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香月家当主
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目が覚めたらいないと思っていた廉がいて、おまけに俺を力いっぱい抱き締めてたから驚いた。廉と寝る時は、朝襲われても仕方ないとは思ってただけにこのパターンは初めてだったから固まってしまった。でも。
「…………デカいの当たってんだけど…」
「生理現象だ」
いや、分かるけども、それを擦り付けるのは辞めて頂きたい。
廉は落ち着いたら行くとの事で、俺は先にベッドから降りてリビングに向かった。置きっぱなしのリュックから服を出して着替え、洗面所に行き朝の支度を済ませる。首筋のキスマークは少し薄くなったけど、意識しなくても見えるくらいにはまだ濃い。
跳ねていた髪を濡らして撫で付けた後俺はキッチンに移動した。
勝手知ったるで冷蔵庫を開け朝食をどうするかを考えていると、後ろから抱き締められ声を上げる。
「び、びっくりした……」
「悪い。……なぁ、出前取らねぇ?」
「すぐ作れるぞ?」
「ちょっと話あるから」
「?」
話ってなんだ?
俺は冷蔵庫を閉め、背中に引っ付いたままの廉を連れてリビングに行く。ソファの前まで来ると一度離れた廉が先に座り自分の膝を叩いたため、大人しく腰を下ろせば腹の前に手が回された。
俺の前でスマホを操作しデリバリーアプリを起動する。
「何食いたい?」
「うーん…軽めのがいいかなぁ。……あ、これがいい。パンケーキ」
「ん」
「廉もパンケーキ食うの?」
「食う」
慣れた手付きでトッピングやらなんやらを選んでカートに入れた廉は、そのまま決済を済ませた。良く頼むんだろうか?
注文を完了させた廉はスマホをソファに放って溜め息をつくと、俺の背中に額を押し当てぐりぐりする。
話の切り出し方を考えているのか、低く唸ったりして俺の腹の前で組んだ手を意味もなく動かしてた。
「…何? 話あるんだろ? スパッと言っちまえよ」
「………………親父に呼ばれた」
「ん? うん…前も呼び出されたって言ってたな」
「……俺だけじゃねぇ…お前もだ」
「…………はい!?」
廉がたまに実家に行ったり呼ばれたりしてるのは知ってる。家族団欒を過ごしたり、お父さんと難しい話をしたりするらしい。
だけど今回は俺も一緒にって話らしいけど、何で?
「も、もしかして、息子は渡さん! 的なアレ?」
「厳密に言えば違うが……ニュアンス的にはまぁ似たようなもんだ」
「ええ!? 俺、スーツ持ってないよ?」
「なんでそんな畏まるんだよ。普段通りでいいって」
普段通りって、相手は大企業のトップにいる人だぞ? 俺みたいな一般人がおいそれと会える人じゃないってのに…しかもプラス恋人の親。廉は俺の複雑な心境を分かっていない。
「いつも通りのお前でいい」
「いつも通りねぇ……」
遠慮のない俺だけど、それなりに緊張はするんだ。ましてや廉の親だぞ。変な印象持たれたらそれこそ最悪だ。
俺は一度廉の腕を解き向かい合わせになると、どこか元気のない顔を両手で軽く叩く。
「…いて…」
「んで? いつ行くんだよ」
「近いうちに……来週の日曜日とかどうだ?」
「分かった、覚悟決めとく」
「何の覚悟だよ」
「別れろって言われても、嫌だって言い続ける覚悟」
むしろ言われる確率の方が高いんだし、怖い人だったとしても自分の意思をしっかり持って対面しなきゃな。
僅かに目を見開いた廉は、力が抜けたような笑顔を浮かべて再び俺を抱き締めた。
来て欲しくない日はあっという間に訪れるもので、俺は今、大きなお屋敷のデッケー扉の前に立ってる。ただの扉なのに威圧感ぱねぇ。
「真尋、大丈夫か?」
「だ、大丈夫。一瞬覚悟が揺らぎそうになったけど、俺は負けねぇ」
