強気なネコは甘く囚われる

ミヅハ

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腕の中の最愛(廉視点)※

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 真尋といると俺が俺でいられなくなる事が良くある。
 ムスッとした顔も、真剣な顔も、泣いた顔も、笑った顔も、全部が俺の心を捕らえて離さない。
 あれだけ口が悪いのに、興味が引かれると途端に無邪気な口調になるのが堪らなく可愛くて、無性に甘やかしたくなる。
(何だよ、ライブ会場みたいって)
 今時の感性とも言うべきか、街の灯りをそんな風に例える奴は初めてだ。
 本当に、何もかもが新鮮で面白い。
 俺の料理を美味い美味いと食べる姿にも、ちゃんといただきますとごちそうさまが言えるところにも、真尋本来の素直さが出ていると思う。
 どうしようもなく愛しい俺の恋人。
 風呂上がりにシャツを忘れたとかで、とりあえず目に付いたものを渡してはみたが…想像以上にオーバーサイズで襟元は緩いし素足だし、一瞬履いてないのかと思ってしまった。
 短パン履いてるって見せてくれようとした時も驚いたが、恥ずかしがる割にそういう所は大胆なんだよな。
 っつーか……コイツ脚も綺麗なのかよ。男のくせにどこもかしこも細すぎるだろ。
 危うく下肢が反応しそうになり慌てて風呂へ入り気持ちを落ち着けて出てみれば、真尋はソファの上でクッションを抱えて眠りこけていた。
 初めて見る寝顔は思った以上に幼くて、背中を丸めて眠る姿に少しだけ悪戯心が沸いた俺は真尋を抱き上げてソファに片足を上げて座る。腕に頭を乗せて落ちないように肩を抱き、額へ口付けた。
 目が覚めたら怒るだろうか、真っ赤になって逃げるかもしれないな。
「早く起きろよ」
 真尋がただそこにいるだけで、俺の傍にいるだけで心身共に落ち着く。不思議だよな、本当の恋人になってまだ一週間も経っていないのに。昔からそこにいたかのように心が休まる。
 クッションを握る手を取り見つめるが、おかしな事に以前ほど惹かれる感覚がなかった。それは恐らく、“真尋の手”だからだろう。
 真尋の全てが愛しいと思うようになってから、真尋の手には執着しなくなった。そりゃ綺麗な手だし好みのままではあるが、もうそれだけだ。
 真尋が欲しい。手よりも、何よりも、真尋の全てが欲しいんだ。
「……ん…」
 腕の中でもぞっと真尋が動いた。うっすらと目が開き、ぼんやりした様子で俺の顔を見る。
「……廉…?」
「おはよう」
「おは、よ…?」
 ん? まだ目が眠そうだが……寝起きが悪いタイプか?
 何故か強い力で目を擦る手を止めさせると不思議そうな顔で見てくる。
「真尋?」
「んー……」
 細い腕が俺の首に周り抱き着かれる。柔らかな頬が首筋に擦り寄り、突然の甘えモードに俺は困惑した。
 いつもは躊躇いなく抱き締め返す腕もこの時ばかりは浮かせたまま静止し、どうすればいいか迷ってしまう。
「廉の匂い、好き 」
「………」
 待て待て、これは駄目だ。いつもの生意気さがなりを潜めて素直な言葉が聞けるのは嬉しいが、普段との差が大き過ぎてこっちの心臓が持たない。
 まだ眠いのかたまに船を漕いではいるが、微睡んでいる真尋はこうなるのか。可愛すぎる。
「真尋」
「ん…なに…」
「好きだよ」
「……俺も好き」
 あークソ。これ、もういいか? 手出してもいいよな?
 俺は目を閉じたままの真尋の顎に手をかけて上向かせ唇を重ねる。上唇を食み下唇を舐めると薄く隙間が開いた。いつもよりもすんなりと侵入を許してくれた事に寝惚け様様だなと思いながら口内を貪る。
「ん、ふ……」
 何度も舌を絡め合い上顎を強めに押すと真尋の身体がビクッと跳ねた。
 首に回っていた手は残念ながら下ろされてしまったが、今は代わりにしっかりと俺の服を握って震えている。
 角度を変えて口付けながら服の下から手を入れ肌を撫でるとそのまま押さえられた。
「ま、待っ、た…タンマ…っ」
「ん?」
「な、に…? 何でこうなって…」
 ああ、完全に目が覚めたんだな。
 だけどもう今更止める事は出来ない俺は、真っ赤に染まった頬に口付け手の動きを再開した。
「ぇ、ちょ、ンッ」
