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ひまじん

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大阪府条東警察署にて後藤は取り調べを受けていた。
「黙秘権を使います。」
そう言って後藤は黙った。
ここでうっかり早乙女流星の名前を出してはいけない、と思っていた。
「だんまりを決め込むならいいよ。でもなぁ、押収したスマホは雄弁だな。非通知になってるが調べりゃ誰と電話してたのが?わかるんだぜ。」
後藤は戸惑う。
「あ…う……。」
「どうだい?吐いちまいなよ。洗いざらい全部さぁ。わかるだろ?執行猶予、付くんだぜ。付けたいだろ?」
後藤は迷いながら黙っていた。いや、黙るしかなかった。思わず何もかも話したかった。
でも自分が知ってるのは流星のほんの一部、かもしれないのだ。
自分が話したところで流星が賭博法違反だけだったら、罰金で済んでしまう。そうなったら自分はウィンスターのように消されてしまうかもしれない。
後藤はそれを恐れたのだ。
執行猶予が付く付かないの問題ではない。自分の人生がかかっているのだ。
刑事は、これはやはり何かある、と見てとった。
「なぁ、後藤?お前さんの人生はオレ達が保証してやるよ。オレ達が絶対にお前さんを守る。命をかけて…。」
「ムリだ!!」
「何?」
「お前達にはわからないんだ…。あの人には敵わない。誰も…。」

数時間、後藤はだんまりを決め込んだ。刑事達も困り果てた。スマホの通話履歴を見れば相手が早乙女流星だと気づく。だがそれだけだ。立件できる違法といえば賭博法違反のみ。ウィンスターの件にどう絡んでいるのか?それに噂通りだとすれば、東京の刑事、笹山も…。

コツコツと署の廊下を歩く足音が響く。
署内の皆がギョッとする。
コンコン。
取り調べ室をノックする音。
刑事が言う。
「何だ?」
「ばぁ♪」
顔を出したのは早乙女流星だった。死神も一緒にいるがもちろん流星以外には見えていない。
後藤も怖がった。自分を始末するのではないかと。
流星が後藤に言う。
「おぅおぅ、こんなに汗をかいて。さぞかし怖かったんだろうなぁ。でもな、後藤。お前は何も喋らなくていい。お前の罪はせいぜい罰金程度。いいか?どんなに脅されても、お前は喋る必要はないんだ。用があるのはこのオレに、だろ?刑事さん。」
なんという大胆不敵!
捕まるかもしれないのに、わざわざ大阪まで来るとは。
刑事は戸惑いつつも、すぐに冷静さを取り戻す。
「こりゃどうも。手間が省けたわい。おい、鈴木。近藤を呼んできて後藤を調べろ。」
鈴木と呼ばれた若い刑事が返事をして、近藤を呼びに行った。
後藤は最初こそビビったが、今は違う。
流星自身がデバってきて直接命令を下した。
(安心していい。オレは本当に何も喋らなくていいんだ。)
鈴木と近藤はすぐにわかった。
もう後藤からは何も出てこないと。

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