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第一章

03 出発準備

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 お店のみんなには「海外旅行へ行く」とだけ伝えておいたけれど、一応偽装のために本当に海外へ行くことにした。
 現地のお土産と、せめて写真の一枚でもないと、あれこれ詮索されたら困っちゃうものね。

「どうせ行くなら久々に台湾行きたいわ! 初日に行って最終日に戻って、少し観光してから帰っ……あぁん深夜の成田着はパスパス~」

 あぁでもないこうでもないと、あれこれ検索しながらふと気付く。
 そもそも海外からでも神域へ行き来ってできるのかしら?

 聞いた方が早いかと、すぐにショタ神様と少しやり取りをして、地球上のどこからでも問題ないと太鼓判をいただいた。
 ただひとつ条件として、来る時は鍛冶神様のライターを使わないようにと言われたの。代わりにショタ神様が直接神域へ呼んでくれるんですって。
 やっぱりこのライターだと何か制限があるのかしらね?
 よくわからないけど、まぁいいわ。連休初日の早朝羽田発便と、最終日深夜羽田着の便を予約完了っと。

「直前なのに取れるもんなのね。オフシーズンの平日でよかったわぁ~」

 ホテルは必要ないし、航空券だけでいいから格安で済んじゃった。
 必要経費は頂いてるけれど、額がでかすぎて逆に使い辛いのよね……。

「まぁせっかくだし、本当に少し遊んでいっちゃおうかしら。あたし台湾の屋台ってだぁい好きなのよねぇ~。あ、そうだパスポートパスポート」

 うふふ。なんだかんだと楽しみなのよね。旅行なんて久しぶりだし、海外どころか異世界よ!
 こないだ少し歩いただけでも楽しかったんだもの。見知らぬ土地を歩くのってワクワクしちゃわない?
 当然観光案内の本なんてないけれど、今回は自称勇者くんのところにだけ行けば、あとは治安の悪くない都市へ行かせてくれるみたいだし。
 っていうのが少し引っ掛かるけどね……。まぁ、そこは今は考えないでおきましょ。

 飛行機に乗るのに手ぶらは流石にないわよね、とお気に入りのキャリーケースを引っ張り出して、少しの着替えと化粧品なんかを詰めていく。
 あれもこれもと詰め込んでいったら、なんだかんだキャリーケースがパンパンになっちゃった。
 でも向こうへ着いたら例の鞄に入れちゃえば問題ないし。よし、完璧ね!

「あとはあれよね……」

 魔法の鞄へとりあえず突っ込んだ、鍛冶神様から頼まれたこちらの品々。それと先日こちらの主神様から頂いた品々も、まだちゃんと確認してなかったのよね。
 鞄に触れれば脳内リストが出来上がるけれど、数が多すぎて見るのも億劫なのよ……。

「スマホにメモでもしておこうかしら」

 せめて脳内リストに新規フォルダを作りたいわ。同じ物はグループになるけれど、それ以外はバラバラに表示されるから探すのも面倒なのよね。
 今度鍛冶神様に相談してみましょう。

「今の中身は、と」

 鞄に触れてみると、ずらっと入れた順にリストが浮かぶ。
 目で見るというよりは脳で読む感じ? だから結構疲れるのよ。
 さぁて、とにかく打ち込むわよ!
 例の金細工のバカみたいな数に戦くがいいわ!

 ……って、誰に言ってるのよあたし。
 やぁねぇ年かしら。最近独り言も増えてきちゃったのよねぇ。やだやだ。
 さ、気を取り直していくわよ!