 真尋としては半分寝ていた状態からのこれだから戸惑いもあるのだろうが、残念ながらそれを考慮してやる余裕は俺にはない。
 体格差を利用してさらにストップをかけようとする真尋の手を空いている手で掴み耳を噛むとすぐに力が抜けた。そのまま舐め上げ耳の穴に舌先を入れる。
「ひゃっ、ぁ、やだ、耳の中、すんなぁ…っ」
 人間性感帯はいくつもあるものだが、耳が弱いって言うのはそれはそれは大変だろうな。耳なんて特に目立つじゃねぇか。
「真尋」
「んんっ」
「耳、誰にも触らせるなよ」
「だ、れも、触んね…よ…っ…こんなとこ…っ」
「それでも、な?」
「っ、分かった、から、も、耳やめて…」
 過敏になりすぎてキツイのかいやいやと頭を振る仕草に笑い、腹を撫でていた手を上へと滑らせる。胸元の小さな尖りはすでにぷっくりと膨らんでいてあっさりと探し当てる事が出来た。
「あ…そこは……」
「嫌だったら言えよ」
 親指で優しく撫でくるくると回す。痛みのないように、押し潰したり摘んだりすると、真尋の声に艶が含まれてきた。
 良かった、ちゃんと気持ち良くなれてる。
「…っ、ん、ん…」
 唇を噛んで声を抑えようとする真尋の手がもう抵抗の意志を持っていないと分かり離すと、その手が躊躇いがちに俺の腕に触れ撫でた。
 普段は恥ずかしがり屋で意地っ張りで、こんな雰囲気になればすぐに逃げようとするくせに、今は俺のために頑張ってくれている。
「………触ってもいいか?」
「…?」
「ここ」
「…っ、あ……」
 前は触れた途端に逃げられたため、今度は慎重に明確に触る意志を伝える。柔らかな素材の短パンが押し上げられ、傍目にも反応している事が分かるそこは、真尋にとっては触られるのも見せるのも勇気がいる場所だろう。
 小動物のように小刻みに震える真尋の答えを待っていると、小さく、本当に小さく頷かれた。……可愛過ぎて頭がおかしくなりそうだ。
 これ以上ないほど赤くなった真尋の唇を塞ぎ短パンの上から撫で上げる。
「んん…っ」
 恐らくは反射的にだろうが真尋の手が俺の胸を押す。だがすぐに服を掴んだためキスをしたまま慣らすように数回上下させた後下着の中に手を入れると、流石に耐えられないのかリップ音を立てて唇が離れ両手で顔を覆ってしまった。
「待って、お願……少しだけ…」
「…いいよ。いくらでも待つ」
 全部俺が初めてだと言っていた。気持ちが通じ合った事も、恋人が出来た事も、キスも、ハグも、それ以上も全部。
 だから大事にしてやりたい、たくさんの幸せを与えてやりたい。
「廉……俺、変じゃない? こんな、恥ずかしいのって、普通?」
「変じゃねぇよ。恥ずかしくて当たり前だろ」
「…ん……」
 顔から両手を離した真尋は、まだ緊張でガチガチな身体を奮い立たせるように浅く深呼吸した後、俺の首に腕を回して顔を埋めてきた。
 恐らくこれが、真尋なりの精一杯のいいよの合図なんだろう。
 こめかみに口付け、先走りを零す中心を握り込む。ゆっくりと上下させれば熱い吐息が首筋にかかり、真尋の腕に力が入った。
「…っ、ん、ぁ…」
 動かしている内に真尋の声に甘さが滲み、俺は少しだけ手の動きを早める。ピクピクと震える陰茎を射精を促すように動かせば嬌声が細切れになり始めた。
「ぁ、あ、やだ、ダメっ、出るっ、出るから…っ」
「大丈夫だ、そのままイけ」
「やぁ、あ、あっ、ひ……っぁ、んんん…!」
 大きく身体を震わせた真尋は俺の手の中で無事射精してくれた。余韻でビクビクする小さな頭を撫でこの先をどうしようか考える。
 本音を言えば真尋の中に入りたい。だが受け入れる側が辛い事が分かっている俺としては無理にとは言えない。
「真尋……」
「…っ…いいよ…。…ちゃんと、分かってるから…最後まで…」
「…本当にいいのか?」
「こっちは覚悟決めてんだ。……廉が俺でいいなら、だけど」
「お前がいいに決まってんだろ」
 まったく、いつになったら俺に愛されてるって自信がつくんだよ。
 俺はとりあえず精液塗れの手を拭いてから真尋にレモネードを飲ませ、抱いたまま立ち上がる。
 このままソファで抱く訳にはいかないからな。
 俺は空のグラスもそのままにリビングを出ると、不安そうな真尋にキスをしながら寝室へと向かった。
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