

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二年分の想い※

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 せっかく暁先輩が助言してくれたのに、廉の顔を見たら感情が溢れて笑う事なんか出来なかった。
 無理だよ、笑えねぇよあんなの。
 一頻り抱き合った後に俺を下ろした廉は、俺の首にあるネックレスを外して指輪を抜くと、つけ直してから左手を掬った。二年前からずっとネックレスに通されていた指輪が、薬指に戻される。
「もう二度と外すなよ」
「もちろん」
 大きく頷き再び廉に抱きつくと額に唇が触れた。
「背、伸びたか? …っつか、綺麗になったな」
「3センチだけだけどな。ってか何だ綺麗って」
「そのまんまだろ」
 いや、そのまんまも何も、その形容動詞は男に対してするもんじゃなくて…………まぁいいや、廉に容姿を褒めて貰うのは嫌じゃねぇし。
 それよりも、俺はモヤモヤしてるんだけど?
「なぁ、口にはキス…しねぇの?」
「……あのな、俺はこの二年ずっとお預け状態なんだぞ。今キスしたら止まんなくなる」
「…………」
 そ、それは困る。さすがに学校だし、まだほとんどの人いるし。人気がないとは言え人が来ない保証もないし。
 でも、まるで自分だけが我慢してたみてぇな言い方は納得出来ない。
「お、俺だって、お預け食らってたんだから一緒だろ……お前だけツライみたいな顔、すんな…」
「だからお前は、そうやって無自覚に煽るのをやめろ」
「煽ってねーし」
「お前の存在自体が俺を煽ってんだよ、ちょっとは自覚しろ」
「……へ…」
 な、何を言ってるんだコイツは……存在自体に煽られるとか。
 でも廉の顔は真剣だし、同じ男として言いたい事は分かるから……意識出来る範囲では気を付けよう。
 廉は腰に回していた俺の腕を離すと右手を握り手の甲に口付けた。そのキザっぽい仕草にドキッとする俺も俺だけど、前提として似合ってしまうコイツが悪い。
「このまま帰んのと、ドライブデートすんの、どっちがいい?」
「……覚えててくれたんだ」
「当たり前だろ。お前が言った事は全部覚えてる」
 何気なく言った事だったのにちゃんと覚えて、しかも実行しようとしてくれる気持ちが嬉しい。
 最初から答えの決まってた俺は少しだけ焦らすように考える素振りを見せ、それでも口にする恥ずかしさを感じて繋いだ手を左手で包み視線だけで廉を見上げた。
「……ず、ずっと…寂しかった、から………は、早く、イチャイチャ…したい、です……」
「……………」
 顔が熱くなるのを感じながらもどうにか言い切ると、廉がピクリと眉を動かして長くてでっかい溜め息をついた。
 え、何でそんな反応すんだよ。
「今日は帰さねぇから、覚悟しとけよ」
 前髪を掻き上げながらそう言ってニヤリと笑った廉は、それはもう凶悪な色気を纏っていて、俺は判断を間違えたのかもしれないと内心後悔した。




