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しおりを挟む条東署前にて後藤が流星に言う。
「ありがとうございます!助けて頂いて…。」
流星も笑顔で返す。
「いいって事よ。裏切り者もこれでおしまいだし。」
「裏切り者…。いるんですか?早乙女様を裏切るなんて、そんなヤツ?」
「あぁ、いるんだよ。そして、裏切ったらどうなるかも知った上で裏切ったヤツが…。」
「えっ?」
「ま、後藤。お前は裏切らなかった。合格だよ。」
流星は帰りの新幹線の中で1本の電話を受ける。
「よぉ、横井。」
「先輩…。いつから気づいてたんすか?」
「さぁな。」
「先輩…オレ……オレ……。」
「覚悟、出来てんだろうな?」
「はい…。」
「横井。なぜ裏切った?」
「……なんででしょうねぇ。その理由をオレもずっと探してたんすよ。今になってやっとわかったっすけど、オレ、先輩に憧れて憧れて、先輩みたいになりたいってずっと思ってたっす。先輩が手にしたものが欲しかった。でも違ったっす。」
「なんだ?」
「オレが先輩になりたかったんすよ。」
「バカが…。」
「先輩……、すみませんっす。」
「おい、横井。お前、犯罪の片棒をかつがされたのはわかっているな?こんな盗聴に証拠能力はねぇ。だがオレはこのスマホを盗聴器付きで持って行けば、十分証拠能力がある。その場にいる捜査官達もお前もタダでは済まないんだぞ。」
「わかってるっす。覚悟、出来てるっすよ。」
「だからお前はバカなんだ。なんでこんな話をしていると思ってる?戦う気があったら自分の武器を説明するわけねぇだろ。」
「えっ?」
「お前には感謝してんだぜ。何にせよ、オレと今まで一緒にいてくれたヤツだからな。縁は切るが、お前には手は出さねぇよ。それから横井の顔に免じて、警察にも手は出さねぇ。これは約束してやるよ。だが2度目はない。もしまたオレに手を出して来たら、その時には容赦しない。」
「先輩、それはハッタリじゃ…?」
「最後の最後でハッタリきかせてどうする?今ここで横井を相手にするのも警察を相手にするのも得策じゃねぇんだよ。」
「そんな…、先輩のやり方じゃない…。」
「お前はオレをなんだと思っている?オレは殺人狂じゃねぇぞ。」
「…ハハッ…。そう…っすよねぇ。もしも『仮に』死神がいたとして、先輩がそんなヤツの力借りるわけないっすもんね。」
「そういう事だ。自分の人生は自分の力で切り開く。学生時代から言ってきた事だ。」
「そうでしたねぇ。先輩の口癖っすよねぇ。」
「横井、最後に一つだけ言わせろ。」
「何すか?」
「生きろ。」
「……………。」
「……………。」
「先輩、ずりぃっすね。オレのプライドも何もズタズタなのに、それを言うんすか?」
「死ぬんじゃねぇぞ、横井。周りにいる捜査官も聞いてんだろ?横井を死なせたら、お前達も巻き添えにしてやるからな。」
「それっすよ。先輩の強さは。オレ達の行動の先読み。イカサマしているなら、それすら逆手にとる勝負強さ。これでオレは自死できなくなった。」
「横井。お前も十分強い。サラリーマンとしてでもギャンブラーとしてでも十分やっていけるだろうが。これが最後の忠告だからな。あとはお前次第だ。」
「うっす。……あ~あ、人生最初で最後の大勝負のつもりだったんすけどねぇ。やっぱ先輩、強ぇや。」
「もう電話切るぞ。横井、何か言い残してる事あったら言っておけ。」
横井も捜査官達も『死神』と呼ばれる第三者の事が気になった。
だが横井は、
「いえ、何もないっす。」
と言った。
「そうか。じゃあな、横井。元気でやれよ。」
「うっす。先輩もお元気で。」
「おう。」
プツ、ツーツー。
電話は切れた。
そして流星は死神に、
「死神、スマホの盗聴器を外せ。」
と言った。
死神は言われた通りにした。
流星の頬を熱いものが流れた。
横井の周りにはたくさんの捜査官がいた。逆探知機のようなものまである。
捜査官の1人が横井に声をかける。
「横井さん…。」
横井は昔を懐かしみつつ、どこか寂しげな顔をする。
「昔、というほどじゃないけど、学生時代が懐かしいなぁ。先輩にはほとんど勝てなくて…。今回も負けちまった。だからこそ、オレはあなたになりたかった。……う、ぐすっ……。」
かくして世界は回る。
流星が人生の勝者になろうが、
大事なものをなくそうが、
手に入れようが、
飼い犬が増えようが、
減ろうが、
世界は相も変わらず回るのだ…。
