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あれから数ヶ月、横井からの連絡はなかった。
伸子が言う。
「横井君、大丈夫かなぁ?」
「顔と名前を売るってのは手間も時間も労力もかかる。今頃は営業中じゃね?」
死神が言う。
「調べてみよっか?」
「別にいい。実力があるのに自ら飼い犬に成り下がるヤツなんざ知るか。」
「ちょっと冷たくない?あれだけ目をかけてきたのに。」
「目をかけたならばこそだ。今まで散々横井には実力があるって伝えてきた。なのに飼い犬になる方を選んだ。結局アイツはオレの言葉を信じないんじゃない。自分で自分が信じられねぇのさ。」
「でもさ…。」
「くどいっ!」
死神がビクッとした。
「しばらく黙ってろ…。」
しばらくの沈黙ののち、1本の電話がかかってきた。
「早乙女様、もうすぐ部屋に入ります。」
飼い犬のうちの1人、後藤からだった。
「カメラを繋げ。」
「はい。」
胸元にある小型ボールペンのカメラを繋げる。流星のパソコンにカメラの映像が映る。
「よし。スマホはこのまま通話状態にしていろ。イカサマに気づいたら別の端末から電話をかけるから出ろ。」
「はい。」
今回のギャンブルは一風変わっていた。
種目は囲碁。勝ち目の差ではなく、単純に勝つか負けるかの勝負だ。敗者が勝者に10億支払うというものだ。
どんな勝負もギャンブルはギャンブル。囲碁でも当然ギャンブルになり得る。ただし、イカサマのしにくいギャンブルと言える。
流星の判断では後藤には得意な種目と言えた。
後藤にはあらかじめ部屋の隅々と碁盤をじっくり眺めるように、流星にも見えるように言っておいた。
ゆっくりと碁盤をひっくり返すように眺める。
ディーラーが言う。
「後藤様、準備はいいですか?」
流星からは何の指示もない。OKという事だ。
「OKだ。」
ディーラーが宣言する。
「では、寺木田様対後藤様の勝負、始め!」
イカサマがあるとするならゲームの前半よりもむしろ後半、盤が荒れてからだと思っていた。だが実際には違った。
前半で既に仕掛けられていたのだ。
流星は後藤に電話をかける。
「はい、後藤です。」
ディーラーが後藤を制す。
「後藤様、ゲーム中は電話を控えて下さい。」
「すみません、すぐに済みますから。」
流星は素早く指示をだす。
「五の8、相手の黒が1目ズレた。磁石か何かで動かしたんだろう。適当なところでイカサマ宣言しろ。後はイカサマしても見抜けるな?電話を切れ。」
「イカサマだ!」
イカサマ宣言したのは相手の寺木田だった。
「電話で指示を受けている。」
ディーラーが判定を下した。
「ゲーム中の電話は出ないように申し上げました。よって後藤様、ペナルティー5億です。」
仕方なく後藤もイカサマ宣言をする。
「イカサマ宣言。五の8の黒石がズレた。」
ディーラーも認める。
「イカサマ宣言成立。寺木田様ペナルティー5億です。両者互いにプラマイゼロです。」
こうなる事はあらかじめ予想していた流星。
お互いのイカサマの潰し合い。これで五分五分の勝負ができる。
ゲームは順調に進み、後半で寺木田が負けを認めた。
「ありません。」
後藤は勝った。
そして10億の振り込みを確認した時に警察が踏み込んできた。
「賭博法違反の容疑で逮捕する!」
後藤が捕まってしまった。
なんとなく嫌な予感がする流星。
「ちょっと出てくるわ。伸子、留守を頼む。」
「はい。」
「死神、ついて来い。」
伸子が言う。
「横井君、大丈夫かなぁ?」
「顔と名前を売るってのは手間も時間も労力もかかる。今頃は営業中じゃね?」
死神が言う。
「調べてみよっか?」
「別にいい。実力があるのに自ら飼い犬に成り下がるヤツなんざ知るか。」
「ちょっと冷たくない?あれだけ目をかけてきたのに。」
「目をかけたならばこそだ。今まで散々横井には実力があるって伝えてきた。なのに飼い犬になる方を選んだ。結局アイツはオレの言葉を信じないんじゃない。自分で自分が信じられねぇのさ。」
「でもさ…。」
「くどいっ!」
死神がビクッとした。
「しばらく黙ってろ…。」
しばらくの沈黙ののち、1本の電話がかかってきた。
「早乙女様、もうすぐ部屋に入ります。」
飼い犬のうちの1人、後藤からだった。
「カメラを繋げ。」
「はい。」
胸元にある小型ボールペンのカメラを繋げる。流星のパソコンにカメラの映像が映る。
「よし。スマホはこのまま通話状態にしていろ。イカサマに気づいたら別の端末から電話をかけるから出ろ。」
「はい。」
今回のギャンブルは一風変わっていた。
種目は囲碁。勝ち目の差ではなく、単純に勝つか負けるかの勝負だ。敗者が勝者に10億支払うというものだ。
どんな勝負もギャンブルはギャンブル。囲碁でも当然ギャンブルになり得る。ただし、イカサマのしにくいギャンブルと言える。
流星の判断では後藤には得意な種目と言えた。
後藤にはあらかじめ部屋の隅々と碁盤をじっくり眺めるように、流星にも見えるように言っておいた。
ゆっくりと碁盤をひっくり返すように眺める。
ディーラーが言う。
「後藤様、準備はいいですか?」
流星からは何の指示もない。OKという事だ。
「OKだ。」
ディーラーが宣言する。
「では、寺木田様対後藤様の勝負、始め!」
イカサマがあるとするならゲームの前半よりもむしろ後半、盤が荒れてからだと思っていた。だが実際には違った。
前半で既に仕掛けられていたのだ。
流星は後藤に電話をかける。
「はい、後藤です。」
ディーラーが後藤を制す。
「後藤様、ゲーム中は電話を控えて下さい。」
「すみません、すぐに済みますから。」
流星は素早く指示をだす。
「五の8、相手の黒が1目ズレた。磁石か何かで動かしたんだろう。適当なところでイカサマ宣言しろ。後はイカサマしても見抜けるな?電話を切れ。」
「イカサマだ!」
イカサマ宣言したのは相手の寺木田だった。
「電話で指示を受けている。」
ディーラーが判定を下した。
「ゲーム中の電話は出ないように申し上げました。よって後藤様、ペナルティー5億です。」
仕方なく後藤もイカサマ宣言をする。
「イカサマ宣言。五の8の黒石がズレた。」
ディーラーも認める。
「イカサマ宣言成立。寺木田様ペナルティー5億です。両者互いにプラマイゼロです。」
こうなる事はあらかじめ予想していた流星。
お互いのイカサマの潰し合い。これで五分五分の勝負ができる。
ゲームは順調に進み、後半で寺木田が負けを認めた。
「ありません。」
後藤は勝った。
そして10億の振り込みを確認した時に警察が踏み込んできた。
「賭博法違反の容疑で逮捕する!」
後藤が捕まってしまった。
なんとなく嫌な予感がする流星。
「ちょっと出てくるわ。伸子、留守を頼む。」
「はい。」
「死神、ついて来い。」
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