 金細工(51,518)
 鍛冶神様製のライター

 美の女神様から頂いた装備
 ・ジャケット
 ・インナーシャツ
 ・パンツ
 ・革ベルト(3)
 ・革グローブ
 ・革ブーツ
 ・髪飾り
 ・腕飾り(3)

 主神様からの頂き物
 ・魔除けの衣
 ・魔除けの羽根飾り
 ・退魔符(100)
 ・銀の短剣(10)
 ・聖水の壺
 ・金の盃
 ・水晶の塊
 ・岩塩
 ・数珠(36)
 ・ロザリオ
 ・兎脚
 ・マトリョーシカ
 ・砂漠の薔薇
 ・木彫りの仮面
 ・ブーメラン
   ・
   ・
   ・


 もう、もうお腹いっぱいよぉぉ……。
 何よマトリョーシカにブーメランて。あと兎の脚。意味わかんない。
 世界各地の魔除けグッズをとにかくあるだけぶち込みました感が半端ない。てかなんでそんなもの持ってるのよ!
 はぁ……まだまだあるわ。どんどん打ち込んでいくわよ。


「やっとここから鍛冶神様への品ね」

 鍛冶神様用
 ・自動巻き腕時計(5)
 ・手巻き腕時計(5)
 ・手巻きアンティーク置時計(2)
 ・手巻きアンティーク柱時計
 ・フィルムカメラ(3)
 ・ポラロイドカメラ(2)
 ・写真用フィルム(10)
 ・ポラロイドフィルム(5)
 ・写真現像暗室入門書
 ・鉱石(各種。100個くらい。めんどう)
 ・鉱石図鑑
 ・植物図鑑
 ・動物図鑑
 ・海のいきもの
 ・古代のいきもの
   ・
   ・
   ・
 
 図鑑シリーズなんてどうすんのかしらね。ショタ神様のリクエストらしいけど。写真の入門書もそうだけど、読めないでしょうに。
 えぇとそれから……あぁ、大物買えって言われたときはどうしようかと思ったシリーズね。

 ・バイオリン
 ・竪琴
 ・トランペット
 ・オカリナ
 ・カホン
   ・
   ・
   ・

 選ぶ基準がよくわからないけれど、一応小型のものに絞ってはくれたのよね。
 それにしてもピアノを諦めてくれて本当よかったわぁ~。
 どうやって受け取れっていうのよ。てかうちにそんなでかいの入らないわよ。
 一番困ったのは車とバイクよ。めっちゃくちゃ大興奮で興味津々だったけど、どうにかこうにか諦めさせたわ。
 燃料どうこう以前に、色々手続きがあるし面倒くさいじゃない。
 所有してるだけで税金もかかるし、この世界から持ち出したのに書類だけ生きてるとかややこしいったらないわ。

 それから民芸品に工芸品。日曜雑貨にキャンプ用品、登山用品レジャー用品スポーツ用品エトセトラ……。
 武器は無いのかって言われたけど、このパソコンじゃ見られないのよって濁しておいたわ。
 例え鍛冶神様の為であっても、流石に法は犯せないものねぇ。


「はぁ~、終わったぁ!」

 ふぅ。目がショボショボするし指も痛いし肩も痛い。
 留守中に荷物が届いても困るからって言って、鍛冶神様とのネットショッピングを一旦止めておいて正解だったわね。

 そうそう。そういえばどうして毎日同じ時間に声を飛ばしてこれるのかって聞いてみたのよ。
 そしたら以前、迷い人と神域で出会ったときに、驚いて荷物をばら蒔きながら落ちてしまった人がいたらしくて、その荷物の中に腕時計が入っていたって仰ってたわ。
 時計は暫くしたら止まってしまったけれど、時々触っていたらまた動き始めて驚いたそうよ。
 自動巻きの仕組みは分からなかったけれど、時計自体を動かせば針が進むことに気が付いて、そこからあたしに声を飛ばすとき、地球の時間を読んでいたんですって。
 細かく聞けば日付表示もあるクロノグラフらしく、地球がひと月三十か三十一日、一日二十四時間だということも分かっていたわ。
 ネットショッピングで腕時計を見つけた時なんか、『これで研究ができる!』って大はしゃぎだったのよ。
 ふふ。好きなことに夢中な男の人って素敵よねぇ~。
 だから自動巻きと手巻き式をそれぞれ分解用に安いのを三本、ちょっとお高めのを二本、あたしの趣味も込みで選んで差し上げたわ。
 柱時計を所望されたときは驚いたけどね……。

 さぁ、とにかくこれで全部の準備が終わったわね。
 出発まであとちょっと。あぁ~早くお逢いしたいわ鍛冶神様ぁ~っ!

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