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ひまじん

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そして横井も連絡してきた。
「先輩、ヒドイじゃないっすか。」
「ん?」
「飼い犬が必要ってならオレらは何なんすか?オレと夢乃は?オレらの立場ってものを考えて下さいよ。」
「お前らはオレのツレだ。飼い犬じゃねぇだろ?それとも何か?オレの代わりに大人に混じってギャンブルするのか?オレが知っているお前なら、横井、お前も自分の力で人生切り開けるはず。」
「早乙女先輩…。」
「まぁもっとも、お前らの力が必要ってなら力を借りるが。」
「それ、ハッタリっすね?」
「ん?」
「オレが自分で自分の実力を測れないバカだとでも言うんすか?所詮、オレは先輩のおこぼれにあずかるしかない能無しっすよ。」
「お前が自分をそう思うんならそうなんだろ。だが一つ言えば、お前を飼い犬にするなら、お前が社会人になってからだ。」
「早乙女先輩!今じゃダメなんすか?オレ、大人に負けないくらいは強いつもりっすよ?」
「未成年の間は法律はむしろお前の味方だ。いくら法律が厳罰化されたと言っても、だ。そして蓮華高校では合法化されてもいる。」
「だったら…!」
「だからこそ危ういんだ。お前、高校退学になったらどうする?毎日のようにギャンブルに明け暮れる高校生と社会人はワケが違うんだ。
わかるように言ってやる。オレの飼い犬になりたいなら職を手に入れろ。普段は普通のサラリーマン。一見普通のサラリーマンだからこそ怪しまれないんだぜ?冷静になれ、横井。嫌でもいつかは社会人だ。社会人になればギャンブルは賭博法違反の立派な犯罪なんだよ。ギャンブラーって職種はそんな際どい仕事なんだ。
蓮華高校の生徒だってわざわざ学校の外じゃギャンブルしねぇだろ?つーか、学校の外じゃ普通に犯罪だ。カモが学校の中にいるのになんで外でギャンブルするんだ?オレはお前の人生まで責任を負えねぇよ。」
「…よくわかったっす。」
「じゃ、今は一応なりとも勉強頑張って無事に卒業するこった。お前が逆にカモられるなんて事はないから安心しな。」
「はい…。失礼するっす…。」
「おう。」
電話を切り、伸子が口をはさんできた。流星と伸子は入社して直ぐに一緒に暮らしている。
「よく鳴る電話ね。今の、横井君?」
「ああ。アイツもちょっとバカだな。アイツなら、自分の人生自分で切り開けるはずなのに、自分にはそんな力はねぇって思い込んでやがる。たぶん、オレが電話で話したんじゃアイツ自身、信用しねぇだろうから、伸子、お前、明日蓮華高校に行ってお前の言葉で横井に伝えてやれ。もっと自信持てってな。」
「わかったわ。」
「それとな、伸子。今から大事な事言うぞ?すっげーぶっ飛んだ話するぞ?」
「急に何?しかもそんなに改まって。」
「大事な話なんだ。」
「だから何?」
「いいか?よく聞け。オレは死神に取り憑かれている。」
「えっ?」
「死神、出てこい。」
死神は姿を現した。
「ばぁ♪」
「きゃあ!えっ?何、何!?」
金髪のグラマーな死神はおどけたように言う。
「もう、流星ったら、いつ言うのか、いつ言うのか?と思ったじゃない。」
伸子は驚いている。
「えっ!?いつからそこにいるの?えっ?死神?」
「ずっといたよん♪流星のそばにずっといたの。ホラッ、翼もあるでしょ?」
「翼…?それ、本物?」
流星は仕方ないと言って、付け加えた。
「死神、本来の姿を見せてやれ。」
「了解。」
そして瞬時に元のグロテスクな姿を見せる。
伸子は思わず悲鳴をあげる。
「きゃあ!!」
流星の「戻れ。」との合図と共に、死神は金髪グラマーな姿に戻る。
流星が言う。
「な?本物だろ?」
伸子は驚き戸惑っている。
「そんな…。バカな…。」
「オレも最初に会った時は戸惑ったが、実際に目の前にいるんだから仕方ない。」
死神も同意する。
「信じられなくて当然。最初は皆、同じ反応をするわ。」
伸子は疑問に思った事を口にする。
「流星の命を取りに来たの?」
「ノー。」
「えっ?じゃあ何の為に取り憑いてるの?」
「流星の人生を観察する為よ。」
「観察?」
「そ、観察。はたから見ていて流星の人生は興味深いもの。伸子さんだって最初は流星に興味持ったんでしょ?」
「なんで、それを?」
「死神界から見ていたからね。だいたいわかるわ。」
流星が口をはさんだ。
「あ~、一応言っとくが伸子、死神に嘘は通じねぇぞ。」
死神が後をついだ。
「そうよ。心の中が覗けるもの。見える見える♪まだまだ怖がってるねぇ。」
伸子が軽く悲鳴をあげた。
「ひっ…。」
「そして伸子さん、あなたの頭に直接うったえる事もできるわ。」
(ねぇ、伸子さん。)
伸子の頭に響く声。
「これを人間はテレパシーって言うのよね?私と流星はこうやって会話してたってわけ。」
伸子は次に疑問に思った事を聞いた。
「じゃあ、流星の強運は全部死神のあなたのおかげなの?」
「ノー。それも違うわ。私が手を貸そうと思えば貸せるけど、流星はそれを拒んだ。」
「なぜ?」
「人生がつまらなくなるからよ。何もかもが思い通りだったらつまらないものね。流星はあくまでも自分の力で人生を切り開きたいのよ。考えてみて?あなたの知っている流星は死神の私に頼りっきりの弱い人間かしら?」
「ち、違うわね。」
「そう!だから素晴らしいのよ!今まで取り憑いた人間はどんどん私に命令するのに流星は逆!私がした事と言えばウィンスターに電話をかけた事くらい。普通ではあり得ないわ!シビレる~!ねぇ、伸子さん、そばにいてどう?流星に愛されて幸せでしょう?」
「ええ、まぁ…。」
「羨ましいわぁ。私があなたに取って代わりたいくらい。」
「えっ?まさか…?」
「うふふ♪安心して。伸子さんを殺したりしないから。あ、ちなみに私、死神だから人の生死を簡単に操れるよ。」
流星が口を出した。
「まぁ、そんなわけだ。今まで死神について話せなかったのもわかるだろ?こんなぶっ飛んだ話、いつ言おうかタイミングが難しくてなぁ。でも話せて良かったぜ。いざと言う時に話したんじゃ間に合わねぇ。」
「この死神は流星の事も私の事も殺さない。流星にとっての切り札…。」
「そうだ。だからオレは簡単には死なねぇよ。」
「……すごい。死神まで味方につけちゃうなんて。」
「フッ…。」

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