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第零章

第捌話 届け!この訴え!

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ー国崎が直訴する数日前ー

安達泰盛は苛立っていた。
廊下を歩きながらぶつくさと呟いている。
先の異国との戦で多くの問題を解決しなければならなかった。
特筆する問題はあった。
御家人である。
自分の土地だけ守ると言い先の戦に出なかった御家人が多くいた。
この問題は次の戦に出なければ厳罰に処すとお触れを出せば済む話だ。
これで御家人たちは従わざるを得ないだろう。
一番の問題は褒美である。
褒美の土地を与えようにも土地がない。
何かと言い訳つけて土地ではなく、違う褒美を与えているがやはり御家人たちは黙ってはいない。
功を挙げたのだから土地を寄越せという訴状が毎日届く。
しまいには、わざわざ鎌倉まで出向いて訴えてくる御家人が出てくる始末でした。
そんな毎日に苛立っているのだ。

「いつになったら終わるんだ?他にもやることは沢山あるのだ!
異国との備えの件で執権殿と話し合わなければならぬのに!あっーーー!」

泰盛は地団駄を踏みながら慟哭する。
そんな姿の見ていた下人が後ろから恐る恐る声をかける。

「あの~、泰盛さま、、」

「なんだ!」

苛立つ泰盛に萎縮する下人だが話を続ける。

「ご興奮のところ申し訳ないのですが肥後の方から直訴が、、、」

「またか!書き下しに書いてある通りだと言って追い返せ!」

下人は困った顔をする。

「しかし、会わなければその場で首を召し取れと一点張りでなかなか聞いてくれそうにありません。会ってもらえませんかね?」

「ぬっん~~~っ!・・・・・・はぁ、わかった。
その者と会う。用意致せ。」

はいと返事をすると下人は準備に取り掛かる。
泰盛は空を眺めながら溜息をつく。

ー鎌倉御所 とある一室ー

安達泰盛が部屋に入るとその者は待っていた。
泰盛が入るなり向きをこちらに向け首を垂れる。
身なりは少し薄汚れた直垂でへしゃげた烏帽子をかぶっている。
この身なりを見て褒美の土地を目当てに来たのだと思い、ふんと鼻を鳴らし、用意されたご座に座る。

「面を上げられよ。」

頭を下げて続けている武者に声をかける。
頭を上げた武者は名乗りを上げる。

「肥後住人、竹崎季長と申す。お聞き入れたい議があり、鎌倉まで馳せ参じました!」

こうして泰盛の押し問答が始まった。

       続
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