JOKER

ひまじん

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流星と青木のギャンブル対決は会社内ですぐに噂となって広まった。
とりわけ三課では皆が流星を恐れていた。
たった半日で会社内の大半を支配してしまった。
流星はそれをいい事に加熱式タバコを吸い出した。
だが、文句を言う者は誰もいない。課長でさえも。
流星はニヤニヤしながらタバコを吸う。
(怖い怖い怖い怖い…)
恐怖が皆を支配していた。
流星は目を青く光らせている。
(思い通りだ。フフフ…。)
死神にも流星の狙いはわかっている。
課長も、その他の皆も社内メールで、流星の養父である会長に知らせる。
会長はため息をついた。
「やっぱりやったか…。」
会長は課長にメールを送った。
課長が恐る恐る流星に声をかけた。
「流星君。会長がお呼びだよ。会長室、わかるかい?」
流星には全てが予想通りだった。
「行く必要はねぇな。用があるんなら自分で来いってんだ。」
「なっ!?会長だよ?行った方がいいんじゃ…。」
そこまで言って課長は言葉を飲み込んだ。
「と、とにかく伝えたから。」
ギロリと睨む流星に、そそくさと去る課長。
流星は社内メールで会長へと
「自分の方から来い。」と送った。
数分後、課長が
「りゅ、流星君。5番に電話だよ。」
と言った。
流星が出ると会長からだった。
気の抜けた返事をする流星。
「もしも~し。」
「早速やってくれたな、流星?ギャンブルはするなと言っただろう。」
「売られたケンカを買ったまで。合意の上だ。」
皆は仕事をするフリをして聞き耳を立てている。流星は受話器をふさぎ青木に命じる。
「おい下僕。コーヒー、ブラックのアイスを持ってこい。」
青木はしおらしく返事をする。
会長はため息をつく。
「下僕、か…。お前は学校の制度を我が社に持ち込むつもりか?」
「いいや、そんなつもりは無い。」
「じゃあ、何を考えている?」
「あれはちょうど3年前だったなぁ。」
「何?」
「3年前、丸大商事の業績は最悪だったね、父さん?」
会長はギクリとした。
「資金繰りに困った時、養育費や学費を差し引いても十分な額を渡したつもりだよ。」
「くっ…!」
「今まで育ててくれた恩は十分に返したつもりだ。だって丸大商事の社員の生活はオレのおかげで支えられたようなものだから…。」
(なに~~~~!!!)
聞き耳を立てていた皆が驚いた。
「父さん。オレをクビにするか?オレと縁を切るか?」
「い、いや…。」
「父さん、オレはもう自由だ。立派に独り立ちしてるし、トイポケットの令嬢とも交際してる。」
トイポケットとは日本で有数のトイメーカーの老舗である。丸大商事とは比べ物にならないくらいの大企業だ。養父である会長が縁を切りたいわけはないのだ。
流星はわかってて言っている。
「父さん、オレは家を出るよ。」
「おい!ちょっ、それはどういう意味だ?」
「大丈夫。父さんとの縁は切らない。家を出て、伸子と一緒に暮らし、立派にやっていける事を証明してみせる。
オレは人生というギャンブルに勝つんだ。それも大勝ちで。」
「流星…。」
「だから、放っておいてくれ。」
ガチャっと受話器を置いた。
誰も流星には逆らえない。会長でさえも。
皆がただの会長の息子、金持ちのボンボンだと思っていた。
だが、実際はもっと別物。
恐ろしい恐ろしい異端者だったのだ。

そして流星は、トイポケットのご令嬢の伸子に引越しの連絡を入れた。
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