「いつもより覇気がないけどな」
うるせぇ、仕方ねぇだろ。こんなデカイ家来たの初めてなんだ。
最初に車でくぐったのが門だったからこれはたぶん玄関なんだろうけど…見るからにお金持ちっぽい扉だ。開いた瞬間に初老の執事みたいな人が頭を下げて「お帰りなさいませ、廉様」なんて言ってる。
目を瞬いて見ていると、今度は俺に優しく微笑んで「ようこそ起こし下さいました、綾瀬様」と廉みたいに頭を下げられた。
「え、あの、えっと……お、お邪魔します…」
あまりにも世界が違うから、軽く会釈した俺はそれだけしか言えず廉の腕を掴む。天井にはオシャレな照明器具、壁には高そうな絵画、小さな棚には良く分からない壺が置かれていて、俺は絶対下手な事はしないでおこうと誓った。
「親父は?」
「旦那様は執務室におられます」
「…チッ、客連れてんだから応接室にいろよ」
小声で文句を言う廉はそれに苦笑する俺の手を引き、父親がいるという執務室に向かう。ちょっとでも調度品に触れたら大変な事になりそうだと必要以上に廉にくっついてたら笑われた。
「歩きにくいだろ」
「だ、だってアレとかアレとか、すげぇ高そうじゃん。壊したらって考えたら距離空けてないと不安」
「別に壊しても弁償しろなんて言わねぇよ」
「お前のじゃねぇだろ」
安心させる為に言ってくれたんだろうが、家主は父親であって廉じゃない。壊して請求されたら人生詰む。
玄関から少し歩くと、突き当たりにこれまた豪奢な扉が現れた。廉が足を止めてノックする。ここが執務室か。
入室を促す声がし、廉が「失礼します」と言ってノブを回した。
「連れて来ましたよ」
「ああ」
「あ、あの、初めまして。綾瀬真尋と申します。今日は、その…お招き頂きましてありがとう…ございます」
言葉が尻窄みになるのは、廉によく似た男の人─廉の親父さんに物凄く見られているからだ。まんま廉が年取ったみたいな…つまりはイケおじです、眼福です、ありがとうございます。
「思ったよりも、幼く見えるのだが…」
「小さいからでは?」
「ああ…」
「…………」
いやそこ、納得するところじゃないからな!?
何だよ小さいからって! そりゃアンタたちよりは小さいけどさ!
「そこに座りなさい」
内心憤激していると、親父さんからソファを勧められる。俺と廉は並んで座り、向かいに親父さんが腰掛けた。
見計らってたのか、メイドさんがワゴンに紅茶を載せて運んで来る。ほ、本物のメイドさんだ! あの細マッチョ共のなんちゃってメイドじゃない本物の!
俺がそんな風に内心で興奮している間に、テーブルに置かれた高そうな茶器に紅茶が注がれ、クッキーやケーキやマカロンが俺の前に並べられる。えっと…二人のところに置かれないって事は、俺が食べていいって事なんだろうけど…うん?
「もてなされてるな」
「う、うん…」
好かれていないと思っていたから、こんなに色々美味しそうな物が出されて困惑してる。親父さんは一つ息を吐いて背凭れに体重を預けた。
「私は別に、お前たちの交際を否定している訳ではない。それを前提として話を進める」
「………」
「廉、お前が香月の人間である以上、そう簡単に済む話ではない事は分かっているな?」
「はい」
「私はずっと、お前を後継者として指名して来た。多少周りからの反感はあっても私の息子なのだからと黙らせた。それなのにお前は、香月の名を捨てようとしている……その子の為に」
「…え…」
俺は思わず隣にいる廉を見上げた。その横顔は真っ直ぐ親父さんを見ていて、その真剣さから本気が伺える。
香月を、捨てる?
「私には兄弟がいる、その者たちにも息子や娘がいる。だが、私の息子はお前だけなのだぞ」
「それでも俺は、真尋の傍にいたんです。香月の名前がその邪魔をするなら、俺はいらない」
「ちょ、廉…っ」
なんでそんなに簡単言えるんだ? だって香月を捨てるって事は、家族も捨てるって事だぞ?
