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四話
しおりを挟む月の明かりが部屋を照らす。
月明かりに目が覚めてイナミは起き上がる。シーツが乱れていたベッドは綺麗になっていて、レオンハルトは床に座りベッドの淵に腕をかけては項垂れぐっすりと寝ていた。
一緒にベッドに寝ないところが、レオンハルトらしいとイナミは頭を一撫ですると、レオンハルトは夢の中だったが幸せそうに口角があがった。
そもそも、シングルベッドでほぼ大人二人が寝るのはきついか。
自分とは現金で単純なものだ。寝て、起きて、目が覚めれば、胸内に溜まっていたものがすっきりとしていた。
色々付き合わせたレオンハルトには悪いが、心に余裕ができた。
ーーーといっても山のように積まれた問題は、解決はしていない。
「リリィ……」
ベッドから降りて棚に立てかけられていた杖を握る。
「……やっぱりダメか」
杖から反応はなく、あの生意気な声も聞こえてこない。
ずっと反応がないからおかしいとは思っていた。魔法石がまだ砕けてはいないが、前よりか明らかにひび割れている。
不調の原因は、あの時の術による暴走。魔術制御装置のチップを破壊するほどの威力。
杖が壊れるのも無理もない。ほぼもう魔術道具として機能はしていないのかもしれない。
「ごめん……絶対にお前のこと助けるから」
イナミは杖を強く握った。
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