心信じて

せき

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背信

くらいそら

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    「付き合って下さい」

そこに立つ女からその言葉を受け取ったとき、目の前の景色というキャンパスに白いペンキが覆いかぶさったような、そんな衝撃が僕を襲った。            
思考の中から文字は消え去り、首筋の脈はどんな高波をも飲み込んでしまいそうな勢いへと瞬く間に成長した。                                

もちろん身構えてはいたし、そもそも教室からいきなりカバンごと手を引っ張られ連れ去られたときから全て予測はついていたのだ。

気分はこれまでになく昂っていた。長く森の奥深くで燻らせていた夢が、希望が、今目の前にある!それも手を伸ばさずとも、向こうからわざわざやってきてくれたのだ。

棚からぼたもちとはまさにこのこと、さあ、あとはすべて受け入れるだけだ!

「はい、、こちら、、こそ、、」

弱々しい返事だった。ありきたりな表現だった。しかし一寸先でさえ光に眩しさに遮られ何もかもが視認できないなか手探りでやっと見つけ出した精一杯の表現だった。

まさに絶頂だった。         

      そのとき、、

「だってさ!レーミ!」
                     「ホーンっと、うぶだネ~」 
「今のさ、いいのとれた?」
 
聞き覚えのある声。
     隣のクラスの人たちだ。
        
 脳裏にに浮かぶ、最悪の「プランB」
       しかしまだ希望は、、、      

「ごめんなさいこれ、、ドッキリなの」

 打ち砕かれた。
僕の夢も、プライドも、
    この瞬間何もかも崩れ去った。
 
「そういうことか。すまなかった、な」
 
その瞬間、僕は走り去った。ただただ走った。
 階段を飛び降り、門を駆け抜け、信号さえも突き抜けた。



 僕の心はもうズタボロだった。

ずっしりと浮かぶ空気を一口吸うたびに肺が重苦しく感じた。

沈む光と、浮かぶ宇宙。見つめる星空は
何もせず、ただ傍観者に徹していた。
 
 家の扉を、ゆっくりと開いた。おぼつかぬ歩調で、自分の部屋へと向かった。


ひとかけらの安心が、ベッドに飛び込むと同時に僕をあっという間に包み込んだ。それは僕に冷静さを取り戻させるには、あまりに十分だった。
 
 なぜなんだ。僕はなんなんだ。他人にとっては僕はなんだったんだ。なんだったんだよ!天にそう呼び掛けるも、ついに返事は返ってこなかった。
 
弄ばれた。口すら碌に聞いてこなかったやつに。奴らはそんなに偉いのか?友達がたかが一般生徒より一桁多いだけで!

僕にだって友達はいる。彼は親友だ。少なくとも僕はそう認識しているし、あいつだってそう思ってくれている筈だ。
だいたいああも簡単に人間を騙すことができる人間がいるなどそれこそ驚きだ。

そうだ。あの女は進んで私はクズだと 教えてくれたのだ。彼女のおかげで僕は
悪い人間と付き合わずに済んだんだ。
こんなに嬉しいことはない。

 満足と不信が渦巻くなか、僕の意識は
燃え尽きていった。
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