そんなの駄目だ、絶対そんな事させたくない。
「香月を捨ててお前に何が残る。その身一つでどうにかなるほど、世の中は甘くはないんだぞ」
「俺には真尋がいればいい。真尋の傍にいられるなら全てを捨てたっていい……血反吐を吐いてでも生きてやる。真尋がいるなら…」
「馬鹿野郎!」
『!!』
廉の言葉を遮るように大声を上げた俺に、廉だけじゃなく親父さんも驚く。だけどそれを気にする余裕もない俺は廉の胸倉に掴みかかった。
「そんな事して俺が喜ぶと思ってんのか!? 俺といる為に家族捨てるって言う奴と、一緒にいると思ってんのか! ふざけんな! そんな…そんな事すんなら別れるからな! 俺のせいでお前が捨てる選択しか出来ないなら、傍にはいられない…っ」
「真尋…」
「俺の事好きなら、俺といたいなら親父さん納得させてやるくらいの根性見せろよ! いつもの俺様っぷりを発揮しろよ! …っ、それなら俺も頑張るからさ……そんな簡単に、捨てるなんて言うな…っ」
〝俺のために〟って言葉はすごく嬉しい。でもこれは違う、絶対に選んじゃダメな道だ。
家族って血で繋がってるんだぞ。他人の俺とは違って、身体の中に流れて生きていく上で必要な物で繋がってるんだ。
この短時間で分かった、親父さんは決して悪い人じゃない。頭ごなしに否定しなかった、俺を見る目だって少し厳しいけど怖くなかったし。甘い物もこんなに用意してくれた。
よっぽど酷い親ならともかく、親父さんなら俺たちの本気を見せていけば、いつか分かってくれるんじゃないかって思うんだ。
最後の方は涙声になって掴む力も抜けたけど、廉はされるがままでよれた服を直そうともしない。
俺が鼻を啜る音が静かな部屋に響く。しばらくして、親父さんが大きく息を吐いた。
「……廉。その子といたいのなら、私が言う条件を飲みなさい」
「…………デカいの当たってんだけど…」
「生理現象だ」
いや、分かるけども、それを擦り付けるのは辞めて頂きたい。
廉は落ち着いたら行くとの事で、俺は先にベッドから降りてリビングに向かった。置きっぱなしのリュックから服を出して着替え、洗面所に行き朝の支度を済ませる。首筋のキスマークは少し薄くなったけど、意識しなくても見えるくらいにはまだ濃い。
跳ねていた髪を濡らして撫で付けた後俺はキッチンに移動した。
勝手知ったるで冷蔵庫を開け朝食をどうするかを考えていると、後ろから抱き締められ声を上げる。
「び、びっくりした……」
「悪い。……なぁ、出前取らねぇ?」
「すぐ作れるぞ?」
「ちょっと話あるから」
「?」
話ってなんだ?
俺は冷蔵庫を閉め、背中に引っ付いたままの廉を連れてリビングに行く。ソファの前まで来ると一度離れた廉が先に座り自分の膝を叩いたため、大人しく腰を下ろせば腹の前に手が回された。
俺の前でスマホを操作しデリバリーアプリを起動する。
「何食いたい?」
「うーん…軽めのがいいかなぁ。……あ、これがいい。パンケーキ」
「ん」
「廉もパンケーキ食うの?」
「食う」
慣れた手付きでトッピングやらなんやらを選んでカートに入れた廉は、そのまま決済を済ませた。良く頼むんだろうか?
注文を完了させた廉はスマホをソファに放って溜め息をつくと、俺の背中に額を押し当てぐりぐりする。
話の切り出し方を考えているのか、低く唸ったりして俺の腹の前で組んだ手を意味もなく動かしてた。
「…何? 話あるんだろ? スパッと言っちまえよ」
「………………親父に呼ばれた」
「ん? うん…前も呼び出されたって言ってたな」
「……俺だけじゃねぇ…お前もだ」
「…………はい!?」
廉がたまに実家に行ったり呼ばれたりしてるのは知ってる。家族団欒を過ごしたり、お父さんと難しい話をしたりするらしい。
だけど今回は俺も一緒にって話らしいけど、何で?