~完~
「ありがとうございます!助けて頂いて…。」
流星も笑顔で返す。
「いいって事よ。裏切り者もこれでおしまいだし。」
「裏切り者…。いるんですか?早乙女様を裏切るなんて、そんなヤツ?」
「あぁ、いるんだよ。そして、裏切ったらどうなるかも知った上で裏切ったヤツが…。」
「えっ?」
「ま、後藤。お前は裏切らなかった。合格だよ。」
流星は帰りの新幹線の中で1本の電話を受ける。
「よぉ、横井。」
「先輩…。いつから気づいてたんすか?」
「さぁな。」
「先輩…オレ……オレ……。」
「覚悟、出来てんだろうな?」
「はい…。」
「横井。なぜ裏切った?」
「……なんででしょうねぇ。その理由をオレもずっと探してたんすよ。今になってやっとわかったっすけど、オレ、先輩に憧れて憧れて、先輩みたいになりたいってずっと思ってたっす。先輩が手にしたものが欲しかった。でも違ったっす。」
「なんだ?」
「オレが先輩になりたかったんすよ。」
「バカが…。」
「先輩……、すみませんっす。」
「おい、横井。お前、犯罪の片棒をかつがされたのはわかっているな?こんな盗聴に証拠能力はねぇ。だがオレはこのスマホを盗聴器付きで持って行けば、十分証拠能力がある。その場にいる捜査官達もお前もタダでは済まないんだぞ。」
「わかってるっす。覚悟、出来てるっすよ。」
「だからお前はバカなんだ。なんでこんな話をしていると思ってる?戦う気があったら自分の武器を説明するわけねぇだろ。」
「えっ?」
「お前には感謝してんだぜ。何にせよ、オレと今まで一緒にいてくれたヤツだからな。縁は切るが、お前には手は出さねぇよ。それから横井の顔に免じて、警察にも手は出さねぇ。これは約束してやるよ。だが2度目はない。もしまたオレに手を出して来たら、その時には容赦しない。」
「先輩、それはハッタリじゃ…?」
「最後の最後でハッタリきかせてどうする?今ここで横井を相手にするのも警察を相手にするのも得策じゃねぇんだよ。」
「そんな…、先輩のやり方じゃない…。」
「お前はオレをなんだと思っている?オレは殺人狂じゃねぇぞ。」
「…ハハッ…。そう…っすよねぇ。もしも『仮に』死神がいたとして、先輩がそんなヤツの力借りるわけないっすもんね。」
「そういう事だ。自分の人生は自分の力で切り開く。学生時代から言ってきた事だ。」
「そうでしたねぇ。先輩の口癖っすよねぇ。」
「横井、最後に一つだけ言わせろ。」
「何すか?」
「生きろ。」
「……………。」
「……………。」
「先輩、ずりぃっすね。オレのプライドも何もズタズタなのに、それを言うんすか?」
「死ぬんじゃねぇぞ、横井。周りにいる捜査官も聞いてんだろ?横井を死なせたら、お前達も巻き添えにしてやるからな。」
「それっすよ。先輩の強さは。オレ達の行動の先読み。イカサマしているなら、それすら逆手にとる勝負強さ。これでオレは自死できなくなった。」
「横井。お前も十分強い。サラリーマンとしてでもギャンブラーとしてでも十分やっていけるだろうが。これが最後の忠告だからな。あとはお前次第だ。」
「うっす。……あ~あ、人生最初で最後の大勝負のつもりだったんすけどねぇ。やっぱ先輩、強ぇや。」
「もう電話切るぞ。横井、何か言い残してる事あったら言っておけ。」
横井も捜査官達も『死神』と呼ばれる第三者の事が気になった。
だが横井は、
「いえ、何もないっす。」
と言った。
「そうか。じゃあな、横井。元気でやれよ。」
「うっす。先輩もお元気で。」
「おう。」
プツ、ツーツー。
電話は切れた。
そして流星は死神に、
「死神、スマホの盗聴器を外せ。」
と言った。
死神は言われた通りにした。
流星の頬を熱いものが流れた。
横井の周りにはたくさんの捜査官がいた。逆探知機のようなものまである。
捜査官の1人が横井に声をかける。
「横井さん…。」
横井は昔を懐かしみつつ、どこか寂しげな顔をする。
「昔、というほどじゃないけど、学生時代が懐かしいなぁ。先輩にはほとんど勝てなくて…。今回も負けちまった。だからこそ、オレはあなたになりたかった。……う、ぐすっ……。」
かくして世界は回る。
流星が人生の勝者になろうが、
大事なものをなくそうが、
手に入れようが、
飼い犬が増えようが、
減ろうが、
世界は相も変わらず回るのだ…。
~完~
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