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「そんなに気持ちよかったんですか?」
「なんにも言わないからな!」
そういうことをわざわざ聞くんじゃねえよ、変態が。口を閉じるしかなくなるだろうが。先程から背後から抱きしめてくる男にぐいぐい肘鉄を食らわしているが、頬擦りにより無力化されている。諦めの無さにはこちらが根負けするしかなかろう。今回も色々と片づけてもらってしまったわけだしな、うん。泣き顔だっていつも以上に見せてしまったし。うおおお、思い返したら恥ずかしさしかないぞ!?
急いで頭を抱えるのは、熱い顔を見られたくないから。挙動不審に見えようが、二度、三度と頭を振って熱を逃してやる。わしゃわしゃ頭を撫でてくるのはきっと、全てを解った上でだろう。腹立たしさと情けなさが同居していたが、それでも、気にしてやる素振りは見せることなく躯を捩って見上げてやると、短く息を吐いた。諦めたのだと解らせる為に。
「なつめはオレに構う暇があるのなら、仕事の確認でもしろよ」
「してますよ。明日は午後から雑誌のインタビューが入ってますね」
「早く帰って寝ろ!」
午後からでも仕事があるのなら、そういうことをする前に躯を休ませろ。頼むから。学業と両立出来ているのが謎なくらいの露出度だろ、お前らって。まあ、売れる内が花という面はあるのだろうが、それにしたって働きすぎだろう。
「そういうことなら、今日は早めに食べて早く寝るか」
「はい」
うむ、解かればよろしいと小さく頷き返し、「用意するからちょっと待ってろ」と立ち上がる。腕を無理矢理引き剥がしてな。残念そうな顔をされても困るからやめろ。
ご丁寧に畳まれたテーブルを出すことを指示し、冷蔵庫に鎮座ましましていた小鍋を火にかける。冷蔵庫がカレー臭に侵食されているが、毎度の事なので慣れてしまった。それに、時間が解決してくれるわけだしな。
お玉で小鍋の中を掻き混ぜつつも皿を出して――といっても、カレー皿にしている皿は一枚しかないので、そちらをなつめに使ってもらうことにして、オレは丼を使おうか。ふたつの皿を軽く洗うとごはんを盛り、なつめに向き直る。
「なつめはカレーをかける派か別添え派かどっちだ?」
「どちらでも気にしませんよ。どうぞお好きなように」
「はいよー」
洗い物を少なくする為にかけるかと、丼にもカレー皿にもたっぷりと盛る。この小鍋は約二皿分作れるからな、丁度よい。
カレーとスプーンのセットを運び、次にコップと冷蔵庫から出したペットボトルのお茶を持っていく。水滴がフローリングにつかないように、カレーセットを運んだ丸型のお盆も動員だ。最後はスーパーお手製のサラダな。和風ドレッシングつきが二個、つまり、今日と明日の分だが、明日は明日でなにか作ればよいだけだので、問題はない。あるとすれば、少々野菜嫌いななつめだろうか。
「なつめ、サラダも食えよ?」
「私はうさぎではありません」
フイと顔を背けるアイドル。野菜炒めはよく作ってくれるんだけども、生野菜は食卓に上がったことはないので観察していたら、生野菜が苦手なことを突き止めた。吸血鬼だからかどうなのかは不明だが、スムージーも好みではないようだ。まあ、オレも嫌いなものや苦手なものはあるわけだし、あまり強くは言えないけどな。
「食わせてやるから、頑張ろうぜ」
「口移しがいいです」
「嫌ですけど!?」
え、この人真顔でなんてことを言ってんの?
「なんにも言わないからな!」
そういうことをわざわざ聞くんじゃねえよ、変態が。口を閉じるしかなくなるだろうが。先程から背後から抱きしめてくる男にぐいぐい肘鉄を食らわしているが、頬擦りにより無力化されている。諦めの無さにはこちらが根負けするしかなかろう。今回も色々と片づけてもらってしまったわけだしな、うん。泣き顔だっていつも以上に見せてしまったし。うおおお、思い返したら恥ずかしさしかないぞ!?
急いで頭を抱えるのは、熱い顔を見られたくないから。挙動不審に見えようが、二度、三度と頭を振って熱を逃してやる。わしゃわしゃ頭を撫でてくるのはきっと、全てを解った上でだろう。腹立たしさと情けなさが同居していたが、それでも、気にしてやる素振りは見せることなく躯を捩って見上げてやると、短く息を吐いた。諦めたのだと解らせる為に。
「なつめはオレに構う暇があるのなら、仕事の確認でもしろよ」
「してますよ。明日は午後から雑誌のインタビューが入ってますね」
「早く帰って寝ろ!」
午後からでも仕事があるのなら、そういうことをする前に躯を休ませろ。頼むから。学業と両立出来ているのが謎なくらいの露出度だろ、お前らって。まあ、売れる内が花という面はあるのだろうが、それにしたって働きすぎだろう。
「そういうことなら、今日は早めに食べて早く寝るか」
「はい」
うむ、解かればよろしいと小さく頷き返し、「用意するからちょっと待ってろ」と立ち上がる。腕を無理矢理引き剥がしてな。残念そうな顔をされても困るからやめろ。
ご丁寧に畳まれたテーブルを出すことを指示し、冷蔵庫に鎮座ましましていた小鍋を火にかける。冷蔵庫がカレー臭に侵食されているが、毎度の事なので慣れてしまった。それに、時間が解決してくれるわけだしな。
お玉で小鍋の中を掻き混ぜつつも皿を出して――といっても、カレー皿にしている皿は一枚しかないので、そちらをなつめに使ってもらうことにして、オレは丼を使おうか。ふたつの皿を軽く洗うとごはんを盛り、なつめに向き直る。
「なつめはカレーをかける派か別添え派かどっちだ?」
「どちらでも気にしませんよ。どうぞお好きなように」
「はいよー」
洗い物を少なくする為にかけるかと、丼にもカレー皿にもたっぷりと盛る。この小鍋は約二皿分作れるからな、丁度よい。
カレーとスプーンのセットを運び、次にコップと冷蔵庫から出したペットボトルのお茶を持っていく。水滴がフローリングにつかないように、カレーセットを運んだ丸型のお盆も動員だ。最後はスーパーお手製のサラダな。和風ドレッシングつきが二個、つまり、今日と明日の分だが、明日は明日でなにか作ればよいだけだので、問題はない。あるとすれば、少々野菜嫌いななつめだろうか。
「なつめ、サラダも食えよ?」
「私はうさぎではありません」
フイと顔を背けるアイドル。野菜炒めはよく作ってくれるんだけども、生野菜は食卓に上がったことはないので観察していたら、生野菜が苦手なことを突き止めた。吸血鬼だからかどうなのかは不明だが、スムージーも好みではないようだ。まあ、オレも嫌いなものや苦手なものはあるわけだし、あまり強くは言えないけどな。
「食わせてやるから、頑張ろうぜ」
「口移しがいいです」
「嫌ですけど!?」
え、この人真顔でなんてことを言ってんの?
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