「も、もしかして、息子は渡さん! 的なアレ?」
「厳密に言えば違うが……ニュアンス的にはまぁ似たようなもんだ」
「ええ!? 俺、スーツ持ってないよ?」
「なんでそんな畏まるんだよ。普段通りでいいって」
普段通りって、相手は大企業のトップにいる人だぞ? 俺みたいな一般人がおいそれと会える人じゃないってのに…しかもプラス恋人の親。廉は俺の複雑な心境を分かっていない。
「いつも通りのお前でいい」
「いつも通りねぇ……」
遠慮のない俺だけど、それなりに緊張はするんだ。ましてや廉の親だぞ。変な印象持たれたらそれこそ最悪だ。
俺は一度廉の腕を解き向かい合わせになると、どこか元気のない顔を両手で軽く叩く。
「…いて…」
「んで? いつ行くんだよ」
「近いうちに……来週の日曜日とかどうだ?」
「分かった、覚悟決めとく」
「何の覚悟だよ」
「別れろって言われても、嫌だって言い続ける覚悟」
むしろ言われる確率の方が高いんだし、怖い人だったとしても自分の意思をしっかり持って対面しなきゃな。
僅かに目を見開いた廉は、力が抜けたような笑顔を浮かべて再び俺を抱き締めた。
来て欲しくない日はあっという間に訪れるもので、俺は今、大きなお屋敷のデッケー扉の前に立ってる。ただの扉なのに威圧感ぱねぇ。
「真尋、大丈夫か?」
「だ、大丈夫。一瞬覚悟が揺らぎそうになったけど、俺は負けねぇ」
「いつもより覇気がないけどな」
うるせぇ、仕方ねぇだろ。こんなデカイ家来たの初めてなんだ。
最初に車でくぐったのが門だったからこれはたぶん玄関なんだろうけど…見るからにお金持ちっぽい扉だ。開いた瞬間に初老の執事みたいな人が頭を下げて「お帰りなさいませ、廉様」なんて言ってる。
目を瞬いて見ていると、今度は俺に優しく微笑んで「ようこそ起こし下さいました、綾瀬様」と廉みたいに頭を下げられた。
「え、あの、えっと……お、お邪魔します…」
あまりにも世界が違うから、軽く会釈した俺はそれだけしか言えず廉の腕を掴む。天井にはオシャレな照明器具、壁には高そうな絵画、小さな棚には良く分からない壺が置かれていて、俺は絶対下手な事はしないでおこうと誓った。
「親父は?」
「旦那様は執務室におられます」
「…チッ、客連れてんだから応接室にいろよ」
小声で文句を言う廉はそれに苦笑する俺の手を引き、父親がいるという執務室に向かう。ちょっとでも調度品に触れたら大変な事になりそうだと必要以上に廉にくっついてたら笑われた。
「歩きにくいだろ」
「だ、だってアレとかアレとか、すげぇ高そうじゃん。壊したらって考えたら距離空けてないと不安」
「別に壊しても弁償しろなんて言わねぇよ」
「お前のじゃねぇだろ」
安心させる為に言ってくれたんだろうが、家主は父親であって廉じゃない。壊して請求されたら人生詰む。
玄関から少し歩くと、突き当たりにこれまた豪奢な扉が現れた。廉が足を止めてノックする。ここが執務室か。
入室を促す声がし、廉が「失礼します」と言ってノブを回した。
「連れて来ましたよ」
「ああ」
「あ、あの、初めまして。綾瀬真尋と申します。今日は、その…お招き頂きましてありがとう…ございます」
言葉が尻窄みになるのは、廉によく似た男の人─廉の親父さんに物凄く見られているからだ。まんま廉が年取ったみたいな…つまりはイケおじです、眼福です、ありがとうございます。
「思ったよりも、幼く見えるのだが…」
「小さいからでは?」
「ああ…」
「…………」
いやそこ、納得するところじゃないからな!?
