JOKER

ひまじん

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横井が言う。
「オレは先輩に『裏番の跡を継がせてくれ』って頼みに行ったっす。」
星野が聞く。
「当然断わられたんでしょ?」
「タダで断わられたんじゃないっすよ。お前のギャンブルの腕を見せて欲しいって言われたっす。」
「それで、負けたの?」
「負けたっすねポーカーを10回勝負でやってオレが何回勝つかのギャンブルっす。たったの2回しか勝てなかったっすよ。
でもその後でオレのギャンブルの腕が認められたっす。跡を継がせる事はできんが、オレのツレになれって言われたっすよ。」
「へぇ~。そうなんだ?」
「オレにとったら、それだけで十分っすよ。」
「夢乃ちゃんは?夢乃ちゃんはどうやって仲良くなったの?」
夢乃はアゴに指を当てながら答える。
「ん~、ナンパ?」
「えっ?」
「フフッ。冗談です。でも最初は新手のナンパかと思ったんですよ。私が賭場で麻雀打ってたらいきなり後ろから『お前、面白い打ち方するな』って笑ってたんですから。周りの人達から裏番だって知らされなかったらナンパかと思ってスルーするところでした。」
「で、流星君と勝負したの?」
「しましたよ。点棒でいくらって決めるんじゃなくて、単純に点数の多い方の勝ち。敗者は勝者に一千万の支払いで。」
「で、やっぱり負けたの?」
「負けました。コテンパンに。でもその後で、借金チャラにしてやるからオレのツレになれよ。お前、おもしれぇよ。って言われて。」
「へ~。じゃ、二人共ギャンブルの腕を認められたって事ね。」
「そうで~す。」

そこに酔っ払った男が絡んできた。
「おい、お前らさっきからおもしれぇ話してんな。お前か?蓮華高校で裏番はってたのって。」
流星は静かに怒る。
「アンタ、何者だ?」
「オレか?よく聞けよ。オレは佐々木だ。ITコーポレーションで社長やってる佐々木。実はオレも蓮華高校出身でよ~。お前らの話聞いてギャンブラーとしての血が騒いだのさ。一つ勝負してくれよ。」
「ちなみに賭け金は?」
いくらだ?と流星は聞いているのだが佐々木は
「あるぜ。見ろ!上限なしのブラックカードだ!ハッハッハッ!」
ため息をつく流星。
「ネットバンキングは?」
「もちろんしている。」
「じゃ賭け金一千万。敗者が勝者に支払う、という形でいいな?」
「一千万でいいのか?もっと多くてもいいんだぞ。」
「じゃ、二千万でいいか?」
「いいぜぇ。泣きべそかくなよ?」
流星の目が青く光る。
「その勝負、のった!」
「で、何で勝負するんだ?」
「ポーカーだ。トランプを持っている。」
「調べさせろ。」
「お好きにどうぞ。」
佐々木は調べ終わり、流星にトランプを渡した。
流星が聞く。
「ディーラーはどうする?」
「我が社の者にやらせよう。おい、伊藤。お前、ディーラーやれ。」
ひょろひょろした男が呼ばれた。
流星が釘をさした。
「わかってると思うがイカサマ、お手つきのペナルティーは賭け金とは別に5億だぞ。」
「わかってる。」
佐々木の思惑は外れた。
佐々木は思う。
(クソッ!イカサマが封じられた。まぁいい。こんなヤツ、普通に勝負しても勝てる。オレのギャンブラーとしての腕を見せてやる!)
流星はすまし顔で言う。
「チップはないから3回勝負で2勝した方の勝ちでいいな?」
「ああ。」
(なんだかんだで今までヤツのペースか。クソッ。伊藤のバカ!心配そうにオレを見てんじゃねぇ!)
カードが順に配られる中、流星が牽制する。
「おい、佐々木のおっさん。まだゲームは始まったばかりなのに、ずいぶん汗をかいてるじゃねぇか。それに伊藤ってヤツも汗をかいてる。お前ら…まさか…?」
「な、何を言ってる。それにお手つきは5億だぞ?」
「オレはまだイカサマ宣言してねぇよ。」
「ぐっ…!くく…。」
(コイツ。心でも覗けるのか?クソッ!あり得ねぇ。伊藤も汗かいてんじゃねぇよ!)
死神がキャハハと笑う。
「普通の人間に心なんて覗けるわけないじゃ~ん。ま、私には丸見えだけどね。」
佐々木は焦りながらも手札を出す。
「どうだ!フルハウスだ!」
「4カード。」
「な、何ぃ!?」
「見え見えなんだよ。お前らがイカサマしようとしてた事も、な。普通に勝負できねぇのか?」
「上等じゃねぇか。伊藤!早くカードを切れ!」
二戦目、佐々木のカード。
「どうだ!今度はオレが4カードだ!」
「5カード。」
「何ぃー!?」
「2勝したから二千万オレの口座に振り込んでもらうぜ。ナウ、今すぐに、だ。」
「ク、クソッ!」
佐々木は素直に支払った。
流星は入金を確認して言った。
「入金完了。毎度どうも~。」
「クッ!気分が悪い!オレは帰るぞ。覚えとけよ!」
佐々木が店から出ていった後、皆がドッと笑った。
夢乃が言う。
「いや~、笑いこらえるの必死だったわ。まさか先輩にギャンブル挑むなんて…。プッ…アハハ。」
流星がニヤリと笑いながら言う。
「フッ。笑っちゃわりぃよ。アイツも必死だったんだ。それに種もバラまかれた。実を結ぶかはわからねぇがな。」
横井が聞く。
「種って何すか?いい加減教えて下さいよ。」
「フッ。そのうちわかる。それより思わぬ収入が入った。皆、飲め飲め。今日はオレの奢りだ。」
皆がワーと盛り上がってるところに1人の女性が現れた。
「流星、遅れてごめんなさい。」
横井が気づいた。
「あ、伸子先輩。」
皆が驚く。
流星は構わず言った。
「オレが勤めている三課の皆だ。伸子、挨拶しろ。」
「はじめまして。尼崎伸子です。皆さん、よろしくお願いします。」
星野が言う。
「伸子さんって流星君と付き合ってるっていう、あの…?」
「はい、トイポケットの一人娘です。」
横井が口をはさむ。
「伸子先輩、一足遅かったっすね。もうちょっと早けりゃ面白いものが見れたのに。」
「えっ?何、何?」
皆が伸子を招き入れる。
ワイワイ盛り上がる一同。
犬山が流星と伸子のどちらともなく聞いた。
「ねぇ、二人の馴れ初めを聞かせてよ。」
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