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残された少女

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『初めまして、崎野ゆうです。よろしくお願いします。』

4月私がこの台詞を言うことはなかった。
言わなかったんじゃない、言えなかった。

私は中学を卒業して高校に入るまでの短い間、家族4人卒業祝いで旅行にいった皆私をお祝いしてくれて嬉しかった。この時私は幸せの絶頂にいたんだと思う。

でも、頂点につけばあとは降りるしかない。
幸せは永遠には続かない。
帰り道の車で眠っていた私が、次に目を覚ましたのは真っ白な部屋だったのだから。

______ただ私1人だけ目を覚ました。

事故だった。無理な追い越しをしたトラックが私たちの車にぶつかり私たちの車は見事に潰れてしまった。

私以外の家族は即死だった。眠っていた私は大怪我を負ったものの死ななかったようだ。

目を覚ましたのは5月の半ば
体に異常は残らなかったけど、私の心にももう何も残っていなかった。

次の日、無気力でいる私のところに警察がやってきていろいろ聞かれたけど私は眠っていて事故の時の状況なんてわかるわけがなかった。
警察が諦めて帰ると入れ替わるのように中学の時からの友達、真菜ちゃんがきた。

「ゆうちゃん‥‥目が覚めたんだね‥‥良かった‥‥ゆうちゃんが事故にあったって聞いたときは怖かったよ‥‥おばさんたちは亡くなったっていうし、ゆうちゃんは目を覚まさないし‥‥このままゆうちゃんもなのかなって‥‥生きてて本当に良かった‥‥」

良かった‥‥のだろうか。あのときお母さん達と一緒に死ねたら幸せだったんじゃないか。何も知らず何も気づかず家族と一緒に死ねた方がよっぽど幸せで良かったんじゃないかな。

「私、家族と死ねた方が良かった‥‥のかなって‥‥」

真菜ちゃんは驚いた顔をして今にも怒りだしそうだったけど、すぐに暗い顔をして何も言わなくなってしまった。
無言のまま時間だけが過ぎていく
重く暗い空気が部屋を支配して、いつの間にか面会の時間が終わる頃になった。

「ゆうちゃん‥‥時間だから私帰るね‥‥ゆうちゃんは死にたかったかもしれないけど、私はゆうちゃんが生きててくれてとても嬉しかったよ。」

そういい残して部屋を去っていった。
私は生きている家族に残されて。
これから私はどうすればいいのだろうか、1人残された部屋で私は目を閉じるのだった。
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