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【 まえがき 】
■ヤンデレアイドルと凡人の攻防戦?
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
★★★☆☆★★★
オレの口内をこれでもかと貪っていた舌と唇が離れると、すぐさま乱れた息を整え始める。舌先を繋いでいたあれとか、次いで口端を舐められた感触とか、そういうことをすっ飛ばして息を吸う。
目の前の男は経験値が違うのかなんなのか、余裕な感じでオレを見ていたが、視線には熱いものがある。
このままでは大変マズイ気がするのでなにか言わなければとは思うのだが、慣れない行為に茹だってしまった頭では、なにをどうしたらよいのか解らなくなる。だからなのか、容易く手のひらを握られると同時に、のしかかられてしまう。
「へ、ぁ……っ!?」
麗しさもあり儚さも見える美しすぎる尊顔を持つ男は――微笑んでいる。謎に。オレを組み敷いてさえも。
「今日は首筋ではなく、違う所から吸おうと思うんです」
「え、あ、はい。はい? え、っと、どこから、ですかね……?」
漂う凄まじい圧に与することなく反射的に答えたが、すぐに目を瞬かせる。いまなんと言ったのかと。しかしこの男の正体を知るオレは、恐る恐る問いかけてみる。これだけは知る必要があるのだから。
「――――」
近づく顔に躯が跳ねてしまったが、左耳元で囁かれる声は厭に熱を帯びていた――。
歌って踊るアイドル兼俳優は強い。なにがって、全てが。
顔も声も身長も体格も性格も。全てがオレとは大違いであり、もはや神格化している気がする。週刊誌恒例企画の抱かれたい男に載るのは違いない。そうだとオレには解る。明崎なつめという男には、ファンがこれでもかといるのだから。
そう、毎日毎日飽きもせず彼のことを語る人物が身近にいるオレにとっては解り易すぎて怖いくらいだ。
明崎なつめと接点があるのだということがうるさい妹にバレた場合、オレは死ねる。オレだけは死ねる。ボロクソに言われて。
――この関係は表に出してはいけないものだ。バレたら終わり。明崎なつめの芸能人生命も、オレの単調な日々も。
いや、オレの日々はあの時から終わっていたか。
暮影聖斗という、まあ、少々変わった名字と名前を持つ凡人大学生の日々は、この男との出会いによって崩壊した。
オレのコンプレックスをこれでもかと刺激してくる男の提案によって。
乗らないとはならなかったのはオレの方にも非があるからであり、飲み会に参加しても飲みすぎないようにしようと誓ったあの日からだ。
呆気ないほどに世界が変わったのは。
履いているものを引っ剥がした後に流れるように足を持ち上げられつつ、右足の付根の内腿に牙を穿たれながらも、暗い赤と紅茶色が絶妙に混じったような髪を眺めている現在。
生理的な涙が浮かんだままなので視界は滲んでいたわけだが、この色はどうやったらなるんだろうかと頭の片隅は厭に冷静になっているらしい。熱を帯びた吐息を吐きながらなので緊張感の欠片もなかったのだが、世界が変わるのは簡単だったなあと、心に刻んでいた。
■ヤンデレアイドルと凡人の攻防戦?
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
★★★☆☆★★★
オレの口内をこれでもかと貪っていた舌と唇が離れると、すぐさま乱れた息を整え始める。舌先を繋いでいたあれとか、次いで口端を舐められた感触とか、そういうことをすっ飛ばして息を吸う。
目の前の男は経験値が違うのかなんなのか、余裕な感じでオレを見ていたが、視線には熱いものがある。
このままでは大変マズイ気がするのでなにか言わなければとは思うのだが、慣れない行為に茹だってしまった頭では、なにをどうしたらよいのか解らなくなる。だからなのか、容易く手のひらを握られると同時に、のしかかられてしまう。
「へ、ぁ……っ!?」
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「今日は首筋ではなく、違う所から吸おうと思うんです」
「え、あ、はい。はい? え、っと、どこから、ですかね……?」
漂う凄まじい圧に与することなく反射的に答えたが、すぐに目を瞬かせる。いまなんと言ったのかと。しかしこの男の正体を知るオレは、恐る恐る問いかけてみる。これだけは知る必要があるのだから。
「――――」
近づく顔に躯が跳ねてしまったが、左耳元で囁かれる声は厭に熱を帯びていた――。
歌って踊るアイドル兼俳優は強い。なにがって、全てが。
顔も声も身長も体格も性格も。全てがオレとは大違いであり、もはや神格化している気がする。週刊誌恒例企画の抱かれたい男に載るのは違いない。そうだとオレには解る。明崎なつめという男には、ファンがこれでもかといるのだから。
そう、毎日毎日飽きもせず彼のことを語る人物が身近にいるオレにとっては解り易すぎて怖いくらいだ。
明崎なつめと接点があるのだということがうるさい妹にバレた場合、オレは死ねる。オレだけは死ねる。ボロクソに言われて。
――この関係は表に出してはいけないものだ。バレたら終わり。明崎なつめの芸能人生命も、オレの単調な日々も。
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乗らないとはならなかったのはオレの方にも非があるからであり、飲み会に参加しても飲みすぎないようにしようと誓ったあの日からだ。
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履いているものを引っ剥がした後に流れるように足を持ち上げられつつ、右足の付根の内腿に牙を穿たれながらも、暗い赤と紅茶色が絶妙に混じったような髪を眺めている現在。
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