 二年ぶりに来る廉の部屋は何も変わってなくて、俺の物がなくなった分また無機質さを感じるようになってた。
 玄関に入った瞬間痛いくらいに抱き竦められ唇が塞がれる。口の中全部持っていかれそうなくらい舌で舐め回され、吸われ、俺の腰は見事に抜けてしまった。
「っ…は、ぁ……バ、カ……がっつきすぎ…」
「二年ぶりなんだ、仕方ねぇだろ」
 気持ちは分かるけど、初っ端からコレは二年ブランクのある俺としては後が怖いんですが。
 廉はヘロヘロの俺を抱き上げ寝室に向かうと、ブラインドを閉じほんのり明るいレベルの照明をつけ一緒にベッドに乗り上げた。
 背中が柔らかなマットレスに沈み覆い被さった廉が俺を見下ろす。
「……やっとだ。やっと、お前を傍に置ける。この二年、気が狂いそうなくらいお前が欲しくて堪らなかった。何でこんなに好きなのに会えねぇんだって……何度会いに行こうとしたか……」
「廉……」
「……なぁ、頑張った俺を褒めてくれよ。いっその事全部捨てて、何を言われようとお前を攫って遠くに行って、どこにも行かねぇように閉じ込めようとしてた気持ちを必死に押し殺した俺を………真尋…」
 お金持ちのお坊ちゃんで、イケメンで、何でも出来て、俺様で、意地悪で、俺もだけど口悪くて。──でも優しくて、いつだって俺の事考えくれて、甘やかしてくれて、俺の事が好きで好きで堪らない人。
 俺が世界で一番好きな人。
 手を伸ばして頬に触れると泣きそうな顔をしてその手を掴むから、俺まで泣きそうになる。
「……ありがとな、廉。全部耐えてくれて…そうしないでいてくれてありがとう」
 きっとそんな事をしていたら、あっという間に見付かって連れ帰られて、そして二度と会えなくなってただろう。それが分かってるから実行しないでくれたんだよな。
「これからはずっと一緒だからな」
「真尋……っ」
 俺よりデカイくせに、俺を抱き締めながら震える廉が物凄く愛しい。
 二年前より伸びた髪をしばらく撫でていると、廉の手が制服の下から脇腹を擽るようにして上がってきた。
「ぁ……」
「ホント、お前はすげぇな……」
「んっ、何が…」
「全部」
「あ、ん…ッ」
 大きな手の平が俺の胸元を這い、節榑た指が乳首を軽く押し潰す。二年ぶりとは言え身体は覚えてるらしくて、俺は素直に気持ち良さを感じられてる。
「この制服も今日で終わりだし、多少汚しても大丈夫だよな?」
「……何する気だ」
「着たまますんの初めてだし、興奮するだろ」
「お前はマジで変態だな」
「そこが好きなくせに」
「……っ…ち、違う!」
 カァッと顔が赤くなるのを感じて口元を拳で隠して横を向く。コイツはホントに変わらねぇな。
 大体、俺は別にそこ〝が〟好きな訳じゃねぇし。
「……そこ〝も〟好きなんだよ……間違えんな、バーカ」
「…………」
「……ひぇっ! な、何…」
 小声で吐き捨てるようにそう言えば廉は黙ったけど、代わりに硬くなったものをズボン越しで俺の中心に擦り付けられて上擦った声が出た。
「お前、誰にそんな煽り方教わったんだよ」
「は、はぁ? だから煽ってねぇって」
「それも無自覚かよ……っクソ」
「わ、ちょ、待っ……」
 ガチャガチャとベルトが外され下着ごとズボンが脱がされる。
 玄関のキスでは勃ってたんだけど、話してるうちに少し萎えて今は半勃ち状態のそれを、身体を下にずらした廉が躊躇いもなく咥えた。
「うわ、ちょ、廉、き、汚い…っ、まだ風呂入ってもないのに……!」
 される時はいつもお風呂は済ませてたからいいけど、卒業式終わってからそのままで汗だって掻いてる。でも廉は聞いてくれなくて、熱い粘膜に包まれて吸われると俺だって反応もしてしまう訳で。
「や、あ…っ、あっ……ダメって…!」
 汚いって思う気持ちと、気持ち良いって思う気持ちとで頭の中ぐちゃぐちゃだ。
 廉は一度口を離すと、自分の中指を唾液で濡らしまた咥える。その指が奥の窄まりに触れゆっくりと入って来た。
「んん…っ」
「やっぱ久しぶりだからキツいな。痛くねぇ?」
「だいじょ、ぶ…っ」
 一瞬うってなったけど、二年前だって何回も廉を受け入れてたんだ。少しくらい苦しくても異物感があっても平気だ。
 何度か慣らすように動かした後、もう一本指が入ってくる。
「…っ、んぁ、あ、…廉、も、離し…っ」
「飲んでやるから、イけよ」
「だからっ、飲んで欲しくないんだって……ッひぁ!」
 前から思ってたけど、何でわざわざ飲む必要があるんだ。そう思って廉の頭を引き剥がそうと両手で押したら、トドメと言わんばかりに二本の指で前立腺を押された。途端に走る痺れに身体から力が抜ける。
「やぁ、あ、そこや、あぁっ、だめ、も、イっ………ッんん!」
 前と後ろ、気持ち良いところを全部刺激された俺は抵抗も虚しく廉の口内へと出してしまった。咥えたままだから、喉が嚥下してるのが分かる。
「…っ、また、飲みやがって…」
「お前のだから飲みたくなるんだよ」
「…ンなわけ、あるか……ぅあっ、ちょ、ンッ」
「なぁ、真尋」
「ん、ゃ…なに…っ」
 指を抜き差ししながら話し掛けるな。
 廉は三本目の指を入り口に当てながら片手をベッドについて俺を見下ろし、イケメンぷりを遺憾なく発揮した笑顔で言い放った。
「二年分、たっぷり可愛がってやるよ」
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