何だよ小さいからって! そりゃアンタたちよりは小さいけどさ!
「そこに座りなさい」
内心憤激していると、親父さんからソファを勧められる。俺と廉は並んで座り、向かいに親父さんが腰掛けた。
見計らってたのか、メイドさんがワゴンに紅茶を載せて運んで来る。ほ、本物のメイドさんだ! あの細マッチョ共のなんちゃってメイドじゃない本物の!
俺がそんな風に内心で興奮している間に、テーブルに置かれた高そうな茶器に紅茶が注がれ、クッキーやケーキやマカロンが俺の前に並べられる。えっと…二人のところに置かれないって事は、俺が食べていいって事なんだろうけど…うん?
「もてなされてるな」
「う、うん…」
好かれていないと思っていたから、こんなに色々美味しそうな物が出されて困惑してる。親父さんは一つ息を吐いて背凭れに体重を預けた。
「私は別に、お前たちの交際を否定している訳ではない。それを前提として話を進める」
「………」
「廉、お前が香月の人間である以上、そう簡単に済む話ではない事は分かっているな?」
「はい」
「私はずっと、お前を後継者として指名して来た。多少周りからの反感はあっても私の息子なのだからと黙らせた。それなのにお前は、香月の名を捨てようとしている……その子の為に」
「…え…」
俺は思わず隣にいる廉を見上げた。その横顔は真っ直ぐ親父さんを見ていて、その真剣さから本気が伺える。
香月を、捨てる?
「私には兄弟がいる、その者たちにも息子や娘がいる。だが、私の息子はお前だけなのだぞ」
「それでも俺は、真尋の傍にいたんです。香月の名前がその邪魔をするなら、俺はいらない」
「ちょ、廉…っ」
なんでそんなに簡単言えるんだ? だって香月を捨てるって事は、家族も捨てるって事だぞ?
そんなの駄目だ、絶対そんな事させたくない。
「香月を捨ててお前に何が残る。その身一つでどうにかなるほど、世の中は甘くはないんだぞ」
「俺には真尋がいればいい。真尋の傍にいられるなら全てを捨てたっていい……血反吐を吐いてでも生きてやる。真尋がいるなら…」
「馬鹿野郎!」
『!!』
廉の言葉を遮るように大声を上げた俺に、廉だけじゃなく親父さんも驚く。だけどそれを気にする余裕もない俺は廉の胸倉に掴みかかった。
「そんな事して俺が喜ぶと思ってんのか!? 俺といる為に家族捨てるって言う奴と、一緒にいると思ってんのか! ふざけんな! そんな…そんな事すんなら別れるからな! 俺のせいでお前が捨てる選択しか出来ないなら、傍にはいられない…っ」
「真尋…」
「俺の事好きなら、俺といたいなら親父さん納得させてやるくらいの根性見せろよ! いつもの俺様っぷりを発揮しろよ! …っ、それなら俺も頑張るからさ……そんな簡単に、捨てるなんて言うな…っ」
〝俺のために〟って言葉はすごく嬉しい。でもこれは違う、絶対に選んじゃダメな道だ。
家族って血で繋がってるんだぞ。他人の俺とは違って、身体の中に流れて生きていく上で必要な物で繋がってるんだ。
この短時間で分かった、親父さんは決して悪い人じゃない。頭ごなしに否定しなかった、俺を見る目だって少し厳しいけど怖くなかったし。甘い物もこんなに用意してくれた。
よっぽど酷い親ならともかく、親父さんなら俺たちの本気を見せていけば、いつか分かってくれるんじゃないかって思うんだ。
最後の方は涙声になって掴む力も抜けたけど、廉はされるがままでよれた服を直そうともしない。
俺が鼻を啜る音が静かな部屋に響く。しばらくして、親父さんが大きく息を吐いた。
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